コンドル(22)
ニューヨークの街を歩くヒギンズを付けるキャシー。背景に見えるステットソンという商店には「在庫一掃セール」の垂れ幕が掛かっている(ストーリーには関係ありません。探偵注)
ヒギンズがおそらく行きつけの,オープン・テラス風レストランに入ったのを見届けると,ターナーは車を停めて物陰に隠れ,キャシーは何食わぬ顔で偶然を装ってヒギンズの向かい側の席にすわる。サンドイッチを食べていた(昨日のターナーのに較べるとちょっとは高そうだが,詳細は不明。これもストーリーには関係ありません。探偵注)ヒギンズはその顔を見てすぐに何かあると察知するが,さすがに慌てない。
キャシーはにっこりしていう:「そうなのよ,振られちゃったの」(職が得られなかったという意味)
なんだこの女,という顔をするヒギンズに:「おいしそう。実は友達から伝言を頼まれて来たの。こうよ。
『親愛なるヒギンズさん,友人をご紹介します。スパロー・ホークさんです。(Sparrow Hawk,つまりCondorだ。探偵注:なぜか字幕には出ない)』。
警戒的になったヒギンズの姿にスーパーが被る。
キャシー:「ナッソー通り側へ一緒に出てください。」
キャシーとぼけた顔をしてうまくやってる。
「今すぐよ。」
そして自分から腰をあげながら付け加えた。
「断っておくけど彼は大きな銃をもっていて,こっちを見張っているわ」
残っていたサンドイッチを「もったいないわ」といって自分の荷物の中に入れる。実にちゃっかり夫人にうっかり夫人である,じゃなくて,落ち着いている。役者やのう(探偵の感想)。
「じゃあ,行きましょうか?」
店の裏手に出るとすぐ,ターナーが素早くヒギンズを車の中に引きずり込み,キャシーが車を運転して人気のない河岸まで走らせた。車の中でのターナーとヒギンズの会話。
高そうなコートの襟部分を土足で押さえつけるターナーに,ヒギンズが言う:「落ち着け,銃は持っていない。」(本当はムッとしたのかも知れない)
ターナー:「通信機を持っている恐れがある。これは何だ?」
ヒギンズの懐から封筒を取り出す。
ヒギンズは皮肉っぽく言う:「それも小説の知識か?」
ターナー:「カンパニーの内部に怪しい奴がいる。」
ヒギンズ:「どうしてだ」
ターナー:「昨日友達を殺されたからだ。」
ヒギンズ:「彼女は?」
ターナー:「協力者さ。」
ヒギンズ:「事は重大だぞ」
ターナー,殺し屋が持っていたメモを見せながら:「5大陸貿易を知ってるか。」
渡されたメモを見たヒギンズ:「誰から手に入れた」
ターナー:「郵便配達夫だ。あんたの命令で,変装して私を殺しに来た」
ヒギンズ:「覚えがない」
ターナー:「背の高い金髪の紳士も寄こしただろう。」
場面が変わり,どこかの部屋でワイン・タブの彫刻をしている殺し屋が映る。
そこにターナーの声のスーパーが出る:「アクセントからみるとドイツ系かなにかだ。」
殺し屋の部屋では電話が鳴っている。殺し屋はゆっくりと電話を取る。
電話の声:「手紙は届けたか?」
殺し屋:「配達証明書がまだです」
電話の声:「自分で運ぶべきだ」
殺し屋:「もっと厄介な荷物がありましてね。思ったより難物でした」
電話の声:「君らしくない失敗だ。どうする」
殺し屋:「待ちます。人間は必ず手がかりを残します。」
(次の回で謎の大筋が見えるので,ここでひとまず「続く」を入れることにしよう:探偵)
コンドル(21)
ターナーからの次の一手は決まった。ターナーはいざというときは大胆だが,きわめて慎重かつ論理的な男である。一方,マックス・フォン・シドーの側からも罠が仕掛けられていることに,注意深い観客ならばもう気づいていると思う。ターナーはそれが罠だということを十分承知のうえで行動しているのだ。それには絶対に気心の知れた助けが要る。CIA本部の方でも対策に動き出しているだろう。駆け引きであるとともに,時間との勝負でもある。そして向かった先は,やはり―――
