クライング・フィスト 泣拳(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

クライング・フィスト 泣拳(ネタバレ)

クライング・フィスト 泣拳



原題:Crying Fist
2005/韓国 上映時間120分
監督・脚本:リュ・スンワン
武術:チョン・ドゥホン
脚本:チョン・チョロン
製作:オム・スンヨン、パク・チェヒョン
プロデューサー:ハン・チェドク
撮影:チョ・ヨンギュ
美術:パク・イリョン
音楽:パン・ジュンソク
出演:チェ・ミンシク、リュ・スンボム、イム・ウォニ、ピョン・ヒボン、オ・ダルス、キ・ジュボン、キム・スヒョン、チョン・ホジン、ソ・ヘリン、イ・ジュング、アン・ギルガン、ナ・ムニ
(あらすじ)
かつてアジア大会で銀メダルを獲得したボクサーなのに、今や借金まみれとなって生きるために“殴られ屋”として街角に立つテシク(チェ・ミンシク)。すさんで少年院にまで行き、そこでボクシングと出会って、初めて自分にも何かができるという喜びを得たサンファン(リュ・スンボム)。こんな中年男と新人ボクサーが同じリングにあがり、火花を散らすことになるのだった。(以上、amazonより)

予告編はこんな感じ↓




100点


今年からDVDの感想はまとめて書くことにしていたんですが、しかし! 非常に大事な作品なのでね、今回は特別に独立した形で書き残しておきますよ。作品自体は以前からなんとなく知ってて、レンタル屋で何度か手に取ろうとはしたんです。ただ、「泣拳」ってタイトルが引っ掛かるというか、「おやおや、泣きながら倒すんですかぁ? (`∀´) ヘラヘラ」とナメちゃったりして。パッと見た感じ、「ボクシング」が題材になっているのも「なんだよ、ジャッキーの“拳”シリーズ的なカンフー映画じゃないのかよ (`Δ´) ツマンネ」って思ったりもして、なんとなく借りられなかったんですよね…。


僕的に「泣拳」はこんなイメージでしたよ↓(「範馬刃牙」第12巻より)
三角絞めでつかまえて-泣きながらグルグルパンチをする烈海王


ところが! 先日、ムービーウォッチメンで「ベルリンファイル」が批評された時のこと。リュ・スンワン監督の過去作の1本として宇多丸師匠が「クライング・フィスト 泣拳」を取り上げて、こんなことをおっしゃってたんです↓※多少、省略してます。


(▼∀▼)
これはいいですよ~
かなりオススメですね
“負け犬たちのワンスアゲイン映画”の系譜で言うと、大傑作ですね
面白いのはですね、クライマックスはボクシングの試合なんですけど、
その対戦する両者の背負った事情みたいなのを完全にイーブンに描いて
この両者はクライマックスの試合の部分以外、接点がゼロなんです!
絶対に負けられない事情を背負ったこの2人のドラマを別個に見てきて、
その試合を見るんです
「どっちにも負けて欲しくない!」って感じになるというね
なおかつ、ボクシングシーンのリアルさたるや!
「クライング・フィスト」本当にオススメです!



これを聴いた僕は「あら、そこまで褒めるんだ!Σ(゚д゚;) マジ?」と驚きつつも、ぜひ観てみようと思いましてね。とは言え、宇多丸師匠と言えば、所詮はwikipediaによると「ビルマの竪琴」の予告編だけで8回泣いたほど涙腺の緩い男であり(唐突に失礼な文章)、「そんなにスゴい映画なんですかね~ (`∀´)」程度の期待を抱いてレンタルして来たんですけれどね、大傑作でしたYO!ヽ(TДT)ノ ウワァァァァン!


まったく関係ありませんが、「ビルマの竪琴」の予告編を貼っておきますね↓




もうね、スゲー泣いた。基本的に涙腺とお股はユルユルな僕ですよ(1つアウトな文章)、最近は娘のマナ子(仮名・2歳)に「さるかに合戦」を読んであげている時、サルの非道さに怒りの涙が込み上げて来て、我ながら「ちょっと病院に行った方がいいんじゃないかな? (・ω・;) ウーン」と思うほどなワケですが、ここまで泣いたのは昨年の「ハロー!? ゴースト」以来。さすが「クライング・フィスト 泣拳」の名に恥じぬ映画というか、現在、この文章も「クライング・ライト 泣書」だったりするのです(なんだこれ)。


一応、「ハロー!?ゴースト」の予告編を貼っておきますね↓ 思い出すだけで涙が… (ノДT)




映画が始まると、主人公が2人出て来まして。宇多丸師匠がおっしゃってたように、クライマックスの試合まで、両者の人生模様を別々に描いていくんですけどね、これがどちらも非常にコクがあって僕好みの物語。ボクサーがスピードバッグを叩くかのように、観ている間、僕のハートはずっと連打されっぱなしだったのです。とりあえず2人の事情を書いておくとこんな感じ↓



