正多面体と基本単体2 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

正多面体と基本単体1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786453.html

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 4.補助的な点P1、P2 の導入と双対正多面体P2P1O0O3
実は、以上の道具立てだけでは正多面体 {p,q} の連続量を求めるのに不十分です。
というのも、多面体 {p, q} にはpとqという2つの自然数が含まれているのに、上の式にはpしか現れていないので、情報不足だからです。
そこで、基本単体を少し傾けてO0O3 が垂直になるようにし、O0 を含みO0O3 に垂直な平面πを考えると、πは水平になります。
平面πはO0 で元の正多面体に接しますが、それ以外の部分はすべてその外側(上側)にあります。
(πは {p,q} の外接球の点O0 における接平面となっています。)
元の正多面体 {p,q} のすべての頂点について同様の平面をつくると、それらにより囲まれてできる多面体は {p,q} に外接する双対正多面体 {q,p} となります。
次に、線分O3O1 とO3O2 を延長してそれらが平面πと交わる点をそれぞれP1、P2 とします。
点P1 は双対正多面体 {q,p} の稜の中点、点P2 は同じく頂点、点O0 は同じく面の中心、点O3 は {q,p} の中心となっています。
したがって、4面体P2P1O0O3 は双対正多面体 {q,p} の基本単体を構成します。
前と同様に考えていけば、
  ∠P1O0O3 = ∠P2O0O3 = ∠O0P1P2 = ∠P2P1O3 = π/2
となることが分かります。
また、∠P1O0P2 = π/q となります。

ここで、元の正多面体 {p,q} と それに外接する双対正多面体 {q,p} の基本単体の頂点を対照させておきます。
          {p,q}  {q,p} 
 正多面体の頂点   O0    P2
 正多面体の稜の中点 O1    P1
 正多面体の面の中心 O2    O0
 正多面体の中心   O3    O3

さて、考慮すべき点の数が6個に増えたので、それらの位置関係を把握するためには図が必要となりますが、当ブログは画像データは一切載せない方針なので(単にブログ主が無能かつ横着だからという説もある(^^;)、読者の皆さまに図を描いていただきたいと思います。
とは言っても、いきなり立体図を描くのは困難なので、6個の点から定まる平面の図を5枚描くことにします。それらは次の通りです。
 1) 3つの点O0、O1、O2 が定める平面。
 ここで、△O0O1O2 は直角3角形で、元の正多面体{p,q}の表面の一部です。
  ∠O0O1O2 = π/2,∠O0O2O1 = π/p
 2) 3つの点O0、P1、P2 が定める平面。
 ここで、△O0P1P2 は直角3角形で、双対正多面体{q,p}の表面の一部です。
  ∠O0P1P2 = π/2,∠P1O0P2 = π/q
 3)  5つの点O1、O2、O3、P1、P2 が乗っている平面。ここで△O1O2O3と△P2P1O3 は直角3角形で、互いに相似。
  △O1O2O3 ∽ △P2P1O3、   (記号∽は、両辺の図形が相似であることを表わす)
  ∠O1O2O3 = ∠P2P1O3 = π/2
 4) 4つの点O0、O1、O3、P1 が乗っている平面。ここで、△O0O1O3と△P1O0O3 は直角3角形で、互いに相似。
  △O0O1O3 ∽ △P1O0O3 ∽ △P1O1O0、
  ∠O0O1O3 = ∠P1O0O3 = ∠P1O1O0 = π/2
 5)  4つの点O0、O2、O3、P2 が乗っている平面。ここで、△O0O2O3 と△P2O0O3 は直角3角形で、互いに相似。
  △O0O2O3 ∽ △P2O0O3 ∽ △P2O2O0、
  ∠O0O2O3 = ∠P2O0O3 = ∠P2O2O0 = π/2


 5.基本単体の稜と角の値
これでようやく基本単体の稜と角の値を求めるための計算の準備が整いました。

まず稜の長さからです。
基本単体は4面体なので、稜は6本ありますが、そのうちO0O1、O0O2、O1O2 の長さについては2ですでに求めてあります。
  O0O1 = 1/2
  O0O2 = 1/2sin(π/p)
  O1O2 = cos(π/p) /2sin(π/p) = 1/2tan(π/p)
ここではO0O3、O1O3、O2O3 の長さを求めるのが目標です。

まずcos(π/q)の定義から、
  cos(π/q) = O0P1/O0P2 ・・・ (1)
この式から、O0P1 とO0P2 を消去するのが、次のステップです。
△O0O1O3 と△P1O1O0 は相似なので、
  O0P1/O0O1 = O0O3/O1O3
∴  O0P1 = O0O1 ・O0O3/O1O3 ・・・ (2)
△O0O2O3 と△P2O2O0 も相似なので、
  O0P2/O0O2 = O0O3/O2O3
∴  O0P2 = O0O2 ・O0O3/O2O3 ・・・ (3)
(1)式に(2)式と(3)式を代入して整理すると、
  cos(π/q) = O0O1 ・O2O3/(O0O2 ・O1O3)
∴  O2O3 = cos(π/q)・O0O2 ・O1O3/O0O1  ・・・ (4)

