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私的備忘録

書名:世にもおそろしいフクロウおばさん
原題:Awful Auntie
作者:デイヴィッド・ウォリアムズ(イギリス作家)
出版:小学館
内容:1930年代のイギリス。1933年12月21日、12歳の少女ステラ・アンバー・サクスビーは自室のベッドで目を覚ましたが、なぜか身動き一つできない。そこへペットのフクロウを連れたアルバータ伯母さんが現われて、ステラは両親と自動車事故に遭い数カ月間昏睡状態だったと告げた。パパとママが死んだと聞かされてショックを受けるステラに、アルバータ伯母さんは相続した我が家であるサクスビー館の権利書について尋ねる。ステラが知らないと嘘をつくと、アルバータ伯母さんは怒って部屋に鍵をかけて出て行った。アルバータ伯母さんは父の姉だが、意地悪なだけではなく素行の悪い人物でもある。アルバータ伯母さんは第一次世界大戦でイギリス人なのにドイツ軍に加わって戦い、そのときに入手したバイエルン地方に生息するフクロウであるワシミミズクを我が子のごとく可愛がっている。「ワグナー」と名づけられたフクロウは体長120センチ、体重40キロという巨体に育ち、卵から孵して育てたアルバータ伯母さんを母親だと思っている。アルバータ伯母さんは浪費家なうえに賭け事が好きで、弟の小切手を盗んで財産を使い果たしてしまい、今のサクスビー館には高齢でボケてしまった執事ギボンしか使用人が居ない。アルバータ伯母さんが部屋から遠ざかると、ステラは両親の死の真相を突き止めるためにも館から脱出し、数キロ離れた村に助けを求めに行こうと決意する。自分の体を確かめると、首から下は包帯でぐるぐる巻きにされている。ステラは何とか自由になろうと体を揺らしているうちにベッドから落ち、その拍子に包帯がゆるんだ。なんとか人間イモムシから脱皮したステラは、今度は閉じ込められた部屋から出るためにドアの向こう側にさしっぱなしの鍵を鉛筆と紙を使って手に入れ開錠したドアから抜け出す。抜き足差し足忍び足で廊下を歩き階段をおり玄関まで辿り着いたステラだが、玄関ドアにも鍵がかけられていたうえに天井の照明からコウモリみたいにぶらさがっているワグナーに見つかってしまう。飼い主に忠実なフクロウが騒いだせいでアルバータ伯母さんに捕まったステラは、今度は地下の石炭置き場に閉じ込められる。真っ暗闇のなかでステラの耳に幽霊の声が聞こえる。石炭用トンネルに閉じ込められているという幽霊の指示でしぶしぶ石炭をどかしたステラの前に、男の子の形をした光が現われた。幽霊は捨て子のえんとつそうじの少年ススで、サクスビー館のえんとつそうじの最中に死んだのだと言う。さらに大人になると幽霊は見えなくなるそうで、ステラも13歳になれば見えなくなると断言される。ステラの誕生日は三日後のクリスマスイブだ。ススに助けてほしいと頼んだステラは彼に導かれて石炭用トンネルをのぼり、厨房の壁についている戸から外に出た。厨房の床にすわってステラは今までの経緯を話してススと相談し、両親の事故の手がかりを得るために車庫に向かうが……。ステラは数百年に渡って先祖代々受け継いできた屋敷を守れるのか?
 

