鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年1月16日号)

*北朝鮮危機と選挙

 15日付の産経新聞のコラムで阿比留記者が「高市早苗首相が23日召集の通常国会での衆院解散を決めたが、なぜこの時期なのか判然としない。」と疑問を呈している。5日の伊勢神宮参拝直後の記者会見では、高市首相は解散に否定的だったという。

 これについて「自民党関係者は次のような推測を語った。「伊勢神宮参拝以降に何か外交・安全保障上の要因が飛び込んできて、それに対処するためにまず、態勢を固める必要性を感じたのではないか」」

 

 同記者は「国際情勢の緊張を見るとそれもあり得る話だと感じた。やはり国際情勢の変化に伴い解散を急いだ前例があるからである。」と述べ2017年9月に北朝鮮が核実験を強行して同月末に当時の安倍総理が突然、衆院を解散したことに触れている。

 安倍総理は同記者に「米国が来年、北朝鮮を先制攻撃する可能性が出ている」と語り、ここで解散しなければ北朝鮮有事の最中に衆院選を実施するような事態になりかねないので、突然、解散に踏み切ったという。

 

 3日に、米軍はベネズエラに侵攻し、マドゥロ大統領を捕縛した。同国はロシアと中国の防衛システムを導入していたが、米軍の攻撃の前に砂上の楼閣だった。同様のシステムを採用している北朝鮮にとっては、他人事ではすまされまい。

 トランプはマドゥロに昨年、交渉を持ち掛け、拒否されたために新年早々侵攻した。この軍事力を背景に、米国が北朝鮮に交渉を申し込めば、北朝鮮は受け入れざるを得ない筈である。もし拒否すれば米軍が侵攻する。

 だが米軍が北朝鮮に侵攻するためには日本の協力が不可欠だ。日本も協力体制を早期に構築しなければならず、そのためには、せめて衆院だけでも自民党が過半数を確保し、主導権を握りたいと高市首相が考えたとしても不思議はないのである。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年1月9日号)

*中韓首脳会談の裏側

賀正

 4日に北朝鮮が弾道ミサイルを日本海に撃ち込んだ。これについて「3日に米軍がベネズエラを攻撃しマドゥロ大統領を逮捕したことへの反発」だとする一部の論調には同意できない。

 むしろ5日に行われた習主席と李大統領との中韓首脳会談への反発と見た方がいいだろう。というのも12月29日にも北朝鮮は巡航ミサイルを黄海に撃ち込んだが、この翌日、中韓は、「首脳会談が1月5日に北京で行われる」と発表している。

 つまり中韓首脳会談開催の情報を北朝鮮は事前に掌握し、これに反発した訳である。さらにさかのぼると11月1日に北朝鮮はロケット砲十数発を黄海に撃ち込んでいるが、この日は中韓首脳会談が韓国で開かれた日である。

 

 こうして見ると北朝鮮は中韓首脳会談に敏感に反応していることが一目瞭然だ。では北朝鮮は中韓首脳会談になぜ反発するのか?それは中韓が北朝鮮の容認できない事項を話し合っていると北朝鮮が見ているからに他ならない。ではその事項とは何か?

 10月29日、米韓首脳会談でトランプは李大統領に、韓国の原子力潜水艦建造の承認を与えた。これに中国は反発して中韓首脳会談をキャンセルするかと思いきや、習主席はニコニコと会談に応じ、韓国と通貨スワップまで合意した。

 これでは中国が韓国の原潜保有を認めたも同然だ。北朝鮮も原潜建造に取り組んではいるが、北朝鮮の技術力では、困難と見られている。つまり中国は韓国による朝鮮半島統一を推進していることになろう。

 

 おそらく、この裏には中国による台湾併合を韓国が容認するという交換条件が存在するのではあるまいか?

 ベネズエラの件などで日本は騒いでいる場合ではない。韓国の原潜建造は東アジアの情勢を一変させる大事件なのである。

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2025年12月31日号)

*総力戦研究所の報告と開戦

 今年は戦後80年ということで、大東亜戦争(太平洋戦争)が大きく取り上げられた。特に話題になった書籍は猪瀬直樹・著の「昭和16年夏の敗戦」である。この書は1983年初版だが、いまだに読み継がれている名著である。

 この8月にはNHKがドラマ化し、原作との違いから物議を醸(かも)した。また石破総理と小泉純一郎元総理がともに愛読書だったので、両者の会食で取り上げられ、石破総理の戦後80年見解にも影響を与えたとされる。

 

 内容は、開戦直前の1941年夏に総理直轄で総力戦研究所が開設され、日米戦争のシミュレーションを実施して、「日米開戦すれば、長期戦となり、日本が敗ける」との結論を導き出して政府中枢に報告したという史実を描いている。

 NHKのドラマでは、報告が途中で握りつぶされたとされているが、ここが原作と異なる点で、原作では史実の通り、政府中枢に報告されている。だが問題はここからだ。つまり政府は敗けると分かっていたのに、なぜ開戦に踏み切ったのか?

 

 いわゆる開戦の謎なのだが、歴史を調べれば一目瞭然、日米戦争を望んだのは、日本ではなく米国のルーズベルト政権だった。というのも、第2次世界大戦は1939年に始まり、ドイツは翌40年にはフランスを占領し欧州大陸を制覇し、英国も風前の灯火だった。

 英国は米国の参戦を望んだが、米国には参戦理由がない。そこで米英は日本への石油の輸出を禁止した。日本はドイツと同盟を結んでいたから、日米戦争は、即、米独戦争となる。

 従って日本が米国といくら交渉しても、妥結の見込みがない。石油を断たれれば日本海軍は無用の長物と化し、日本の国防は崩壊する。座して死を待つよりは、起死回生の大逆転を狙って開戦に踏み切ったのだ。米国が日本を戦争に追い込んだのだった。

 

 起死回生の大逆転の戦略は初期に日本海軍が米海軍を壊滅し、日本陸軍は東南アジアの欧米植民地体制を打破し、石油を確保し、さらに陸海軍協力してインドに進撃し英国の補給路を断てば、英国は敗れ第2次大戦は終結するという戦略だった。

 この戦略は半ば成功し、半ば失敗した。東南アジアの植民地は一掃され、日本の市場となり日本の経済発展の礎を築いた。しかし海軍が敗れ日本は米国に占領され、国民精神を喪失したのである。

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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