公的医療保険制度の給付について | 四姉妹のパパは保険屋さん 〜保険は賢く活用しよう!〜

四姉妹のパパは保険屋さん 〜保険は賢く活用しよう!〜

長崎の保険代理店(有)ビッグ・ワンの代表取締役大木敬介のブログです。
2023年9月まではただの雑記ブログでしたが、今は賢く民間保険に入る為の周辺知識を頑張って発信しています。

今回は公的医療保険制度の給付について説明していきます。

 

給付とは、つまりもらえるもの(お金)です。公的医療保険制度に加入している人はどんな時に利益を得られるのか?というお話です。

 

3つのポイントに分けて解説します。

①全制度共通の給付について

②被用者保険特有の給付

③地域によって給付されるもの

以上の3点です。

 

結論から先に言いますが、「他の制度と比べると被用者保険は給付が手厚い」という内容になっています。

 

では早速参りましょう。

 

先ず前置きとして言っておきますが、これから解説する給付はあくまで「法定給付(法律で定められている給付)」です。皆さんが加入されている制度(保険者)によっては、更に手厚い「付加給付」がある場合もありますので、損しない為、賢く民間保険選びをする為には、一度ご自身が加入されている公的医療保険制度の給付内容と見比べてみる事をお勧めします。特に大企業や同業者組合等に所属されている「組合健保」に関しては、独自給付があるケースもかなりあるようなので確認してみて下さい。

 

①全制度共通の給付について

全ての制度に共通して給付されるものから説明していきます。

 

・療養の給付

これが一番メジャーどころ、「療養の給付」です。病気やケガをした時に、被保険者証(健康保険証)を医療機関の窓口に提示することにより、最初から医療費の一部のみを負担し、後日保険者から残額が医療機関に支払われるという制度です。実際に窓口で負担する金額は以下の通りです。

就学前児童 かかった医療費の2割

一般の被保険者・被扶養者 かかった医療費の3割

70歳~74歳の一般の被保険者・被扶養者 かかった医療費の2割

75歳以上の一般の被保険者 かかった医療費の1割

75歳以上で一定以上の所得がある場合 かかった医療費の2割

70歳以上の現役並み所得者・被扶養者 かかった医療費の3割

この中で「75歳以上で一定の所得がある場合」に関しては、以前は1割負担だったものが2022年(令和4年)10月から2割に変更されています。この変更に関しては令和7年9月30日までの期間限定で、1か月の窓口負担(入院の医療費は対象外)増加額は3,000円までに抑えられています(医療機関が複数にまたがる場合には後日払い戻し)。「一定の所得がある場合」とは、課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が 200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、320万円以上。)の場合です。後期高齢者医療制度加入者の20%程度の方がこれにあたるとされています。「現役並み所得」とは、課税所得が145万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が 383万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、520万円以上。)の場合です。後期高齢者医療制度加入者の20%程度の方がこれにあたるとされています。

この「療養の給付」が適用されるのは「保険診療(普通に病院に行って普通に受けられる診療)」に関してのみで、制度適用外である「保険外診療」や「高度先進医療」は含まれません。「診療の種類」に関しては後日解説致します。

 

・保険外併用療養費

ついさっき「保険外診療」は対象外と言ったばかりですが、「保険診療」と「保険外診療」を併用した場合はどうなるのか?この場合は受けた「保険外診療」が「選定医療」または「評価療養」および「患者申出療養」と認められれば、保険診療の部分については保険外併用療養費が受けられます。個別のケースによってこれに該当するかどうかは確認が必要です。この場合であっても「保険外診療」部分に関しては給付が受けられずに全額自己負担となります。

 

・入院時食事療養費

入院時に食事の提供を受けた時には、標準負担額(患者が支払う金額は原則1食460円)を除いた部分が入院時食事療養費として給付されます。

 

・訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)

在宅で継続して療養する必要のある末期がん患者や難病患者等が訪問看護サービスを受けた場合に支給されます。(原則3割負担)

 

・療養費(家族療養費)

やむを得ない事情で非保険医にかかった時や、被保険者証(健康保険証)を提示できない時、海外で治療を受けた時に支給されるのが「療養費」です。対象となるかどうかは個別に保険者等に確認して下さい。全額自己負担をした後に給付金が戻ってくるケースもあります。

 

・移送費(家族移送費)

