4次元多胞体について1 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

以前の記事「4次元多胞体とタイリング」で4次元正多胞体の一つである正120胞体について解説しました。 その関連で、今回は4次元正多胞体全体について触れたいと思います。

その前に誤解がないように一言。
アインシュタインの相対論以降の物理学では、われわれは「4次元時空」の中に存在しているとされます。
そういうときの4次元とは、空間の3次元+時間の1次元です。
しかし、今回の記事の4次元はすべて空間の4次元なので、異なるものであることにご注意!
数学的な扱いも当然まったく異なります。
なお、シリウスさんが触れていたリサ・ランドールさんの理論では「5次元」が出てくるようですが、不勉強なもので、今後の宿題とさせてください(^^;

いきなり4次元正多胞体を考える前に、2次元、3次元の場合を復習しましょう。
2次元で対応するのは、「正多角形」です。
正多角形とは、すべての辺の長さが等しくかつすべての内角の角度が等しい多角形です。
正多角形のうち、辺の数がもっとも少ないのは、正3角形。
正4角形(通常、正方形と呼びます)、正5角形、正6角形、…と無限に続きます。
正n角形の内角の角度φは、
   φ = π―2π/n
正3角形:60°、正方形:90°、正5角形:108°、正6角形:120°、正7角形:約128.5°、…
(角度を表示するのに、度数法(°)と弧度法(ラジアン)の両方を行ったり来たりして混乱するかもしれませんが、慣れてくださいね(^_^ π=180°で換算します。)
ここで、「シュレーフリ記号」(Schlaefli symbol、aeは正しくはアー・ウムラウトといってaの上に点を二つ書く文字)というものを導入しておきます。
シュレーフリ記号では、正n角形は {n} と表示します。
また、5つの頂点をもつ星形のシュレーフリ記号は {5/2} です。

続いて、3次元の「正多面体」です。
正多面体とは、一種類の正多角形から構成されかつどの頂点の周りも同じ形をしている多面体です。
一つの頂点の周りに正n角形がm個集まるためには、その内角のm倍が360°よりも小さくなくてはなりません。
すなわち、次の条件を満たす必要があります。
   mφ = m(π―2π/n) < 2π
これから
   nm < 2(n+m)
ゆえに(n-2) (m-2)<4
この条件を満たす整数n、m≧3 の組合せは、次の5組しかありません。
   {3, 3}、{4, 3}、{3, 4}、{5, 3}、{3, 5}
これらは、順に正4面体、立方体、正8面体、正12面体、正20面体のシュレーフリ記号となっています。
シュレーフリ記号 {n, m} は、その正多面体が正n角形からなりかつその頂点図形がm角錐であることを表わします。
「頂点図形」とは、その図形の一つの頂点に連なる各辺を頂点から微小な距離εの点で切ってそれらの切点を結んでできる図形のことです。
立方体であれば一つの頂点に連なる辺は3本なので、頂点図形は3角錐となり、シュレーフリ記号は {4, 3} となります。

それではwikiで実物をどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E5%A4%9A%E9%9D%A2%E4%BD%93
これらは見る角度あるいは置き方でだいぶ違って見えます。
よく知っている立方体でも、向かい合う頂点2つを指で挟んで回してみると、上下の頂点に正方形3枚ずつ付いて組み合わさった立体と見えます。
正4面体も、平面上に置けば正3角錐ですが、向かい合う辺の中点を指ではさむと違った印象になります。
正8面体は、向かい合う頂点を指で上下に押さえると対称性がよく分かりますが、平面上に置くと正3角反柱となります(ホントは最初っからそうなんだけど)。
(正n角反柱とは、天井と底面に正n角形を2π/n回転しておき、側面に正3角形を交互に上下に置いたもの)

ここで、正多面体について表の形で整理しておきましょう。
シュ記号 名称   構成要素の数  面の形 一つの頂点に集 二面角
          面 辺 頂点      まる面=辺の数       
{3, 3}  正4面体  4  6  4   正3角形   3     約70.5°
{4, 3}  立方体   6 12  8   正方形    3      90°
{3, 4}  正8面体  8 12  6   正3角形   4     約109.5°
{5, 3}  正12面体 12 60 20  正5角形   3     約116.6°
{3, 5}  正20面体 20 60 12  正3角形   5     約138.2°
ここで、二面角とは一つの辺をはさんで隣接する二つの面が作る角度のことです。
後で、重要な役割を果たします。

なお、平面充填形(平面のタイリング)は、正3角形によるもの、正方形によるもの、正6角形によるものの3種類ありますが、これらもシュレーフリ記号で表わすことができます。

