いまでも人気がある漫画「鋼の錬金術師」。

この中で「人体錬成」という話が出てきます。人の材料を集めて錬金術で死んだ人を蘇らせるという話になっていて物語の大きなテーマになっています。

 

漢方や中医学の勉強会の導入部分でこの「鋼の錬金術師」の人体錬成を例に上げて東洋医学的な「人」を形造るものの話をするのです。東洋医学で考える「人」は陰と陽が混じり合ってできていて、このうち陽は普通は目に見えない「気」で、陰は物質的なものであり、人体錬成で必要とされるものはすべて陰に属するものですよと話をします。

錬金術ではこの陰に魂を宿すための方法が載っていますから、物質だけでは生き物はできないということをしましていると言えます。

 

個人的には気の元は代々受け継がれる形で継承されているとなっているところから、究極的に遡れば宇宙誕生につながって行くと思っています。あるメーカーの来月の会報誌にかいたコラムではこの部分を中国の神話と結びつけて考察しているのですが、中国でも気の成り立ちは宇宙の始まりにつながると考えているようです。

 

ここからが本題ですが最近、いろいろな神経症や慢性化した皮膚病の相談で、その相談された方が1年や2年なんとか栄養学というものをネットで見つけて結構値段のする栄養剤を服用されている方の相談がありました。この栄養学では、病気は栄養素の不足や偏りから起こるものでそれを結構な純度と種類を取ることで身体の分子レベルから抵抗力を上げることができるとしているそうです。

確かに栄養素は元気でいるためには必要でしょうし、病気治療には必要なものかもれないです。

 

ですがこれだけでは体の細胞の営みはうまく調和してくれないのは、錬金術と同じです。栄養素を取り込んだ細胞が調和した生命活動を行うには別の要素が欠かせない。東洋医学ではこれを気と呼んでいて、この気を増やしたり流れを良くすることをほぼ陰である栄養素を体に入れたときには同時に行うように漢方薬の処方ができたいたりします。

 

この栄養学を提唱されている方の考え方を発展すれば海水から常に生命が生まれるという理屈が成り立つような気がしますが、実際にはそのようなことはないようです。

 

わたしの漢方の師匠は、「気は家を建てるときの大工さん役割。栄養素は建材。いい建材があっても腕の良い大工さんがいなければ良い家は建たない」とお客さんに説明をされていてなるほどと納得した覚えがあります。

 

また気が不足しているのに栄養ばかり取り続けると、火の勢いが弱くなっているかまどに薪をどんどんくべてしまうことで逆に火が消えてしまうことにもなりがちで、実際にうつ的に気力が落ちているのに治りたい一心でそんなにもという量の栄養剤を飲んでいる方もみえました。

 

栄養学はとても大切ですが、体の気力が衰えてしまっているときにはぜひこの「大工さん理論」を思い出してください。随分と毎月高い月謝を払っておられる方がみえたので少し気になって書かせていただきました。