勝手神社 (吉野町吉野山)


大和国吉野郡
奈良県吉野郡吉野町吉野山2354
(いつも境内東横の道に寄せて停めています)

■延喜式神名帳
吉野山口神社 大 月次新嘗 の論社

■祭神
天之忍穂耳命
[配祀] 大山祇命 久々能智命 木花咲耶姫命 苔虫命 葉野姫命


全国「勝手神社」の総本社。また通称「山口神社」であったことから、「式内大社 吉野山口神社」の論社とされています。なお比定社は津風呂湖北側に鎮座する吉野山口神社。「吉野山街道」沿いに鎮座します。
◎「吉野大峰山」の山頂に金峰神社(記事未作成)、中腹に吉野水分神社、麓に当社が鎮座。山の入口(勝手)ということからの「山口社」であり、式内大社 吉野山口神社とは無関係のようにも思えます。社名から武家の信仰が篤かったようです。
◎創建由緒に関しては不明、ご祭神の天之忍穂耳神が祀られる由縁も不明。「日雄寺継統記」という書には第6代孝安天皇六年に創建と記されているようです。また大海人皇子(天武天皇)が社殿で琴を奏でると、天女が舞い降りて五度袖を振りながら舞ったとも記されます。背後の山を「振袖山(袖摺山)」と呼び、宮中の「五節舞」の起源となっているとも。このことから本来は女神であった可能性もあります。
◎これとは別に吉野水分神社の子守神とは夫婦神であるという伝承も。子守神は天萬栲幡千幡姫命と玉依姫のこととされているため、後世の附会かと思われますが。
◎配祀神として山神が二座祀られます。久々能智命は実体の無いいわゆる精霊神。苔虫命はイワナガヒメ神のことかと思われます。すると大山祇命と娘姉妹二座の計三座に山の精霊神ということに。葉野姫命に関してはまったくの不明。仮に草祖草野姫(鹿屋野姫)のことであるとするなら、大山祇命とは夫婦神。あまり多くは祀られていないものの、伊勢国の清野井庭神社(記事未作成)や阿波国の大麻比古神社の境内社である野神社(記事未作成)などで祀られます。
◎吉野の吉水神社に潜居していた源義経と静御前ら。御前は義経と別れ、従者に金銀を奪われ彷徨っているところを金峯山寺の僧兵に捕縛。御前は当社社殿前で舞いをし荒兵たちを感嘆させたという逸話があります。
◎残念ながら平成13年の不審火により社殿は焼失。現在は「勝手神社再建委員会」が設置され、募金活動を行われていますが、再建の目処が立っていないことをみると大きく不足しているように思います。吉水神社に仮遷座中。

*写真は2019年6月と2021年5月撮影のものとが混在しています。



社殿は焼失、瑞垣内はただの野原に。

いつの間にやら瑞垣すらも撤廃されています。




境内裏側(南側)。