(4)式にはO1O3とO2O3という2つの未知数があるので、解くためには式がもう1本必要です。
そこで、直角3角形△O1O2O3 に三平方の定理を適用して、
  O1O32 = O1O22 +O2O32 ・・・ (5)
(5)式に(4)式を代入して少し整理すると、
  O1O32 (1-cos2(π/q)・O0O22/O0O12) = O1O22
この式にO0O2、O0O1、O1O2の値を代入すると、
  O1O32 (sin2(π/p)-cos2(π/q)) = cos2(π/p)/4
O1O3について解くと、
  O1O3 = cos(π/p) / 2sin (π/hpq) ・・・ (6)
ここで右辺の分母は次のように定義されます。
  sin(π/hpq) =: √(1-cos2(π/p)-cos2(π/q))
つまり、hpqという数が存在するというのではなく、sin(π/hpq)全体が一つの略号だとお考えください。
なぜこんな略号を使うかというと、
  sin2(π/p)-cos2(π/q) = sin2(π/q)-cos2(π/p)
   = 1-cos2(π/p)-cos2(π/q)
という式が成り立ち、pとqについて対称的なので、それが分かるように表記しているのです。

O2O3の長さを求めるには、(6)式とO1O2の値を(5)式に代入して、
  cos2 (π/p)/4sin2(π/hpq) = cos2 (π/p)/4sin2 (π/p) +O2O32
  O2O32 = cos2 (π/p) (1/4sin2(π/hpq)-1/4sin2 (π/p))
   = cos2 (π/p) (sin2 (π/p)-sin2(π/hpq)) / 4sin2 (π/p) sin2(π/hpq)
   = cos2 (π/p) cos2 (π/q) / 4sin2 (π/p) sin2(π/hpq)
∴ O2O3 = cos (π/p) cos (π/q) / 2sin (π/p) sin(π/hpq)

最後に、O0O3の長さは、
  O0O3 = √(O0O12+O1O32)
   = (1/2)・√(1+cos2 (π/p)/sin2 (π/hpq))
  = (1/2)・√((sin2(π/hpq)+cos2(π/p))/sin2(π/hpq))
  = sin(π/q) /2sin(π/hpq)

以上で、基本単体の6本の稜の長さはすべて求めることができました。
まとめておくと、次のようになります。
  O0O1 = 1/2
  O0O2 = 1/2sin(π/p)
  O1O2 = cos(π/p) / 2sin(π/p) = 1/2tan(π/p)
  O0O3 = sin(π/q) / 2sin(π/hpq)
  O1O3 = cos(π/p) / 2sin(π/hpq)
  O2O3 = cos(π/p) cos(π/q) / 2sin(π/p) sin(π/hpq)
      = cos(π/q) / 2tan(π/p) sin(π/hpq)
ただし、
  sin(π/hpq) = √(1-cos2(π/p)-cos2(π/q))

次は、角度です。
基本単体の4つの面のうち1つは △O0O1O2 で分かっているので、残り3つの3角形の角は9つありますが、うち3つは直角なので、分かっていないのは6つです。
ここでは後で必要となる4つの角だけ求めておきます。
角度を求めるには、その角をなす2つの稜の比をとり、その値から三角関数の逆関数を使って計算します。
以下で出てくる arccos は、余弦関数(コサイン) cos の逆関数です。
したがって、arccos (cos(x)) = x,cos (arccos(y)) = y が成り立ちます。
三角関数の逆関数は、「cos-1」のように元の関数の右肩に小さい-1を付けて表わすこともありますが、それだと逆数と混同するおそれもあるので、ここでは arc を付ける記法を採用します。

  ∠O2O1O3 = arccos(O1O2/O1O3)
        = arccos ((cos(π/p) /2sin(π/p)) / cos(π/p) /2sin(π/hpq))
        = arccos (sin(π/hpq)/sin(π/p))
 ∠O1O0O3 = arccos(O0O1/O0O3)
        = arccos(sin(π/hpq)/sin(π/q))
 ∠O2O0O3 = arccos (O0O2/O0O3)
        = arccos ((1/2sin(π/p)) /(sin(π/q)/2sin(π/hpq)))
       = arccos (sin(π/hpq) / (sin(π/p) ・sin(π/q)))
 ∠O0O3O1 = arccos (O1O3/O0O3)
        = arccos ( (cos(π/p)/2 sin(π/hpq)) / (sin(π/q)/2sin(π/hpq)))
        = arccos (cos(π/p) / sin(π/q))


