◆伊勢雅臣『大御宝。日本史を貫く建国の理念』を読み解く
大御宝→「おおみたから」
★要旨
・民を大切な宝物として考え、その安寧を祈るのが、
「大御宝」の思想なり。
・神武天皇即位の詔に示され、
歴代天皇の責務とされてきた理念が、
日本の歴史を支えていた。
・神武東遷がはじまり、
神武天皇は各地の支配者と主従関係を結んだり、
姫を娶ったりして、
同胞感を醸成しつつ、東に向かった。
・そして、河内国の族長などの戦いになんとか勝ち、
神武天皇は「建国宣言」をされた。
「恭みて宝位に臨みて、元元を鎮むべし」(日本書紀)
→(謹んで皇位に即いて、民を安んじ治めなければならない)
・民を「大御宝」と考え、その安寧を祈る。
それを行うために、
神武天皇は皇位に就いたのだ。
・日本列島の各地で、
さまざまな部族が今まで群雄割拠していたが、
一つの屋根の下での家族のように互いに思いやりを持ち、
仲睦まじく暮らすことを理想として、
神武天皇は国家を創った。
・各地の部族を婚姻や先祖の系図で結ぶことによって、
平和的な共同体を生み出していった。
・民俗学者、柳田國男は、
各地に残る民話から、我が国では祖先の霊が、
山の高みから我々を見守ってくれている、
と信じられてきたことを明らかにした。
・世界の多くの原始部族は、
こうした祖霊信仰を持っていたが、
近代化した国家で祖霊信仰を持ち続けている点にも、
我が国らしさがある。
それは聖徳太子が、
祖霊信仰を仏教と結びつけたことによって、
継承されてきたからである。
・我々を育ててくれた先祖が
死後もわれわれを見守ってくれているなら、
現世の我々も子孫のためにできる限りのことを
しなければ、という心構えになる。
・そしてまずは、
子供たちにしっかりした教育を施して、
立派な人生を歩ませようと考える。
・教育重視は、我が国の「根っこ」である。
江戸時代の就学率は、世界でも群を抜いていた。
明治維新後、すぐに公布された学制により
全国での大々的な学校づくりが始まった。
・神道を基盤に、仏教も儒教も和して
共存しているのが日本の強みであり、
このかたちを始めたのが、聖徳太子だった。
・後醍醐天皇とその理想に殉じた楠木正成や
その他の忠臣たちの生き様は、
清冽な地下水脈のように
日本人の心の深奥を潤してきた。
・徳川家康の九男、尾張藩の初代藩主となった、
徳川義直は、
「王命に依って催さるる事」
という言葉を残している。
→
これは朝廷と幕府が対立することになったら、
朝廷側につけ、
という尊皇精神が込められているとされる。
・「大御宝を鎮むべし」
という神武天皇即位の祈りは、
清冽な地下水のように、
国史を貫いて流れている。
★コメント
あらためて、日本史の大きな流れを知った。
長く続く、国史の精神を学びなおしたい。
◆江崎道朗『シギント。最強のインテリジェンス』を読み解く
茂田忠良さんとの共著。
(元・内閣衛星情報センター次長。警察官僚出身)
★要旨
・アメリカと日本との違いは、どこにあるのか。
その違いの一つが、
「シギント」(信号諜報)に関するインテリジェンスの扱いだ。
・本書の内容は、
政治指導者、外交・防衛の担当者、スパイ・テロ対策の担当者には
必須の基礎知識である。
・シギントを知らずに、インテリジェンスを知っているとは言えない。
・戦争には、
ターゲティングなどの「目の前の情報」だけではなく、
「多層の情報」が必要だ。
・旧大英帝国の領土にまたがっているコモンウェルス、
イギリス連邦の存在は大きい。
通信情報を取るにしても、
あちこちに拠点を置かないと取れない。
・だからイギリス、カナダ、オーストラリア、
ニュージーランドに情報収集を協力してもらって、
その代わりにその情報をそれらの国とも共有している。
・イギリスは、情報力があるといわれるが、
その根源は何かと言えば、
ファイブ・アイズの同盟関係だ。
この同盟関係のおかげで、
アメリカのシステムからも情報が入手できる、
という絶大なメリットがある。
・イギリスこそ、インテリジェンスの本家なり。
・戦後、自民党が創設された際に、
憲法改正を党是にしたことはよく知られているが、
じつは、もう一つ、隠れた党是があった。
それが「日英同盟の復活」である。
・僕もむかしはなぜ自民党が
そこまで日英同盟の復活にこだわっていたのが、
よく分からなかった。
→
だが、中西輝政先生の研究会で、
「イギリスこそが、学問的な分野も含めて
インテリジェンスの本家であり、
アメリカはその分家だ」
→
「アメリカは、マンパワーとカネをつぎ込んで
凄まじいインテリジェンスのシステムを作る。
