鍛冶俊樹の軍事ジャーナル(2026年10月1日号)インドネシアが空母保有、中国の焦り

 前号では大紀元に掲載された拙稿「インドネシアの空母保有の衝撃 中国の焦り」の前半を公開したが、本号では後半を公開する。

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3 戦闘機なき空母の使い道

 インドネシアが空母を入手してもそれに搭載する戦闘機がないのでは、戦闘力としては力不足では、ないかとの疑問の声が生じて当然だ。インドネシア側は中国を刺激しないように、ヘリコプター空母として運用するとしている。

 しかし実は戦闘機に頼らない空母の運用方法は他にもある。ウクライナではもはやドローンが戦闘機を圧倒する能力を示している。インドネシアもタイも実のところ、ドローン空母としての運用を考えている。

 インドネシアやタイの空母から発進したドローン編隊が中国の空母打撃群を壊滅させる可能性は将来的に十分あるのである。

 

4 インドネシア懐柔にでた中国

 7月7日、インドのモディ首相はインドネシア大統領プラボーとジャカルタで会談、インド製の巡航ミサイル「ブラモス」と空対空ミサイル「アストラ」の輸出で合意した。これが中国にとって脅威に映らないはずはあるまい。

 しかも13日後の7月20日、インドネシア国防省は9月中旬にイタリアから空母が到着すると正式に発表したのである。これも中国を刺激しないはずはない。

 それで中国は激怒したかと言えば、全く逆だ。8月12日、中国とインドネシア両海軍は台湾東方で合同航行訓練を実施した。8月21日にはジャカルタで両国の外相・国防相会談いわゆる2+2を実施した。

 つまりインドネシアの軍拡に恐れをなした中国が懐柔策に出たわけだ。

 

5 追い詰められた中国

 8月31日、南太平洋の島国パラオで開かれた太平洋諸島フォーラムには台湾の外相が参加した。これに激怒した中国の代表が退場。ところがこれが裏目に出て、首脳声明には7月6日に中国が南太平洋にミサイルを発射した試験を懸念する文言が盛り込まれてしまった。

 中国の外交的失敗はこれにとどまらない。9月1日、米国務副長官ランダウは南太平洋のクック諸島で同島のブラウン首相、ニュージーランドのピーターズ外相と会談し、同島のペンリ環礁の深海港建設に5000万ドル拠出することで合意した。

 ニュージーランドはクック諸島のEEZに軍事アクセス権を持っているから、これが完成すればニュージーランドの軍港として使用できることになる。

 ここが中国の南太平洋進出の防波堤になることは明らかだ。中国の海洋進出に南太平洋諸国が一斉にノーを突き付けているのである。

(以上)

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年9月25日号)

*インドネシア、空母を保有

 大紀元に拙稿「インドネシアの空母保有の衝撃 中国の焦り」が掲載された。

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有料記事だが、前半部分を特別に公開する。大紀元は大変良質なメディアであり拙稿以外にも真実を伝える記事が満載である。本稿を読んで関心を持たれた方には有料登録をお勧めする。

 

1 東南アジアに二つの空母保有国

 9月18日、インドネシアの首都ジャカルタ北部の港にイタリアの空母ジュゼッペ・ガリバリディが入港した。これは親善訪問ではない。この空母はイタリアからインドネシアに譲渡されたのだ。

 空母ジュゼッペ・ガリバリディはイタリア海軍初の空母として1995年に就役した。ちなみに同時期、東南アジアのタイもスペイン製の空母を取得している。艦載する戦闘機は、ともに垂直離着陸機として有名なハリアーであった。

 だが今やハリアーは老朽化し、イタリアを含め各国で退役している。ヘリコプター空母として使用することは可能だが、イタリアでは最新鋭戦闘機F35を搭載できる後継艦カブールが就役しており、ジュゼッペ・ガリバリディは2024年に退役に至った。

それにインドネシア海軍が関心を示し、今回譲渡されたわけだ。

 かくてインドネシアはタイに続き東南アジアで2番目の空母保有国となったのである。

 

