高エネルギー加速器研究機構(KEK)の地下には、一周約3kmもの巨大な加速器リングが埋め込まれています。
地上から見ても、その全貌はまったく分かりません。
KEKの建物屋上から見たつくばキャンパス。地下にはKEKBの巨大リングが広がっています。
(建物の屋上から撮った写真14枚をChatGPTで合成)
その巨大施設が、
「KEKB(ケックビー)」
です。
前回紹介したコッククロフト・ウォルトン型加速器を見学したのと同じ、2009年9月のKEK一般公開で見学しました。
KEKBは、電子と陽電子を加速して衝突させる「Bファクトリー」と呼ばれる巨大な加速器施設。
つくばキャンパスの地下に、一周3.016kmのリングが造られています。
3km。
数字だけ聞いてもピンときませんが、ほとんど街の地下に巨大な円形施設を造ってしまったようなものです。
(KEK公式サイトより引用)
このリングの中を電子と陽電子がほぼ光の速さで周回し、一か所で衝突します。
……と説明されても、やっぱりスケールが大きすぎてよく分からない。
でも、
とにかくデカい。
そしてメカがカッコイイ。
メカメカしさを出したかったので、写真はあえてモノクロにしてみました。
地上にある建屋から中へ入ります。
この何の変哲もない建物の地下に、周長3kmの加速器があると思うと妙な感じです。
内部へ入ると、長いトンネルに沿って加速器の装置が延々と続いています。
人が写っていると、そのスケールが少し分かると思います。
どこまで行っても機械、配管、ケーブル。
巨大な装置というより、地下そのものが一つの機械になっているような光景です。
そして、電子と陽電子が衝突する場所に置かれていたのが、
「Belle(ベル)測定器」
です。
電子と陽電子を衝突させると、さまざまな粒子が生まれます。
Belleは、その衝突で何が起きたのかを記録する巨大な測定器。
当時の説明では、
「巨大なデジカメ」
のようなもの、と紹介されていました。
実物はこれ。
デジカメと言われても、当然ながら手に持てるサイズではありません。
Belle測定器は全長約7m、約1400トンという巨大な装置です。
この中心で電子と陽電子を衝突させ、そのときに生まれる粒子を周囲のさまざまな検出器で記録していました。
そして、このKEKBとBelleによる実験は、小林・益川理論が予言した「CP対称性の破れ」を確認するなど、大きな成果を上げました。
2008年には小林誠・益川敏英両氏がノーベル物理学賞を受賞しています。
私がここを見学したのは、その翌年の2009年9月でした。
つまり、このとき撮ったKEKBとBelleは、まだ現役の研究施設です。
ところが、その約9か月後。
2010年6月30日、KEKBとBelleは運転を終了しました。
老朽化したから廃止された、という話ではありません。
もっと高い性能を目指して、
KEKB → SuperKEKB
Belle → Belle II
へと大改造されることになったのです。
KEKBで使われていた周長3,016mのリングも最大限活用され、ビームパイプや電磁石、電源、高周波加速システムなどが更新されました。
そして2018年には、SuperKEKBとBelle IIによる電子・陽電子の衝突実験が始まりました。
現在も、あの地下約3kmの巨大リングはSuperKEKBとして使われています。
そう考えると、2009年に何気なく撮っていたこれらの写真は、
KEKBと初代Belleが現役だった最後期の姿
ということになります。
当時は、
「よくわからないけどカッコイイ。」
くらいの気持ちで撮っていました。
でも17年後に見返してみると、この写真に写っている装置の多くは、その後大きく姿を変えました。
科学施設は巨大で頑丈なので、ずっと同じ姿で残っているように思ってしまいます。
しかし研究施設は、新しい成果を求めてどんどん更新されていく。
だからこそ、現役だったときの姿を写真に残しておく意味があるのかもしれません。
<訪問日:2009年9月>
<2021年初掲載/2026年8月加筆・再編集>





































