ビッグバンドジャズを楽しむ
ビッグバンドジャズのライブを日常的に楽しめるライブハウスというのはなかなか無く、秋葉原(昭和通り口)から徒歩数分という立地でビッグバンドジャズのライブを聴ける『TN Swing Jazz』は貴重な存在でした。
と言っている私も、未だ1回しか行ったことがなかったのですが、6月24日で閉店してしまうという情報を得て、慌てて再訪致しました。

TN Swing Jazzでは総勢16名のビッグバンドでSwing Jazzの楽曲を中心としたジャズを、ステージから至近距離で楽しめます。
私が最初に伺ったときには、ミュージシャン16名、お客が6名という散々な状況だったため、お店の存続に不安を感じていましたが、理由はそれだけではないかもしれませんが、やはり閉店と言うことになってしまいました。
今回再訪をした際には、閉店の情報を聞きつけてか、20数名のお客さんが駆けつけていました。



この決して広くない地下の空間で、至近距離でビッグバンドのサウンドを体中に浴びる幸せといったら、非常に官能的でたまりません。
誰もが知っている、ジャズを知らない人でも「あ、なんか知ってる」と思えるスウィングジャズの名曲を中心に、小難しいことを考えずにリズムとメロディーに酔える演奏を聴いていると、なんだか初心に返ったような、ジャズのウキウキ、ワクワクする部分にフォーカスをして楽しめます。
(個人的にはBuddy Richのややファンキーというかソウル寄りな楽曲やアレンジも好きなので、marcy marcy marcy等をこのバンドで聴いてみたいな・・・とか思ったりするのですが)
それ故に、この貴重な体験が出来るお店が無くなってしまうと言うのは・・・残念としか言い様がありません。
今からでも決して遅くありません。
まだ行ったことのない方は是非、ビッグバンドの音のマシンガンを体中で受けてみて下さい。撃たれまくって下さい。
私も是非、6月24日の閉店までに最低2回は再訪したいと思っています。
辛島文雄さん
今発売をしているジャズ批評 2017年 03 月号
アルバムに関しては昨年のブログでも紹介しているので雑誌と合わせてご覧いただければ。
この週末は辛島さんの作品に浸りながら追悼させていただきます。
心からお悔やみ申し上げます。
2016年のマイ・ベスト・ジャズアルバム (ジャズ批評で書けなかったヤツ)
で、2016年に発売されたアルバムの中での私のベスト5はジャズ批評を見ていただくとして、ベスト5に入れようか悩んだアルバムも当然、沢山あるわけです。
そんなギリギリのところでもれてしまった作品をこの場にてご紹介させていただきたいと思います。
(もしかしたらジャズ批評紙面よりもしっかりと文字数を使ってレビューできるので、こっちの方が書きやすいかも(笑))
SHANTI sings BALLADS / SHANTI
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本作は過去の作品からバラード作品をピックアップして収録し、3曲ほど新録した作品となっています。
私も今まで何枚かSHANTIさんのアルバムを買っていますが、ジャズアルバムとして聴いた時に、あくまで個人的な感想なのですが物足りなさを感じていました。
しかし本作を聴いてみたところ、確かに「ジャズ」ど真ん中の作品では無いのですが、アコースティックなバラードの演奏がSHANTIさんの素の歌唱力を際立たせたようで、1曲目の「Home at Last」から惹き込まれてしまいました。
選曲もなかなかツボを突かれるものが多く、エルトン・ジョンの「Your Song」やスティングの「Fields Of Gold」、新録の「Over The Rainbow」など聴き所盛りだくさんです。
最近CMでもバシバシやっている小日向文世さん主演の映画「サバイバルファミリー」の主題歌「Hard Times Come Again No More」が収録されているので映画ファンも是非。
SPEAK LOW / Lucia Cadotsch
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テナーサックスとベースをバックにした作品で、演奏も非常に独特なのでダメな人は全くダメかも。
