4次元正多胞体と正ブロック積みの配置行列 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 少し前に正多面体の配置行列についてご紹介しました。

 正多面体の配置行列 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 その4次元正多胞体版を考えます。

 

 本稿では、まず4次元正多胞体が6種類存在することを示し、それらの基本的な数値(整数値のものに限る)を、4行4列の配置行列の形でコンパクトにまとめることを目的とします。

 また、合わせて性質のよく似ている3次元正ブロック積み(立方体ブロック積み)も紹介します。

 

 実は、このブログでは10年以上前に「4次元多胞体について」という2回連載の記事を載せています。

 4次元多胞体について1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 素人向けにはそちらの方が読みやすいと思いますが、今回は最近読んだコクセターの『正多胞体』で勉強したことも少し反映して、記号を使って見通しがよい形でまとめます。

 (記号が嫌いな方は昔の記事をご覧ください(^_^)

 

 最初にシュレーフリ記号の復習です。

 正p角形を {p} で表します。

 1つの頂点の周りに正p角形の面をq枚集めてできる正多面体を {p,q} で表します。

 

 3次元の正多面体は、次の5種類でした。

 シ記号 名称   N0 N1 N2  面の形   頂点図形  

 {3,3} 正4面体   4  6  4  正3角形{3} 正3角形{3}

 {3,4} 正8面体   6 12  8  正3角形{3} 正方形{4}

 {4,3} 立方体    8 12  6 正方形{4}  正3角形{3}

 {3,5} 正20面体  12 30 20 正3角形{3} 正5角形{5}

 {5,3} 正12面体  20 30 12 正5角形{5} 正3角形{3}

 (注) シ記号は、「シュレーフリ記号」の略。N0,N1,N2 は頂点数、稜の数、面の数。

 

 4次元正多胞体とは、1種類の正多面体(これを胞と呼ぶ)有限個から構成されかつどの頂点の周りも同じ形になっている4次元図形のことです。

 4次元正多胞体は、1本の稜に3つ以上の胞(正多面体)を集めることによりできます。

 したがって、正多面体については、その二面角の r (≧3)倍が 2π=360°未満であれば正多胞体を作る可能性があります。

 正多面体 {p,q} を稜の周りにr個集めてできる正多胞体を、{p,q,r} で表します。

 

 正多面体の二面角について復習すると、次の通りです。

 正多面体と基本単体3 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 シ記号   二面角               

 {3,3} 2 arccos(√6/3) ≒ 70.529°

 {3,4} 2 arccos(√3/3) ≒ 109.471°

 {4,3} 2 arccos(√2/2) = π/2 = 90°

 {3,5} 2 arccos(√3 (√5-1)/6) ≒ 138.190°

 {5,3} 2 arccos(√5√(10-2√5)/10) ≒ 116.565°

 (注)  arccos はコサインcos の逆関数。

 

 このうち、正4面体 {3,3} では r=3, 4, 5 の場合が可能です。

   70.529°×5=352.645° < 360°< 70.529°×6=423.174°.

 正8面体 {3,4} では、r=3 の場合が可能です。

   109.471°×3=328.413° < 360°< 109.471°×4=437.884°.

 立方体 {4,3} では、r=3 の場合が可能です。

   90°×3=270°< 360°= 90°×4.

 正12面体 {5,3} では、r=3 の場合が可能です。

   116.565°×3=349.695°< 360°< 116.565°×4=466.260°.

 しかし、正20面体 {3,5} では可能な場合はありません。

   360°< 138.190°×3=414.57°

 したがって、4次元正多胞体としてあり得るのは、次の6種類です。

   {3,3,3},{3,3,4},{4,3,3},{3,4,3},{3,3,5},{5,3,3}.

 これらについて、頂点、稜、面、胞の数やそれらの間の関係を求めます。

 

 その正多面体において1つのj次元図形が接するk次元図形の数を、Njk とします。

 ここで、次のような行列を考えます。

   [ N00 N01 N02 N03 ]

   [ N10 N11 N12 N13 ]

   [ N20 N21 N22 N23 ]

   [ N30 N31 N32 N33 ]

 ただし、対角要素は

   N00 = N0(頂点数),N11 = N1(稜の数),N22 = N2(面の数),N33=N3(胞の数)

 とします。

 これを4次元正多胞体の配置行列と呼びます。

 

 配置行列の要素 Njk を特定していくことにします。

 1本の稜は、両端に頂点をもつので、

   N10 = 2.

