射影平面 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

コクセター『幾何学入門 上・下』の内容紹介第8弾です。

Coxeter『幾何学入門 上・下』 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

複素数と共形変換 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

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前々回出てきた反転平面と似て非なるものとして、ユークリッド平面に「無限遠直線」(の半分)を付け加えた「実射影平面」があります(第6章第9節)。
(楕円的平面という言い方もあるようですが、混乱を招くように思います。また、「実」は実数の意味です。したがって、本書では扱いませんが、複素射影平面や有理射影平面というのもあるようです。)
(実)射影平面は、球面の向かい合う2点(対極点)を同一視したものと等しくなります。
これは半球面と考えられますが、その境界となる円周も対極点を同一視して半円周としておく必要があります(さらに半円周の端の2点についても同様。)。
射影平面上では、どの(普通の)直線も無限遠直線とただ1点で交わります。
また、平行な2直線は無限遠直線と同じ点で交わります。
したがって、すべての異なる2直線はただ1点で交わります。

テープを半分ひねってから両端を貼り合わせると、「メビウスの帯」ができることは皆さんご存知ですね。
射影平面に穴を1つ開けたものは、メビウスの帯と位相(トポロジー)的に等しくなります(下p.291)。
これは次のように考えると、理解できます。
射影平面を地球として、その北極部分に穴を開けます。向かい合う部分にも穴が開くので、たとえば北回帰線から南回帰線まで赤道を中心とする帯の輪(閉じた帯)ができます。
しかし、この帯の向かい合う部分は同一視されるのですから、東半球部分と西半球部分の両方は要らないので、東半球部分だけを考えることにします。
この東側の帯の西端(東経0°)と東端(東経180°)も同一視されますが、北西端と南東端、南西端と北東端は対極点なので、帯の一方の端をひっくり返して他方の端に貼り合わせたのと同じことになります。

メビウスの帯の上に右手の絵を描いてそれを動かしていくと、いつの間にか左手の絵になっています。
あるいは裏表の区別がつかないといってもおなじことです。
このような面を「不可符号曲面」といいます(第21章第2節)。
メビウスの帯は射影平面に穴を開けたものですから、元の射影平面も不可符号曲面です。
それに対し、ユークリッド平面、球面、双曲面はいずれも「可符号曲面」です。
射影平面が不可符号であるのは、その上のすべての図形が中心対称変換したものと等しいことからも分かります。
可符号曲面では正格変換と変格変換が区別されますが、不可符号曲面ではその区別はないのです。

 

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