◆鳥嶋和彦『ボツ。少年ジャンプ伝説の編集長の嫌われる仕事術』を読む


鳥嶋さんは、漫画ドラゴンボールの鳥山明さんたちを見出した、
週刊少年ジャンプの元・編集長。


鳥嶋さんは、漫画家に徹底的にボツを出す厳しさで知られる。


★要旨


・ボツを出すコツは、
その人間のことを信頼して、関心をもって仕事をすること。


・的確にボツを出していれば、
本人も自分がうまくなっていることがわかるから、
ボツを受けても心が折れることはない。


・相手を好きになる努力をして、
ちゃんとコミュニケーションを取る。
コツは、これだけ。


・ドラゴンボールなど数々のヒットを世に送り出したが、
秘訣は、
『下手な鉄砲、数打ちゃあたる』
これしかない。


・ドラゴンボール作者の鳥山明さんは、
500枚のボツ原稿をだいたい1年半で描いた。


・ボツにする過程で「これを描いてはダメ」
「あれも描いてはダメ」
と試行錯誤する。


・最初は真っ白い紙で広大な荒野だけど、
1つ1つダメなものを塗りつぶすと、
残るものが確実にある。
これが「砂金」になる。
漫画家が持つキラキラしたものを見つけるために、
膨大な無駄を打つわけ。


・タイパの時代になっているが、
無駄を省くということは、数字としての確率を高めたいってこと。
つまり数字のために仕事をしている。
そうすると、そこそこのものしかできない。
発行部数50万部を狙うと、50万部以下になる。


・砂金を取るためには、才能にほれて仕事すること。
好きな女の子がいたら、毎日気になるでしょ。
声を聞きたいし、顔も見たくなる。
好きになる努力ができるかどうかが、編集者の資質である。


・小手先で作らず、原理原則を追求すると古びず、
ヒットとして残っていく。


・ヒットを出すためには、
頑張って成果を出した人を評価して報いたらいい。


・少年ジャンプの編集長時代、
会社の中の、いろいろな雑音を排除して、
漫画家やスタッフが
目の前の原稿以外のことを考えなくてもいいようにした。
そういう風土でないと、
ワンピースやナルトは、出てこなかった。


・何かが終わると、何かが出てくる。
人間が見る限り、作品の本質は変わらない。
シェークスピアは、
人間の喜怒哀楽といった本質を書いているから、古びない。


★コメント
仕事とビジネスのポイントが詰まっている。
読み返したい。




 

 



 

 







◆鈴木敏夫『スタジオ・ジブリ物語』を読み解く



★要旨


・未曽有の大作「もののけ姫」。


・映画『耳をすませば』の作業中に、
鈴木敏夫プロデューサーと宮崎駿の間で、
次回作について話し合いがあった。


・鈴木は、宮崎が長年構想を温めてきた、
時代活劇『もののけ姫』の映画化を提案する。


・これは宮崎が
1980年にTVスペシャル用企画案として描いたものの、
実現しなかった作品だった。


・宮さんという人は、
たえずいろんな企画を抱えている人で、
『もののけ姫』の原案も何年も前から話に出ていた。
描きためたイメージボードもあった。(鈴木敏夫)


・鈴木の説得の結果、
宮崎は1994年8月より、
「もののけ姫」の準備に入ることになる。
しかし、それから4か月の間、
構想はまったく固まらなかった。


・宮崎は、チャゲアスのミュージックビデオの仕事をして、
大きな気分転換となり、
1995年に入り、大きな方針転換を決断する。
初期設定案とそれに付随するアイデアをすべて捨てて、
完全に新しい物語を作るというのだ。