そんな本作ですが、2曲目のタイトル曲「SPEAK LOW」等はとても素直な歌声で蕩々と歌い上げ、それに対してバックの二人が展開する演奏との対比が面白く、気がつけばルツィア・カドッチュの歌声に引き込まれます。
3曲目の「STRANGE FRUIT」はビリー・ホリディの名曲ですが、これを白人のルツィア・カドッチュが歌うことに若干の違和感を感じつつ、また名曲故にビリー・ホリディの歌とどうしても比較をしながら聴いてしまうのですが、ビリー・ホリディが同胞たちへの鎮魂歌であったとすれば、このルツィア・カドッチュの歌声は黒人奴隷に対する白人の懺悔のようにも聞こえます。
ややもすれば、ビリー・ホリディとの比較の末に陳腐に聞こえてしまいがちなこの曲を、バックの二人の悲しさと激しさを感じさせる演奏に支えられながら歌い上げたルツィア・カドッチュには拍手。
Call me / Ryu Miho
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1曲目のCall meはエフェクト処理無くアカペラで囁くように歌うので、少しこそばゆい感覚でアルバムを聴き始めます。
3曲目の「Love for sale」は少し毛羽立ったような歌声でチャーミングに歌われるとアッと言う間に魅せられてしまいます。
4曲目の「The nearness of you」はついさっきの「Love fot sale」とは打って変わってギターのみでしっとりと歌い上げるのですが、まるで呼吸を感じるような吐息混じりの歌声を聴いていると、ズッと耳元で歌って貰いたいような感覚に襲われます。
他にも「Fly me to the moon」や「Misty」、マドンナの「La isla bonita」など聴き所いっぱい。
A MATTER OF INSTINCT / The Peter Edwards Trio
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全曲Peter Edwardsのオリジナル曲なので、店頭で触手を動かすには若干躊躇しますが、聴いてみるとどの曲も良い意味で分かり易い曲ばかりで、しっかりと楽しめます。
悪く言えば「環境音楽」的に聞き流せてしまえる作品なのですが、ジックリと聴けば聴くほどそれぞれの曲の良さ、Peter Edwardsのピアノタッチの軽妙さと繊細さや、ベースのMax Luthertの緻密で丁寧なベースの音運び、作品全体をバチッと引き締めて曲の良さをもり立てるMoses Boydのドラム等が見えてきてどんどん楽しくなってきます。
次作ではもっと実験的な、攻めた曲も盛り込んで貰いたい!
最後は12月30日の毎年恒例行事、吉祥寺MEGでのオールナイトイベントで某遠方からお越しの某氏が紹介してくれた韓国の女性ピアニストSHIN AHRAMのトリオ作品。
OBTAIN / SHIN AHRAM TRIO
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1曲目の「Quiet」と5曲目の「Sincero」以外の楽曲は全てピアニストのShin Ahramのオリジナルらしいけれど、ピアニスト以外のメンバーの名前が・・・読めません。だって、ハングル文字で書いてあるんですもの・・・。
更に、レコーディング情報も一切ないので(少なくとも英文では)、何月何日にどこで録音したのかも分かりません。
と、いろいろと不明な点があるアルバムではありますが、聴いてみると・・・1曲目の「Quiet」からハマります。
女性らしい繊細なメロディーが有りながらなかなか骨太な演奏で、オリジナル曲も情緒的でメロディアスで、美しくはかなく力強い・・・ヨーロッパ的でも有り日本的でも有る曲の展開は、いいとこ取りでたまらなく気持ちがイイ。
その美しいピアノを支えるドラマーとベーシストのことも書きたいのに・・・名前が読めない・・・(涙)。
兎にも角にも、コレは一聴の価値あり!
なかなか取り扱いがないようですが、検索をすると国内の様々な音楽配信サイトで配信されているので、そちらもご利用下さい。
と、そんな感じで紹介をさせていただきましたが、他にも2016年に発売されたアルバムの中にはオススメの作品はまだまだ有ります。
またこのブログでもご紹介が出来れば・・・。
あ、あとは『ジャズ批評』の方でも私なんかよりも耳の肥えた皆さんが様々な作品を紹介されていると思いますので、是非ご覧下さい。