だが、インテリジェンスの基本的な発想や、
コンセプトに関しては、
やはりイギリスが本家なんだ」
と教えていただいた。
・政府高官が宿泊できるようなホテルは、限られている。
・通信記録から、会議のキーマンをあぶり出す。
・法律になくても対外諜報は「やるのが当たり前」である。
・日本は、まず政治が、
インテリジェンスの理解を深めなければならない。
・人間は、移動中の車内で本音を漏らす。
・民間企業を守ることこそが、国益に繋がる。
★コメント
あらためて、
国際社会の情報戦のすさまじさを知った。
原点に戻って、学びなおしたい。
そして行動したい。
◆黒井文太郎『工作・謀略の国際政治』を読み解く
サブタイトル
→「世界の情報機関とインテリジェンス戦」
★要旨
・ウクライナ軍の善戦に貢献した西側諸国の支援については、
武器の供与がずっと大きく報じられてきた。
しかし、実際はそれだけではない。
・ロシア側の情報を収集してウクライナ側に伝え、
同時にロシア情報機関からウクライナ側を守る、
いわゆる「情報戦」でCIAが、決定的な役割を果たした。
・ワシントンポストによると、
CIAは、2014年以降、数千万ドルを投じ、
ウクライナの情報機関の能力強化を進めてきたとのこと。
・元FSB(ロシア連邦保安庁)ウクライナ支部だったSBUには、
ロシア側内通者がいる懸念があったため、
新たに「第5局」という部局を作り、
そこから支援を始めた。
SBUは、ウクライナ保安庁のこと。
・そこからCIAは、
信頼できるSBU工作員と連携し、
強化していった。
・GUR(ウクライナ国防省情報総局)とCIAの関係は、もっと密接だ。
GURの将校は若手が多く、
ロシアの内通者がいる懸念は、ほとんどなかった。
若手中心のため、
CIAは一から育成し直した。
要因をウクライナと米国の両方で訓練し、
高度な監視システムを供与した。
・CIAは、GURの若い将校にも、
敵陣営でスパイを獲得する手段の訓練を施しており、
実際、GURは、
FSBを含むロシア治安機関内に
独自の情報網を構築したとのこと。
・CIAなどの情報機関以外にも、
米英など西側の軍の特殊部隊が、
ウクライナ国内にひそかに潜伏し、
ウクライナ側を支援している。
・とにかくGURは、
対ロシア工作ではウクライナ側では
圧倒的な存在感を持つ工作機関である。
局長のブダノフ中将は、2024年2月現在で38歳と若いが、
秘密工作畑一筋のプロである。
・ブダノフの経歴は非公開な部分が多いが、
陸軍士官学校を出てすぐGURに配属され、
同局特殊部隊などで、特殊工作に従事したものとみられる。
・筆者は、2015年以降、
ダークな政商・プリゴジンの動向はウォッチしてきたが、
プリゴジンは最初から最後まで
基本的には「チンピラ」だ。
・ロシアはエリツィン時代から、
国内でカネ絡みの殺人が
横行するハードボイルドな土地柄であり、
オリガルヒ(新興財閥)を守る実質的な武装私兵としての
警備会社が数多くある。
・その中にはGRU幹部が天下りしたりして
癒着している警備会社はいくつもある。
GRUとは、ロシア軍の参謀本部情報総局。
・GRUのダミーとして創設されたワグネルだったが、
表向きはロシア軍との関係を秘匿するため、
あくまで民間企業という体裁がとられた。
そこでスカウトされたのが、
プーチンの企業舎弟だったプリゴジンだ。
・ワグネルの活動資金も武器弾薬も
ロシア当局が出所だが、
プリコジンをオーナーと偽装することで、
迂回することを狙ったものだ。
・ワグネルはこうしてGRUのダミーとして
ロシア国外で活動したが、
やがてシリアやウクライナ以外にも、
リビア、スーダン、中央アフリカ、モザンビーク、
マリなどに派遣された。
ロシアの影響力拡大を図るGRUの工作である。
・ワグネルはこうした国々の独裁政権、
あるいは軍閥に武器・軍事支援を与えるなどして
活動したが、そのうち、その見返りに石油や金、
ダイヤモンドなどの鉱物資源の利権を得るようになった。
・どうもその過程で、
裏社会の闇ビジネス業界に詳しいプリゴジンの発言権が
高まっていったようだ。
GRUからすれば、あくまでひとつの「駒」にすぎないが、
プリゴジンの存在感が徐々に高まっていったのはなぜか。
・いま振り返ると納得できる。
彼本人のキャラクターの押し出しの強さだ。
★コメント
やはり世界は、表に出てこない、
裏側の工作や交渉、活動で動いている。
つねにその情報をチェックしたい。
◆中川コージ『日本が勝つための経済安全保障』に注目します。
正式タイトル