・こうして「もののけ姫」の企画は、
ようやく具体的に動き始めた。


・1995年5月に、
5泊6日で屋久島へのロケハンが行われた。
じつは、宮崎が屋久島へロケハンへ行くのは、
『ナウシカ』以来、これが2度目。


・ロケハンには、
宮崎をはじめ美術スタッフを中心に約16人が参加。


・こうした体験を主に、
シシ神の森の描写を中心に生かされることになった。


・熱気に包まれたスタートにより『もののけ姫』は、
1997年7月の封切り以降、
並み居る洋画大作を抑えて大ヒットした。


・『もののけ姫』は自らの問題を解決するだけでなく、
大きな社会現象を巻き起こすまでの大ブームとなった。


★コメント
ものづくりとは、何か。
その本質がここに詰まっている。


 

 





◆保坂三四郎『諜報国家ロシア』を読み解く


副題→「ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで」


★要旨


・本書は、なによりも自分のために書かれた。
私は2000年ごろ、モスクワに1年間留学した。
まだ20歳だった私は、ロシアでの体験に感化されて、
「ロシアかぶれ」となって帰国した。


・2014年、わたしは、
ロシア語やロシア政治・文化を教える教師、有識者が
ロシアの違法なクリミア併合を、
正当化こそしないが、ロシア側から見た歴史・文化的視点、
危険なウクライナ民族主義の台頭、
欧米諸国の「偽善」を持ち出して、
これを必死に相対化しようとする姿を見て
違和感を持った。


・免疫(予備知識)を持たない状態で
ロシアの研究やビジネスに取り組む若者が行き着く先は、
だいたい相場が決まっている。


・ロシアに対して、激しく抵抗し、
独立運動を繰り広げてきたウクライナ人は、
ロシアという国や人々を最も肌身で知っている。


・逆に、ロシアは、
ウクライナのことをほとんど知らない。


・1985年、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長は、
ブレジネフ期のソ連社会・経済の停滞からの
脱却を目指し、「ペレストロイカ」と呼ばれる、
改革を提唱した。


・ソ連の経済自由化にともない、
小規模な民間ビジネスが許可された。
貿易が開放されるにあたり、
チェブリコフKGB議長は、
対外経済活動の発展と両立できる防諜体制の
「抜本的なペレストロイカ」が必要であると説いた。


・ソ連では、
国家保安機関に勤務する者のことを、
「チェキスト」と呼んだ。


・そこで、東欧に駐留していたソ連軍が撤退すると、
軍内部で防諜に従事していたチェキストは、
ビジネス・貿易分野での防諜担当に
配属替えされた。


・1989年、クリュチコフKGB議長は、
チェキストが新しい民間の職業に習熟する必要性を訴え、
KGB内部では、経済・ビジネス専門の養成に力が入れられ、
若手には企業で研修を受けさせた。


・市場経済の仕組みについて幹部研修が行われ、
経済防諜を担当する第6局は、
闇経済の実態を詳細に分析した。


★コメント
やはり、ソ連やロシアの歴史は、
KGBや情報機関を抜きには語れない。


 

 



