新婚夫婦の寝間には、春本の枕草紙が

もちこまれていたようだ。これが北尾

重政の筆による『笑本春の曙』にある。

 

<『笑本春の曙』(めでたき物)>

『笑本春の曙』の曙の最初の絵(図)。

町屋の二階に男女がふたり、碁盤や鼓がお

かれた部屋にいるふたり、その足もには開

かれた本があり、春本を傍にした男と女の

噺で、絵(図)に書かれた詞書には。

 

 

めでたき物

中(仲)のする(よい)夫婦

いくらしても腎虚(じんきょ)せぬ人

ぼぼまらのはなしぞ

わらひを催して いとおかし

 

腎虚とは男の腎(じん)のはたらきが

衰えることをいい、この書き入れには。

 

(亭主)

きゅうに むほんがおこり  山だから

ひるめしとでかけ やまのちんころだ

(新妻)

あれさ せハしゐそちらを むくわな

 

足元の春画を観てことを終えたあと。

亭主は謀反(欲望)が起こり、ちんころ

(女陰)だといい、春画を一緒に観てい

た新妻は、せはしないといい、亭主に応

える「めでたき物」。

 

<『笑本春の曙』(心ときめきする物)>

『笑本春の曙』のなかから、もうひとつの物、

詞書の最初に「心ときめきする物」とあり。

 

能(よい)つぼへ参つて とりかゝつた所

亭主の声で門(かど)たゝく

 


 

話しの書き入れあり。

(亭主)

今 かへつたぞ はやくあけてやれよ

(間男)

さあ かぶじまひ(株了)

あとへも さきへも ゆかれぬといふやつだ

(女房)

マア どうしやう つんとみもいい

ナムいいさは

 

亭主のそばに伏せている犬は、横を向いて笑

っている。亭主の浮気は女房によく知られる

が、女房の浮気は「知らぬは亭主ばかり」で

気づかれないようだ。

 

 

<競艶春画(竹原春潮斎信繁)>

競演春画<燃える青春「公家と姫」>)

竹原春潮斎信繁(燃ゆる青春「七草開」)

春潮斎春画(盂蘭盆会「僧と後家」)

浮世絵春画(天神祭「競艶」)

<競艶春画『開註年中行誌』(仮名垣魯文著・歌川芳虎画)>

浮世絵春画「雷(鳴神)」

浮世絵春画(霜月「顔見世と雪見」)

<競艶春画『色あそび』(石川豊信)>

浮世絵春画(石川豊信『色あそび』)

<競艶春画『笑本春の曙』(北尾重政)>

2022.11.8

浮世絵春画(北尾重政・磯田湖龍斎)ー男と女の物語(262)