穴栗神社 (穴吹神社)
大和国添上郡
奈良市横井町1-677
(P無、いつも一の鳥居がある東側に停め置きしています)
■延喜式神名帳
穴吹神社の比定社
宇奈太理坐高御魂神社 大 の論社
■旧社格
村社
■祭神
[伊栗社] 天太玉命
[穴栗社] 高御産霊尊
[青榊社] 青和幣(アオニギテ)
[白榊社] 白和幣(シロニギテ)
万葉集にも歌われる「伊久里の杜」と呼ばれる地に鎮座する社。江戸初期に遷座されてはいますが、その呼び名に相応しい杜の中。隣接する廃棄物リサイクル会社らしきものが、台無しにしてはいますが。
◎「妹が家に 伊久里の杜の 藤の花 今来む春も 常かくし見む」 -大原高安- 万葉集 巻17-3592
この歌に記される「伊久里の杜」は、大和国「穴栗(井栗)」(現在の奈良市横井東町)もしくは、越中国「井栗村」の両説有り。巻17は大伴家持が越中に赴任していたしていた時のものが並べられているため、越中国説の方が有力かと。
◎社名は「穴栗」「穴吹」「穴次」とばらつきが見られます。また紀には地名は「春日穴咋邑」とも。
これは景行天皇五十五年の条に、彦狭嶋王(孝霊天皇皇子、豊城入彦の孫)が東山道15国の都督に任じられるも、その途上「春日穴咋邑」にて病で薨じたとあります。纏向から東国へ向かったとすればすぐに薨じたということになりますが、以下に記す通り春日大社との関連も強いため当地が比定されるかと思います。
◎四社連棟式のご本殿、このうち穴栗・伊栗の神が春日大社に分霊されたという記録があります。現在も春日大社内には末社として鎮座していますが、四神とも祀られています(穴栗神社・井栗神社・辛榊神社・青榊神社)。
◎ご祭神の構成は天太玉命とその父神ともされる高御産霊尊、和幣(ニギテ)神が二柱の計4柱。
「和幣」は天岩戸神話に登場する「天香山」の五百津真賢木(いおつまさかき)を根ごと引き抜いて下の枝に「白和幣」、「青和幣」を取り垂れて…とある祭祀用具。太古の神事の様子が鮮明に描かれる場面。現在は紙ですが元々は白和幣は麻で、青和幣は楮(こうぞ)で作られました。それを神格化したもの。祭祀用具が神となるのには違和感がありますが、これが神道の奥深さであり格別なものである一例かと。別に長白羽神という青和幣を作った神もいますが、関係無さそうなもよう。
◎また「式内調査報告」では、当社を式内大社 宇奈太理坐高御魂神社に宛てています。比定社は平城京内に鎮座する宇奈太理坐高御魂神社。
*写真は2016年または2017年の秋頃のものと、2021年8月撮影のものとが混在しています。