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2006年10月、茨城県神栖市の波崎ウインドファームを訪れました。
当時の目的は、海岸沿いにずらりと並ぶ風力発電の風車を見ること。
波崎ウインドファームには、1,250kWの風車が12基並んでいました。
これだけの風車が一列に並び、ゆっくりと回っている光景は壮観でした。
使用機材:
Nikon D1H + AF-S DX VR Zoom-Nikkor 18-200mm f/3.5-5.6G IF-ED


当時の私は、こうした大規模な風力発電をかなり好意的に見ていました。
巨大な風車が規則正しく並び、海岸線の向こうまで続いていく光景には、どこか未来的なものを感じていたのだと思います。
この日撮影した写真のうち1枚を、その後、勤労者向けの美術展に出品しました。
そこで「全労済賞」をいただきました。
風車を撮影している途中、海の方を見ると、大きな船が座礁していました。
当時の記事には、たったこれだけ書いています。
海には座礁した船が。
そもそもそちらを見に行ったのだったか、忘れてしまいました。
この文章を読み返してみると、自分でも驚くほど軽い書き方です。

このときのことを思い出しても、周囲に大勢の人がいた記憶はありません。
報道陣が集まっているわけでもなく、見物人で騒がしいわけでもない。
ただ海の向こうに、壊れた巨大船がありました。
写真を見ても、不思議なくらい静かです。
まるで数十年前に難破した船が、そのまま遺跡のように残されている。そんな非現実的な光景に見えます。
今回、古い記事をリニューアルするために写真を調べ直して、初めてこの船の正体を知りました。
写っていたのは、大型鉄鉱石運搬船 GIANT STEP(ジャイアント・ステップ) でした。
GIANT STEPは2006年10月6日、鹿島港沖で座礁。
鉄鉱石約19万トンを積んで鹿島港への着岸を待っていましたが、荒天の中で沖へ移動しようとした際、強風に流され、海岸から約2kmの地点で座礁しました。船体は大きく傾き、亀裂が生じています。
翌10月7日には、その船体が二つに折れました。
そして、私がこの写真を撮影した日は、2006年10月9日。
座礁事故から、わずか3日後でした。
ここを調べて、さらに驚きました。
事故翌日の10月7日時点で、乗組員26人のうち1人の死亡が確認され、9人が安否不明でした。
10月8日にはもう1人の死亡が確認されました。
商船三井が10月10日に発表した資料では、死者2人、生存者16人、残る8人が行方不明となっています。
つまり私が写真を撮った10月9日は、まだ8人の乗組員の安否が分かっていなかった時期
だったことになります。
私はそんなことをまったく知らず、「海に座礁した船がある」という程度の認識で写真を撮っていました。
当時の自分の文章を読む限り、風車を見に行ったついでに座礁船も撮った、としか見えません。
それだけに、現在になって事故の詳細を知ると、写真の印象がまったく変わってしまいました。
その後の捜索で、10月13日までに8人の死亡が確認され、2人が行方不明となりました。
現在、商船三井はこの事故について、「10名の乗組員が死亡・行方不明となった重大海難事故」
として記録しています。
事故の記憶と教訓を風化させないため、現在も鹿島灘の日川浜海水浴場で慰霊式典や海岸清掃などが行われています。2025年にも、事故から19年となる10月に慰霊式典が実施されています。
今この写真を見ると、事故直後の現場とはとても思えません。
人の気配がない。騒がしさもない。ただ巨大な船体だけが、静かな海の中に残っています。
その静けさが、かえって不気味です。
当時感じた「現実ではないような光景」という印象は、20年たった今も変わりません。
ただ、その写真の裏側にこれほど重大な出来事があったことを、私は今回初めて知りました。
私はこの場所について、「これだけの風車が立ち並び、ゆっくりと動いている姿は壮観です」と書いていました。