<カン・テシク(40歳)の場合>

アジア競技大会銀メダリストのテシクは、クズのせいで工場が火事になってしまい(無許可の建物→火災保険などは下りないムード)、さらに後輩のウォンテ(イム・ウォニ)に金を貸したせいで借金まみれ状態に。仕方なく路上で“殴られ屋”を開業するも、奧さんに愛想は尽かされるわ、息子と一緒に暮らせなくなるわ、元後輩のヤクザ・ヨンデ(オ・ダルス)に追い込みをかけられるわ、パンチドランカーの症状が出てくるわ、その影響で“パパの授業”で失敗して息子にも嫌われるわと、ドン底に落ちるんですね…。

テシクの不幸は、工場が火事になるところからスタート。
三角絞めでつかまえて-工場が火事に

金を貸した後輩もまったく返す気がない(返す能力もない)感じ。
三角絞めでつかまえて-後輩も金を返さず

とりあえずボクシングの技術を活かして“殴られ屋”を開業。なんとなく人生が上向きになるかと思いきや!
三角絞めでつかまえて-殴られ屋開業

有名になったせいで、借金の取り立てが来てボコボコにされるわ…。
三角絞めでつかまえて-借金の取り立て

大きな問題が頭にあることも発覚するわ…。
三角絞めでつかまえて-大きな問題が頭に

息子の学校での“パパの授業”で大恥をかいて、息子に嫌われるわと、散々な目に遭うのです (ノДT) アンマリダー
三角絞めでつかまえて-パパの授業で大失敗


でも、そんな時、ボクシングの新人王戦の看板が目に入りまして。「そういえば仲良くしているソバ屋の主人サンチョル(チョン・ホジン)も『ジョージ・フォアマンは45歳でチャンピオンになった』なんて言ってたし、オレにはボクシングしかないんだから、可愛い息子のためにもう一度やってみるか!」と一念発起してトレーニング開始。試合にエントリーするのにヨンデの力が必要だったため、改心したウォンテが頼みにいったところ、負けたらウォンテが臓器提供をするハメになったということも知り、「これは絶対負けられない!ヽ(`Д´)ノ」と老練なテクでトーナメントを勝ち進み、決勝に臨むのでした。

ドン底に落ちて、路上で寝ていたら、たまたま目にした新人王戦の看板。
三角絞めでつかまえて-新人王戦の看板

そういえば、ソバ屋の親父も言ってたし、オレにはボクシングしかないんだから、もう一度やってみるか!
三角絞めでつかまえて-ソバ屋の説教

息子が謝罪にきたけど、そもそも悪いのは“子どもが尊敬できない親”になってしまった自分なのです。
三角絞めでつかまえて-謝る息子

新人王戦に出場するため、後輩のウォンテが臓器を賭けたことも発覚したりして。
三角絞めでつかまえて-臓器提供!

決勝前夜は息子と過ごしましてね…。この試合、負けられない!ヽ(`Д´)ノ
三角絞めでつかまえて-決勝前夜は息子と...



<ユ・サンファン(19歳)の場合>

貧乏な父子家庭(祖母アリ)に育ったサンファンはケンカ&カツアゲのエヴリデイだったんですが、ひょんなことから強盗事件を起こしてしまい、5年の刑を食らって少年院に。入って早々、ボクシング部のエース・クォルロク(キム・スヒョン)に絡まれて、ケンカ殺法で耳を食いちぎって勝つものの、独房に叩き込まれるという有り様でしてね。そんな彼の気の強さを見た刑務主任(アン・ギルガン)に「ボクシング部に入ってみるか?」と言われて、リングに上がる→クォルロクにボコボコにされて、ボクシングに打ち込むことになるワケですよ。

サンファンったら、後先考えずに強盗したら即逮捕されまして。
三角絞めでつかまえて-強盗しちゃいました

少年院に入ったら、当日にクォルロクとケンカして、耳を食いちぎっちゃうのです。
三角絞めでつかまえて-耳を食いちぎれ!

そんな彼を見た刑務主任は、ボクシングを薦めてきましてね。
三角絞めでつかまえて-ボクシングへの誘い

リングの上ではケンカ殺法が通じず、あっけなく敗北…って、ボクシングモノにありがちな展開ですな。
三角絞めでつかまえて-クォルロクに敗北

とりあえずボクシングをすることになり、少年院の暮らしにも慣れていくサンファンなのでした。
三角絞めでつかまえて-少年院に慣れてきました

そんなある日、いつも自分を気に掛けてくれていた父親(キ・ジュボン)が工事現場の事故で死亡。「弔うために外に出たい→選抜大会で勝てば外泊できる」ということでクォルロクに挑むも、アッサリ敗北しまして。「ああん、悔しいよぅ… (;`Δ´) チクショウ」と思っていたら、今度は無理をしすぎたお祖母さん(ナ・ムニ)が倒れる&ボケるという悲劇。「オレは最低のクズ野郎だったけど、今まで迷惑を掛けた家族のため、そして何よりも自分が生まれ変わるために命を賭けて勝つ!ヽ(`Д´)ノ」と新人王戦にエントリーしたサンファンは、破壊力の高いパンチと勢いを武器に、見事決勝にコマを進めたのでした。

いつもサンファンのことを気に掛けてくれていた父親が事故で死亡…。
三角絞めでつかまえて-父親が死亡

「父親を弔うためにも外出したい!」と試合に臨むも、クォルロクに二度目の敗北を喫する体たらくですよ。
三角絞めでつかまえて-クォルロクに二度目の敗北

そして、追い打ちをかけるように祖母もダウン。しかもボケちゃいまして…。
三角絞めでつかまえて-祖母もダウン

さすがのサンファンも涙! 新人王戦への出場を決意するのでした。
三角絞めでつかまえて-さすがに涙!