◆山田吉彦『ニッポンの国益を問う。海洋資源大国へ』を読む


高橋洋一さんと松原仁さんとの共著。


★要旨


・民主主義という制度は、経済成長の前提となる。


・資源国になると、
民主主義制度がなくても、経済発展が突き抜ける。


・日本も海洋大国となり、資源大国となると
経済成長で突き抜ける。


・資源国というのは、努力なり。


・資源を探さないと、資源国にならない。


・面積が大きいほうが、資源がある。
日本の海の面積は広い。


・日本の海は、世界6位の広さを持ち
広大な海の資源を利用し、
資源国家になる可能性を秘めている。


・日本への貿易物資の99%は、船で運ばれている。


・日本人は海上輸送がない限り、生きていけない。


・この国は、海に守られてきた。


・外敵は、必ず海を越えてくる。


・日本にとって、
沖ノ鳥島は海洋資源の観点から重要なり。


・日本の海洋資源は、絶対に守らなければならない。


・海洋資源が、
もし国の開発によって得ることができれば、
日本国政府のバランスシートの資産に載る。


・500兆円くらい載るかもしれない。
資源が凄く多いから。


・極端な話、500兆円投資しても、ぜんぜん大丈夫である。


・500兆円の国債を発行して
海洋開発の投資しても、全然OKである。


・100兆円くらいだと、投資効率5倍になる。


・海洋の開発のために、
ものすごい巨額な国家プロジェクトの投資をする。
ここで潤う。
関連会社は、すごく潤う。


・海洋資源が当たり、500兆オンされたら
日本はG7でトップになる。


・国債出して、500兆円取れ。


・バランスシート論と海洋国家を結び付けよ。


★コメント
日本の将来は、可能性に秘めている。
どんどん調査を進めたい。

◆浜田聡『浜田聡のバズった質疑10選と政策の核心 』を読む


★サブタイトル
→NHKをぶっ壊すと言ったけどそれだけじゃないんです。


★要旨


・ 私は6年前、国会議員として初当選し、今日まで活動を続けてきました。


・その間、常に心がけてきたのは
「他の議員がやらないこと」、
そして「国民が本当に求めていること」に取り組むという姿勢です。


・国会議員は言うまでもなく国民の代表です。
だからこそ、国民の声に真正面から向き合い、
それを政策に反映していくことが使命だと考えています。


・ただ一方で、国会は議員の集団でもあり、人間関係や会派のしがらみから、
どうしても「遠慮」が先に立ってしまう場面が多いのも事実です。


・私は、たとえそうした圧力があったとしても、「やるべきことはやる」という姿勢を貫いてきました。


・特に、他の議員が避けがちな「権力構造への批判」や「影響力の強い人物との対峙」など、
難しいテーマにこそ果敢に取り組む必要があると考えています。


・たとえば、
「Colabo問題」や「フローレンス問題」はその象徴的な事例です。


・こうしたテーマに切り込むことは容易ではありません。関係する政治家や団体の影響力が強いほど、
その問題に言及するには相当な覚悟が求められます。


・しかし、だからこそ、誰かが声を上げなければならないと私は考えています。


・国会における議員の質問の意義は、
国民にとっては分かりにくい部分もあるかもしれません。
しかし、これは議会制民主主義の根幹に関わる大切な制度です。


・質問の意義としてまず挙げられるのは、
「政府から公式な答弁を引き出す」という点でしょう。


・一つ私が重視しているのは、
国会という公の場で、特定のテーマが
「議題として取り上げられた」という事実そのものを記録に残すことです。


・議事録に載ることで、そのテーマが議会で扱われたという既成事実が生まれます。


・特に、他の議員が触れたがらない、
あるいは避けがちな問題にあえて取り組むことに価値があると考えております。


・減税と財政再建の両立を
どのように実現していくかという点については、
非常に重要な政策課題であると考えております。


・最初に減税を行うことで歳出削減を不可避なものとし、
真の行財政改革を進めていくことが必要だと考えております。


・減税は単なる財政負担ではなく、
構造的な行財政改革の起点であり、
結果として財政再建にもつながる政策であると確信しております。


・私自身も、情報発信の重要性を強く意識し、
ブログの更新やYouTubeでの動画配信を日々継続しています。
これは国会議員としての自分の基盤をつくってくれているものだと考えており、
今後も継続していきたいと思っています。


・また、
インプットした情報をそのままにせず、SNSでの発信、
質問主意書の提出、国会質問などへとつなげることを意識しています。


★コメント
浜田さんの面白さと凄さが凝縮されている。

読み込みたい。



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◆伊藤氏貴『奇跡の教室。伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀』を読む


★サブタイトル
→エチ先生と「銀の匙」の子どもたち。



★要旨


・戦前、遠藤周作などを教えた彼は、
「公立校のすべり止め」と見られていたその学校の生徒たちに、
なんとか本当の学力を、と願い、
昭和25年、前代未聞の授業を始めた。