書名:ふたりの星
原題:Number the Stars
作者:ロイス=ローリー(アメリカ作家)
出版:童話館出版
内容:第二次世界大戦中ナチス支配下のデンマーク。コペンハーゲンで暮らすアネマリー=ヨハンセンは10歳の少女。アネマリーは三人姉妹の真ん中だが、姉のリーセは3年前に亡くなった。結婚2週間前に18歳という若さで亡くなったこともあり、両親はいまだにリーセの話題を避けている。1943年9月、アネマリーは同じアパートに住む同い年の友だちエレン=ローセンと帰宅途中に駆けっこをしていたところをドイツ兵に咎められる。質問と注意だけで解放されたものの、町角のあちこちにドイツ兵が立っていた。二人と一緒にいた5歳になる妹のキアステンが帰宅後にこの出来事を母親に話したせいでアネマリーは注意される。アネマリーとエレンの母親たちは「レジスタンスの活動で兵隊が神経をとがらせている」と話し、「顔を覚えられないように、大勢のなかのひとりでいなさい」と注意する。ドイツ軍の命令でユダヤ人の店が閉業させられるなかで迎えた10月はユダヤの暦で新年だ。ところが、ドイツ軍がシナゴーグ(ユダヤ教の教会堂)からユダヤ人全員のリストを持って行ったことで、ユダヤ人が逮捕されて連行されるのではないかと皆が恐れる。両親はユダヤ人であるローセン家のエレンをかくまう事に決め、彼女を娘のリーセということにしてアネマリーと一緒のベッドで眠るようにと言い聞かせる。その夜、ドイツ兵がやって来たことで目が覚めたアネマリーは、慌ててエレンの首にかかっているネックレスを引きちぎる。金鎖の先にダビデの星のついたネックレスをアネマリーが掌に握り込んだ途端、部屋にドイツ兵が押し入ってきた。家じゅうを家探ししたドイツ兵は「お前たちの友人のローセン一家はどこだ」と尋問する。そして、金髪のアネマリーと黒髪のエレンを見比べて疑いをかける。アネマリーの父親はとっさにアルバムから姉妹が赤ちゃんだった頃の写真を三枚はがして見せる。リーセの名前が書きこまれた写真には真っ黒な髪の赤ちゃんが映っていたことで、何とかドイツ兵を納得させて出て行かせることが出来た。夜が明けると、両親は相談してエレンを母の兄であるヘンリックの家へ連れて行くことにする。漁師をしている伯父はコペンハーゲンから北にあるギレライエに住んでいる。ドイツ兵の目をごまかすために母親に連れられた三人姉妹をよそおって汽車に乗り込む。汽車の中でもドイツ兵の尋問を受けたが、それも上手くやり過ごして無事に海岸の町に到着した四人。そこの海岸からは隣国スウェーデンを見ることができる。ナチスに支配されていないスウェーデンは今もまだ自由の国だ。伯父の家に到着すると、アネマリーは聞いたこともない親戚の通夜が行われると聞かされる。そして、次々に訪れた人々のなかには姉の婚約者だったピーター=ニールセンもいる。アネマリーは兄と慕うピーターがレジスタンスで、ユダヤ人を逃す活動をしている事を知るが……。
※1989年初版
※1940年デンマークはドイツに降伏し、それから5年のあいだドイツはデンマークを占領していた。街角という街角に、銃をたずさえた兵隊がいつも立っており、デンマーク人の日々の暮らしもドイツ軍の思いのままだった。
※本書は、友人アネリーゼ=ブラットが語った実話に感動した作者が創作した物語である。作中には当時の記録や史実にもとづくエピソードも語られている。
※作者のあとがきに記された実在のレジスタンスの青年キム=マルテ=ブルーンは、おそらく作中の登場人物ピーター=ニールセンのモデルと思われる。
※作者は1937年ハワイ生まれ、連合陸軍の歯科医将校だった父について各地を転々とし、1948年からの2年間、11歳から13歳までを日本で過ごした。2013年現在はマサチューセッツ州ケンブリッジ在住。

 

書名:ホートン・ミア館(やかた)の怖い話
原題:The Dead of Winter
作者:クリス・プリーストリー
出版:理論社
内容:19世紀のイギリス。物語の語り手である『わたし』ことマイケル・ヴァイナーが書き綴った子供の頃に経験した奇妙な出来事。12月、母の柩がハイゲイト墓地の墓穴に納められたのを見届けたマイケルは、葬儀に参列してくれた顧問弁護士ベントリーにジャーウッド氏を紹介される。彼はスティーブン・クラレンドン卿の財産管理を任されている弁護士だという。マイケルが赤ん坊だった頃に父親はアフガニスタンで戦い、スティーブン卿を庇って死んだ。それからずっとスティーブン卿は母子の生活を援助してくれていた。そして今やスティーブン卿はたった一人の身内である母親を喪ったマイケルの後見人になったという。クリスマス休暇をスティーブン卿の屋敷であるホートン・ミア館で過ごすように言われたマイケルは断ろうとしたが、ベントリー氏から渡された母親の遺言を読んだことで招待を受けることにした。翌日、ベントリー氏に見送られてマイケルはジャーウッド氏と一緒にキングズ・クロス駅で鉄道に乗った。イーリーの駅で下車した二人は迎えの馬車に乗って丘の上に建つ領主館に向かうが、マイケルは途中で女性が助けを求めている姿を目撃する。マイケルは馬車を止めてもらい、ジャーウッド氏と外に出るが女性の姿は影も形もない。見間違いだと思われたことに不満を抱えながらホートン・ミア館に到着したマイケルは、その暗い雰囲気の館に足を踏み入れたとき何かがいるという奇妙な感じを覚える。ホートン・ミア館は城壁にかこまれ濠にかかる橋を渡らなければ外に出られず、館の周囲は広大な沼地にかこまれて孤立した古い要塞のような建物だ。使用人のホッジズに案内されて、マイケルが初めて挨拶したスティーブン卿は青白く痩せこけた顔をしていた。スティーブン卿とは正反対の明るく美しい妹シャーロットが神経衰弱だという兄を世話しているらしい。その夜マイケルはベッドで泣いているうちに誰かの泣き声を耳にする。きっと水洗トイレの排水管の音だろうとマイケルは考えながら寝入った。翌朝、マイケルは身支度して食堂に向かう途中、ドン、ドンという音を聞く。マイケルは音のする方へドアをくぐって階段をおり、暗い廊下を進んで行き止まりにたどり着く。そこへジャーウッド氏がやって来て、この壁の向こうには聖職者の隠れ家があったと教えてくれる。16世紀エリザベス朝時代に迫害されたカトリックであるイエズス会の修道士が匿われ、非業の死を遂げた部屋があるのだと言う。そして、この隠れ家はスティーブン卿にとって特別な意味があり、「ここで物音を聞いたことは言わないでくれ」とジャーウッド氏に口止めされる。さらに朝食のあと、ジャーウッド氏は仕事でロンドンへ行ってしまった。残されたマイケルは暇を持て余して邸内を探検するうちに、またあの「ドン、ドン」という音を耳にする。音を辿るとまたあの隠れ家に行き当たる。壁板を押してみると、壁が動いて向こう側に開き、マイケルは勢いあまって転げ落ちてしまう。部屋の中は真っ暗闇で、何か敵意のあるものが潜んでいる。それは猛スピードで外へ駆け出し、入口の板を閉めて行ってしまった。漆黒の闇の中に取り残されたマイケルは外に出られなくなり……。ホラー小説。
 

