鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2024年10月13日号)
*被団協ノーベル賞の衝撃
ノーベル平和賞は極めて政治性が強い事で有名で、2009年には、当時、米国の現職大統領であったオバマが、単に「核なき世界」という演説をしただけで、それ以外何の実績もないのにノーベル平和賞を受賞したことからも明らかだろう。
ちょうど半世紀前の1974年に佐藤栄作元首相が受賞したが、佐藤氏は首相在任中の1967年に「日本は核兵器を、持たず、作らず、持ち込ませない」という非核3原則を提唱したことが授賞理由になっている。
1960年代、中国が核武装をし始め、日本もそれに対応して核武装をすべきとの議論が内外に沸き起こっていた。佐藤氏は、それを否定すべく非核3原則を打ち出したわけだが、当時、米国の核兵器が日本に持ち込まれていたのは天下周知の事実であった。
だが米ソ冷戦終了とともに、日本に核が持ち込まれる必要はなくなり、非核3原則は文字通り忠実に守られるようになった。
それから36年後の現在、日本に米国の核兵器を配備すべきという核共有の議論が沸き起こっている最中に、被団協が受賞したのは、国際政治上の背後関係が大きく影響していよう。
石破氏は総理就任直前に米国のハドソン研究所に論文を寄稿して、核共有を検討すべしとの考えを明らかにしていた。ところが総理就任が決まってからは、トーンダウンし、今回の受賞で事実上、封印せざるを得なくなった。
中国、ロシア、北朝鮮が核軍拡を進める中で、東アジアの核抑止を維持する唯一の方策が封印されたのである。石破政権が仮に短命に終わったとしても、次の政権がノーベル平和賞の威光を無視して、核共有の議論を進めることは困難であろう。
今後数年のうちに、東アジアの核抑止体制は確実に崩壊するとみて間違いあるまい。
軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)
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