・教科書を一切使わず、
一冊の薄い文庫本を3年間かけて読むという、
おそらく世界でも類をみない「奇跡」の授業だ。


・登場人物の見聞や感情を追体験していき、
一言一句を丁寧に読み解き、そこから膨らませていく授業は、
生徒の興味でどこまでも横道にそれていき、
2週間で1ページしか進まないなんてことは日常茶飯事だった。


・しかし、その教室には、
生徒たちのほとばしる探究心と、きらきらした好奇心が、
絶えず満ち溢れていた。


・伝説の教師の名前は、橋本武。


・橋本の教え子たちは、
戦後のスピード社会と逆行するように、
ゆっくり、ゆっくり、しかし着実に学ぶ力と生きる力をつけていく。


・薄い文庫本に3年を費やす。
生徒の興味で脱線していく授業、
「わからないことは全くない」領域まで、
1冊を徹底的に味わい尽くす、
崇高な遅読、味読、スローリーディング。


・教師の願いどおり、「銀の匙」の世界は、
幸運な6分の1の灘校生の、
その後の人生の背骨になっていった。


・橋本が何度が繰り返した言葉がある。
「国語はすべての教科の基本です。
学ぶ力の背骨なんです」


・あえて捨てる、徹する、遠回りする。


・昭和25年、最初の国語の授業。
大量のプリントを抱えて、教師が現れた。
簡単な自己紹介をしたあとの、その教師の言葉にクラス中が驚いた。

「教科書は先日みんなに配った、この『銀の匙』です。
これを中学3年間ずっと使いますから、大事に読んでいきましょう。
私の授業ではノートの準備をする必要はありません。
毎回私がプリント配ります。
それが君たちのノートになります」


・意味不明の単語が随所に出てくる薄い文庫本を3年間。
そんな授業、聞いたことがない。


・橋本の話は、文庫本のなかの言葉一つから
横道にそれていき、
日本の伝奇伝承からアラビアンナイトまで、
詩の宇宙から中国の兵法の話まで、
『銀の匙』から自由に行き来する世界を
かれらは楽しいと感じ始めていた。


・昭和37年5月。
文庫本のページは、1か月たっても、
まだ2枚しかめくられていなかった。

小学生時代の読み書き中心の国語や、
受験のそれともまったく異質の授業が続くことに対して、
違和感をもつ生徒が少なくなかった。

橋本が、いつものようにプリントを配り始めた、
そのときだった。

「先生!」

挙手しながら、立ち上がった級長の口から発せられた、
次の一言に、教室が静まり返った。

「先生、このペースだと200ページ、終わらないんじゃないですか」


橋本は、ゆっくりと教壇に戻り、
そして一度教室中の生徒を見渡した後、つぶやくように言った。

「スピードが大事なんじゃない」


「たとえば、急いで読み進めていったとして、
君たちに何が残ると思いますか。
なんにも残らない。
私の授業は速さを競っているわけではありません」


「それよりも、みんなが少しでもひっかかったところ、
関心を持ったところから自分で横道にそれていってほしい。
どんどん調べて行って自分の世界を深めてほしい。
その時間をとって進めているつもりです」


「すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなります。
なんでもいい、少しでも興味をもったことから
気持ちを起こしていって、
どんどん自分で掘り下げてほしい。
私の授業では、君たちからそのヒントを見つけてくれればいい」


「だから、このプリントには正解を書いてほしいとは思っていない。
自分がその時、
ほんとうに思ったことや言葉を残していけばいい。
そうやって自分で見つけたことは、
君たちの一生の財産になります。
そのことは、いつかわかりますから、、」


教室中がピーンと張りつめていた。
話を聞き終えた級長は、無言のまま着席した。
橋本は、張りつめた空気を和らげるように、
にいtっと笑うと、
黙って再びプリントを配り始めた。


★コメント
学びの本質が詰まっているエピソードだ。
いつの時代でも通用する、メソッドである。


 

