大人のためのグリム童話 手をなくした少女(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2
2018年12月10日

大人のためのグリム童話 手をなくした少女(ネタバレ)

テーマ:新作映画(2018)
大人のためのグリム童話 手をなくした少女



原題:La jeune fille sans mains
2016/フランス 上映時間80分
監督・脚本・編集:セバスチャン・ローデンバック
原作:ヤコブ・L・C・グリム、ウィルヘルム・C・グリム
編集:サンティ・ミナーシ
音楽:オリビエ・メラノ
声の出演:アナイス・ドゥムースティエ、ジェレミー・エルカイム、フィリップ・ローデンバック、サッシャ・ブルド、オリビエ・ブロシュ、フランソワーズ・ルブラン、エリナ・レーベンソン
パンフレット:★★★★(700円/アトロクに出演された土居伸彰さんのコラムほか、タメになる読み物ばかり)
(あらすじ)
貧しい生活に疲れた父親によって悪魔に差し出され、両腕を失った少女は、家を出て放浪する。不思議な精霊の力に守られた娘は、やがて一国の王子から求愛を受けるが、悪魔が娘と王子の仲を引き裂く。娘は生後間もない子どもを連れて王宮を後にするが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


※この記事は「シグマ15」に従って書いています。

僕は「世界のインディペンデント・アニメは積極的に観る!」といった主義ではないんですけど、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」にて、「最新アニメ紹介」でアニメ評論家の藤津亮太さんが取り上げたり、「日本よ!これもアニメだ! 世界の最新インディペンデント・アニメ入門 」として配給に関わったアニメ研究家の土居伸彰さんが紹介されたりして気になったということで。10月上旬、川崎市アートセンター アルテリオ映像館で、メンズデーを利用して「輝ける人生」とハシゴ鑑賞してきました。「すげェ… (°д°;)」と度肝を抜かれましたよ。


劇場は半分ぐらい埋まってたような。


鑑賞中の僕の気持ちを代弁した加藤清澄の画像を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。
すげェ...


乱暴に表現すると、アート風味の「まんが日本昔ばなし」というか。本作は、セバスチャン・ローデンバック監督がグリム童話「手なし娘」をアニメ化した作品なんですが、「クリプトキノグラフィー」なる手法を使って、なんと1人で作画をしたそうで。この手法、冨樫義博先生が「HUNTERxHUNTER」をラフ画のまま「かぐや姫の物語」の表現をさらに推し進めたというか、そぎ落として突き詰めた印象で、抽象的なタッチが童話という題材にピッタリでしてね。あれほど抽象的な絵でも十分面白くて迫力のあるアニメになるんだなぁと感動いたしました。「父権主義に翻弄される女性の物語」なので話自体も「かぐや姫の物語」っぽいんですけど、本作の場合は「主人公は母となって強くなる→王が国に帰ろうと誘って来ても新たな旅を選ぶ(王も一緒)」という実際の童話を現代的にアップデートした力強い着地になっているあたりが見事だなぁと。鑑賞中はマジで「すげェ… (°д°;)」と感心することしきりでしたよ。ちなみに、本作が初の長編劇場用アニメというローデンバック監督は、高畑勲監督を尊敬しているそうで。もし高畑監督がご存命だったらどんな感想を言ったのか、聞いてみたかったですな…。


こういう抽象的な映像ゆえに、いつまでも古びない、普遍的な作品になった気がします。



少しでも頭が回れば現代の日本で女性が生きるのはまだまだ大変ということはわかるワケですけど、世の中には「日本は女尊男卑」なんて愚かさ全開の発言をするタレントがいたりするのでね、みんなでこういう映画を観て、“何か”を感じ取るのは良いんじゃないかと。フランスでは子ども向けに公開してヒットしたそうなので、親子で観るのも良いかもしれませんな。って、ベタ褒めなのに70点なのは、同じ“手なし”設定なら「鋼鉄の拳を装着して戦う」とか「両足のない男とタッグを組んで戦う」といった“手なし男”映画の方が好みだから…なんて土居伸彰さんに叩きのめされそうなオチを書いて、この感想を終えたいと思います (ノ∀`) テヘ




ソフトが発売されるのは2月だそうです。



連想した高畑勲監督作。僕の感想はこんな感じ



パンフで紹介されていた本。「手なし娘協会」、読んでみたいです。