「中学に上がるまでクリスマスプレゼントをもらうと翌日、お父さんの職場へTELしていた」という友人がいて、それをとても楽しそうに話していました♪♪♪
心より愛と感謝をこめて
■MOM’S STAND(マムズ スタンド)12月号
「サンタクロースって本当にいるの?」と子どもに聞かれたら、どう答えますか。「もちろんいるよ!」と迷いなく答えるために、「うさこちゃん」シリーズなどの翻訳で知られる児童文学者・松岡享子(きょうこ)さん(84)を訪ねました。
――サンタを楽しみにしている4歳の娘が、最近「サンタさんはなぜ良い子にしているかわかるの」と聞いてきます。
「うちには煙突がないのにどうやって入ってこられるの」といったことを子どもは尋ねてくるものです。そういう時は「サンタさんは特別な人だからできるのよ」と話してあげるのがよいでしょう。
クリスマスプレゼントも、子どもが欲しいものと大人があげたいものが違う時は、サンタがなぜこのプレゼントを選んだのかを書いた手紙を添えるのもよいと思います。
――「子どもにウソを教えている」と考えてしまう大人もいるようです。
子どもがサンタを信じているのであれば、できるだけ長い間信じていられるように大人が頑張らないといけないと思っています。子どもの夢を大切にすることはだますこととは違うと思いますよ。
■生き延びる基本
――松岡さんは1973年、朝日新聞に寄稿したエッセーで、子どもがサンタの存在を信じることの大切さを説きました。
目に見えないものを信じるという心の働きが、人間にとってどんなに大切か。サンタの存在は、その人の中に信じるという能力を養います。この考えは今でも変わっていませんが、確信を持てるようになったことがあります。
それは、子どもは本当に空想することができるということです。大人にはできません。天賦の力で、大人になるにつれて失っていく力です。
非科学的と思うかもしれませんが、科学者にだって空想することは必要です。目に見えない結果を想像できるから実現しようと思う。詩人や作家なら不可欠な力でしょう。
最近、戦時中に子ども時代を一緒に過ごした友人と話して気づいたことがあります。食べ物がないとか、空襲で街が焼けるのを見たとか、大人から見ればつらい現実の中でも、子どもたちは日々何かしら楽しいことを見つけて生活していました。
子どもは「明日が来ないかもしれない」なんてことは信じていないんです。だから大人は子どものために何かしなくてはという気持ちになる。大人が生きようと思う力も引き出されているんです。
目に見えないものを信じるという力は、人間が生き延びるために基本となる力。だからそれを子どもの中に長くとどまるよう育てることが大切だと思っています。
今の子どもたちはさらに忙しくなって、目的に対して直線的に効率よく動くことが良いとされている。そんな時代だからこそ、サンタの存在は、目に見えないものを信じる力を養える数少ないチャンスかもしれないですね。
■本が夢もたらす
――子どもの心の力を育てるために大人ができることは他にありますか。
サンタでなくても、妖精や魔法使い、鬼でも何でもいいんです。私が米国の図書館で働いていた時、お話会によくきてくれる女の子がいました。その子は住む家がなく、他人の家のガレージに住んで公園の水道で顔を洗うような生活を送っていたんですね。
昔話の中にはお姫様がいっぱい出てくるでしょう? その子は同僚のところにきて「私、大きくなったらプリンセスになる」と言ったそうです。物語を読んでいたので、現実に打ちひしがれず、夢を見る力を持つことができた。
本や物語は、見えない存在を信じる力を育てるのにとても大切です。サンタのお話に限らず色んな本を読んであげて下さい。(聞き手・日高奈緒)
■松岡さん寄稿、全文はデジタルで
松岡享子さんが1973年に寄稿した「サンタクロースの部屋」の全文やインタビューの詳細版が、朝日新聞デジタルで読めます。QRコードからアクセスして下さい。