ここからのツインタワー・ビル内部の映像(ロケよる実写)は今となっては実に貴重だ。DVDをお持ちの方はしっかり目に刻み付けておかれることをお勧めする。これはもうこの世に存在しないのだから。
車はビル前の駐車スペースに着いた。何か台詞を暗唱していたキャシーにターナーが言う。
「大丈夫か?心配しないで。落ち着いて」
そして決意して車を降りるキャシーに再度声をかけた。
「キャシー,ありがとう。」
キャシーいやさフェイ・ダナウエイがどれほど頼もしい味方であるのかはこれから実証される。乗り込む先がCIAニューヨーク支部なのだから。
CIAのマークが堂々と出ているニューヨーク支部の受付でキャシーは事務職員への応募者になりすまし,内部に侵入した。訪ねることになっている「アディソンさん」のドアの前を通り過ぎ,そして目当てのヒギンズの部屋のドアを探す。ドアを開けると奥の部屋のデスクにヒギンズが座っているのが見える。
キャシー:「アディソンさん?」
デスクから顔を上げたヒギンズ:「いや,行き過ぎてますよ」
キャシー:「あ,すみません,どうも」
これでヒギンズの顔は確認できた。
ターナーは1階の吹き抜けにあるデッキ・ロビーで待機し,キャシーはヒギンズが昼食に出かけるためエレベータから降りてくるのを1階エレベータ・ホールで待つ。
しばらくして,暖かそうな毛皮の襟のついた高級そうなコートを着て,帽子を被り,髭を蓄えたヒギンズ(クリフ・ロバートソン,オスカー俳優で鈍い,じゃなかった渋い男)がエレベータから降りてきて出口に向かうと,キャシーはすぐにその少し後をついて歩き,ターナーが車で先回りする。外のレストランに行くようだ(キャシーの出番が残り少なくなったので,ここは細かくする。続く)
コンドル(20)
危機はいったん去ったがキャシーは放心状態だ。ターナーは駆け寄って彼女を抱き上げ,体をゆすった。
「落ち着いて,もう終わった,心配ない。大丈夫か」
キャシーはまだ息が引きつっている。
「しっかりするんだ。落ち着いて,服を着れるか?大丈夫か?急いで。」
キャシーを奥へ押しやるとターナーは倒れている殺し屋のポケットを探る。「819」と刻印された鍵と,電話番号のメモが出てきた。「5大陸貿易社,662-3799,内線1891」
早速受話器を取り上げて電話する。
電話の声:「ステラ・ブティックです」
ターナー:「内線1891番を」
電話の声:「はあ?」
ターナー:「662-3799でしょう?」
電話の声:「はい。あなたは?」
ターナー:「内線1891番は?」
電話の声:「交換台もないわ」
ターナーは即座に気づいて電話を切った。NYではない,ワシントンなのだ。電話案内でワシントンの局番を聞き出すとかけてみる:
男の電話の声:「セクション,6911です」(6+9+1+1=17,つまり第17課である。探偵注)
ターナー:「CIA? ラングレイの?」
男の電話の声:「セクション,6911です」。やっぱりCIA本部だった。
ターナー:「内線1891番を」
男の電話の声:「1891番です」
ターナー:「ウィクスさんを」
男の電話の声:「外出中です。あなたは?」
二人して反撃に立つ準備ができた。車の中でターナーはこれまでの推理をキャシーに説明する。
「わたしのレポートがワシントンで読まれ,私を殺しに課長が来た。」
キャシー:「顔を知ってた?」
ターナー:「いいや」
キャシー:「郵便配達人は?」
ターナー:「いいや。ワシントンの手先だ」
キャシー:「また殺し屋がくるわ」
ターナー:「先手を打つ」
そのCIA本部ではヒギンズが頭を抱えている。作戦部長はヒギンズと一緒に対策を練る。
工作部長:「二重スパイか?まだニューヨークに?」
ヒギンズ:「わかりません」
ブルックリン橋を渡る車の中でターナーが推理を先に進める。
「CIAの知らない情報組織があって,アラブ諸国と通じているのか?」
CIA本部の工作部長:「これ以上人目を引くのはまずい。外部の人間を雇ってでも解決したまえ。」
両者の,そしてあの殺し屋の次の一手は何か(考えてね,続く)