2 中国の海洋進出の脅威

 だがインドネシアがなぜ空母保有に踏み切ったか?それは言わずと知れた中国の海洋進出への対抗措置である。実はタイが1990年代に空母を取得したのも、中国の南シナ海進出に対抗する狙いからだった。

 1990年代と言えば、米軍がフィリピンから撤退し、南シナ海に巨大な力の真空が生じた時期だった。経済力の強かったタイは、空母取得に踏み切ったが、経済の脆弱なインドネシアにとって空母は高嶺の花だった。

 タイとて1997年のアジア通貨危機で経済的に大打撃を受けたから空母と戦闘機を取得したものの、それらを十分に運用することはできなかった。

 中国は、と言えば海洋進出を徐々に本格化させつつあったが、駆逐艦や潜水艦を近代化するのに精一杯で、空母を保有するなどとは考えられない状態だった。1998年にウクライナから建造途中で廃艦となった空母を購入した際も洋上ホテルに改造する計画だと喧伝されたのである。

 しかし2012年、同艦は空母遼寧として就役し、その後、空母山東、空母福建が就役し、中国の海洋進出の脅威に日本を含むアジア諸国はさらされるに至ったわけだ。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年9月13日号)

*イラン最高指導者モジタバの真相

 前号では大紀元に掲載された拙稿「イランの最高指導者モジタバは生きているのか?」の前半を公開したが、本号では後半を公開する。

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3 モジタバ不在の怪

 モジタバは最高指導者に就任前も就任後も公式な場に姿を見せていない。特に就任後、姿を見せないのは、2月の米軍攻撃で重傷を負ったためとされている。しかしそうなるとそんな重傷を負った人物を傷も癒えていない段階で最高指導者に就任させるという不自然さは隠しようがない。

 モジタバは3月8日にイランの専門家会議で最高指導者に選出されたとされる。専門家会議とは定数88のイスラム法学者の集合体だが、モジタバ選出に際してリモート形式で会議を行ったという。

 リモート形式の会議であればサイバー戦に長けた革命防衛隊が牛耳ることはいとも簡単だ。

 しかも7月のハメネイの葬儀は6日間にわたって行われたがモジタバは一度も姿を見せなかった。イスラエルによる暗殺作戦を警戒したといわれているが、バヒディは姿を見せている。

 もし重傷で立つことも歩くことも出来ないというのなら、テレビで国民に姿を見せるという手もあったはずだが、それすらしていない。

 まるでモジタバは生きていないとイラン国民に印象づけようとしているとしか考えられないのである。

4 独裁体制の病理

 以上の経緯を振り返ればバヒディがモジタバを最高指導者に就けたのは明らかだが、実はその時点でモジタバは既に死んでいた可能性も否定できない。この見解は実はイラン国民も共有するところなのだ。

 特に興味深いのは、バヒディ自身がこの見解を否定しようとしない点だ。AI技術を用いればモジタバの動画はいくらでも作ることが出来る。影武者だって昔ながらの手法だが今なお有効だろう。

 しかしバヒディはモジタバが生きていると見せようとはしていない。これは何故なのか?

 この謎は同様の独裁体制にある北朝鮮を見ると容易に解けよう。

 北朝鮮では金正恩総書記の娘ジュエが金正恩とともに登場し、独裁者の後継者だと内外で評判になっている。しかし君主制ならいざしらず、君主制を否定する共和国において十代の娘が後継者に確定するなどと言うことはあるわけはない。

 そんなことは北朝鮮の上から下まで誰もが思うところだろう。だが誰一人それを言い出す者はいない。それを言えば粛清されるからだ。ここが独裁者の狙いだ。

 誰が見ても無理と思われる事を押し通して、誰もそれに異を唱えられない状況を内外に示す狙いだ。つまり自分の独裁権力は、それほど確立していると暗示しているのである。

 北朝鮮と親しいイランにおいても同様だと推測できよう。バヒディはモジタバを生死も明らかでない状況で最高指導者に就けた。それに対して誰も何も言えないと言うことがバヒディの権力が確立している確証になっているのである。

(以上)

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