 1枚の面は、2つの胞に挟まれているので、

   N23 = 2.

 1枚の面を囲む稜の数はp,同じく頂点の数もpなので、

   N20 = N21 = p.

 1本の稜を囲む稜の数はq,同じく面の数もqなので、

   N12 = N13 = q.

 1個の胞 {p,q} を囲む頂点数 N30=d、稜の本数 N31=e、面の枚数 N32=f は、次の式で与えられます。

   N30 = d =    4p    

          4-(p-2)(q-2)

   N31 = e =    2pq   

          4-(p-2)(q-2)

   N32 = f =    4q    

          4-(p-2)(q-2)

 

 正多胞体の1つの頂点につながる稜の中点を結んでできる図形を、頂点図形と呼びます。

 頂点図形の次元は正多胞体 {p,q,r} の次元より1つ下なので胞と同じになり、シュレーフリ記号は {q,r} で表されます。

 頂点図形 {q,r} の頂点数、稜の本数、面の枚数は、1つの頂点につながる稜の本数、面の枚数、胞の数に等しくなるので、次の式が成り立ちます。

   N01 = a =    4q    

         4-(q-2)(r-2)

   N02 = b =    2qr   

         4-(q-2)(r-2)

   N03 = c =    4q    

         4-(q-2)(r-2)

 

 以上をまとめると、4次元正多胞体 {p,q,r} の配置行列は次のようになります。

   [ N0 a b c ]

   [ 2 N1 r r ]

   [ p p N2 2 ]

   [ d e f N3 ]

 ただし、d, e, f は、胞 {p,q} の頂点数、稜の数、面の数、a, b, c は、頂点図形 {q,r} の頂点数、稜の数、面の数。

 

 なお、a, b, c が頂点図形 {q,r} の要素数であり、d, e, f が胞 {p,q} の要素数であることから、オイラーの公式により次の式が成り立ちます。

   N01 -N02 +N03 = a -b +c = 2. ・・・ 頂点図形のオイラーの公式

   N30 -N31 +N32 = d -e +f = 2. ・・・ 胞のオイラーの公式

 

 さて、正多面体では N0~N2 を求める一般的な方法が存在しましたが、4次元正多胞体では存在しません。

 ですから、問題は4つの要素数 N0,N1,N2,N3 をどうやって求めるかです。

 

 配置行列では、一般に次の関係が成り立ちます。

   Nj Njk = Nk Nkj

 4次元ではこの形の式は6本存在します。(3次元では3本でした。)

 したがって、4つの要素数のうち1つが分かれば、残りは上の式から求められることが分かります。

 このブログでは、これらの式を配置行列の関係式と呼ぶことにします。

 

 6種類のうち最初の3種類はそれぞれ4次元における正単体 α4,正軸体 β4,超立方体(あるいは正測体)γ4 なので、その頂点数 N0 は、4+1=5,2×4=8,2^4=16 であることが分かります。

   {3,3,3} = α4, {3,3,4} = β4, {4,3,3} = γ4

 『正多胞体』4 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 (上の書評記事には一般次元における正単体、正軸体、超立方体の要素数を求める公式も載っていますが、 ここではそれを見ないでも、配置行列の性質から求められることを示しています。)

 

 {3,3,3}=α4 では、頂点数 N0=5,稜の本数 N1=10,面の枚数 N2=10,胞の数 N3=5 となります。

 これは正5胞体です。

 {3,3,4}=β4 では、頂点数 N0=8,稜の本数 N1=24,面の枚数 N2=32,胞の数 N3=16 となります。

 これは正16胞体です。

 {4,3,3}=γ4 では、頂点数 N0=16,稜の本数 N1=32,面の枚数 N2=24,胞の数 N3=8 となります。

 これは正8胞体です。

 

