かなり前のテレビコマーシャルで、痔の症状として「痛み、出血、腫れ、かゆみ」というのが流れていました。これは座薬のCMだったと思いますが、痔の特徴をしっかりと網羅しています。

 

このテレビCMが流されていた頃は、まだトイレは和式が多く、洋式といれはまだまだ珍しく、ましてやウォシュレットのようなシャワーのついたトイレはまだまだ普及していないときでした。

その後トイレ事情が大きく変化し、痔を患う方は減るだろうと言われていました。実際、一時期そのような状況になったようでしたが、最近になって痔で困っている人が増えてきているようです。

 

痔という病気も漢方の古い本には色々と分類されて書かれています。かいてある症状も色々と激しいものまで含まれていますが、やはり「痛み、出血、腫れ、かゆみ」と痔瘻による膿がでてくるというものが中心です。

 

漢方薬の痔の薬で有名なのは、日本で考えられた処方の「乙字湯」(おつじとう)です。おもに痛みと腫れの痔の症状によく使われる処方です。少し便を柔らかくして、またいぼ痔が飛び出ているようなときに使います。症状が激しいときには、麻黄石膏の配合された処方を併用したり、少し慢性化していたり、座ることができないほど腫れているときには小建中湯という処方を併用したりします。この処方は保険漢方としてもあります。

出血があるときには、芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)という処方があります。この処方も保険漢方にありますが、どちらかというと出血があまり激しいものではなく少し出血があって長引いたようなときに使います。この処方にはヨモギが配合されています。

 

保険の漢方薬ではないですが少し激しい出血のときには槐角丸(かいかくがん)という処方を使うこともあります。この処方には激しい出血を止めるための生薬が配合されています。この処方に出血の激しいときには黄連という生薬の配合された処方を併用したり、三七人参を併用したりすることもあります。また煎じ薬で、清肺湯(せいはいとう、万病回春にあるもので咳止めとは違う処方です)を使うこともあります。

 

腫れがひどいときには乙字湯を続けて飲んだり、小建中湯や帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)を併用しつつ飲んだりします。また忘憂湯(ぼうゆうとう)という処方を煎じ薬で作って患部を洗うという方法もあります。

 

かゆみがある場合によく使われるのは補中益気湯という処方に黄柏、芍薬、茯苓という生薬を足したものや、五行草(イスクラ産業)という生薬のエキスを足して使ったりします。

 

以上が代表的な治療に使われる漢方薬ですが、症状や体質によってはまた違う漢方薬を使うこともあります。