ジョニー・マッド・ドッグ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ジョニー・マッド・ドッグ(ネタバレ)

ジョニー・マッド・ドッグ

三角絞めでつかまえて-ジョニー・マッド・ドッグ

原題:JOHNNY MAD DOG
2007/フランス、ベルギー、リベリア 上映時間93分
監督・脚本:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
製作: マチュー・カソヴィッツ、ブノワ・ジョベール
原作:エマニュエル・ドンガラ
出演:クリストフ・ミニー、デジー・ヴィクトリア・ヴァンディ
(あらすじ)
内戦状態のアフリカのある国に、住民たちを恐怖に陥れる少年兵のコマンド部隊があった。リーダーの“マッド・ドッグ”ことジョニー(クリストフ・ミニー)と仲間たちは、機関銃を手に強盗やレイプを重ね、無差別な殺りくを繰り返していたが……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




81点


シアターN渋谷で観てきました。ポスターには「悪魔か、犠牲者か」という実にグッとくるキャッチが書いてあったんですが、本当にそんな感じでハードな作品というか。先月発売の「映画秘宝」の新作映画紹介コーナーで、信頼できるライターの1人である大久保義信さんが「ブラッド・ダイヤモンド」と比較して、「(こっちの映画の方が)グロテスクな暴力と破壊のスパイラル、そして無責任な大人によって人生を破壊された子供兵士の無残さを容赦なく描いている」といったことを書いていたんですが、その通りでした。作中、まったく救いがなくて、鑑賞後はイヤな気分になること間違いナシなので、あまりオススメできないかなぁと思ったり。

冒頭、ジョニーたちが村を襲って、子どもに父親を射殺させるシーンからかなりキツくて、ずっと「イヤだなぁ」という気分で観てました。レイプやら殺人やら(子どもも殺す)強盗やら(熟年夫婦に「目の前でセックスしろ」と命令したり)と、“人間のクズ”としか言いようがない行為を繰り返すワケで、「コイツら、さっさと死ねば良いのに…」と心から思いましたよ。

で、ラオコレという少女がもう1人の主人公でして、父親(両足がないのでラオコレが手押し車に載せて運ぶしかない)は死ぬわ、幼い弟とははぐれるわと、バリバリの戦争被害者なんですけど、そんな状況下でも健気に頑張って生きるという、この地獄のような映画の良心みたいな存在なんですね。ジョニーとは物語の中盤で一度出会って、なぜか見逃してもらえるんですが(ジョニーも“自分がなぜ見逃したのか分からない”感じ)、「いつまた再会して、ジョニーのせいで酷い目に遭うか」と思うと気が気じゃなかったです。

ところが! 最後はラオコレにジョニーが張り倒されて、「ヒィヒィ」とすすり泣いているジョニーに向かってラオコレが涙を流しながら銃を構えて終わるんだから、本当にビックリというか。武器の扱いのうまさやスナイパーとの対決シーンなどを観ていると「こいつらには到底敵わないな…」と思わされるんですが、最後の最後に「所詮は子ども」という現実を突きつけてくるんですね。そうなると、「死ねば良いのに」と思っていたハズのジョニーの姿に哀れみを覚える=彼が犠牲者に見えてしまったりして…

まぁ、ノー・グッド・アドバイスという少年兵が「人は簡単に殺すくせに豚には愛情を抱く」という子どもらしさを見せたりとか、傍若無人に振る舞っているように見えるジョニーも“同じ部隊の大人”の前では恋人を射殺されても不満を抑えるしかなかったりとか、観客に「ああ、まだ子どもなんだよな…」と思わせるシーン自体は劇中に結構あったりしまして。ラオコレとのシーンも、どうやって気持ちを伝えれば良いのか分からない=その術を知らないジョニーの困惑が伝わってきて…。当たり前なんですけど、結局、一番悪いのは大人なんですよね。子どもに薬物を与えて感覚をマヒさせるわ、戦闘に尻込みする子どもは射殺するわと、もう最悪。散々利用するだけ利用しておいて、戦争が終わるとポイ捨て状態だし…(一応、ジョニーも警備みたいな仕事をあてがわれたけど、小さいころから戦争しかしたことがないから、どうして良いのか分からなくなっている)。こういうことが実際に起きていたんだと思うと本当に恐ろしいですな。子どもを兵士にするなんてダメ絶対!

監督のジャン=ステファーヌ・ソヴェールはこの映画が長編デビュー作とのことですが、「よく作ったなぁ」と感心しましたよ。カメラがガチャガチャ動きすぎて何が起きているのかよく分からないシーンがいくつかあったりして、そこはゲンナリしましたが、少年兵たちを演じたのが“本当の元少年兵”ということもあって、演技は実にリアルに感じましたね。戦闘シーン自体は意外と少ないんですけど、スナイパーとの戦いは結構良かったです。

正直、鑑賞後は結構イヤな気分になるのでオススメはできませんが、一見の価値はある映画だとは思います。興味がある人は劇場へどうぞ。




少年兵たちが立ち直る過程を描いたドキュメンタリー。6月発売予定です。
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こちらは少年ギャングの話。子どもに子どもを殺させるシーンが最悪でした…。
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ルワンダの民族紛争を取り上げた名作。アフリカって大変ですな…。
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ジェット・リーが首輪をはめられたキリングマシーンを演じたアクション映画。すみません、タイトルが似ていたので…。
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