 次に、{3,4,3} については次のようにして得られます。

 {3,3,4}=β4 を構成する各正4面体 {3,3} に対して中点切りを行います。

 すなわち、その各頂点につながる稜の中点どうしを結んで新たな稜とし、元の頂点と稜を取り除きます。

 (コクセターの『正多胞体』ではこの操作を切頂と呼んでいましたが、ここではこのブログでのこれまでの用語に合わせます。)

 このとき、元の胞(正4面体)は中点切りにより正8面体 {3,4} となり、元の頂点周りは頂点図形がそのまま新たな胞(正8面体 {3,4})となります。

 したがって、新たな胞(正8面体)の数は、元の胞の数16と元の頂点数8を合計して24になります。

 胞の数 N3=24 から、頂点数 N0=24,稜の本数 N1=96,面の枚数 N2=24 が得られます。

 これは正24胞体です。

 

 残りの {3,3,5},{5,3,3} に関しては、『正多胞体』に求め方が載っているのですが、複雑なため省略し、答だけ写しておきます。

 {3,3,5} では、頂点数 N0=120,稜の本数 N1=720,面の枚数 N2=1200,胞の数 N3=600 です。

 {5,3,3} では、頂点数 N0=600,稜の本数 N1=1200,面の枚数 N2=720,胞の数 N3=120 です。

 

 これらについて、関係式と次の4次元におけるオイラーの公式が成り立つことをご確認ください。

   N0 -N1 +N2 -N3 = 0.

 

 これで4次元正多胞体6種類すべての配置行列を求めることができました。

 次のようになります。

 {3,3,3} 正5胞体(4次元正単体)

   [ 5 4 6 4 ]

   [ 2 10 3 3 ]

   [ 3 3 10 2 ]

   [ 4 6 4 5 ]

 {3,3,4} 正16胞体(4次元正軸体)

   [ 8 6 12 8 ]

   [ 2 24 4 4 ]

   [ 3 3 32 2 ]

   [ 4 6 4 16 ]

 {4,3,3} 正8胞体(4次元超立方体)

   [ 16 4 6 4 ]

   [ 2 32 3 3 ]

   [ 4 4 24 2 ]

   [ 8 12 6 8 ]

 {3,4,3} 正24胞体

   [ 24 8 12 6 ]

   [ 2 96 3 3 ]

   [ 3 3 96 2 ]

   [ 6 12 8 24 ]

 {3,3,5} 正600胞体

   [ 120 12 30 20 ]

   [ 2 720 5 5 ]

   [ 3 3 1200 2 ]

   [ 4 6 4 600 ]

 {5,3,3} 正120胞体

   [ 600 4 6 4 ]

   [ 2 1200 3 3 ]

   [ 5 5 720 2 ]

   [ 20 30 12 120 ]

 

 意味の分からない数字の羅列を眺めても面白くないので、配置行列の見方を確認します。

 {3,3,4} 正16胞体を例にとります。

 1行目の [ 8 6 12 8 ] は、頂点数が対角要素の8個で、1つの頂点に集まる稜が6本、同じく面が12枚、同じく胞が8個です(頂点図形が正8面体であることを意味する)。

 2行目の [ 2 24 4 4 ] は、稜が対角要素の24本で、1本の稜を挟む頂点が2個、同じく面が4枚、同じく胞が4個です。

 3行目の [ 3 3 32 2 ] は、面が対角要素の32枚で、1枚の面に付いている頂点が3個、1枚の面を囲む稜が3本(面が正3角形であることを意味する)、1枚の面を挟む胞が2個です。

 4行目の [ 4 6 4 16 ] は、胞が対角要素の16個で、1個の胞に付いている頂点が4個、同じく稜が6本、1個の胞を囲む面が4枚です(胞が正4面体であることを意味する)。

 

 配置行列は、4×4=16個の数値から構成され、それらの間に6本の関係式と3本のオイラーの公式を含む12本の式が成り立ちます。

 

  {3,3,4} 正16胞体について、12本の式を示します。

 関係式:

   8×6=2×24=48,8×12=3×32=92,8×8=4×16=64,

   24×4=3×32=96,24×4=6×16=96,32×2=4×16=64.