その感想自体は、今見ても変わりません。
風車が海岸線に並ぶ光景そのものには、今でも強く惹かれます。
ただし、風力発電そのものに対する私の考え方は、この20年間でかなり変わりました。
そのあたりについては、この写真とは切り離して別の記事にまとめたいと思います。
<訪問日:2006年10月>
<2021年初掲載/2026年10月加筆・再編集>
先日、プラネタリウムで「まだ見ぬ宇宙へ」を見ました。
この作品の終盤では、銀河系を離れ、どんどん遠い宇宙へ進んでいきます。
そこで画面に現れるのが、時間の目盛りです。
(五藤光学研究所HPより引用)
遠い宇宙を見るということは、時間をさかのぼるということ。
時間目盛りが手前から奥に向かって表示され、どんどん数字が過去に向かっていきます。
これがもう、めちゃくちゃカッコいい。
これを見て、昔の名古屋市科学館を思い出しました。
名古屋市科学館でツァイスIV型が使われていた頃、目盛りを使った投影を何度も見ました。
ツァイスIV型には、天の赤道と黄道を同時に投影する「黄赤道」の機能がありました。
ドーム上に2本の大円を表示すると、地球の自転の基準である天の赤道と、公転の基準である黄道が約23.4°傾いて交差していることが一目でわかります。
惑星の動き、特に逆行する様子は、黄道目盛りがあると一目瞭然。
(ChatGPTで生成)
目盛りそのものを残したまま、天体を動かす。
すると、ドーム全体が巨大な天文計器になります。
星空を眺めているのではなく、宇宙を測定しているように感じるのです。
その中でも、私が忘れられない演出があります。
歳差運動です。
歳差目盛りをドームに投影したまま、時間をどんどん進めていく。
今の北極星はこぐま座のポラリスです。
しかし北極星は永遠に同じ星ではありません。
時間を1万年以上進めると、約1万2000年後、こと座のベガが北極星に。
夏の大三角の、あの一等星のベガです。
これを初めて知った時は衝撃でした。
この様子を、歳差目盛りを出したまま見せる。
私はこれを見たとき、あまりのカッコよさに痺れました。
「今、自分はタイムマシンに乗って未来に向かっている!」と思いました。
ツァイスIV型の演出の中でも、これが最高峰だったと思っています。
目盛りでピンと来ない方も、松本零士のアニメで出て来る大量の「零士メーター」や、車や戦闘機で速度などを表示する「ヘッドアップディスプレイ」にワクワクしたことはありませんか?
特に意味はなくても、メーターの針が動いたり、数字が空間に浮かんで表示されているだけでもカッコいい。
(ChatGPTで生成)
(ChatGPTで生成)
私にとって、プラネタリウムの目盛りも同じです。
星空に目盛りを重ねると「宇宙を測ろうとしている感じ」が出てくる。
これがたまらない。
しかし最近のプラネタリウムでは、こうした「目盛り」の演出を全く見なくなりました。
なぜなのか??
現代のデジタルプラネタリウムなら、座標線や目盛りを表示すること自体は難しくないはずです。
ふと、思いました。
「もしかすると、今の若いプラネタリウム解説者は、目盛りの演出を見たことがないのでは?」
プラネタリウムで目盛りを見たことがなければ、
「目盛りを出したまま星空を動かすと、こんなにカッコいい」
という発想自体が生まれないかもしれません。
もしそうだとしたら、非常に残念です。
もしこの記事をプラネタリウム解説者さんが読んでいたら、ぜひ一度試してみてほしいです。
緯度。天の赤道。黄道。歳差。
どれでもいいので、目盛りを表示したまま星空を動かしてみてください。
惑星を逆行させてみてください。
何千年も時間を進めてみてください。
それを、ちょっとテクノポップな音楽を流しながらやってみてください。
私のおすすめは、「驚異の小宇宙・人体IIサウンドトラックVol.1」(久石譲)の「GONE TO SCIENCE」です。
ぜひこの記事がプラネタリウム解説者さんに届いて、目盛り演出が増えることを期待します!!