書名:呪いを解く者
原題:Unraveller
作者:フランシス・ハーディング(イギリス作家)
出版:東京創元社
内容:『ワイルズ(原野)』と呼ばれる沼の森を抱える国ラディスでは、『小さな仲間』がもたらす呪いが人々に影響を与えている。『小さな仲間』とは原野に住むクモに似た多足生物で、織り手の味方であるとともに怒りや憎しみを抱く人を探し出して呪いの力を授ける。15歳の少年ケレンは、呪いの糸をほどいて取り除くほどき屋だ。ケレンは機織り職人の家で生まれ育ったが、12歳のとき『小さな仲間』に噛まれてから衣類の糸や呪いをほどけるようになったのだ。ケレンと共に旅をする15歳の少女ネトルは、まま母に呪いをかけられ兄姉ともども鳥に変えられていたことがある。ケレンによって呪いが解かれ、ネトルがサギから人間の姿に戻ったとき、すでにネトルの姉は命を落としていた。姉妹の死に心を痛めた長兄は療養所に入り、人間に戻ることを拒否した次兄ヤニックはカモメの姿のままだ。あるときケレンは呪いをかけられた商人の依頼を受けてトラブルになり、ネトルと一緒に牢屋に入れられてしまう。牢屋に居る二人に『沼の馬人(うまびと)』であるゴールという男が面会に来た。『ディープ(深原野)』の生き物である『沼の馬』を手に入れるには、生きた人間の目一個を対価にしなければならないので、馬の乗り手であるゴールも片目だ。ゴールは自分の主の依頼を受けるならば二人を牢屋から出してやると提案する。馬人を雇える者は金持ちと決まっているが、ゴールは主が誰であるか答えないので雇用主の正体は不明である。警戒する二人にゴールは紙切れを見せる。そこには投獄された呪い人にむけてほどき屋への復讐を示唆する文章が記されていた。敵がいることを知ったケレンとネトルはゴールの話を受け、沼の馬がひく馬車に乗って逮捕された呪い人が収容される『赤の病院』へ向かった。正体不明の雇用主の力で病院を視察することが出来た三人は、独房にいる呪い人のひとりジェンディ・ピンが別人であることに気付く。ゴールが雇用主から教えられた情報によると、『救済団』という秘密結社が呪い人を匿っているという。三人は逮捕された囚人がいつ入れ替わったのか調べるために、囚人護送の船が通過した運河の水門管理人のところへ行くことにした。水門管理人のスパイクは頑固な正直者で、些細な不正も許せない性分なのが災いして呪いをかけられたことがあり、ケレンに助けられたことがあるのだ。運河の水門に到着するとスパイクは行方不明で、代わりに彼の12歳になる息子トナトが居た。またしてもスパイクは呪いをかけられた、というのがトナトの意見だった。スパイクに呪いをかけた人間を探した結果、運河で違法な釣りをして糊口をしのいでいるブラスクという人物が見つかる。トナト・ケレン・ネトル・カモメのヤニックは協力してスパイクを呪いから解放し、人間に戻った彼に囚人船について訊ねる。スパイクから護送役の番人が怪しい奴らだったという証言を得ると、ゴールがさらに詳しい情報を手に入れた。それによるとジェンディ・ピンの護送をした番人のひとりがハベルという村で溺死したと分かった。シャロー(浅原野)に位置するハベルに向かった三人は、男を沼に引きずり込むといわれるペール・マロウ(沼の精)が番人を溺死させたと知る。しかし、ペール・マロウと呼ばれている怪物の正体は三十年前に呪いをかけられた人間の女性ベルシアだ、とゴールは言う。死んだ番人の情報が欲しければベルシアの呪いを解くしかないとゴールは言い残し、ケレンとネトルを孤立した村に置いて他所に行ってしまう。二人が聞き込みを始めると村人たちは表面上は親切だったが、調査が進むとケレンは顔を隠した二人組の男に襲撃され「出て行け」と脅される。妨害に遭いながらも二人は呪い人を突き止め、ケレンは呪いを解いたバレシアから番人たちの目撃情報を得る。だが、ハベルの村は自衛のためにペール・マロウの存在を必要としており、ケレンたちはベルシアの呪いを解いたことを秘密にすると約束した。そのためゴールが二人を迎えに来たとき、ケレンは呪いが解けなかったと言った。ゴールはケレンを宙吊りにして「呪いを解け」と強制しようとしたとき、ゴールの元パートナーであるハーランドが訪ねてきた。その隙に二人は逃げ出して、追って来るゴールをかわしながらタンジーの店に逃げ込む。タンジーの経営する食堂は『復活者会』の人間が落ちあえる場所になっている。『復活者会』とはケレンによって呪いから解放された者たちのネットワークのことだ。撒いたはずのゴールが店にもやって来たので、タンジーが応対に出て帰ってもらった。ゴールはメモを残しており、そこには「雇用主が会いたがっているので、明日、クラリティ広場に来て、レオナ・サール顧問を訪ねること」と記されている。どうやら正体不明の雇用主は政務庁の外交部門の一部である『友好問題委員会』の仕事をしているらしい。委員会の仕事には、呪い人を探し出して逮捕することも含まれている。翌日、二人はラディスの首都ミズルポートに移動し、友好問題委員会の事務所があるクラリティ広場に到着した。そこで偶然ハーランドと会い、二人はゴールの過去を知る。ハーランドと別れた二人はメモを受け取り、その指示に従って書記係のあとを付いて行くが、ひと気のない埠頭で囲まれて襲われる。ピンチに陥ったとき、ゴールと沼の馬が現われて二人を助け、レオナ・サールの元へ連れて行ってくれた。しかし、レオナは呪いを掛けられてコウモリの姿になっており……。
※物語の舞台である『原野』の風景は、スペインのカナリア諸島にあるラ・ゴメラ島のガラホナイの森がモデルになっている。また、物語に登場する不思議な生き物たちはスコットランドの伝説や、いろいろな伝説に登場するモノがモデルになっている。

