高額療養費制度について | 四姉妹のパパは保険屋さん 〜保険は賢く活用しよう!〜

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長崎の保険代理店(有)ビッグ・ワンの代表取締役大木敬介のブログです。
2023年9月まではただの雑記ブログでしたが、今は賢く民間保険に入る為の周辺知識を頑張って発信しています。

今回は公的医療保険制度の目玉と言っても過言ではない「高額療養費制度」について解説します。賢く(民間)保険に加入する為には絶対に知っておいてほしい知識の1つです。

 

重い病気等で長期入院をする場合等は医療費の自己負担額が高額となってしまいます。公的医療保険制度では医療費が高額となってしまった場合に一定の金額を超えた部分が払い戻される制度があります。それが「高額療養費制度」です。

なお、最初に言っておきますが、この「高額療養費制度」の対象となるのは、公的医療保険制度が使える「保険診療」のみが対象です。公的医療保険制度が使えない「自由診療」に関しては対象外ですのでご注意下さい。

 

先ずはその「一定の金額」とはいくらかなのか?について解説します。各保険制度によって少しだけ違いがありますので、最初に健康保険(協会けんぽ等)を例にして解説します。自分で払わなければならない「一定の金額」を「自己負担限度額」と言いますが、この自己負担限度額は「標準報酬月額」によって変わってきます。以下に標準報酬月額ごとの自己負担限度額を記載します。

 

★健康保険加入・70歳未満の高額療養費

標準報酬月額83万円以上…自己負担限度額「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」

標準報酬月額53万円以上83万円未満…自己負担限度額「167,400円+(医療費-558,000円)×1%」

標準報酬月額28万円以上53万円未満…自己負担限度額「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」

標準報酬月額28万円未満…「57,600円」

低所得者(住民税非課税)…「35,400円」

 

自己負担限度額の基本は「1つの病院・診療所」での1か月の限度額です。1か月とは暦の上での1ヶ月(◯月1日〜◯月末日)です。

たとえば20日間入院していたとしても、20日間の間に月をまたいでしまった場合には各月の限度額となってしまいます。これだけ聞いたら入院するなら月初がお得って思いますね。また、入院中に別の病院に通院してかかった費用や、1ヶ月以内の複数の病院での入院は後半に説明する「世帯合算」の要件を確認して下さい。

ちなみに標準報酬月額は「被保険者」の収入で計算されますので、被用者保険における「被扶養者」であった場合、収入の少ない方や学生さんであったとしても扶養している人の収入が高ければ自己負担額は上がりますので覚えておいて下さい。

 

また、上表の「医療費」というのは「療養の給付」で3割(69歳以下の場合)となっている自己負担分ではなく、その給付を受ける前の10割分の費用となっています。

例えば仮に20日間の入院の医療費が100万円だったとしましょう。

高額療養費制度がなかったとしたら基本3割負担なので自己負担額は30万円ですね。

高額療養費制度を使った場合は、この人が仮に月収40万円だったとしたら、自己負担額は「80,100円+(100万円-26万7千円)×1%=87,430円」となります。かなりの差ですね!

ここで注目してほしいのは「80,100円」が「267,000円」の3割だという事です。

つまり標準報酬月額28万円以上53万円未満の場合は保険適用前の実際の医療費の267,000円までは3割負担で、それを超えたら1%負担と言い換える事ができます。標準報酬月額53万円以上の区分も標準報酬月額83万円以上の区分も考え方は同じです。

 

「高額療養費制度」を利用する場合、一旦医療費の自己負担額全額(上記医療費100万円の例でいけば30万円)を患者が支払った後に、申請すれば差額(100万円の例でいけば30万円-87,430円=212,570円)が戻ってくるという償還払いが基本なのですが、事前に全国健康保険協会等の保険者に限度額適用認定申請書というものを提出し、「限度額適用認定証」の交付を受ければ、この認定証を医療機関窓口に被保険者証(健康保険証)と一緒に提示する事で、最初から窓口負担の上限は自己負担限度額までとする事ができます。

 

国民健康保険等の場合には「標準報酬月額」ではなく「旧ただし書き所得」が使用されます。「標準報酬月額」と「旧ただし書き所得」については機会があれば後日別途解説しますので、ここではざっくりと「標準報酬月額→総支給月収」「旧ただし書き所得→年間所得額」と思っておいて下さい。ちなみに手取り額ではありません。

「標準報酬月額83万円以上」→「旧ただし所得+901万円超」、「標準報酬月額53万円以上83万円未満」→「旧ただし所得600万円超~901万円以下」、「標準報酬月額28万円以上53万円未満」→「旧ただし書き所得210万円超~600万円以下」、「標準報酬月額28万円未満」→「旧ただし書き所得210万円以下」と読み替えて下さい。

