介護施設づくりの基礎知識 その2「構造」
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
介護施設を建設する際には、どのような構造で造ればよいか?
答えはありませんが、建物の規模やメリット・デメリットを理解した上で決めるべきであると考えます。
今日はいくつかの工法についてお伝えします。
建物の構造については、色々な考え方がありますのであくまで私個人の考えである事をご了承ください。
・鉄筋コンクリート造
大規模な建物を建設する際には一番スタンダードな工法であると思います。
大きな建物を造る場合には耐火性能が求められますが、コンクリートそのものが火に強い素材なので有利ですね。
私は以前はコンクリートの建物は冷たくて人に優しくないと思っていましたが、最近考えが変わりました。
断熱をしっかりすると、コンクリートが蓄熱材として働くのです。
冬場の寒い時期には室内の暖かい熱を蓄え、夏の暑い時期には冷房で涼しい室内の温度を保つ働きをします。
建物内の温度を均一にする働きがあるので、建物内全部を快適な温度に保つことができるようになります。
日本の家屋は、昔から部分的に暖房を行ってきたので、暖房の無い部屋がとても寒くて健康を害する原因になってきました。
しっかり断熱を行えば、少ないエネルギーで建物全体を冷暖房でき、健康で快適、かつ省エネで暮らす事ができる可能性があるのです。

・木造
日本人は昔から木の家に住んできましたので、とても馴染みがあり落ちついて過ごせるのが木造の良い点だと思います。
私自身、2012年に木造の特別養護老人ホームを計画しましたが、今訪問しても木の香りがしてとても良い雰囲気です。
木造にするのでしたら、無垢の木と自然素材でつくる住まいにしたいものです。
木を接着剤で張り合わせる集成材や、石油製品の素材を使用してしまうのはせっかく健康に暮らせる住まいを造るチャンスを逃してしまうことになります。
規模や施設の種別により木造での建設が難しいことがありますので注意が必要です。

・ツーバイフォー、スチールパネル
最近、大規模な木造の建物を造る工法としてツーバイフォーの耐火建築が見られるようになりました。
住まいの感覚に近い「木造」ですし、比較的コストも抑えられることから選ぶ方が増えているのだと思います。
また、建物が軽くなりますから、基礎が簡略になるというメリットもありますね。
ツーバイフォーで耐火にする場合、木が燃えないように厚い被服をするので、残念ながら木造でも木が見える訳ではありません。
「木の建物なんだ」と説明を受けないと分からないかもしれませんね。

(見学の際に撮らせていただいた写真です)
ツーバイフォーは木で組んだパネルを使用するのに対し、薄い鉄板でつくったパネルで建てるのがスチールパネル工法です。
最近の建築費の高騰で注目を浴びています。
特徴はツーバイフォーに似ていますが、スチールパネルの方がシンプルでスマートな建物にできると思います。
入居施設は小さな部屋が並ぶ建物ですので、壁で支える構造に向いています。
建築費の抑制や工期の短縮等のメリットがありますので、状況によってはこの工法を選ぶのも良いかもしれません。

(見学の際に撮らせていただいた写真です)
皆様の考える理想の場にはどの構造が向くのか、じっくり検討し、設計者にもよく相談してみてください。
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介護施設づくりの基礎知識 その1「敷地」
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
その昔、介護施設は人里離れた場所に設けられるのが当たり前でした。まさに「うば捨て山」の感覚ですね。
入居者はどうせ寝たきりだからどこにあってもいいはず、だったら土地が安く周囲に文句を言う人もいない場所がいいだろう。
残念ながら、そんな感じだったのだろうと思います。
でも介護保険がスタートし、考え方が大きく変わったように思います。
今では、商店街に小規模デイサービスがあったり、住宅地にマンションのような施設があることも珍しくなくなりました。
施設も地域の一員であるなら、地域の人が暮らすのと同じような場所にあるべきなのは当然ですね。
さらにこんなことに配慮できれば良いと思います。
・気軽に散歩に出られるように
一日中同じ建物の中で過ごすということは、普通の暮らしではとても珍しいことですよね。
ちょっと外に出る事は普通なのですが、介護施設ではそれがなかなかできないというのが実情でしょう。
運用の仕組みを変える事は必要ですが、気軽に外を歩ける環境があることも必要でしょう。
建物の周囲に散策を楽しむ敷地の余裕があったり、それが難しければ周辺に歩きやすい歩道が整備されているといいですね。
・買い物に行ける
私達は必要なものがあるとお店に買いに行きます。
今はネットショッピングも多いですが、身の回りの日用品やちょっとしたお菓子等はまだコンビニ等で買う事が多いかと思います。
施設に入居していても、やはり必要なものは買い物をして調達するのが自然なことなのだと思います。
一番簡単な社会参加ですし、大げさに言えば地域の消費の拡大にもつながるはずです。
気軽に買い物に行ける距離にお店がある場所、とてもいいと思います。
・飲食店や理美容店がある
買い物よりも優先度が落ちますが、飲食店や理美容店が近くにあるのもいいと思います。
施設で行事食を食べるより、お寿司屋さんやお蕎麦屋さんに行って食べる方が断然美味しいはずです。
髪の毛のカットも、理美容師さんに来てもらうよりお店でのカットの方がすっと雰囲気がいいですし同じ髪型でもより良く見えるかもしれません。
理解があり協力的なお店が近くにあると暮らしが豊かになりそうです。
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もちろん、敷地には建物を建てる為の様々な条件があります。
必要な建物を建てる為の広さや法的規制がどの程度あるかは重要なチェックポイントです。
気になる場所があったら、建築士や設計事務所に相談すればその敷地の状況やそこに建設可能な建物のボリューム等について簡単なアドバイスはしてもらえると思います。
ただそれ以外にも豊かな暮らしが営める場所であるかどうかのチェックもしてみることをお勧めします。