馬の常歩→速歩→駆歩→襲歩
 

書名:帆船軍艦の殺人
作者:岡本好貴(おかもとよしき)
出版:東京創元社
内容:1795年、フランス革命政府との長きにわたる戦いによって、イギリス海軍は慢性的な兵士不足に陥っていた。サウサンプトンに停泊した戦列艦ハルバート号は水兵を補充しようとするが思うように徴兵できず、艦長グレアムは内地のソールズベリーにプレス・ギャング(強制徴募隊)を向かわせる。ソールズベリーに暮らす24歳の靴職人ネビル・ボートは、出産を控えた妻と幸せな生活を送っていた。だが、妻の父と入った酒場でプレス・ギャングと遭遇し、ネビルは殴り倒されて戦艦に乗船させられランズマン(下級水兵)にされてしまう。ネビルと一緒に強制徴募で連行されたのは、同じ靴職人のジョージ、牧場主の息子ガブリエルとその取り巻きのヒューとフレディ、雑貨屋の息子ポジャック、その他多数。新米水兵たちを乗艦させたハルバート号は任務地である北海へ向けて出港する。新兵であるネビルたちは慣れない過酷な仕事のかたわら軍事訓練も受けなくてはならない。その訓練中にポジャックをかばったジョージに船乗りの経験があると分かり、彼はエーブル・シーマン(上級水兵)に昇格した。ある新月の晩、夜間の当直でネビルは甲板に居り、ジョージは檣楼で見張員をしていた。人の顔も判別つかない闇夜のなか、非番のガブリエルがやってきてジョージと話して帰って行った。面識がない筈の二人が何を話したのだろう?と不審に思っていたネビルに、誰かがうめき声とともに倒れかかってきた。周囲の水兵も驚き騒ぎになったところでランタンを持った海尉がやってきて軍医も呼ばれた。そして、倒れた水兵が撲殺されていたことが判明する。報告を受けたグレアム艦長は、殺人事件の調査を水兵出身の海尉ヴァーノンに命じる。すぐに聞き込み調査が始まるが、事件当時は暗闇だったこともあり、居合わせた者たちは誰も犯人を見ていないと言う。はっきり怪しいと名指しできる者はネビルだけとなった時、船大工長の道具箱から金槌が消えていることが報告される。盗まれた金槌が凶器として使用されたのなら犯人は水兵ではなく士官の可能性もある。一方、殺人犯の疑いをかけられているネビルにガブリエルが「戦艦から脱走しないか」と声をかける。脱艦計画の集会に参加したネビルは、ジョージも仲間の一人と知るが……。フランス海軍との苛烈な戦闘を挟んで、さらなる殺人事件も起き――海上の軍艦という逃げ場のない密室で起きる不可能犯罪を描いた歴史推理小説。
※本書は第33回鮎川哲也賞受賞作『北海は死に満ちて』を改題して刊行された