 



 

 



 

 








◆福永活也『日本一稼ぐ弁護士の仕事術』を読み解く





★要旨


・今日から3年間、
一度も「忙しい」と言わずに生活する。


・私は弁護士になって最初の1年、2年目は
土日祝日を問わず、
毎日平均的に朝10時から深夜1時まで仕事した。
休みは週に半日くらい。


・こういう仕事のスタイルは、
激務とかブラック労働と呼ばれるかもしれない。
しかし、「経験」を対価と考えている私からすれば、
毎日たくさんの経験を得ることができ、
掘れば掘るほど宝物が出てくるような、
なんてお得な環境なのだと思った。


・もし独立したてで時間が余っているけれど
仕事がない、という人がいれば、
完全無料で受任していけばいいと思う。
報酬は手に入らなくても、
経験はどんどん積むことができる。


・スピードと時間量は、
誰でも持ち得る武器である。


・弁護士として独立するとき、
東日本大震災の被災者支援業務に携わった。
原発事故による風評被害対策業務については、
1年以上かけて「原発事故」「風評被害」という
キーワードが入った過去の判例や
出版されている専門書や文献は、ほぼすべて読み込んだ。


・このようにスピードと時間量で
誰にも負けないと思えるようになると、
仕事が立て込んできても、
失敗しそうになっても、
他人に負けない圧倒的なスピードと時間量という
武器があるのだから、
何とか乗り越えられるだろうと思えるようになる。


・スピードは最強の専門性になる。


・いまは高級な生活スタイルを楽しんでいるが、
同時に貧乏な生活スタイルも楽しんでいる。
仮にホームレスになったとしても、
落ちている食べ物を見つけやすい場所や時間の統計をとって
戦略を練ってみるなど、
生活を楽しむ自信がある。


・失敗しても、経験は確実に蓄積される。




★コメント
圧倒的な福永さんの仕事力に感服した。
だれでも最初の一歩を踏み出し、
大量行動すれば、なんでもできる。


 

 



 

 





◆橋本武『「銀の匙」の国語授業』を読み解く



★要旨


・1934年、旧制灘中学に赴任し、
それからずっと、1984年に71歳で退職するまで
国語教師として教壇に立ってきた。


・教師という立場になったとき、
「自分が中学生だったとき、先生から何を教わっただろうか」
と考え、愕然とした。
先生に親しみはあっても、
授業の内容がまるで思い出せない。


・勉強したことが生涯心の糧になるような、
そんな教材はないか、とずっと考えていた。


・戦後になって、
中勘助の『銀の匙(さじ)』こそ、それだと思い当たった。


・『銀の匙』授業は、1950年、昭和25年から始めた。
中学3年間をかけて、横道に入り込みながら、
ゆっくり読む。


・授業では毎回、ガリ版でプリントを準備して、
自分が調べた過程を生徒にも経験してもらうようにした。


・大事なのは答えではなく過程である。
早急に答えを求めてはいけない。
すぐ役立つものは、すぐ役立たなくなる。


・どんどん横道にそれて、遊びながら学んでいく。
これこそわたしの『銀の匙』授業のやり方だった。


・『銀の匙』は、中勘助の師匠である夏目漱石が、
美しい日本語だと激賞していた。


・最初の『銀の匙』授業の生徒は、1950年入学組だ。
いよいよこの学年からやろうというとき、
その1年前から『銀の匙』研究ノートを作り、
どのように指導していったらいいのかを
書き留めていった。


・わたしは、
国語の基礎学力を涵養する根源は「書く」ことにある、
と思っている。
だから、灘校での授業ではあらゆる機会に
生徒に書かせるようつとめた。


・かつて執筆した『灘高式勉強法』のまとめのところで、
国語勉強の「7つのポイント」を挙げている。

→読む、書く、話す、聞く、見る、味わう、集める。である。


・「見る」「味わう」。
国語教材に戯曲やシナリオ、あるいは狂言が出てきたら、
実際に舞台を見てみるといったことだ。
美術に関する評論を読んだら、
美術館に行って実際にその作品を鑑賞してみる。