 

70歳以上の方に関してもほぼ同じですが、少し区分や要件が違うので改めて記載します。

★70歳以上の高額療養費

標準報酬月額83万円以上/課税所得690万円以上

…自己負担限度額「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」

標準報酬月額53万円以上/課税所得380万円以上

…自己負担限度額「167,400円+(医療費-558,000円)×1%」

標準報酬月額28万円以上/課税所得145万円以上

…自己負担限度額「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」

標準報酬月額28万円未満/課税所得145万円未満

…「57,600円」

…外来の場合は個人ごとに「月18,000円」「年間144,000円」

住民税非課税世帯Ⅱ

…「24,600円」

…外来の場合は個人ごとに「月8,000円」

住民税非課税世帯Ⅰ(年金収入80万円以下等)

…「15,000円」

…外来の場合は個人ごとに「月8,000円」

御覧のように70歳以上の区分のうち、「標準報酬月額28万円未満/課税所得145万円未満」の方と「住民税非課税世帯」の方には外来の上限が設定されています。

また、70歳以上の方に関してはこの制度とは別に、「高額医療」と「介護費用」を合算した自己負担限度額も設定した「高額療養・高額介護合算療養費制度」もありますが、あまり長くなってもどうかと思いますので、余裕があれば別の機会に解説してみたいと思います。また、条例や助成等により詳細が地域によって異なる可能性もありますので、各自治体のホームページ等もでご確認いただければと思います。

 

この「高額療養費制度」にはさらに「世帯合算」と「多数回該当」という制度があります。

 

「世帯合算」

同一世帯で自己負担額が21,000円以上(合算対象基準額・70歳以上の方は21,000円未満でも合算可)の者が2名以上いる場合や、複数の医療機関での診療を受けた場合の自己負担限度額は、それぞれの医療費を合算し、自己負担限度額を算出します。ただし「世帯合算」に関しては以下の条件があります。ので注意が必要です。

・69歳以下の医療費は2万1,000円以上の支払いのみ合算できる

・合算できるのは、同じ公的医療保険に加入している人に限られる

・75歳以上は後期高齢者医療制度になるため、74歳以下とは合算できない

 

「多数回該当」

高額医療費に該当する療養を受けた月以前の12か月間における高額療養費の該当回数が4回以上となる時に適用。この場合は4回目以上の自己負担限度額が更に下がります。金額は以下の通りです。

 

★70歳未満の高額療養費多数回該当

標準報酬月額83万円以上…140,100円

標準報酬月額53万円以上83万円未満…93,000円

標準報酬月額28万円以上53万円未満…44,400円

標準報酬月額28万円未満…44,400円

低所得者(住民税非課税)…24,600円

(国保の場合は「旧ただし書き所得」に読み替えて下さい。)

 

★70歳以上の高額療養費多数回該当

標準報酬月額83万円以上/課税所得690万円以上…140,100円

標準報酬月額53万円以上/課税所得380万円以上…93,000円

標準報酬月額28万円以上/課税所得145万円以上…44,400円

標準報酬月額28万円未満/課税所得145万円美未満…44,400円

住民税非課税世帯Ⅱ…24,600円(多数回該当適用なし)

住民税非課税世帯Ⅰ(年金収入80万円以下等)…15,000円(多数回該当適用なし)

 

簡単に言うと高い医療費が続く場合には4回目(4か月目)からはもう少し少なくていいよ。という制度です。70歳以上の場合の住民税非課税世帯に関しては高額療養費の金額がそのまま適用されます。

 

今回もまたまた長くなってしまいましたが、以上となります。

 

いかがでしたでしょうか?かなり手厚い保障だと思いませんか?高額療養費の知識は民間保険(特に入院系の保険)を選ぶ際には絶対に知っておいてほしい知識です!別に数字を覚える必要はないので、ざっくりと「自分が保険診療で支払う上限は大体〇〇円/月くらいなんだなぁ~。」という感じで見ておいていただければと思います。

 

ビッグ・ワンでは、賢く民間保険に加入する為、ちゃんと自分で考えて民間保険を選ぶ為、もしくは民間保険に入らないという選択肢を取る為の情報発信をし続けていきたいと思っています!

 

今回の記事は後日YouTubeでも掲載したいと思っていますので、興味のある方は有限会社ビッグ・ワンのYouTubeも見てみて下さい!

 

それではアディオスです~!

 

※今回の記事は2023年10月3日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下さい!

 

【公的医療保険に関して~目次~】

公的医療保険制度の種類

公的医療保険制度の適用対象者と保険料

 (標準報酬月額って何?課税標準額って何?

公的医療保険制度の給付について

 (医療診療形態の種類

高額療養費制度について

傷病手当金とは