正多面体と基本単体3 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

正多面体と基本単体1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786453.html

正多面体と基本単体2:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786458.html

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 7.正多面体ごとの連続量の計算結果
以下では、6で求めた計算式を使って個々の正多面体の連続量を計算しますが、計算結果としてできるだけ解析解と数値解の両方を載せるようにします。
解析解とは、(本稿の範囲では)ルートを含む式で表わされ、厳密な解です。
数値解とは、小数で表わされる解で、近似的なものであり、ここでは原則として小数点以下3桁まで求めています。
解析解が得られていればそれから数値解を得るのはパソコンと表計算ソフトを使えば容易ですが、逆に数値解から解析解を得るのはほとんどの場合不可能です。
それでは、厳密な解析解の方が近似的な数値解よりエライかといえば決してそうもいえません。
大小比較は数値解どうしでは一目で分かりますが、解析解どうしでは一般には困難です。
解析解が分数の形になっているときは、分母を有理化する(ルートなどが含まれないようにする)のが普通のルールであり、ここでもそれに従います。たとえば、
  1/(√5-1) = (√5+1)/4
しかし、複雑な解析解では表示のし方がいくつもあって、出所が違うと、一見まるで異なる式であっても数値解を計算すると等しい、という場合もあります。次は比較的簡単な例です。
  √2 √(3+√5) = √(6+2√5) = √5+1 ≒ 3.236
この場合の解析解は「√5+1」をとるのが適当ですが、もっと複雑な場合もあります。
そうなると、解の表示のし方が一通りに決まらない、という困ったことになります。

今どきはパソコンが普及しているので、最終的な解析解まで求めなくても、計算途中の複雑な式からでも数値解を簡単に求めることができます。
しかし、それでは計算したとはいえても数学をやったとはいえないでしょうね(^_^
まあ、そんなこんなで(特に正12面体では)結構面倒くさい計算を行った結果を以下に示します。

a.正4面体:p=3,q=3,B=24
  O0O1 = 1/2 = 0.5
  O0O2 = √3/3 ≒ 0.577
  O1O2 = √3/6 ≒ 0.289
  O0O3 = √6/4 ≒ 0.612
  O1O3 = √2/4 ≒ 0.354
  O2O3 = √6/12 ≒ 0.204
  体積 = √2/12 ≒ 0.118
  表面積 = √3 ≒ 1.732
  二面角 = 2 arccos(√6/3) ≒ 70.529°
  面と稜のなす角 = arccos(√6/3) +arccos(2√2/3) ≒ 54.736°
  中心から稜を見込む角 = 2 arccos(√3/3) ≒ 109.471°

b.立方体:p=4,q=3,B=48
  O0O1 = 1/2 = 0.5
  O0O2 = √2/4 ≒ 0.707
  O1O2 = 1/2 = 0.5
  O0O3 = √3/2 ≒ 0.866
  O1O3 = √2/2 ≒ 0.707
  O2O3 = 1/2 = 0.5
  体積 = 1
  表面積 = 6
  二面角 = 2 arccos(√2/2) = π/2 = 90°
  面と稜のなす角 arccos(√3/3) +arccos(√6/3) = 90°
  中心から稜を見込む角 = 2 arcos(√6/3) ≒ 70.529°

c.正8面体:p=3,q=4,B=48
  O0O1 = 1/2 = 0.5
  O0O2 = √3/3 ≒ 0.577
  O1O2 = √3/6 ≒ 0.289
  O0O3 = √2/2 ≒ 0.707
  O1O3 = 1/2 = 0.5
  O2O3 = √6/6 ≒ 0.408
  体積 = √2/3 ≒ 0.471
  表面積 = 2√3 ≒ 3.464
  二面角 = 2 arccos(√3/3) ≒ 109.471°
  頂点の二面角 = 2 arccos(√6/3) ≒ 70.529°
  頂点の二稜角 = 2 arccos(√2/2) = π/2 = 90°
  中心から稜を見込む角 = 2 arccos(√2/2) = π/2 = 90°

