暁に祈れ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

暁に祈れ(ネタバレ)

暁に祈れ



原題:A Prayer Before Dawn
2017/イギリス、フランス 上映時間117分
監督:ジャン=ステファーヌ・ソベール
製作:ニコラス・サイモン、ロイ・ボウルター、ソロン・パパドプーロス、リタ・ダゲール
製作総指揮:ジェームズ・シェイマス、ジェニファー・ドン、ウッディ・ムー、ピーター・ワトソン
原作:ビリー・ムーア
脚本:ジョナサン・ハーシュビーン、ニック・ソルトリーズ
撮影:ダビド・ウンガロ
美術:レク・チャイヤン・チュンスティワット
衣装:ルプタ・ウタマ
編集:マルク・ブクロ
音楽:ニコラス・ベッカー
出演:ジョー・コール、ポンチャノック・マブラン、ビタヤ・パンスリンガム、ソムラック・カムシン、パンヤ・イムアンパイ
パンフレット:★★★★☆(700円/この公開規模の割には情報量多めで頑張ってるパンフ。映画の補完に最適)
(あらすじ)
タイで自堕落な生活から麻薬中毒者となってしまったイギリス人ボクサーのビリー・ムーアは、家宅捜索により逮捕され、タイでも悪名の高い刑務所に収監される。殺人、レイプ、汚職がはびこる地獄のよう刑務所で、ビリーは死を覚悟する日々を余儀なくされた。しかし、所内に新たに設立されたムエタイ・クラブとの出会いによって、ビリーの中にある何かが大きく変わっていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




99点


※今回の記事は、「サニー 永遠の仲間たち」のネタバレに触れているんですが、とても良い映画なので、観てから読んで!

「刑務所を舞台にしたリアル系ムエタイムービー」という触れ込みだけで興味が湧くし、「暁に祈れ」という邦題もカッコイイということで、観る気マンマンになった僕は前売り券を購入しまして。早く観に行きたかったものの、他の「公開が終わりそうな作品」を優先して観ていたら、なかなか足を運べなかった…という、ありがちなパターン。で、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題作品になったので、12月25日(火)、ヒューマントラストシネマ渋谷で観て来ました(その後、新宿で「レッド・ブレイド RED BLADE」を鑑賞)。僕も頑張りますYO!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォォッ!


前売り特典は「特製ステッカー」でした。


劇場には記事の切り抜きがありましてね。


コアチョコのTシャツが売られていたものの、サイズがなかったのでお店の通販で買いました (´∀`=) エヘヘ


観客は15人ぐらいだった記憶。



本作は「映画秘宝 2019年1月号」掲載に掲載された“信用できるライター”ギンティ小林さんによる『あしたのジョー』から爽快感を抜いて、ハードコア濃度のみを上げたような実話」という表現がピッタリの実録刑務所ムービーでしてね。お話だけザッと書くと、タイに流れてきたイギリス人ボクサーのビリーが違法ドラッグに溺れてしまって逮捕→刑務所に入って地獄巡り→ムエタイチームに入って、紆余曲折あるも“負けたら殺される試合”に勝って更生!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォォッ!」という実にわかりやすい感じなのです。


イギリス人ボクサー・ビリーは違法薬物に手を出して逮捕→収監されちゃいましてね。


刑務所に入ってみれば、こんな人ばかりで2秒で帰りたいのでした。


でも、ムエタイを習うことで更生。父さん、オレ、もう一度やり直してみるYO!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ!



って、話だけ切り取ると、よくある“更生系格闘スポーツ映画”なんですけど(例えば「クライング・フィスト 泣拳」のサンファンのパートとか)、本作は“使われなくなった刑務所”で“元・囚人”たちを起用して撮影したことで、本物の刑務所ドキュメンタリーを観ているかのような圧倒的なリアリティがありまして。さらに主人公の主観目線だけで話が進むため、例えばタイ語が理解できない序盤は字幕すら出ないし、主人公同様に観客も「なぜこんな状況になっているのか?」が一切不明な状況に放り込まれるため、いつ何をされるかわからない緊張感が画面に漲っていて、ホラー映画のように怖いんですね(ちょっと「サウルの息子」を思い出しました)。