                   一つの頂点に集
シュ記号   名称      面の形 まる面=辺の数 二面角 
{3, 6}  正3角形タイリング 正3角形   6     180°
{4, 4}  正方形タイリング  正方形   4     180°
{6, 3}  正6角形タイリング 正6角形   3     180°
この場合、頂点図形は立体ではなくて正6角形等々の平面図形ですが、正6角錐等々を上から押しつぶしてペシャンコにしたものと考えてください(^_^

正多面体の各面の中心を線で結ぶと、別の正多面体ができます。
これを元の多面体の「双対そうつい」といいます。
双対の双対は元の図形です。
立方体と正8面体は互いに双対です。
正12面体と正20面体も互いに双対です。
正4面体の双対は、また正4面体となります。このことを、正4面体は自己双対であるといいます。
シュレーフリ記号をみると、正多面体 {n, m} の双対は {m, n} となっています。

いよいよ4次元正多胞体の登場です(^_^
4次元正多胞体とは、一種類の正多面体から構成されかつどの頂点の周りも同じ形になっている4次元多胞体のことです。
4次元正多胞体は、一つの辺に3つ以上の正多面体を集めることによりできます。
したがって、正多面体については、その二面角のn(≧3)倍が360°未満であれば正多胞体を作る可能性があります。
正4面体の場合には 3≦n≦5の3通り場合、立方体、正8面体、正12面体の場合にはn=3の場合に条件が満たされます。
正20面体は138.2°×3 = 414.6°なので、正多胞体は作れません。
ということで、正多胞体は次の6種類だけです。
一辺に集まる    全部で        名称(シュ記号)  
正4面体3個  → 正4面体5個    → 正5胞体 {3, 3, 3}
正4面体4個  → 正4面体16個    → 正16胞体 {3, 3, 4}
正4面体5個  → 正4面体600個  → 正600胞体 {3, 3, 5}
立方体3個   → 立方体8個    → 正8胞体 {4, 3, 3}
正8面体3個  → 正8面体24個    → 正24胞体 {3, 4, 3}
正12面体3個 → 正12面体120個  → 正120胞体 {5, 3, 3}
ここで後の {p, q, r} はシュレーフリ記号で、正多面体 {p, q} からなりかつ頂点図形が {q, r} という正多面体になっている正多胞体を表わします。

さて、2次元平面に住むアリさんは、正多面体がどんな形をしているか見ることができません。
しかし、正多面体の展開図であれば理解できますね。
http://cc.musabi.ac.jp/zoukei_file/03/seizu/NewFiles/tenkaizu.html
同じように3次元空間に住むわれわれも、4次元多胞体を直接見ることはできませんが、その3次元展開図ならば、努力すれば理解できそうです。
正多面体の形を見ながら以下の説明を読んでください。


・正5胞体は、まず正4面体(a)一つを中央に置きます。
その4つの面にそれぞれ別の正4面体(b×4)を貼り付けます。
これが3次元空間での展開図。
貼り付けた正4面体(b)の隣り合う面同士を(頭の中で)貼り付けると、出っ張った頂点4つが一つになって、正5胞体のできあがり。
  a1+b4 = 5


・正8胞体は、まず立方体一つ(a)を中央に置きます。
その前後左右上下の各面に一つずつ計6つの立方体(b×6)を貼り付けます。
最後に、どこでもいいのですが、もう一つの立方体(c)を(たとえば下に)貼り付けて、3次元展開図は完成。 立方体の展開図と似ていることが分かるかと思います。
隣り合う面同士を(頭の中で)貼り付けると、正8胞体になります。
  a1+b6+c1 = 8


・正16胞体は、正5胞体の展開図を元にします。
周りの4つの正4面体(b)の間に隙間が6つあるので、そこに辺がくっつくようにしてさらに一つずつ正4面体(c×6)を差し込みます。
だいぶくっつけましたが、まだ中央の正4面体(a)の4つの頂点は外からかろうじて見えます。
そこに頂点を付けるようにして、4つの正4面体(d×4)を差し込みます。
正4面体dの外側を向いている面のいずれか一つに最後の正4面体eをくっつけて、展開図のできあがり。
  a1+b4+c6+d4+e1 = 16


・正24胞体は、まず中央に正8面体を一つ置きます(a×1)。
その8つの面に一つずつ正8面体をくっつけます(b×8)。
8つのbの隙間から最初の正8面体aの頂点が6個見えています。
その頂点に一つずつ正8面体をくっつけます(c×6)。
さらに、8つのbの外側を向いている面に一つずつ正8面体をくっつけます(d×8)。
b、c、dの隣り合う面同士を(頭の中で)くっつけると、dの1面ずつ計8面が余ります。
それらのうちのどれか一つに最後の正8面体一つ(e×1)をくっつけてお仕舞い。
  a1+b8+c6+d8+e1 = 24

正120胞体と正600胞体について以上のような方法で展開図を想像するのは、だいぶ努力してみたのですが、さすがに無理でした(^^;

------------- 続 く -----------

 

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