d.正12面体:p=5,q=3,B=120
  O0O1 = 1/2 = 0.5
  O0O2 = √10√(5+√5)/10 ≒ 0.851
  O1O2 = √5(√5+2√5)/10 ≒ 0.688
  O0O3 = √3(1+√5)/4 ≒ 1.401
  O1O3 = (3+√5)/4 ≒ 1.309
  O2O3 = √10√(25+11√5)/20 ≒ 1.114
  体積 = (15+7√5)/4 ≒ 7.663
  表面積 = 3√(25+10√5) ≒ 20.646
  二面角 = 2 arccos(√5√(10-2√5) /10) ≒ 116.565°
  面と稜のなす角 = arccos(√3(√5-1)/6) +arccos(√30√(5-√5) /15) ≒ 121.718°
  中心から稜を見込む角 = 2 arccos (√3 (√5+1) /6) ≒ 41.810°

e.正20面体:p=3,q=5,B=120
  O0O1 = 1/2 = 0.5
  O0O2 = √3/3 ≒ 0.577
  O1O2 = √3/6 ≒ 0.289
  O0O3 = √2√(5+√5)/4 ≒ 0.951
  O1O3 = (1+√5)/4 ≒ 0.809
  O2O3 = √3 (3+√5)/12 ≒ 0.756
  体積 = 5(3+√5)/12 ≒ 2.182
  表面積 = 5√3 ≒ 8.660
  二面角 = 2 arccos(√3 (√5-1) /6) ≒ 138.190°
  面と稜のなす角 = arccos(√10√(5-√5)/10) +arccos(√30 √(5-√5) /15)
          ≒ 110.905°
  中心から稜を見込む角 = 2 arccos (√5 √(10+2√5) /10) ≒ 63.435


 8.5つの正多面体の比較
さて、正多面体の連続量が一通り得られたので、せっかくですからそれらを使って正多面体の比較を行いたいと思います。
比較するのは、a.大小関係と、b.丸いか尖って(角ばって)いるかの2点です。
読者の皆さまは、事前に順位を予想してみてください(^_^

 a.大小比較
ここでは稜の長さを 1 としたときの相対的な大きさを比較します。
比較に使うのは、体積、表面積、外接球半径、中接球半径、内接球半径、中心から稜を見込む角という6種類の指標です。
最後の角度は小さいものほど稜が中心から離れていることを表わすので、正多面体の大小とは逆になります。
 表5-1 正多面体の大小比較
.     体積   表面積  外接球  中接球  内接球  稜見込角 
正4面体  0.118  1.732  0.612  0.354  0.204   109.471°
立方体   1    6    0.866  0.707  0.5    70.529°
正8面体  0.471  3.464  0.707  0.5   0.408   90°
正12面体 7.663  20.646   1.401  1.309  1.114   41.810°
正20面体 2.182   8.660  0.951  0.809  0.756   63.435°
(注)  外接球、中接球、内接球はそれぞれ外接球半径、中接球半径、内接球半径の略。稜見込角は中心から稜を見込む角の略。

これら6種類の指標のどれで比べても、正多面体の大きさは次の順で同じです(大きい順)。
 表5-2 正多面体の大小比較2
  正12面体 > 正20面体 > 立方体 > 正8面体 > 正4面体

皆さんの予想は果たして当たったでしょうか?
正4面体が一番小さいことは容易に想像できますが、正12面体が最大というのは自明ではありませんね。
しかも、第2位の正20面体との差がこれほど大きいことも、少なくとも私にとっては最初驚きでした。

