うちの会社は、
完全歩合制だ。
売り上げに応じて
歩合率が変わる仕組みがある。
20日が締め日。
昨夜は、その前日。
ギリギリの勝負だった。

四毒抜き生活212日目。
今夜の担当は、
乳製品担当の女医・ナオコ。初登場。
乳の匂いを、許さない女医だ。
さて、本題へ。
『カサブランカ』という映画、知ってる?
この映画の魅力は、
すべてが粘度の高い
「粘り気」でできていることである。
ハンフリー・ボガードの顔からして、
そうである。

決して整った顔ではない。
だが、妙に引き込まれる。
感情を抑えているのに、
感情がにじみ出ている。
その粘りが、
画面にまとわりつく。
イングリッド・バーグマンも同じだ。

視線が離れない。
まるで貼り付けられるような存在感。
「君の瞳に乾杯」
あの一言さえ、
どこか粘っこく、
記憶に残り続ける。
なぜ、イルザは、リックを裏切ったのか?
その誤解が解けたあと、リックはどうするのか?
そのあと二人はどうなるのか?
映画の幕が降りても、
「粘り気」は消えない。
若い頃、
デートで真似したことがある。
バーで、
「君の瞳に乾杯」
返ってきた言葉は、
「似合わない!」
この記憶も、
いまだに消えないまま、
粘って張り付いている。
昨夜、ミナミの三ツ寺通り。
騒ぎながら、女性2人が乗ってきた。
そこへ、ホストらしい男が
まとわりつくように割り込んできた。
「なんで乗ってくるの?」
「離れられなくて」
「降りて。門限過ぎてるから」
それでも離れない。
粘っこく、
キスをしながら、
時間をかけて降りていった。
少し走ったところで、
女性が聞いてきた。
「心臓、弱くないですか?」
「至って丈夫ですよ」と答えた瞬間、
豹変した。
「二度と行かねえ!臭えんだよ!最低の店、最低の男!」
車内に響く、甲高い声。
下品な言葉が、次々と吐き出される。
さっきまでの女性とは、別人だった。
そして平野で降りると、
何事もなかったように
可愛い笑顔で手を振りながら去っていった。
あのホストも粘っていたが、
本当に粘っこかったのは、
あの女性のほうかもしれない。
昨夜の営業は、
粘った。
結果は、
税抜43,560円。
平均21,000円を大きく上回った。
回数も17回。
今月の最高だ。
出庫:21:06
入庫:29:37
稼働:8時間31分
回数:17回
営収:43,560円
走行:180Km
営走:80Km(実車率44.4%)
最高:13,320円
時間売:5,627円
なぜ、ここまで粘れたのか。
締めの前日だったからだ。
一昨日までの累計は
464,310円。
55%ラインか、
50%に落ちるか。
その分岐点にいた。
昨夜の粘りで、
55%は確保した。
だが、58%にはまだ届かない。
この世界は、
どれだけ粘っても、
最後は数字で切り捨てられる。
人の感情も、
夜の出来事も、
すべて帳簿の前では無力だ。
それでも、
粘るしかない。
切り捨てられないために。
昨夜の四毒抜き弁当
ネバネバの山芋弁当

卵黄を混ぜた、
定番の一品。
これもまた、
しっかり粘ってくれた。