→「日本が勝つための経済安全保障。
エコノミック・インテリジェンス」
★ポイント
・経済インテリジェンスが国民の命運を左右する
・居酒屋トークレベルの対中解像度では国を誤る
・軍事忌避の風潮が遠ざけてきた産学と安全保障
・中国にはできない、日本だからできる信頼あるデータ取引所
・中国が「軍民融合」を推進しなければならなかった理由
・中国政府を最も信用していない人たちに学べ
・「中国のデータを日本が販売する」ことで得る「勝ち筋」
・「インド」という変数を踏まえ、100年先を見据えたシミュレーションを
◆岩尾俊兵『世界は経営でできている』を読み解く
★要旨
・一時期に権勢を誇った王国や文明は
軍事力と経済力の両方をみずから手放す。
その結果として、
常日頃から存在していた危機に対処できなくなり、
国家は崩壊するのだ。
・国家が崩壊するときの悲喜劇は
世界中で同じである。
・特定の王国や文明が稚拙な国家経営によって弱体化したとき、
まるで狙ったかのように危機
(異民族の侵略、大災害と飢饉、内乱と革命などなど)
がやってくる。
これは当たり前の話である。
・常に危機は存在していて、
政権が弱体化しないと危機は危機にならないだけだ。
・弱体化した末期症状の政権は、
さまざまな危機に対する無為無策無能ぶりをさらけ出す。
・たとえば、歴史のある時代、ある場所では、
ラテン語をマスターした人、聖書に通じた人、
四書五経を丸暗記した人、
字の綺麗な人、
詩作が上手い人などが、
当代最高のエリートとして処遇された。
・たとえば一般には
海の民と呼ばれる集団によって滅ぼされたとされる古代エジプト王朝は、
実際には滅亡までに何度も海の民を撃退していた。
・中国の漢王朝も黄巾の乱によって勢力を大きく削られるまで、
何度も似たような人民蜂起を鎮めてきた。
・政権や王朝は常に危機に対峙しているのである。
・本来は「人民を幸せにする」という
約束を果たすために権限を委任されていたにすぎない政治権力は、
まるで「特権階級だけが人民だ」と定義しているかのような行動に出る。
特権階級の権利・権限は
拡大し市民の権利・権限は極限まで縮小される。
・古今東西どんな国家でも
官吏は増税を大使命だと勘違いしているかのように振る舞う。
・本当の意味で政権や王朝を弱体化させる原因は
国家経営の失敗である。
すなわち経営の巧拙こそが歴史を動かす。
★コメント
経営と歴史は、密接に繋がっている。
学びたい。
◆手嶋龍一『公安調査庁秘録』に注目します。
★副題→
「日本列島に延びる中露朝の核の影」
瀬下政行さんと共著。
★ポイント
・日本列島周辺に音もなく忍び寄る危局。
東アジアの深層で生起する異変をいち早く察知するべく動く情報機関、
これが公安調査庁だ。
・中露朝が核戦力を背景に日本を窺う実態を、
現職のインテリジェンス・オフィサーが初めて実名で明らかにする。
・ウクライナとパレスチナ、二つの戦争に超大国アメリカが足を絡めとられる間隙を衝き、
中露朝は攻勢に転じた。
・日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す現状に警鐘を鳴らす。
・中露朝が接する危険な「三角地帯」の現在
・ロシアに渡った北朝鮮のミサイル
・北朝鮮とイスラエルとの極秘交渉
・核・ミサイルの資金源を追え
・カジノを使った資金洗浄の手口
・標的は暗号資産なり。
◆奥山真司・訳『スパイと嘘。世界を欺いた中国最大の秘密工作』に注目します。
アレックス・ジョキス著。
峯村健司さん、解説。
奥山真司さん、翻訳。
副題
→「アメリカを油断させ、追いつく国家安全部の謀略」
★ポイント
・「平和的台頭」と民主化・国際化路線は国家ぐるみの偽装だった。
・なぜ、どうやって歴代米政権を油断させることに大成功したのか。
・「民間団体」を駆使して、西側の大物政治家、
政府高官やビジネスリーダーを巧みに取り込み、
中国のナラティブを信じこませる。
・従来のスパイ活動とは違う、国家安全部の秘密工作を全編実名で解明。
・刊行とともに欧米に衝撃を与え、
著者は米豪議会の公聴会に相次ぎ呼ばれて証言。
・中国で育ち、
「目に見えぬ侵略」のアシスタントを務め、
最年少でオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)アナリストになった著者の
画期的な研究、全訳完成。
◆まぐまぐメルマガ『国際インテリジェンス機密ファイル』ご案内。
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