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第二章「親の態度で子どもも変わる」

共働きはマイナス影響ではないーその(1)

 

 私の教えている大学で、学生に小論文を書かせている。保育士・幼稚園教諭・小学校教諭をめざす学生が圧倒的に多いので、出題はたとえば「子どもの食生活を考える」などがある。学生諸君は、子どもの食生活が偏りがちで乱れがちであることは承知している。




元校長先生のブログ-共働きはマイナス影響ではないーその(1)



だが、子どもの食生活が偏ったり乱れたりする原因が、「共働きが増えたからだ。」とする記述が出てくる。保育士志望者の中にもこんな見解を持った学生がいることに驚く。保育園は、共働きの家庭が利用する施設なのに、である。


また、私は大学の非常勤講師とは別に、教員採用模擬論文の採点にも関わっているが、たとえば「児童生徒の問題行動」についての出題では、その背景分析として「共働きが多くなったから問題行動が増えた。」と説く教員志望の大学生がいる。「学習意欲の向上・学力の向上」というテーマでも「共働き家庭で家に誰もいないと、学習意欲が湧かない。」などと書いてくる。まだ現場の実態を知らない学生の論なんだから、と見過ごしてよいものかどうか。


その模擬論文を書いた若者が女性だったりすると、「女性教師は共働きが多い。ではあなたは、結婚したら教師を辞めてしまうのですか。」と一言赤ペンで記入したくなる。おそらく、専業主婦の母親のもとで育った自分の体験にしばりつけられ、そうではない形の家庭を思い描くことができないのだろう。多かれ少なかれ誰でも、親からの「刷り込み現象」はあるから、その形がいつの間にかモデルとしてイメージされ定着してしまうようだ。


 

「女性の社会進出」などという大仰なことを主張したいわけではない。最も身近な例で言えば、私ごとで恐縮ではあるが、我が家も共働き家庭で子どもを育ててきた。幸い私の娘は問題行動も起こさず、学習成果も小学校以来ずっと塾へも通わずに、人並みまたはそれ以上を上げてきている。そんな家庭は、私の周りにたくさんある。かつての教え子の中にもたくさんいる。


共働き家庭の利点は何か。何よりも、早いうちから子どもに自立心が育つことである。家に一人だけの時間もあり、寂しい思いをさせる時期も確かにあるだろう。しかし一方では、子どもの自立の観点から言えば、一人で過ごすことの大切さも、実はあるのだ。


家族や他人を頼りにつながりを求めることは、コミュニケーション能力の醸成からすると大切なことではあるけれども、なんでもかんでも群がっていないと落ち着かないという他への依存心も生まれる。常に誰かといっしょにいないと不安感を持ってしまう生徒も、ずいぶん見てきている。試験勉強の際に、一人じゃイヤだからと何人かで友だちの家に集まり、結局おしゃべりばかりで能率が上がらないという例もある。人と人とのつながりは極めて大事だが、依存心ばかりが膨らむと、自立心は育ちにくいのだ。


朝食や夕食の準備に、親の手伝いをさせることは、大事な自立への歩みでもある。共働きの家庭では、必要に迫られてそうせざるを得ないという側面がある。あるいは両親とも忙しいわけだから、「お風呂そうじはあなたの任務」などと義務づけることは、子どもも納得しやすく、家族の一員としての参画意識も育つ。私の娘の保育園仲間は、みんなそうやって成長してきている。


よい意味での「刷り込み現象」もある。子どもは大人の背中を見て育つわけだから、その背中から「大人は働くものだ」というメッセージを送っていて、親が仕事に真摯に取り組む姿は、子どもに自然に伝わるものである。家庭における「キャリア教育」と言ってもよい。「(経済的に)子どものために働く」という理由でなくていい。「自分のために働く」でいいのだ。それが廻り廻って、「子どものために」なる。調査結果や資料データは無いが、少なくとも私の周りには、保育園育ちの子どもの成長後に「ニート」や「ひきこもり」はいないと認識している。

 


共働き家庭には、経済的な安定と、そこから来る安心感もある。仮に夫か妻のどちらかが、リストラにあったり、大きな病気にでもなったりした場合、片方の収入で支えることができる。突然夫が亡くなり、そのあと妻が大変な苦労を背負わざるを得ない状況においては、子どもにも多大な影響を及ぼす。


 離婚の場合も同じである。「本当は別れたいけれど、家事以外で働いた経験がなく、離婚したあとの生活に自信がない。」という母親もいる。感情に任せて離婚したはいいが、手に資格も技術も持たず仕方なく「風俗店」で働き始め、体を売って収入を得ることがあるという母親もいる。九州の地方都市で、本人から実際に聞いた話である。仕事に出かけるときは、就学前の男の子を自分の母親(子どもの祖母)に預けると言うのだが、子どもはいずれ母親の「仕事」を知ることになるだろう。そのとき男の子はどうするのか。暗澹たる思いである。


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