観客は主人公の視点で地獄巡りをさせられるんですね。


普通の役者さんも何人かいて、署長役は「オンリー・ゴッド」が最高だったヴィタヤ・パンスリンガム。


タバコを吸いながら指導する無頼なコーチ役のソムラック・カムシンも激渋でしたな。



しかも、タイの刑務所ったら思っていた以上に地獄というか。今まで映画で表現されてきた刑務所がワンワンパラダイスに見える級の無法地帯であり、暑いせいか全員パンツ1丁でタトゥー祭りだワッショイ状態の中、寝返りできないほど密集した状態の大部屋が不衛生極まりないのはもちろんのこと、ドラッグや殺人も横行しているからゲンナリするしかなくて。もうね、何がキツいって、序盤に見せられるレイプシーン。世にいる腐女子の方々は男同士のアナルセックスに無限の可能性を見出しているようだし、僕も冗談で「アナルの可能性」について書いたこともありましたが、正直なところ、大腸検査で肛門に指を挿入された時に吐き気がして医者に殺意を抱いた僕としては何があっても無理だし、あんな風に尊厳を踏みにじられたらマジで死にたくなるだろうなと。「翌日、被害者が首吊り状態で発見されるも、みんな『またか (゚⊿゚)』顔をするだけ」という対応も良い意味で非道くて、今年公開された「キックボクサー ザ・リベンジ」のタイの刑務所がいかに牧歌的だったかを思い出して(タイソンもいて天国のよう!)、「あの日に帰りたい… (ノω・、)」とすっかりユーミン気分だったというね(何が何やらな着地)。


このビジュアルを見て! 囚人が懲罰される時は悲鳴をスピーカーで流したりと嫌がらせも充実した施設だったり。



ただ、僕が何よりもグッときたのは“燃え”の要素があったこと。「ついドラッグを摂取して暴走→チームメイトにちゃんと謝って仲直り」といった男同士の和解シーン、「酒とドラッグとムエタイで体がボロボロなのに、試合に負けると借金が返せずエイズに感染させられる(注射器で脅す場面が最悪すぎ←誉め言葉)」というハードすぎる逆境シーン、「バックスピンエルボーを練習→試合で出して相手をKO!」という必殺技シーンなどなど、露骨なエンタメ演出はしないものの、しっかり“燃えるポイント”があるんですよね。それと、宇多丸師匠も批評の中で仰有っていましたが、最後、病院から一度は逃げるも帰ってくる展開は、ドラッグに逃げ続けてきた彼自身がやっと逃げないで己と向き合うことを表していて、最後に父親役としてビリー・ムーア本人が刑務所で主人公と面会して終わるのは、実に見事な着地じゃないかと。ある意味、過去の“愚かだったけど必死にサバイブしてきた自分”を優しく受け入れるかのようで、涙が止まらなかったです… (ノω・、) ビリー...


なんとなく「サニー 永遠の仲間たち」のこの場面を思い出しました。
三角絞めでつかまえて-自分をそっと抱き締める


でね、僕的に本作を観ながらスゲー思ったのは、「人間が立ち直ろうとする時」って、もちろん周囲のケアも大事なんでしょうけど、とは言え、結局、自分で立つしかないということ。自分を操縦しているのは自分なのだから、自分がやる気になって、自分が自分を変えていかないと無理というか。なんて言うんですかね、僕的に本作と「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、「自分をダメにしているのは自分」ということに気付いた人間の「ONCE AGAIN」だったから、ハートを強打されたんでしょうな。ハッキリ言って、昨年は仕事でいろいろあって向き合えなくて、「ブロガー・カミヤマΔ」や「三角絞め」としての活動の数々に逃避してました。そんな自分が嫌だから何とかしようと思っても、全然上手くいかなかった。でも、本作のビリーと比べたら僕なんか天国にいるようなものなのだから、もう一度、頑張ってみようと。なんかね、とても勇気づけられて、僕にとっては大切な1本になった次第。


ということで聴いてください、ライムスターで「ONCE AGAIN」↓(ラジオパーソナリティ風にドヤ顔を添えてーー)




ううむ、何だか気持ち悪い文章をダラダラと垂れ流しちゃってすみません…。そんなワケで、僕的にはまったくもって100点としか言いようがないベストムービーなんですが、しかし。ああん、ビリーったら、また違法薬物に手を出して逮捕→服役しているそうなので、1点マイナスして99点という評価 (´Д`;) ンモウ! みなさん、違法薬物とかやったらダメ絶対、ですぞ。




ビリー・ムーアによる自伝(※英語です)。早く邦訳を出せ!ヽ(`Д´)ノ



あまりにヘビーでゲンナリするジャン=ステファーヌ・ソベール監督作。僕の感想はこんな感じ



非常に連想したボクシング映画の傑作。僕の感想はこんな感じ



連想した地獄ムービー。僕の感想はこんな感じ



ヴァン・ダム“出演”のリブートシリーズ2作目。僕の感想はこんな感じ



リンゴ・ラム監督×ヴァン・ダム主演の刑務所ムービー。結構良い映画なのヨ (・∀・) ホントダヨ