四季が移りかわるように、ひとも

青春の時期を経て大人になってゆ

く。

竹原春潮斎信繁は『和泉名所図会』

の挿絵を描いているが、浮世絵春画

も描き、絵もさるこながら彼の絵に

添えた書き入れはけっこう愉しくて

奥が深い。

 

初春の七草

題に「初春 七草」とある。

正月七日の「七草の節供」にちなん

だ春画。

折烏帽子(おりえぼし)に裃(かみ

しも)を着けた男と筒袖の女がこと

をなそうとしている。

 

 

(男)

とう(唐)のとりと日本のとりと

渡らぬ先に しちぐさ開(べき)

ではない うま開とはかたじけない。

(女)

何をあほらしい いらはずとはよう

いれておくえいなァ

(男)

いらふのも又たのしみじゃ

(女)

おまえのようなうつくしい前髪の

若衆はほかの女中がほれるのであ

ろうと気使ひで、私しや 私しや

アヽアレもういきさうな

(男)

わたくしもこたえられぬようにな

ったそれよい 〱

(女)

ァヽ ァヽどうもそれもう アレ 

とつと いく いく

(男)

わたくしももういく それ それ

それ

(女)

エ、さッと もう早うやらずと 

いまいちどふかずに それまた

いくわいなエゝ どうもならぬ

奥を アレいくわいな 〱

 

春の七草開(七臭開)

正月の「七草の節供」にちなんだ

春画。

古くは「春の七草」を鳥に食べら

れる前に摘み取り、七日に粥にい

れて食べる行事があった。

ふたりの傍にまな板の上に擂粉木

(すりこぎ)としめ縄が張られた

桶がある。

 

男が「鳥に渡らぬ先に先に七草開

(べき)ではない美味開(うまべ

き)とはかたじけない」と、七臭

開と懸けて女をからかい、「何を

阿保らしい」と「弄(いら)はず

早ういれて」と、ふたりは、こと

におよんで戯れている。

 

「開」は女性の性器・女陰を表す

が、江戸の浮世絵春画では「つび」

と読み、大阪の竹原春潮斎信繁は、

文中で、この「開」を(べき)と

読み仮名をうち、言い方にも江戸

と大坂の違いがみられる。

 

春潮斎信繁と堺の高須

「一休和尚と遊女地獄」

一休和尚こと一休宗純(1394-

1481)は、室町時代に京都大徳

寺の住持を歴任した高僧。

一休宗純は荒廃した大徳寺再建の

ために堺にくる。

以下『和泉名所図会』(挿絵画)

による。

 

一休和尚ハ堺の高須にて、遊女

地獄というをよんであそび戯れ、

酒興のうえにて、三乗四諦無非

道とうたい給えば、万法千門只

此心、と句を継で、共にうたい

たわむれける。

 

 

竹原春潮斎信繁の堺の高須「一休和尚と遊女地獄」

 

今は当時の面影はないが、堺の

紀州街道の南北の入り口には遊

郭があり、和泉名所図会(179

6年刊行)の頃、北の高須の地

は賑わっていた。

 

 

2020.9.25

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