私の欠片 -19ページ目

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それは突然訪れた。

松井兄弟とあの公園で遊んだ帰り道、松井兄弟と別れてすぐ後ろから腕を捕まれた。

あの男だった。

全く気付かなかった。

男は

『約束したよね?』
と言ってきた。

その時あの日の記憶が一気に甦り怖くなった。

篠井の家もあと僅かで大声を出せば近所の人や誰か気付くほどの距離。

しかし声を出そうとしても出ない。

正確には震えて声がうまく出ない。

声が掠れる。

そして車に乗せられあの竹藪へ連れて行かれた。

前回の続き。

しかし前回以上に震える。
そして今度は本当にフェラさせられ口に出された。

それを飲めと言われた。

幼い頃の私は何故か
[口の中に入っているのは毒だ(本気)]

と勝手に思い込み泣きながらも口に含んだものを飲まずに口に溜めていた。

泣きながらも飲まないようにした。

そして公園で下ろされ男に『ありがとう』
と言われた。

今度は車が進むまで一歩も動かなかった。
動けなかったのかもしれない。

そこは曖昧。

そして男が去り口に含んでいたモノを出した。

走って篠井の家に行き急いでうがいをした。

何度も何度もうがいをした。

本気で
[もし毒が残っていたら死ぬかも]
と思いながららもその日の出来事を誰にも言えなかった。

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一方父は祖父が会社を辞めてからも暫くは働いていたが辞めた。

直ぐに他のガテン系の仕事に就いた。

記憶は曖昧だが辞めたり働いたりの繰り返しだった。
気性が荒い性格もあるからだろうか。

母もそんな父だったせいか私を平日は保育園が終わってから篠井の家、土日は篠井の家か七見の家に預け働き始めた。

又私が悪い事をすると容赦なく鉄拳制裁をする父。

そんな微妙な家庭環境ではあったが私は父も母も大好きだった。

基本的には母だが早く仕事が終わる方が私を迎えに行く。

父は仕事が終わるといつもたこ焼きを帰って帰宅。

父はたこ焼きを食べながら晩酌。

私は父と一緒にたこ焼きを食べる。

母は事あるごとき私を抱き締める。

よく私を誉めてくれる。

二人が休みの日にはよくお出掛けをした。

雨の日には父と一緒に母の似顔絵を描いては母に見せた。

母はそれを部屋の壁に張っていた。


父や母といる時間は普通の家庭の子よりは少し短いけれど幸せだった。

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新しい保育園でのお話。

新しい保育園で私はワンパクだった。

男子の比率が多い保育園とあって男子と遊ぶことが多かった。

いつも正孝(まさたか)と弘文(ひろふみ)と遊んでいた。

本当は理(おさむ)と遊びたかったのだが理の前だと照れもあり素直になれなかった。

理は保育園で一番カッコイイ子で人気者だった。

多分好きだった。

憧れに近い感情だったと思う。

だからこそ恥ずかしくて素直になれない。

逆に正孝や弘文の前では強気でわがままな子だった。
お人形よりも車のおもちゃの方が好き。

そんな子だった。



話しは変わりその頃辺りから篠井の祖父の体の調子が著しく悪くなった。

脳系の病気で何が悪いのかは覚えていないが。

働けなくなっていた。

言語も上手く話せない感じだった。

半寝たきり状態で歩くのに杖を要する程だった。

その事もあり祖母が働き出した。

働き先は電車で二駅先にある競馬場内の食堂。

そこで汗水流して働く祖母を母に連れられて何度か見た。

一生懸命働く祖母の事が大好きだった。