 6.正多面体の連続量の計算式
本稿で最終的に求めたいのは、正多面体の連続量です。
そのうち主なものを以下に列挙しておきます。
長さ、面積、体積は稜の長さを 1 とした値です。
 ・外接球の半径(中心から頂点までの長さ)
 ・内接球の半径(中心から面の中心までの長さ)
 ・中接球の半径(中心から稜の中点までの長さ)
 ・体積
 ・表面積
 ・二面角(稜で互いに接する2つの面がつくる角)
 ・面と稜が頂点でつくる角(正8面体ではqが偶数なので存在しない)
 ・中心から稜を見込む角
 ・「高さ」(正4面体では面の中心とそれに向かい合う頂点を結ぶ線分の長さ、他の4つの正多面体では向かい合う面の中心どうしを結ぶ線分の長さで、いずれも正多面体の中心を通る)
 ・もっとも長い対角線の長さ(向かい合う頂点どうしを結び、中心を通る。正4面体では存在しない)
以下、これらを求める計算式を示します。

 a.外接球の半径(中心から頂点までの長さ)
  O0O3 = sin(π/q) /2sin(π/hpq)
 b.中接球の半径(中心から稜の中点までの長さ)
  O1O3 = cos(π/p) / 2sin(π/hpq)
 c.内接球の半径(中心から面の中心までの長さ)
  O2O3 = cos(π/p) cos(π/q) / 2sin(π/p) sin(π/hpq)

外(内)接球は、正多面体と中心を共有しかつ正多面体に外(内)側から接する球です。
これに対し、中接球というのはあまり知られていないと思いますが、正多面体と中心を共有しかつすべての稜にその中点で接する球のことです。
3つの球半径の大小関係は、文字通り、
  外接球の半径 > 中接球の半径 > 内接球の半径
となっています。
中接球は面と交わります。また、頂点は中接球の外側、面の中心は中接球の内側に位置します。

 d.基本単体と正多面体の体積
基本単体の6本の稜のうちO0O1、O1O2、O2O3 の3本は直交するので、それらの長さの積から基本単体の体積VBを求めることができます。
3角形の面積 = 底辺×高さ/2、角錐・円錐の体積 = 底面積×高さ/3なので、
  VB = O0O1・O1O2・O2O3 /6
   = (1/2)・(cos(π/p) /2sin(π/p))・(cos(π/p) cos(π/q) /2sin(π/p) sin(π/hpq))/6
   = cos2 (π/p) cos(π/q) /48 sin2 (π/p) sin(π/hpq) 多面体の体積Vは、VBに基本単体の個数Bを掛ければよいので、
  V = VB×B = B (cos2 (π/p) cos(π/q) /48 sin2 (π/p) sin(π/hpq))

 e.正多面体の表面積
正多面体の表面積は正多角形の面積の倍数なので、基本単体に頼る必要はありません。
正p角形の面積Spは、
  Sp = 2p・O0O1・O1O2/2 = p・cos(π/p) /sin(π/p)
正多面体は、F枚の面からできているので、
  S = Sp×F
    = Fp cos(π/p) /sin(π/p)

 f.二面角(稜で互いに接する2つの面がつくる角)
  2∠O2O1O3 = 2 arccos (O1O2/O1O3)
    = 2 arccos (sin(π/hpq)/sin(π/p))

 g.面と稜のなす角(面と稜が頂点でつくる角)
  ∠O1O0O3 +∠O2O0O3 = arccos (O0O1/O0O3) +arccos (O0O2/O0O3)
    = arccos((sin(π/hpq) /(sin(π/q)))
    +arccos(sin(π/hpq) / (sin(π/p) sin(π/q)))
なお、正8面体ではこの角は意味をもちませんが、その代わりに次の2つの角が意味をもちます。
・頂点で向かい合う2枚の面がつくる角
  2∠O2O0O3 = 2 arccos (O0O2/O0O3)
         = 2 arccos (sin(π/hpq) / (sin(π/p) sin(π/q)))
・頂点で向かい合う2本の稜がつくる角
  2∠O1O0O3 = 2 arccos (O0O1/O0O3)
         = 2 arccos ((sin(π/hpq) /(sin(π/q)))

 h.中心から稜を見込む角
  2∠O0O3O1 = 2 arccos (O1O3/O0O3)
         = 2 arccos (cos(π/p) / sin(π/q))

 i.「高さ」
正4面体以外では「内接球半径の2倍」です。
  2 O2O3 = cos(π/p) cos(π/q) / sin(π/p) sin(π/hpq)
正4面体では「外接球半径+内接球半径」です。
  O0O3 +O2O3 = sin(π/q) /2sin(π/hpq)
      +cos(π/p) cos(π/q) / 2 sin(π/p) sin(π/hpq)

 j.もっとも長い対角線の長さ
「外接球半径の2倍」です。
  2 O0O3 = sin(π/q) /sin(π/hpq)
なお、正4面体には対角線が存在しないため、意味をもちません。

これらのうち i と j は他の量から簡単に求められるため、以下では省略します。

--------------------- 続 く -------------------

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