『異端の奇才 ビアズリー展』in 久留米市美術館
***7月某日、福岡県久留米市にある石橋文化センター、および久留米市美術館へ。福岡市内からだと最寄りの西鉄久留米駅まで電車でそこからはバスでの移動。1956年、石橋文化センターは株式会社ブリヂストンの創業者である石橋正二郎氏より久留米市に寄贈された。広々とした庭園には四季折々の草花が植えられ、噴水を取り囲むように美しいバラ園がある。訪れた7月は、トロピカルな花々が熱い日差しの中でも鮮やかに咲き誇っていた。公園の奥に進むと美術館の真隣に池が広がる。ちょうど餌の時間帯だったみたいで美しい白鳥が一羽いた。こんなに近くに寄っても物怖じしない堂々っぷり。花菖蒲、睡蓮が点在し、池の中には鯉が泳ぐ。暑さのせいで人けはなく、白鳥だけがすいすいと視界を通り過ぎていく。ただただのんびりとしていた。池のまわりの生き物にひとしきり癒された後その日の目的地である『異端の奇才 ビアズリー展』へ。今年の2月〜5月にかけて東京の三菱一号館美術館でしばらくの間開催されていて出張の合間に寄りたいと思いつつ時間がなくて行き逃していた。まさか久留米市美術館に巡回するとは思っておらず今度こそ見逃すまいと行ってきたのが7月の中旬。少し前にはNHKの日曜美術館でも『ビアズリー展』が取り上げられて番組内では坂本美雨さんらが久留米にロケに来ている様子だった。もちろん日曜美術館で予習をしてから臨む。オーブリー・ビアズリーは1872年生まれ、イギリス出身の芸術家。幼少期から肺結核を患い、若くして才能が開花するも25歳でこの世を去った。家計を支えるために16歳から事務員として働き夜間に制作活動を行なっていた彼。苦労をしながらの短い生涯の中で彼はいくつもの傑作を残す。彼の作品のなかでもとりわけ有名なのはオスカー・ワイルドの著書『サロメ』(1894年)の挿絵を手がけたこと。原作『サロメ』自体を読めていないので詳しくは述べられないが、美術館の解説などによるとそもそも原作にはない場面も挿絵として描かれているらしい。ビアズリーならではの解釈で『サロメ』という物語を表現している作品たち。優雅で、残酷で、美しい惹きつけられる白と黒の世界。写真だと伝わりにくいがどの作品もサイズは決して大きくない。限られた紙面に繊細な線で緻密な絵が書き込まれている。展示を半分ほど見たあたりでちょうどいいところに窓に面した休憩室がありしばし目を休める。相当な数の展示がしてあり撮影不可の作品もあれば撮影可のコーナーもあって、一部の作品だけをここでは掲載。『ヴィーナスとタンホイザーの物語』の題扉今回の展示の中で女性の描き方が最も優しくこの絵がとても私は好きだった。『3人の音楽家』なぜこの絵がこのタイトルなのかわからないままだったので気になる。『大修道院長』とにかく線が緻密で、写真で拡大して見ても信じられないほど細かな表現で埋め尽くされている。『リマの聖ローズの昇天』『伊達男と美女の争い』さきほどの『大修道院長』に匹敵するほどの細かさ。よく観察すると、人々の表情がどことなくコミカル。『薔薇をもった婦人』淡いストライプ模様の壁を背景に白さの際立つ美人。ビアズリーの絵にしては珍しく優しい眼差しの美女の絵。目鼻立ちがはっきりしていて美人に描こうとしているのが見受けられる。目鼻立ちがはっきりしていてもこっちは対照的な女性の絵。性格にクセのありそうななんともいえない表情。『イゾルデ』この絵も好きだった。モノクロの絵ばかりの中で数少ない色の付いた作品の一つ。柔らかな美しいドレスの曲線とオレンジと白の余白が洗練されている。▽美術館で買ったもの。『椿姫』のポスター。椿姫の横顔がカッコ良過ぎて。美術館に行くとポストカードを買うのは私にとっての恒例行事。劇場宣伝用ポスターのこのイラストも好きだなぁ。ネイビーとグリーンの色の組み合わせがすごくいい。右側は街中で見つけた、200円割引券のついたフリーペーパー。クラフトっぽい厚めの紙質で、普通にしおりとして使えるのがよい。三菱一号館美術館(右)と久留米市美術館(左)の宣伝用のチラシ。同じ作品を使っていてそれぞれにデザインが異なる。どっちもセンスがあっていい。***