また、立方体が正8面体より「大きい」というのも、ひと目で分かることではありません。
なお、この順序を示す6つの指標のうち最初の5つは稜の長さを1としたときの相対的な大きさですが、最後の角度は稜の長さに依存しません。
したがって、私はこの大小の順序は本質的だと考えてよいと思います。

 b.丸いか尖って(角ばって)いるか
aで大小は分かったので、次に丸いか尖って(角ばって)いるかを比較します。
5種類の指標に基づいて比較を行います。
頂点が尖っているかどうかを示す指標の一つは、不足角です。
不足角は、1つの頂点に集まる各面の角の合計を 2π=360°から引いたものと定義されます。
不足角が大きいほど尖っていると評価されます。
たとえば正4面体であれば、面が正3角形なので頂点の角はπ/3=60°であり、それが3つ集まって頂点を構成するので、1つの頂点の不足角は、2π-3×π/3=π=180°です。
同様にして、5つの正多面体の不足角は、順に 180°,90°,120°,36°,60°
となります。

頂点の尖り方を見るのにふさわしいもう一つの指標は、面と稜が頂点でなす角です。

ただし、正8面体では一つの頂点に集まる面の数=稜の数は偶数なので、面と稜は向かい合わず、この数値は取れません。

次に、稜の角ばり方を見る指標としては、二面角が適当です。

1つの頂点や稜に着目するのではなく全体が球に近いか遠いかを見る指標として、「体積/(表面積・中接球半径)」と「外接球半径/内接球半径」があります。
一定の表面積に対して体積がもっとも大きい立体は、球です。
球の半径を r とすると、その体積は、(4/3)πr3、表面積は 4πr2 です。
両者の比は、(4/3)πr3/4πr2 = (1/3) r となり、このままでは大きい立体ほど「より丸い」とされてしまうので半径 r で割りますが、半径に相当するものも3種類あるので、ここでは中間の中接球半径をとることにします。
「体積/(表面積・中接球半径)」は球では 1/3 となり、これが最大値です。
この値が小さいほど角ばっていると評価できます。
計算結果は、正4面体から順に 0.192、0.236、0.272、0.284、0.311 となります。

一方、外接球半径と内接球半径の比は球では1となり、これが最小値です。
この値が大きいほど角ばっていると評価できます。
計算結果は、正4面体から順に 3、√3=1.732、1.732、1.258、1.258 となり、双対どうしでは等しくなります。
  表6-1 正多面体の丸さ・尖り具合比較
.     不足角  面稜角  二面角  体/表・中 外/内
正4面体  180°  54.7°  70.5°   0.192   3
立方体   90°   90°   90°    0.236   1.732
正8面体  120°   ―   109.5°   0.272   1.732
正12面体  36°  121.7° 116.6°   0.284   1.258
正20面体  60°  110.9° 138.2°   0.311   1.258
( 球    0°  180°  180°    0.333   1   )
(注) 「面稜角」「体/表・中」「外/内」がそれぞれ何の略語であるかは、本文
を参照されたい。

  表6-2 正多面体の丸さ・尖り具合比較2
. より角ばっている ←               → より丸い
不足角
  正4面体 > 正8面体 > 立方体 > 正20面体 > 正12面体 (> 球)
面と稜が頂点でなす角
  正4面体 < 立方体 <      正20面体 < 正12面体 (< 球)
二面角
  正4面体 < 立方体 < 正8面体 < 正12面体 < 正20面体 (< 球)
体積/表面積・中接球半径
  正4面体 < 立方体 < 正8面体 < 正12面体 < 正20面体 (< 球)
外接球半径/内接球半径
  正4面体 > 正8面体 = 立方体 > 正12面体 = 正20面体 (< 球)

大小比較と違って、こちらは指標により異なる結果となりました。
一番尖って(角ばって)いるのが正4面体、次が立方体と正8面体の組、一番丸いのが正12面体と正20面体の組であるのは共通ですが、それぞれの組の中での順序は指標のとり方により異なってきます。


 9.おわりに
ようやく正多面体の連続量を求めることができました。
これで、正多面体についてはだいぶ分かったといえると思います。
次に取り上げるべきは、半正多面体のの連続量と、正多面体の群論的扱いのいずれかでしょう。
このうち前者は、13種類のうち切頂と中央切りで得られる7種類についてはメドが立ったものの、それ以外の6種類については苦戦しています。