「ネビル・ボートです」
ネビルの名前を聞いた途端、
「ネビル・ボート(海軍の艇)!まさに海軍にぴったりの名前じゃないか」

「リギン(索具)のことはだいたいライン(索)って呼ぶんだ」
「船でロープ(縄)って言ったら、絞首刑のことを指すから、縁起が悪くてみんな口に出さないんだ」
「当たり前だけど盗みは重罪だ。陸じゃ縛り首だろうが、ここじゃ大勢から鞭で打たれて、死んだほうがマシという思いをするぞ」
※この時代の英国では、店から五シリング以上のものを盗むと絞首刑となった。

ネコというのは艦で振るわれる鞭の通称であった。この鞭は短いロープの先をほぐし、九つの細い房に編み直して作られる。細い房がネコの尻尾のように見えるため、この鞭は〝九尾のネコ″と呼ばれていた。
 

書名:行く手、はるかなれど ――グスタフ・ヴァーサ物語――
作者:菱木晃子(ひしきあきらこ)
出版:徳間書店
内容:16世紀初め、デンマークの圧政に苦しむスウェーデン。1520年秋、スウェーデン中東部、セーデルマンランド地方、テルネー城の主・スウェーデン枢密院顧問官ヨアキム・ブラーの夫人マルガレータを訪ねて一人の若者がやって来た。彼は夫人の実兄で、二年前にデンマークへ人質に差し出されたグスタフ・エリックソン・ヴァーサ。グスタフは人質生活を送っていたデンマークのユトランド半島北部にあるカルー城から脱出し、北ドイツのリューベックを経由して祖国へ戻ってきたのだ。デンマークからの独立を主張するグスタフに対して、妹夫婦は独立派の貴族もクリスチャン二世をスウェーデン王として認め即位式に参加することになったと告げる。グスタフはクリスチャン王を信用してはいけないと反対するが、妹夫婦は11月の即位式に参列するために首都ストックホルムへ出かけ、グスタフはレーヴスネースにある父親所有の別邸に身をひそめる。だが、即位式がどうなったかの噂も聞こえてこないことに苛立ったグスタフは、マリーフレードの修道院に隠居しているウプサラの元大司教ヤコブ・ウルブソンをひそかに訪ねる。そこへストックホルムから戻ってきた男が悲報を告げる。即位式から四日後の1520年11月8日、新王クリスチャン二世はストックホルム城から目と鼻の先にある大広場で宴に招いた百名近いスウェーデンの貴族や聖職者の首を刎ねさせた。後世に「ストックホルムの血浴(けつよく)」と伝わる事件である。さらに広場で犠牲となった男たちの妻子も捕えられ、人質として全員が船でデンマークの首都コペンハーゲンへ送られたという。グスタフは父親をはじめ、義弟や「独立派」の重鎮たちの死を知ってショックを受けたが、涙ながらに祖国の解放を誓う。そして農期ごとに仕事をさがしてさすらう作男(さくおとこ)に身をやつし、グスタフはスウェーデン中部のダーラナ地方を目指す。ダーラナの民を説得し、結束して立ち上がらせる為だ。だが、頼ろうと思っていたダーラナ地方に住まう学友たち、鉱山主のアンデッシュには断られ、豪農のアレントには裏切られる。夫の密告に気が付いたアレントの妻の機転に助けられたグスタフは、追手であるデンマークの執政官から逃れ、善意の民に支えられて旅を続けるが……。
※本書は、スウェーデン建国の父グスタフ・ヴァーサの若い日の一時期を、史実に基づきつつフィクションのエピソードを織り交ぜた歴史物語。
※時代背景:1397年、デンマーク・スウェーデン、そして既にデンマーク統治下にあったノルウェーの三国のあいだでカルマル同盟が結ばれる。三国が同じ君主のもとにまとまり、軍事・外交面で協力しあうという内容で、同盟により、デンマーク国王がスウェーデン国王を兼ねることになっていた。内政はそれぞれの国の法律を重んじることになっていたが、財政難に苦しむデンマークは、スウェーデンから厳しく税を取り立て、男たちをデンマーク軍に徴兵した。デンマーク国王の非道なやり方にスウェーデン側は不満をつのらせ、ときにスウェーデン国王として認めなかったり、ときに武力で退けたりして抵抗するという、混迷の時代が続くことになる。当時スウェーデンでは、隣国デンマークによる支配に抗い、独立をめざす「独立派」と、デンマークとの同盟を維持し、その支配下にとどまるべきとする「同盟派」が対立していた。1513年にクリスチャン二世がデンマーク王に就くと、「同盟派」は勢いを盛り返し、スウェーデンは追い詰められていく。だが、スウェーデン軍は奮闘し、その結果、1518年に休戦協定が結ばれ、グスタフ・ヴァーサと有力者の息子数名が人質としてデンマークへ送られた。だが、グスタフ・ヴァーサは1519年9月に軟禁されていたカルー城を脱走した。