 オイラーの公式:

   8-24+32-16 = 0 ・・・ 4次元

   6-12+8 = 2 ・・・ 頂点図形

   4-6+4 = 2 ・・・ 胞

 その他

   N12=N13=4, N31=N32=3, N10=N23=2.

 

 また、正16胞体 {3,3,4} と正8胞体 {4,3,3},正600胞体 {3,3,5} と正120胞体 {5,3,3} はそれぞれ双対の関係にあります。

 正多胞体の双対とは、胞の中心に新たな頂点をとり隣り合うそれらを結んでできる多胞体のことです。

 この場合、配置行列は互いに180°回転した形になっています。

 残りの正5胞体 {3,3,3} と正24胞体 {3,4,3} はいずれも自己双対です。

 この場合、配置行列は180°回転しても不変です。

 

 配置行列を文章で解説すると、昔の記事「4次元多胞体について」になります。

 

 

 最後に、3次元空間での正ブロック積みの配置行列も載せておきます。

 正ブロック積みは正多胞体と同じく正多面体を胞とするので、同様に4×4の配置行列を作ることができます。

 ただし、対角要素の要素数 Ni は無限大になってしまうので、代わりにそれらの比率 νi を対角要素に書き入れます。

 

 {4,3,4} 立方体ブロック積み

   [ 1 6 12 8 ]

   [ 2 3 4 4 ]

   [ 4 4 3 2 ]

   [ 8 12 6 1 ]

 

 ブロック積みではオイラーの公式の代わりに次の式が成り立ちます。

   ν0 -ν1 +ν2 -ν3 = 0.

 また、関係式は次のようになります。

   νj Njk = νk Nkj

 (νはローマ文字の小文字のヴィではなく、ギリシア文字の小文字のニューです。)

 

 この配置行列を180°回転させてもそのままなので、立方体ブロック積みは自己双対であることが分かります。

 

 

 多面体など幾何の連載一覧 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 ★ 最近気に入って聞いているのは次の歌です。

 RADWIMPS すずめ feat.十明 歌詞&動画視聴 - 歌ネット (uta-net.com)

 新海誠監督の新作映画「すずめの戸締り」(11月11日ロードショー)の主題歌で、歌は十明(とあか)さん。

 

 ★★ 今日のロジバン

   mi pu citka lo vrici grute no’u mu’a lo plise .e lo badna mu’a nai .i ji’a mi pu citka re patlu

 「ミ プ ㇳカ ロ゚ ヴシ グテ ノフ ムハ ロ゚ ㇷ゚リ゚セ エ ロ゚ ドナ ムハナイ イ ジハ ミ プ ㇳカ レ ㇳル゚」

  私はりんごやバナナなど様々な果物を食べた。さらに、じゃがいもも2つ食べた。

 vrici : 種々雑多/様々/色とりどりだ,x1(集合/群/個)は x2(性質)の点で

 grute : 果実/フルーツだ,x1は x2(種類)の。-rut-

 no’u : 項同一関係(句・非限定)。直前の体言と同一指示対象の体言を結び付ける。関係詞GOI類

 mu’a : 例えば。心態詞(談話系)UI3類。<- mupli例/標本/サンプル/件

 mu'anai : 例示終り。心態詞UI*3類。<- mu’a 例えば

 ji’a : ~も/だって。追加。心態詞(談話系)UI3b類

 patlu : ジャガイモ/サトイモだ,x1は x2(種類)の。食用のでんぷん質球根のうち芽から栽培できるもの

 

 .i で分かれる2つの文からなり、どちらの文でも主述語は { pu citka } 「食べた」で、そのx1は mi 「私」です。

 最初の文のx2は、{ lo vrici grute } 「様々な果物」で、それに関係句 { no’u mu’a lo plise .e lo badna mu’a nai } 「りんごやバナナなどの」が係っています。

 第2の文のx2は { re patlu } 「ジャガイモ2個」です。

 出典は、.cogas.さんの

 味噌煮込みロジバン: UI3 談話系 (misonikomilojban.blogspot.com)