成長したサンファンはスパーでライバルのクォルロクに初勝利。
三角絞めでつかまえて-スパーでクォルロクに勝利!

決勝前日は父親の墓参り。親父、オレは勝つぜ!ヽ(`Д´)ノ
三角絞めでつかまえて-父親の墓参り



ごめんなさい、若干、盛ったところもあるんですけど、2人の事情はこんな感じでしてね。漫画で例えるなら、シャーク堀口vs矢吹ジョーであり、心底どちらにも負けてほしくない気持ち。ワンスアゲインな動機で戦う40歳のテシク(しかも子持ち)にモロ感情移入しながらも、警察官時代は少年課の刑事を目指そうかと思わなくもなかった気がしないでもない僕だけに、不良少年のサンファンにも成功体験を得ることで立ち直ってほしいし…。テシクの元には息子が、サンファンにはお祖母さんが駆けつけてるしさ、ゆとり的な発想かもしれませんが、こうなったら「みんなが一等賞」だっていいじゃないのYO!ヽ(´Д`;)ノ オネガイ!


“日本三大お父さん”の1人(勝手な認定)、シャーク堀口の画像を貼っておきますね(「がんばれ元気」より)。
三角絞めでつかまえて-シャーク堀口


ボクシングシーンはリアルかつ迫力があって超素晴らしいんですけれど、この試合の勝敗がついてほしくなくて、「突然、謎のボクシング軍団が会場に訪れて、韓国チームと5対5の試合をすることになってーー?Σ(゚д゚;) ナニィ!?」といった「リンかけ」テイストの展開を妄想したりするも、決してそんなことにはならずに刻々と迫る終了時間。で、結局、試合は終わり、判定でサンファンが勝つんですが、「テシクは負けたけど、父親として息子に生き様を見せられた」「サンファンは勝つことでやっと新しい人生のスタートラインに立てた」という、美しいとしか言いようがない着地でして。少年院の仲間たちはクォルロクも含めてうれしそうだし、ヤクザのヨンデも「良い試合を観た」顔だし、何よりもテシクと息子、サンファンと祖母が抱き合う姿が本当に感動的だったのです… (ノДT)


大喜びの少年院ボクシングチームの仲間たち。クォルロクもうれしそうなのがグッとくる!
三角絞めでつかまえて-大喜びのボクシング部員たち

ワルのヨンデもシンミリ顔だったりしてね。
三角絞めでつかまえて-ヨンデも改心したっぽい

臓器提供が決まったウォンテだけは焦りまくりですけど、ヨンデの顔を見る限り、大丈夫じゃないかしらん。
三角絞めでつかまえて-ウォンテは焦りまくり


「サンファンの新人王戦出場の経緯」とか、気になるところがないワケではないんですけど、物語といい、ボクシングシーンといい、役者さんたちといい、あらゆる点で僕好みだったので、無問題。「ボクシング部の部長のイイ顔」とか「父親の差し入れをトイレで食べるサンファン」とか「テシクの息子の泣き顔の見事さ」とか「サンファンのために上司に刃向かうパクコーチ(ピョン・ヒボン)」とか「決勝前、テシクが息子にする、超タメになる助言(包茎手術と保証人問題)」とか大好きなところまみれであり、マジで観て良かったというか、薦めてくれた宇多丸師匠には感謝を通り越して、むしろ「なんでもっと早く番組で薦めない!ヽ(`Д´)ノ」と怒りを覚えるほどでしたよ(迷惑なリスナー)。


いろいろ貼りたい画像はあるんですが、とりあえず「イイ顔」の部長を貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-イイ顔のボクシング部部長

包茎の息子に対するテシクの助言も身に染みました。僕も手術していれば… (ノω・、) テオクレ
三角絞めでつかまえて-包茎手術の助言


そんなワケで、ダラダラと書いて来ましたけど、“心の1本”になりました。当然ながら、即DVDを買いましたよ。まぁ、ちょっと検索したら、こういう意見もあったりするので、万人にはオススメできない作品なのかもしれませんが、このブログを定期的に読んでいて僕と好みが合う人なら、間違いなく胸が震えるほど感動すると思いますぞ (o^-')b オススメ!




サントラを貼っておきますね。笑顔が素敵すぎ!ヽ(TДT)ノ



リュ・スンワン監督の初監督作。ううむ、観ておこうかしらん。