鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年4月9日号)

*在日米軍は撤退するか?

 8日、NATOのルッテ事務総長は、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。トランプは。イランによるホルムズ海峡封鎖に対して同盟国が何もしないことに不満を募らし、NATOからの脱退を明言している。

 ルッテは、トランプを翻意させようと直談判に臨んだわけだ。結果は芳しいものではないが、問題は、NATO事務総長が血相を変えて駆け付けなければならないほど、事態は切迫している点である。

 しかもトランプが不満を表明した同盟国にはNATOだけでなく日本、韓国、豪州が含まれている。つまり米軍は欧州のみならずインド太平洋地域からも全面撤退する公算が極めて高いのだ。

 

 今回の対イラン作戦を主導したヘグセス国防長官は、孤立主義者である。つまり海外の米軍はすべて撤収させて、北米大陸の防衛に専念すべきだと考えている。これは彼を国防長官に任命したトランプ自身が本来、孤立主義者だから、当然のことであろう。

 では、その孤立主義者達が今回、なぜ対イラン作戦に踏み切ったのかと言えば、イランの核開発の芽を断てば、米軍を中東から全面撤退させられるとの目論見に基づく。米軍が撤収したあとの中東の防衛は、中東の石油に依存している欧州や日韓豪が担うべきと考えていよう。

 

 自国の国益は自力で守れという視点に立てば、米国が中東のみならず欧州やインド太平洋地域から撤収するのが合理的なのは明白である。今般、イランの示した10項目の提案には、米軍の中東からの全面撤退が含まれており、トランプは、ほとんどの項目で合意しているとして、二週間停戦に合意した。

 ウクライナ戦争ではトランプ政権はロシア寄りの立場での停戦を画策している。またトランプは5月中旬には、訪中する。ここで習主席と中台紛争を巡る妥協を模索するのは間違いない。

 トランプ政権が中東からの撤退と同時に、同盟国から撤退を考えているのは、明らかであろう。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年4月3日号)

*自力で石油を確保しろ。

 昨日のトランプ大統領の演説を一言で要約するなら「もう日本のために戦争するのは、まっぴら御免」ということだろう。米国はもはや中東の石油を必要とせず、中東の石油に最も依存している同盟国は日本に他ならない。

 トランプは欧州への怒りをあらわにし、日本への批判は表明していないが、「自力で石油を取りに行け」という言葉は、二言目には「憲法の制約」を言い米国の軍事力に依存し続ける日本に対する痛烈なる批判だと言えよう。

 

 日本は1950年代の朝鮮戦争で戦後復興し、1960年代のベトナム戦争で高度経済成長を成し遂げたが、米国にしてみれば、まさに日本の大東亜共栄圏を守るために多大な犠牲を払ったことになる。

 1970年代の石油ショック以降、米国は中東への関与を本格化させるが、2000年代に米国でシェールオイルが開発され安価な石油が入手可能になった時点で、もはや米国は中東の石油を必要としなくなった。

 こうなれば米軍が中東に関与しなければならない理由はイランの核開発だけである。自爆テロを敢行しているイスラム原理主義者に核抑止論は適用不能だ。イランの核開発の芽を断ったと判断できれば中東から撤退するのは当然の順序だろう。

 

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年3月8日号)

*サイバー戦争

 2月28日に米イスラエル連合軍によるイラン攻撃が始まりイラン最高指導者ハメネイ師が殺害されたが、ほぼ同時刻にインターネットが遮断されイランは通信不能状態に陥った。これによりイラン革命防衛隊は戦略的判断が不能となり、周辺国にミサイルを撃ち込んで周辺国を敵に回してしまい、昨日謝罪に追い込まれた。

 これはイランの戦略的致命傷と言っていい。軍事の格言に「初期の戦略的失敗を戦術的に補完することは出来ない」というのがあるが、その伝で行けば、イランの敗北は、このサイバー攻撃で確定したのである。

 

 サイバー攻撃を正規戦と併用するハイブリット戦略は、現代戦では常識で、4年前ロシアもウクライナ侵攻を始めたときもサイバー攻撃が併用された。ウクライナがこのサイバー攻撃に堪えることが出来たのは、ウクライナ軍の防衛努力の賜物である。

 2014年にロシア軍はウクライナ領のクリミア半島を占領してしまったが、このときもロシアはサイバー攻撃を併用した。ウクライナ軍は通信不能に陥りロシア軍の侵攻に対して、何の抵抗もできなかった。

 これに懲りたウクライナ軍は、その後、米軍の支援を受けて強力なサイバー部隊を作り上げたのである。

 

 さて昨今、云々される台湾有事だが、もし中国が台湾に侵攻するとしたら、当然サイバー攻撃も併用されよう。そして日本も中国のハイブリット攻撃の犠牲となろう。日本は、それに対処できるのか?

 3月4日、笹川・読売グローバルフォーラム「サイバー攻撃から社会を守る」で元内閣官房副長官補の兼原信克氏が「日本のサイバーセキュリティは30年遅れ」と強調していた。日本にインターネットが普及して、ほぼ30年だから、この発言は、「日本のサイバーセキュリティはゼロ」と明言しているのに等しい。

 ウクライナはクリミア半島を失って、サイバーセキュリティに目覚めた。日本も台湾を失ってサイバーセキュリティに目覚めることになろうか。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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