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第四章「大人にできること」

テレビドラマのウソ-(2)

 

児童虐待をリアルに扱い、芦田愛菜という子役の名演技で評判となった『MOTHER』というドラマでも、小学校が舞台なのに、「このプリント、生徒にやらせておいてください。」などという教師のセリフが出てくる。もっとも、虐待を受けている子どもを臨時採用の学級担任が救い出し、子どもを「誘拐」して北海道から東京へ連れ去る、というストーリーそれ自体が非現実的で、いかにも作り物めいているのだから、細部でのセリフなどいちいち気にかけていることもできない。子役の名演技に救われたドラマと言えよう。




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かつて人気を博した『熱中時代』というドラマが、配役もリニューアルされて再び放映された。その第1回目は、佐藤隆太扮する新任の教師が初出勤の日という設定だ。通勤途中でバタバタといくつかエピソードがあって、いきなり教室で「はじめまして」とクラスの児童に挨拶する。職員室に入るのも初めてのようで、「今朝出会った方ですね。ここの先生だったんですか。失礼しました」などとやる。こんなこと、まさに「アリエなーい!」のだ。


春休みといえども教員は、学校に出勤してさまざまな事務処理に追われる。そうした流れの中で教師全員が集合し、新任教師や人事異動による転入の先生が紹介される。そして始業式で、全校児童と対面するのが通例である。


どうやら教師という職業が、なんだか気楽に扱われているように思われる。「先生って、春休み・夏休み・冬休みなどいっぱいお休みがあっていいわね。」と言われたこともある。とんでもない。長期休業中も出勤日なのだ。しかし世の中には、こうしたドラマの影響を受けつつ、誤解が広まっていく。先生たち自身が、その業務のたいへんさを、もっと発信していいのではないかと思う。


 「学校もの」でなくとも、「テレビドラマの社会的影響は極めて大きい」と説く人がいる。時代によってドラマの流行りが変化し、その変化から知らず知らずのうちに影響を受け、ある共通の価値観が身に付いてしまうというのだ。


たとえば、女性の自立を扱ったドラマが流行れば、世の女性たちの心理はそちらに傾き、母親が家事に専念する設定の家族ドラマが流行れば、専業主婦志向が高まるというわけだ。確かに「不倫もの」のメロドラマが流行ったころから、現実の不倫も増えたのではないかと思われる。ペットとしての飼い犬の種類も影響を受け、流行のドラマに出て来る犬種を飼う家が、世の中にも増えてしまう。ドラマによって家族観が変わり、結婚観も変わることがあり得る。


 社会の「大人度」が低下し、画面の向こう側のストーリーと現実の生活場面との境界を自覚しにくくなってしまっている、とも言えるのではないか。昔「ボクは仮面ライダーだ!変~身!」と叫んで高いところから飛び降りて大けがをした子どもがいる。小学校4年生ぐらいだったか。画面の向こう側の世界と現実の世界との区別がつかないのである。


現代では、大人でもその区別がつかなくなっていることが多い。かくして「この学校には金八先生のような先生はいないんですか!」と「真剣に」学校を責める親が登場する。(これは本当に現実にあった話である)


 健全な大人は、作り物のドラマに流されてほしくない。ドラマのウソをうのみにすれば、それは必ず子どもの心の成長にも弊害をもたらすだろう。



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