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ハウスメーカーで介護施設を建てるということ
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
普段は介護施設の設計を行っていますが、別の設計事務所が図面を作成していたり、すでに建設がスタートしている現場にアドバイス役として関わる事があります。
そのアドバイス役で関わっている現場で感じた事なのですが…
そこはすでに事業主さんがハウスメーカーさんに建物の建設を依頼されている現場で設計の内容についてアドバイスをさせてもらっています。
普段はそれぞれの地域のゼネコンさんとのやりとりが多く、ハウスメーカーさんと一緒に仕事をするのは初めてです。
実際にやってみると、思った以上に制約が多く難しいものだと感じています。
いくつか例をご紹介します。
・間取りが自由にならない
今回は軽量鉄骨造の建物なのですが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の多くの建物のように柱と梁で支える構造ではなく、細い柱と壁で支える構造なのです。
太い柱と梁で支える構造であれば、中の間取りは比較的自由になります。
私が関わり始めたときにはすでに間取りが確定されつつありましたが、通常ですと動線などに配慮した調整は十分可能な時期でした。
しかし今回は着工を急いだハウスメーカーが構造計算を見切りでスタートしており、間取りを変えると構造計算はやり直しとのこと…
そのままの間取りではさすがに使いにくく、一度構造計算をストップして急いで大まかな変更を行いましたが、その後は変更が難しくなってしまいました。
・自由な設備が使えない
浴室にしてもトイレにしても扉にしても、使いやすさを検討して最も性能とコストのバランスがとれたものを採用したいですよね。
しかしハウスメーカーの製品は標準の仕様が決まっており、それ以外のものを使おうとしても使用不可だったりコストがとても高くなったりするのだそうです。
ハウスメーカーの設備は、一般住宅向けに大量生産することでコストダウンを図っていますが、介護施設にそのまま使用するのが難しいものも多いはずです。
それをそのまま使う前提で製品を企画しているということは問題であると感じます。
また浴室も、ユニットバスを使用するのが基本だとか…
普通にお風呂を作るのも難しいようです。
・外観が選べない
地域を支える施設として、その地域に合った外観にしたい。特徴のある外観にして地域の方に覚えてもらいたい。
そんな風に思っても、選べる屋根材や外壁材は決まっていて、その中から選ぶことしかできないのです。
色々と個性を出したいと考えていても、街中の普通の住宅のようなデザインしか選べないというのは、介護施設としてどうでしょうか。
もう少し選択の幅を広げるとか、介護施設向けの商品は自由度を高めるなどの工夫が必要であると感じますね。
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今回の現場はハウスメーカーのある特定の製品で建てようとしているためにこのような制約があるのだと思います。
その分安くできます、ということなのでしょうが、使い勝手や個性の演出にかなりの制約が発生しますので、それでも良いのかどうかは十分検討する必要がありそうですね。
ハウスメーカーは介護分野について研究していたり、かなり実績がある会社も多いので今回は少々残念に感じています。
現時点では、優秀な設計者と柔軟な対応が出来る施工業者と一緒に建物を計画する方がより優れた建物が造れるのではないかと思います。
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