エリックソン(エリックの息子)

風邪に効くタイム、痛み止めになるローズマリー、胃腸にいいミント

銅の精製過程で出る赤い弁柄(べんがら)は、木の家に塗ると耐久性が増すという。これは地元で暮らす民の知恵なのだ

スウェーデンで聖ヨーランと呼ばれるこのキリスト教の聖人は、国によって、聖ゲオルギウス、聖ジョルジオ、聖ジョージなどと称され、竜退治の話で知られている。
 

書名:ナイチンゲールが歌ってる
原題:Listen to the Nightingale
作者:ルーマー・ゴッデン(イギリス作家)
出版:岩波少年文庫
内容:十歳の少女ロッティことシャーロット・テューは、生まれた時にバレリーナだった母親を亡くし、母方の伯母エイミーと二人暮らし。ロッティは母の恩師でもあるマダム・ホルバインの経営するバレエ学校で学び、伯母はバレエ団の衣裳主任として働いていた。ところが、マダムが急死したことでバレエ団は継続するものの学校は閉鎖されることになった。マダムの後を継いだヒルダは生徒たちの進路の世話をし、ロッティには寄宿制の王立バレエ学校中等部であるクィーンズ・チェイスの受験を勧める。応募書類に添える写真を撮ってもらいに行く途中で、ロッティはペット・ショップの子犬と目が合った。その子犬が盗まれる場面を目撃したロッティは、思わず泥棒を追いかけ取り返す。しかし、子犬が怪我をしていたために通りすがりの女性に付き添われて動物病院へ行くことになり、そのままロッティが自宅で飼うことになってしまった。プリンスと名づけた子犬を拾ったと伯母には言い、ロッティはお世話に奔走する。週末、ハムステッド・ヒースへ子犬を散歩に連れ出したロッティは足の不自由なお嬢様ヴィオレッタことヴィヴィに出会う。プリンスを気に入ったヴィヴィと仲良くなったロッティは彼女の運転手サムに家まで送ってもらい、伯母と一緒に皆でお茶の時間を過した。子犬と離れがたくなったロッティは入学試験で手を抜いて踊ろうと考えるが、いざ試験が始まると全力を出してしまい合格を勝ち取った。伯母が奨学金の手続きをするあいだ学校の玄関広間で待っていたロッティは、そこで同じ受験生でイタリア人の男の子サルヴァトーレ・ルフィーノと知り合うが、彼にいたずらを仕掛けられたせいで印象は最悪だった。さて、寄宿舎に入ることになったロッティは悩んで大人たちに相談したすえに、ヴィヴィに子犬を託すことにした。そして迎えた入学日、同じ試験で合格した女の子アイリーンとの再会を喜ぶロッティだが、あのいたずら男子サルヴァトーレがヴィヴィの兄だと知ってショックを受ける。やがてロッティは学校生活でサルヴァトーレに振り回されることになり……。
※1992年初版
※作者ルーマー・ゴッデン(1907~1998年)はイギリス生まれで、幼少期を植民地インドで過ごしたのち、帰国してロンドンでバレエを学んだ。1930年代にインドに戻り、カルカッタでバレエ教室をひらくかたわら創作活動を始めた。本書はスコットランドで執筆された。
※本書の舞台クィーンズ・チェイスは架空の学校だが、モデルと思われる王立バレエ学校は、ロンドン南西のリッチモンド・パークにあって、ホワイト・ロッジと呼ばれている。
※ロッティと伯母の住まいは半地下から三階まである集合住宅の、日当たりも風通しも悪い半地下。イギリスには、一階が道路より少し高くなっていて、短い石段の上に玄関がある建物が多い。その下に半地下の階があり、換気と採光のために、道路と建物との間に空堀(からぼり)が設けてあることが多い。使用人が玄関を使わずに、空堀のなかにある石段を上り、道路と空堀とのあいだのフェンスの、目立たない扉を開けて出入りする、というのが、珍しくない。
※イギリスの通貨:ペニーはイギリスのお金の単位。ペンスはペニーの複数形。百ペンスで、一ポンドになる。1971年までは、十二ペンスで一シリング、二十シリングで一ポンド、つまり、二四〇ペンスで一ポンド。

