コンドル(16)
せかされるようにサムのアパートに行ってみると,サムの女房はジェニファーを入れた4人で夕食をする計画らしくその準備をしつつあった。今日の事件を知らず,まだ無事だった。しかしカンパニー(探偵注:「カンパニー」と言ったら何かはもうご存知ですよね)からは遅くなるという電話があったそうだ。そこへ無言電話が入る。
「これで3回目だわ。空き巣かしら」
これは明らかに殺し屋が確認を行っているのだと悟ったターナーは当惑するサムの女房をとにかく安全な場所へと避難させることにした。
「上のアイリーンの部屋に行っててくれ。とにかく」
エレベーター・ホールまで無理やり連れてきてちょうど来たエレベータに押し込む。
「後で電話する,外出するな」
そのエレベータから入れ違いにマックス・フォン・シドーが降りてきた。そして下りのエレベータを待つターナーにそ知らぬ顔をし,そのまま廊下に立っている(間一発だったのだ。ターナーはこの殺し屋の顔を見たことはないのだから:探偵)。何食わぬ顔をして立っていたその紳士はターナーがエレベーターに乗り込むと,扉が閉まる寸前に乗り込んできた。緊迫する一瞬。床には黒い手袋が落ちている。紳士が拾いあげてターナーに示す。
「あんたの?」
「いや」
紳士は笑みを見せた。
しかし幸いまだもう1人の,ケーキを抱えた中年の男がエレベータに居合わせた。
次の階でケーキを抱えた男が降りるとすれ違いに若者達がどやどやと乗り込んできて,「誕生日おめでとう」とふざけて自動停止ボタンを手当たり次第押しまくった。ターナーが寛容の笑みを見せる。これが凶とでるか吉とでるか。
若者達が5階で降りると,ついに二人きりになった。しかし紳士はにっこりして言う。
「ガキはどこの国でもおなじだ。」
ターナーは頷いたがもう気づいていた,この男が殺し屋であることを。
エレベータが止まったので降りようとすると紳士は「2階(グランド・フロア)ですよ」と注意する。
「わたしもよくやりますよ。」
(探偵注:欧州では日本式の2階をファースト・フロアと呼び,一階はグランド・フロアである。ターナーは地下出口に行こうとしていたのだ。)
そして地下に着いた。緊張した間が生まれる。扉があくと紳士は「お先にどうぞ」という。
ターナーも負けてはいない。「どうぞお先に」
紳士は同意して自分から降りていく。ターナーは紳士が視界から消えるのを待って出口へと向かったが,このままでは危険なことは明白だ。先ほどの若者達が出口付近でたむろしているのに目をつけたターナーは「鍵を中にいれたまま車のドアを閉めてしまったんだ。5ドルあげるから,だれか針金で開けてくれ。」と嘘をついて若者達と一緒にアパートを出る。
案の定,殺し屋はスコープ付きのサイレンサーでターナーを狙っていたが,これでは若者に重なって撃つことができない。殺し屋はにやりとしてすぐ別の手段に移る。
他人の車のそばまで来たターナーはやにわに走りだして自分の車(キャシーの車)の方に向かう。
追いかけてきた殺し屋は射撃を断念してスコープで車のナンバーを確認した。彼はここに来る前に既に病院でウィクスの生命維持装置を密かに外して来ていたのだった。残る標的はターナー1人になったのか?(続く)
コンドル(15)
TVのニュースを見てターナーはサムが死んだこと,ウイクスが病院に運ばれたこと,そして何かカモフラージュが行われたことを知る。TVのレポーターは「被害者は証券会社の社員で,犯人は拳銃を持ったまま逃走しています」と言っている。
女が「CIAのシの字も出ないわ」と言ったことから,ターナーの推理は進む。現場にはヒギンズが自分で来なかった。課長がサムに命令したはずだ。すると…
「まてよ,命令を受けたサムは女房に電話したはずだ…」
ターナーはすぐにサムの女房に電話する。「もしもし」という声がしてまだ無事であることは分かった。しかし一刻の余裕もない。助けに行かなければならない。事態が緊迫さを増してきた不安な表情を見せる女に上着を着ながらターナーは言った。
「車を借りる」
女はここぞとばかりに抗議する。
「誘拐罪に窃盗罪も加わるわ」
反抗的な態度にターナーは方針を少し変えた。
「バーモントの男は連絡してくるのか?」
「すぐにも電話してくるわ」
「ここには現れないか」
「知らない。銃があれば人の自由を奪ってもいいの?」
「わたしが自由を奪ったか?」
女は強い口調で抗議する。
「もちろんよ。現に奪っているわ」
「ワタシが君をレイプしたか」
女はフンという顔をして答える「夜は長いわ」
ターナーはしかし焦らず,ゆっくりと女のそばに座ると言った。
「ワタシの言うことが信じられないか」
「ほんとらしいけど理解できないわ。何に巻き込まれているのか」
「信じないなら同じことだ」
そうなれば女の自由を束縛しておく他はない。ターナーは「やめて」と叫んで抵抗する女を力ずくでトイレの方に連れて行き,「やめて,縛らないで」との懇願を無視して後ろ手に縛り付けた。キッと男を睨み付ける女。ターナーは手近なネクタイで女の口に猿轡をはめようとした。女はゆっくりと強い口調で男をなじる。
「こんなの,アンフェアよ」(字幕は「汚いわ」である)
ターナーはうなずきながら答えた。
「分かっている」
(男と女の間で「フェア」とは何かを考えながら味わってください。その後はサスペンスとしてはピークですが,無粋な話に続きますので。探偵より)
コンサートに出かけております。
探偵は70Rockさんのブログ上コンサートに出かけております。失礼のほど平にご容赦ください。御用の方はメッセージをどうぞ。
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