緊急時などに病気やケガで移動が困難なため医師の指示により移送された時には、その実費または保険者の認めた額が払い戻されます。

 

・高額療養費

「保険診療」に関しては、収入によって1か月の自己負担額(療養の給付を受けた後に実際に自分が手出しする費用)の上限が決められており、上限を超える医療費を支払った場合にはその差額が給付されます。公的医療保険制度の肝であり、賢く民間医療保険を選ぶ為には必要不可欠な知識です。

 

②被用者保険特有の給付

次に被用者保険(健康保険等)特有の給付について解説します。

 

・傷病手当金

病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障する為に設けられた制度で、病気やケガの為に会社を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給されます。この給付が被用者保険と地域保険の最大の違いです。自分自身の(民間)保険を考える時には必ず知っておきたい給付です。

 

・出産育児一時金(家族出産育児一時金)

妊娠4か月以上で出産(死産・流産を含む)した時は、令和6年2月時点では一児あたり488,000円の給付が受けられます。産科医療補償制度に加入する医療機関で出産する場合は、その保険料分が上乗せされ、500,000円の給付となります。(金額は令和5年4月1日からの金額です。)

 

・出産手当金

出産で仕事を休み給料がもらえない時、出産日以前42日から出産日後56日までの期間は、休業1日につき「支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月間」の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1の額」の3分の2相当額が給付されます。

 

・埋葬費

被保険者(または被用者保険における被扶養者)が死亡した時、その家族に対して一律5万円の埋葬料が家族に支払われます。家族がいない場合には、埋葬を行った者に5万円以内で実費が支払われます。

 

③地域によって給付されるもの

②で解説したように、公的医療保険制度では自営業者よりも会社勤めの方(地域保険よりも被用者保険)がかなり優遇されているように見えます。実際そうなんですが、地域保険に関しては各地域によって給付に差があるものもあったり、独自の給付(サービス)があったりしますので必ずご自身で確認してみる事をお勧め致します。

 

基本法定給付として国民健康保険でも給付しなければならない(逆説的に言えば、特別の理由がある時は給付しなくてもいい)ものとしては、

・出産育児一時金

・葬祭費(被用者保険で言うところの埋葬費)

・葬祭の給付

の3つです。地域によって給付金額等も異なるようなので確認してみて下さい。

 

また、「傷病手当金」と「出産手当金」に関しては「任意給付」とされており、保険者がその給付を行うかどうかは自由!とされています。行うのであれば条例または規則で定めて行う事とされています。

ちなみに「任意給付」とされている「傷病手当金」ですが、5類になる前の「新型コロナウイルス感染症」での休業では請求できるようになっていたようです。しかしそれ以外で、この地域ではどんな場合でも国民健康保険から「傷病手当金」が支給されている!と言った例を私は聞いた事がありません。もしそのような地域がありましたら、逆にコメント欄等で教えていただけるとありがたいです。

 

後期高齢者医療制度も含めた全制度共通で言える事ですが、「子ども医療費の助成」や「高校生等への医療費の助成」「高齢者への医療費の助成」等、各自治体において独自の上乗せ給付を行っているところもありますので、お住まいの市役所ホームページ等で確認してみて下さい。

 

さて今回は以上です。

 

繰り返しのまとめになりますが、特に地域保険(国民健康保険等)に加入されている方は地域によって給付内容等に差がある場合がありますし、組合健保や各共済に加入している人達は独自の給付等がある場合もあります。各自治体が独自で行っている助成等もありますので、一度ご自身が加入している制度や地域の情報を調べてみる事がお勧めです。

 

賢く民間保険に加入する為、ちゃんと自分で考えて民間保険を選ぶ為、もしくは民間保険に入らないという選択肢を取る為には「公的医療保険制度」の知識は必要不可欠です!

 

今後も賢い(民間)保険選びの為の周辺知識を掲載していきたいと思います。

 

この内容は後日YouTubeでも掲載したいと思います!興味のある方は有限会社ビッグ・ワンのYouTubeも見てみて下さい!

 

それではまたで~す!

 

※今回の記事は2023年9月25日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下さい!

 

【公的医療保険に関して~目次~】

公的医療保険制度の種類

公的医療保険制度の適用対象者と保険料

 (標準報酬月額って何?課税標準額って何?

公的医療保険制度の給付について

 (医療診療形態の種類

高額療養費制度について

傷病手当金とは