クィーンズ・チェイスというのは、「女王の御猟場(ごりょうば)」ということだ。

エイミー自身は、「エメー」と呼ばれるほうが好き。エメーというのは、フランス語で、「愛される」という意味だ。

みんなにライオンと呼ばれていたライオネル・レイ

「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、つまり、チャールズ王の騎士という、スパニエルです」

目はスミレ色、つまり、ヴァイオレットの色で、ヴィオレッタという名前がぴったりだ。

みんながマムゼリーと呼んでいたのは、フランス人のマドモアゼル・ジロー。

ミセス・メレディスで、子どもたちにはミセス・メリーと呼ばれていた

ニコ:ドメニコの愛称

ジョフリー・ピックが、ピクルスと呼ばれてた。つまり、「漬けもの君」ということだ。
 

書名:シーリと氷の海の海賊たち
原題:Ishavspirater
著者:フリーダ・ニルソン(スウェーデン作家)
出版:岩波書店
内容:氷海(ひょうかい)の海賊たちを束ねるユキガラス号の船長シロガシラは、あらゆる島の皆に恐れられている。長く白い髪を貴婦人のように結ったシロガシラは、奪った財宝は手下たちに与え、自分はダイヤモンド鉱山で働かせる幼い子供を欲しがる。十一月のある日、青あらい島の青入江という村に住む十歳の少女シーリは妹ミーキと家族が所有する小島・鉄のリンゴ島にベリーを摘みに出かける。ベリーが思うように収穫できないことに焦れたシーリは、海賊を怖がるミーキを一人で島の反対側に行かせた。ふいにミーキの悲鳴が聞こえ、シーリが島の反対側に駆けつけると妹の姿はなく、ボートに乗った四人の男が妹を攫ってゆく姿が見えた。急いでボートを漕いで青入江の港に戻ったシーリは、村の皆に妹が連れ去られたことを訴えたが、海賊を恐れて誰も追いかけようとしない。ただ一人、姉妹の父親だけが取り戻しに行くと宣言した。父親は七十歳近くで、怪我の後遺症で足を引きずって歩く。きっと海賊を追って出かけたら戻って来れないだろう。母親は妹を産んで亡くなったから、父親が居なくなればシーリは一人ぼっちになってしまう。明日の朝に出発すると言って就寝した父親の荷物を持って家を抜け出したシーリは、海賊が集まる帆の村へ航海する貨物船・北極星号の船長ウールストロムに乗組員として乗船させてくれるように頼む。シーリの事情を知った船長がシロガシラを恐れて断ろうとした時、北極星号の料理人フレードリクが厨房助手として雇うと言ってくれた。実はフレードリクも少年時代に妹を海賊に連れて行かれており、シーリに協力を約束する。喜ぶシーリだが、北極星号が寄港したオオカミ諸島で船長に騙されて置き去りにされてしまった。そんなシーリに一夜の宿を提供したオオカミ狩人の女性・ナンニは、「あんたは狩人に向いてる」と言う。その提案を断ってナンニの小屋から出て行ったシーリは、港で怪しげな二人組・つるつる頭とひげ面(づら)が話している計画を聞いてしまう。二人組は「シロガシラの仲間になる」ために漁船を盗んで海賊を追いかけると言う。シーリは二人組の目を盗んで漁船に便乗する。だが密航していたことが二人組に見つかり、シーリは嵐の中の海に放り出された。運良く氷山の岩棚に着地して溺死をまぬがれたシーリは、浮氷(ふひょう)伝いに無人の岩礁にたどり着く。寒さと空腹に震えるシーリは、そこで人魚の子どもを見つける。此処には人魚の暮らす洞窟があったのだ。シーリが人魚の子どもとの暮らしに慣れた頃、子どもとはぐれていた母親が戻ってきた。人魚の母子が泳ぎ去ってしまうと、海面が凍り始める。シーリは凍った海面を歩いて人が住む島を目指すが、途中で吹雪に遭って何も分からなくなってしまった。岸壁に避難したシーリが吹雪が止んだあと見つけたのは、船首にオオガラスの木像がある船・ユキガラス号だった。ついにシロガシラの鉱山を見つけたシーリは、焦って斜面から落ちて気絶してしまう。次にベッドで目を覚ましたシーリは、おもて島の帆の村で修理屋をして生計を立てる未亡人アンナと息子のエイナルが暮らす家にいた。シーリはこの家のドアの前に倒れていたと言うが……。冒険ファンタジー。
※2015年初版
※本書は、スウェーデンで2012年12月に放送された子供向けのラジオドラマがもとになっている作品
 

