◆ 「住吉大社奉納和歌集」より ~3






第3回目の記事となりましたが…

せっかく頂いた大変に貴重な書なので、何とかご恩に応えようとして走らせた企画物。

和歌の素養も、和歌の心も持ち合わせていないずぶのド素人があらゆる手段を用いて何とかかんとか歌の意味を考えてみよう…などと。

今回も一案件から
個人的に目に留まった三首を取り上げてみます。



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■過去記事
~1 …

~2 … 寛文四年 後西天皇法楽奉納和歌

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■ 天和三年六月一日 五十首

後西天皇 「月契秋」 一枚
霊元天皇 「早春」 一枚
 後宸翰

天和三年六月一日
早春 霊元天皇 (一枚) 外四十八首
月契秋 後西天皇 (一枚) 五十枚


【補足】
*天和三年 … 1683年

*後西天皇
第111代天皇。もっぱら学問に打ち込み「水日集」「源氏聞書」など著書多数。和歌の才能もあり古典への理解も深かった。茶道・華道・香道にも精通。

*霊元天皇
第112代天皇。兄の後西天皇より古今伝授(「古今和歌集」の解釈を師から弟子に秘伝されること)を受けた歌道の達人。時代を代表する歌人を育てたことでも知られる。

*「宸翰」
「天皇が住まい(皇居)でしたためた」といった意味になるかと思います。


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今回も三首選んでみました。

六月一日に奉納された和歌ですが、「早春」と「月契秋」。それぞれの季節の歌が半分ずつほど奉納されています。

現在の季節は春爛漫…といったところ。
どうしても春の歌にひかれ、三首とも春の歌を選んでしまいました…。



早春

はるかにも 霞そめけり すみよしや
 神代の春の おきつしら波

 霊元天皇



神代の頃から春の沖の白波までも
遥か遠くまでも霞が染める住吉や



このような意味でしょうか。
まとまり良くとても美しい響きを感じます。

声の美しい読み手に詠み上げて頂きたいものです。


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岸柳

棹姫の おなし手染も 春のくる
 かたわくきしの 青柳の糸

 実業



同じ手染めでも青柳の糸のように、棹姫(春の女神)の心は乱れやすいものです



このような意味となるのでしょうか。
「棹姫」とは「佐保姫」のことで春の女神。「青柳の糸」とは「乱れやすい心」の意。

旧暦一月二日から衣を縫い始める習わしであったようで、これは「姫始め」とも表記されます。諸説あるようですが。これはまた俗説として現在のように、その年の初めての男女の交合をも意味する場合も。

上手くは訳せませんが、この和歌にはそのような意味合いも含まれているように思います。

「詞花集」平兼盛に、
━━佐保姫の 糸染めかくる 青柳を 吹きな乱りそ 春の山風━━という歌があります。おそらくこの歌を 意識して作られたものと思われます。


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浦船

浦風や そてにすゝしき 明初る
 あさかのなみの たまもかり舟

 光雄



浦に吹く風が袖を涼しくして夜が明け初め、朝霞の波の中に沖の舟が見えます



「あさか」は「朝霞」でしょう。「浅香」という地名もありますが、そうすると季語が無くなるので。
「たまもかり」は「沖」にかかる枕詞。藻を刈る情景から生まれた美しい言葉。

思いのほか、美しい情景を歌っただけの意訳になってしまいました。おそらく訳しきれていない裏の意味があるのでしょうが…
「朝霞」には「はっきりと見えない」という意味もあり、そこから何か広がりがありそうですが…。


[大和国添上郡] 佐保姫神社。かつては大社であったようですが…。




今回はここまで。

なるべく1ヶ月後に次回記事を 上げられるようにします。


*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。