ヒトは、肉食獣のえさだった。
前回は、嫉妬心のない男は、滅ぶというはなしをしました。
ヒトの基本的な感情には、怒り、恐怖、嫌悪、驚き、喜び、悲しみなどがあります。
ぼくたちは、この一揃えの感情をセットにして親から受け継いで生まれてきます。
遺伝というやつです。
困ったことに、この感情のセットはネガテイブ感情ばかりだからです。
アフリカのサバンナでガゼルの群れを観察していると、ガゼルは草を食べながら、いつも周囲を見回しています。
ライオンなどの肉食獣を警戒しているからです。
ヒトの祖先も、進化の過程のほとんどをガゼルと同じように、肉食獣に怯えながら暮らしてきました。
火と武器を手にして、肉食獣を追い払うようになったのは、50万年前ぐらいです。
あたたかな陽光を浴びて幸福な気分で草を食べるガゼルは、ライオンの餌になってしまいます。
いつも不安に怯えてあたりを伺う神経質なガゼルだけが、生き延びるのです。
ぼくたちの祖先の、ヒトもおなじです。
つまり、ひとは「食べられらがら進化した」のです。
ネガテイブな感情や思考は、現代の不安な時代が生み出したこころの病ではなく、もともと、何億年もの
進化の過程で最適化されたこころのシステムなのです。
どんな動物にも、感情の強弱があります。
重度の不安を感じるガゼルは、肉食獣から逃れられるかもしれないが、エサを食べられずに餓死します。
あまり不安を感じないガゼルは、捕食されるリスクを負うが、旺盛な食欲で仲間より早く成長し、
より多くの子孫を残すことができるかもしれません。
どちらの戦略が正しいかは、自らが暮らす地域の肉食獣の密度に依存します。
ヒトの感情の恐怖と嫌悪は、生まれ持ったものです。
この感情は、学習して身につけたものでなく、遺伝子に組み込まれたものです。
怒りや悲しみの感情は、チンパンジーやヒトなどの社会的な動物に特有のものです。
個人だがあり、すぐに怒るひともいれば、めったに起こらないひともいます。
怒りっぽいひとは集団の中で一目置かれるだろうが、みんなからは好かれません。
起こらないひとは、人気者のなれるかもしれないが、よってたかっていいように扱われます。
どのような性格が集団内での地位を高めるかは、時代や地域によって異なります。
怒りの感情が有益か害悪かは、状況によって決まるのです。
引き寄せの法則
引き寄せの法則の原理は、「ひとは自分に似たひとに引き寄せられる」というものです。
「類は友を呼ぶ」というあれです。
この正しさは、子どもの行動を観察することで実感できます。
初対面の子供たちをひとつの部屋で遊ばせると、自然にいくつかのグループに分かれます。
集団の選別は、性別と年齢によって、行われます。
男の子は、男の子同士、女の子は女の子同士で集まって、年齢が近い子たちがいっしょに遊びはじめます。
さらに人数が多いときは、いつかのサブグループに分かれます。
基本原理は、きわめてシンプルです。
子どもは、自分と似た子どもに引き寄せられる。
引き寄せの法則は、これだけです。
「ザ・シークレット」という本は、言います。
ひとは、似たもの同士と引き寄せる。
↓
わたしに似たひとが、わたしに引き寄せられる。
↓
だったら、わたしが望むものを持っているひとを引き寄せるには、そのひとに似ればいい(変身)。
↓
変身したわたしは、すべてのものを引き寄せ、わたしの世界はバラ色になる。
これが、ザ・シークレットが言っていることです。
ぼくたちは、カメレオンのように性格を変えたりできるのだろうか?
考えをかえたり、できるのだろうか?
ひとの性格は、そのほとんどが無意識の感情や仕草、表情や行動によって構成されています。
心臓の鼓動を速めるのも、顔を赤らめるのも、涙をこぼすのも、すべては脳の活動によって、無意識のうちに
行われているとしたら、ぼくたちはただ、泣いている自分に気づいて、あとから悲しい理由を考えることが
できるだけです。
自己啓発に行き詰まった現在は、「ザ・シークレット」という考えに進化しました。
自分に投資し、自己啓発のセミナーに参加して成功したひとはどれぐらいいたのでしょう?
「ザ・シークレット」のセミナーに参加して、成功したひとは何人ぐらいいたのでしょう?
たぶん、新たなセミナー講師という労働市場を生み出し、その市場に従事したひとたちが労働の糧を得たというのが
実態ではないでしょうか?
セミナーを開いているひとは、どうやってその知識を得たのでしょうか?
セミナーに参加して、特別プログラムに参加して、そのセミナー会社の認定講師の資格を得たからです。
労働市場に、新たな市場が加わったというのが実態です。
いまは、脳機能に関心が向き、自らの無意識を操作することで、成功しようと考える風潮が盛んになってます。
考えは、やはり同じです。
脳機能のさまざまな先生が出てきて、「脳にいいたべもの」や「脳にいいゲーム」などを紹介しています。
3パーセントしか使っていない脳を、4%も5%も使うことができれば、能力がアップするというのです。
そのなかで、システム化されたものがNLPです。
脳が本来持っている性質を利用すれば、自分を望む方向に変えることができるというのです。
さまざまなNLPのセミナーや、こころを扱った成功セミナー、無意識を扱った成功セミナーが出てきました。
新たな、これらのセミナーの講師はどうやってなるのでしょうか?
セミナーに参加して、特別プログラムに参加して、そのセミナー会社の認定講師の資格を得たからです。
ぼくたちは、こうして踊らされているのです。
正しいセミナーとの付き合い方
自己啓発やザ・シークレット、NLPや脳機能や無意識を扱ったセミナーは、新たな労働市場を生む
のだから、自分の脳力をアップするとか能力を開発するとか成功するとか考えるのではなく、その市場の
労働者として働くことを目的にセミナー参加するべき。
ということが、わかると思います。
だって、遺伝学的に自分をかえるなんてできないのだから。