・「集める」もまた、重要だ。
ふと気が付いた観点から「言葉集め」をやったり、
気になった表現をコレクションしてみたりすると
国語の豊かさが見えてくる。


・国語は、すべての教科の基本であり、
学ぶ力の背骨といっていい。


・国語の勉強に、
即効的効果を期待することは無謀なり。


・『銀の匙』授業での配布プリントには、
生徒自身が書き込むことができるスペースを
かならずつけた。
そこに出てくる言葉を手掛かりに、
できるだけ横道にそれていけば、
知識の幅を広げることができる。


・あまりに進度が遅いので、生徒が質問したことがある。
「こんな進行では、一冊終わらないのではないか」
と。
このときの私の返事は、
「スピードが大事なんじゃない。
すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる」。
これはいまもそう思っている。


・著者の中勘助さんにお会いしたが、
心の温かい、聖者のような方であった。
「『銀の匙』研究ノート」を差し上げたとき、
「ここまで『銀の匙』を読み込んでくれて、
作者としてとても嬉しい」
とおっしゃってくださったのは、私にとって無上の喜びだった。


★コメント
なんでもかんでも早く進む世の中にありながら、
ゆっくりじっくり一冊を味わうことは、
最高の贅沢であり、最上の学びである。



 

 




◆北野幸伯さん『新版・日本の地政学』を読み解く


★要旨


・ロシアがウクライナに侵攻した「地政学的理由」について考察する。


・前後半で、
「ロシアにとっての緩衝地帯の重要性」
「緩衝地帯をめぐる、ロシアと欧米の争い」
「プーチンのアグレッシブな言動に大きな影響を与えている、ロシアの地政学者」
についてお話しする。


・世界地図でロシアを見ると、
最初に気づくのは、その「巨大さ」である。


・ロシアの面積は約1700万平方キロで、世界一。
2位のカナダの1.7倍。
日本の、約45倍の面積を有している。


・悪意を持って世界地図を眺めれば、
ロシアの地形は、
「どこからでも攻め込むことができる」ことに気がつく。


・こういう地政学的地位にあるロシアの支配者は、
広い国土を守るための方策を考えた。
それは「緩衝地帯をつくること」である。


・ロシアにとって、旧ソ連と北朝鮮は「緩衝地帯」なり。


・プーチンは、
旧ソ連圏を「緩衝地帯」「勢力圏」と見ているため、
他の勢力が旧ソ連圏にちょっかいを出すことを、とても嫌う。


・2022年2月にウクライナ侵攻が始まるずっと前から、
欧米、特にアメリカとロシアの前哨戦は始まっていた。
構図は、
「アメリカが旧ソ連圏を奪いに行き、ロシアが対抗する」
ということ。


・ロシアが「勢力圏」「緩衝地帯」と考える「旧ソ連圏」で
起こった大事件は、
2014年の「クリミア併合」だ。


・プーチンの思想に大きな影響を与えたのが、
ロシアの地政学者アレクサンドル・ドゥーギンである。


・ドゥーギンは、
欧米では「プーチンの頭脳」と呼ばれている。


・ドゥーギンは、
「ルースキー・ミール」(ロシア世界)という主張をしている。
これは、
ロシア語を話し、キリスト教正教会を信仰する人々が居住する地域を
「独自の文明圏」と見なすロシアの世界観、思想、イデオロギーである。


・この世界観によると、
ロシア、ウクライナ、ベラルーシは、
同じ民族、同じ宗教を持つ、一つの民族である。
ところが、ウクライナはロシアを裏切って欧州に向かっている。
ウクライナを取り戻さなければならない。