書名:フォグ 霧の色をしたオオカミ
原題:Nebbia
作者:マルタ・パラッツェージ(イタリア作家)
出版:岩崎書店
内容:19世紀、ロンドン。13歳の少年クレイは、「泥ひばり」と呼ばれる泥あさりで生計を立てているストリートチルドレン。5歳で孤児になったクレイは、サルじいさんに泥ひばりの暮らしを教えてもらった。クレイは仲間のヌッキーとトッドの三人でテムズ川にかかるブラックフライアーズ橋のたもとを縄張りにしており、「ブラックフライアーズ橋の暴れ者」と呼ばれている。1880年6月末、クレイはタロットカードを売ろうと居酒屋へ行ったものの買い手が見つからなかった。そこへ店に駆け込んできた少年が「サーカスのパレードだよ!」と客たちに知らせる。クレイはチープサイド通りで街に到着したパレードを眺め、ばら撒かれたチラシを手に入れた。チラシには「イギリスに生存する最後のオオカミ」を連れて来たと書かれている。オオカミを見られることにわくわくするクレイは、サーカスの隊列にロマの老婆がいることに気付く。タロットカードをロマの老女に売ることにしたクレイは、ウェストミンスター橋のたもとに張られたサーカスのテントに忍び込もうとして団員の少女オリーに見つかってしまう。ロマの老婆の孫だというオリーにタロットカードを託したクレイは、彼女にこっそりオオカミを見せてもらおうとする。ところが、ちょうど調教師の父子がオオカミを虐待する現場を覗き見してしまい、ショックを受けたクレイはテントから走り去った。クレイはオオカミを逃がすと決め、オリーの協力を得る。夜中、クレイは仲間たちが眠っている小屋から一人で抜け出し、忍び込んだサーカスのテントの中に置かれたオオカミの檻に近づき声をかける。「フォグ、助けに来たんだ」しかし、オオカミは牙を剝き……。
※時代背景:ヴィクトリア女王が治めていた19世紀の英国。首都ロンドンでは、産業革命による急速な都市化にともない、急激な人口増加が起きた。住居の供給が追いつかずにスラム街ができ、貧困に苦しむ人々があふれた。子供は貴重な労働力として重労働を課せられることも少なくなかった。そして、孤児や過酷な環境から逃げ出した子供が、ストリートチルドレンとして多数暮らしていた。
※ロマ:ヨーロッパを中心に、世界各地で生活する少数民族。音楽や踊りを好み、馬の売買や占いなどで生計を立てていた。

「クレイ?泥ひばりにぴったりの名前だね」
※クレイは英語で土の意味

「オオカミのこと『フォグ』って呼んでたでしょ?」
「霧のような毛色だからだよ」
※フォグ(fog)は英語で霧の意味

グリーンスリーブス:古いイングランド民謡。「グリーンスリーブス」とは「緑の袖」という意味。ここではある女の人を指している。
闘犬(とうけん:19世紀のイギリスでは、イヌとウシやクマを戦わせるスポーツが流行。その後、動物愛護の観点から禁止された。)
カービン銃:騎兵銃、騎銃。歩兵用小銃より銃身が短い騎兵用小銃のこと。カービンという単語は古フランス語のCarabinier(騎兵隊)に由来する。馬上での取り回しを考慮し、短縮軽量化の上で背負いやすいように、吊り環の位置を変更するなどした小銃。
 

書名:メリサンド姫 むてきの算数!
原題:Melisande
作者:E・ネズビット(イギリス作家)
出版:小峰書店
内容:昔、人間と妖精が一緒に暮らしていた頃、ある国にお姫さまが生まれ、メリサンド姫と名づけられました。ところが、王さまは姫の誕生祝いの会をしないことにしました。「気をつけていても、呼ぶべき妖精の誰かを忘れる。そうなると、ひどい目にあう」という理由でした。とはいえ、国王夫妻が赤ちゃんを連れて教会から戻ってくると、すでに大広間には七百名の妖精が待っていて言いました。「なぜ誕生祝いに、呼んでくれなかったのだ?」そして「我々はこれから順番に、姫に呪いの贈り物を授けてやろう」と、一番いじわるな妖精ワルボラが言いました。「姫は一生、はげ頭となるだろう」続いて次の妖精が呪いを唱えようとすると、王さまが止めました。「しきたりでは、祝いの会に呼ばれないのは悪い妖精ただ一人と、決まっておる。それは勿論、呪いをかけたワルボラだろう」それで納得した妖精たちは帰っていきました。ですが、赤ちゃんはつるつるの禿げ頭になってしまいました。泣き崩れるお妃さまに、王さまは言いました。「わしは、どんな願いごとでも、一つだけ叶えてくれる魔法の小箱を持っておる。姫が大きくなったら、ゆずるとしよう」さて、大きくなったメリサンド姫が願いごとをする時になると、お妃さまが言いました。「わたしがいうとおりに、願いごとをしておくれ」姫はその通りにしました。「わたしに、金色の髪が生えますように。髪の毛は毎日三センチのび、切るたびに、倍の速さでのびますように……」「そこまで!」と、王さまが遮りました。算数が得意な王さまは、姫が大変なことになると気づいたからです……。
※作者E・ネズビット(1858~1924年)は、自分が女性であると分からないように、「イーディス」という名前をいれずに、イニシャルの「E」だけで作品を発表していた。