私の欠片 -18ページ目

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私は貯金箱が無くなった趣旨を泣きながら祖父に伝えた。

祖父は物凄く怒って私と一緒に杖を付きながらも松井家へ向かった。

祖父は絶対的な確信があったのだろう。


呼び鈴を押すと松井兄弟の母が出てきた。

祖父は興奮しながらも事情を話すと松井兄弟の母は子供に確かめもせず

『うちの子はドロポウなんてしない!』

と言い切った。

祖父は怒り
『子供にちゃんと聞け!』と言った。

お互いが引かない状態。

罵り合いが続き埒が明かずもう子供同士遊ばせないと言う結論になった。

祖父は体の調子が良くない中、杖をつき私のために怒鳴ってくれた。

心配ながらも素直に嬉しかった。

もう松井兄弟と遊ばなくても全然平気と思った。

幻滅だった。

一瞬で嫌いになった。

その日の夜松井兄弟の母がお菓子を持って家に来た。
子供に一応確認したら素直に認めたみたいだ。

後日、家の裏のゴミ捨て場からアルミの貯金箱が出てきた。

缶切りでご丁寧に開けてあった。

10円以上を盗んだみたいで5円1円が散らばっていた。

私は散らばった小銭を集め新しい貯金箱に入れた。

15

私は篠井の家に行っても殆んど外に出ることはなくなった。

松井兄弟とも基本的に篠井の家で遊んでいた。

私は保育園では理に好意を持っていたが同じくらい兄の誠司にも好意があった。
よく誠司と一緒に修次を仲間はずれにして遊んでいた。


ある日保育園からいつものように篠井の家に預けられた私に祖父が不思議なことを言った。

『松井くん達と一緒じゃなかったのか?』
と言った。
私は
『保育園終わって今家に着いたから違うよ』
と言った。

祖父が言うには隣の部屋に松井兄弟がいたからてっきり一緒かと思ったと。

隣の部屋に行ってみると勿論松井兄弟はいない。

そして私が篠井の家に置いておいたアルミの貯金箱も無くなっていた。

14

偶然は重なる。


あれからそんなに時期は経っていないのだがあの男と再会した。

場所は家の側のスーパー。
私はたまたま母と買い物していた。

そこにあの男がいた。

男は私に気付いてない。

私はすぐそばにいた母の手をギュッと掴んだ。

男は女の子を二人連れていた。

歳は私ぐらい。

そして男は私に気付いた。
私は母も一緒だったこともあり恐怖よりもどこか憎しみに近い感情の方が強かった記憶がある。

母が一緒ということもあり気づいても声は掛けてこなかった。


私はずっと母の手を強く握っていた。

スーパーから出るときに子供の声で

『ばいばーい。ばいばーい。』

と聞こえた。

振り返ると男と一緒にいた女の子二人が私に向かって手を振っていた。

男も手を振っていた。

母が見ている手前、私もその子達に手を降った。

母は軽く会釈をした。

スーパーを出て母に
『知ってる子?』
と聞かれたが

『知らない』
と答えた。

その時もう怖いという感情よりも強く怒りに近い憎しみ的な感情があった。