・ドゥーギンは、ウクライナについて非常に強硬で、
「ウクライナ全土を解放しなければならない」
という考えだ。
別の言葉で、「ロシアの物にする」ということだ。


・プーチンは、
ロシアの「緩衝地帯」である「旧ソ連圏」を守るために、
緩衝国家ウクライナを欧米に奪われないために、
この戦争を開始した。


・トランプ政権は、「日本自立」のチャンスなり。


・「他国を守りたくない」というのは、
「アメリカファースト」「お金ファースト」の
ビジネスマン・トランプの「本質的価値観」だと思う。


・アメリカの関与減を、
「日本は、自分の国を自分で守れる体制をつくるチャンスを与えられたのだ」
「軍事の自立を達成するいい機会だ」

肯定的にとらえるべき。


★コメント
膨大なニュースと国際情報が飛び交うなか、
北野さん文章は、本質のなかの本質を突いている。
そのため、世界を俯瞰してみることができ、
複眼的思考力を身につける手助けをしてくれる。
最終的には、自分自身で調べて分析することが
自分の深い理解につながる。
そのための強力な材料と良質な教材を北野さんは提供してくれる。
本書を熟読することで
支配者層や世界を動かすリーダーの思考力をインプットすることが可能となる。


 

 



 

 




 

 



 

 



◆石原ヒロアキ『漫画・マンシュタインと機動戦』を読み解く


監修→大木毅。



★要旨


・「ドイツ国防軍最高の頭脳」と称された、
エーリヒ・フォン・マンシュタイン。


・その評価は、長く本人の回想録を基にしたものであったが、
冷戦後は戦争責任の回避や
戦略的視野の欠如が批判されるようになった。
一方で、
その作戦能力の高さを認める声も根強く、
評価はいまも揺れている。


・本書は、
スターリングラードからクルスク、
ドニェプル川の戦いを描きながら、
機甲戦の進化と独ソ戦の実態を再現したものである。


・かつて、マンシュタイン元帥は、
戦争に敗れたドイツ国防軍の将でありながら、
称賛と名声をほしいままにしてきた。



・1940年のアルデンヌ森林地帯を突破、
あるいは、1942年に難攻不落の要塞セヴァストポリを
攻略した軍司令官としてだ。


・また1943年以降、
優勢を誇るソ連軍に一泡もふた泡も食わせた軍司令官として、
さまざまな戦功を上げたことにより、
「ドイツ国防軍最高の頭脳」と称され、
敵であった連合国の専門家たちからも高い評価を受けた。


・しかし、そうしたマンシュタイン像は、
彼自身が回想録『失われた勝利』をはじめとする、
さまざまな手段によって流布させたものだった。


・やがてそのような「虚像」は剥がれていく。
冷戦が終わりのきざしを見せ始め、
数で優るソ連軍を質で破ったドイツ国防軍という「神話」は
必要性を失っていった。


・ただし、このような傾向には、
さずがに行きすぎたところがあって、
2010年代以降、さまざまな欠点はあれど、
優れた作戦家であったと評価するような評伝が
刊行されるなど、いわば揺り返しも来ている。


・本書においては、
さまざまな批判を受けてもなお色褪せぬ、
マンシュタインの作戦の巧妙さが鮮烈に描き出されることとなった。


・2022年以降、
同じ場所で戦闘は3年以上続いている。


・現在、ロシア軍は優勢な兵力を保持しているにもかかわらず、
また、ウクライナの地形や道路事情も当時と
さほど変わっていないにもかかわらず、
なぜ決定的な勝利を掴めないのか。


・軍隊とは、保守的な組織だ。
新しい考えを入れるよりも、
古い考えを捨てるほうが困難といわれている。


・ロシア軍がいまだに
BTG(大隊戦術群)の呪縛から逃れられないのであれば、
この戦争は容易に終わらないだろう。


★コメント
過去の戦史から学べることは多い。
関連文献を読み漁りたい。