皆さんこんにちは。
JWCの佐草です。
今日は早速ですが、4月に入り、また新しい動物が保護されてきたので、ご報告させていただきたいと思います。
先日の投稿で、疥癬症のタヌキの保護情報についてお伝えさせていただきましたが、その翌日、また疥癬症のタヌキが保護されてきました。
《前回、保護された子についての投稿はこちらから》
※今回保護された子も重篤な疥癬症だった為、かなりショッキングな画像が続きます。
ご覧いただく際はご注意ください。
この子は、先に来ていた子よりもさらに重篤な疥癬症で、全身の皮膚が肥厚し、かさぶた状になっていましたが、幸い食欲はあり、ふらつきながらもしっかり動けるようでした。
本来であれば室内で様子を見たいところだったのですが、室内の隔離室は既に使用しており、もう一頭入れるほどのスペースがすぐに確保できなかった為、一旦きちんと保温をした上で、屋外の隔離室で様子を見ることにしました。
一方、先に来ていた疥癬症のタヌキも、その日の夜、容体が急変し、また呼吸が荒く、立っていることもできない状態となってしまいました。
夜、病院の診察終了後に、また獣医師に見てもらうと、肺水腫か肺炎を起こしている可能性があるとのことでした。最悪の場合、このまま亡くなってしまうかもしれない、という危険な状態ではありましたが、何とか持ち越してくれれば、という想いで、呼吸を楽にする薬やステロイド、鎮静剤などを投与して、様子を見ました。
監視カメラもセットし、夜中の間も状態を確認していましたが、翌朝には冷たくなっていることも覚悟していました。
そして、次の日。まずは朝起きて一番に監視カメラをチェックすると、呼吸はまだ辛そうではあるものの、何とか頑張って夜を持ち越してくれたようでした。しかし、食欲はあまりなく、栄養価の高いドッグミルクも口元に近づけてようやく飲んでくれる、という状態でした。
二番目に保護されてきた子は、その日も相変わらず食欲はありましたが、やはり怯えているのか、ケージから逃げ出そうと暴れまわっていました。
それくらい元気があるならと、油断してしまったのがいけなかったのですが、夕方、ケージ内で暴れた時に痛めてしまったのか、右前脚に力が入っていないようでした。少し気に掛かりながらも、さらに追い打ちの様に、その晩、町田市では冷たい雨が降ってしまいました。
翌朝、嫌な予感がして屋外の隔離室へ様子を見に行くと、昨日までは暴れまわっていた子が、ぐったりと横たわり、呼吸もとても浅くなっていました。
屋外の隔離室は、屋外とはいっても雨は入らないような構造で、電源を繋いでヒーターも付け、防寒対策も行い室温も確認していたのですが、疥癬症による皮膚の肥厚で体温調整がままならない体には雨が降ったことによる気圧差も厳しかったのか、低体温症を引き起こしていました。
かなりの危篤状態だった為、すぐさま室内隔離室に無理矢理場所を空けて運び込み、まずはチャック付きのビニール袋にお湯を入れて、体をとにかく温めました。また、皮下点滴で温かい補液を流し、胃腸の動きを促進させる薬も入れ、昼には獣医師にも来てもらい、静脈点滴に切り替えて、ビタミン剤と長期で効く抗生剤も追加で投与しました。
お湯が冷めてしまう前に、お湯も都度交換するなど、その日は付きっきりで世話にあたりました。
翌日、低体温症を起こしてしまった子は、やはりまだ横たわっている時間の方が多かったのですが、時折半身を起こしてご飯を食べてくれるまでには回復しました。その後も保温を続け、立ち上がることもできるようになった為、その日の内に点滴も外しました。
※この画像では栄養補助を目的に、動物病院から処方された適切なドッグフードの缶詰を与えていますが、
あくまで緊急措置です。野生のタヌキにはご自身の判断で決してドッグフード与えないでください。
かえって、タヌキの健康に害を及ぼす可能性があります。
最初に来た方の疥癬の子も、やはり肺炎を起こしていましたが、薬が効いてきたのか、呼吸もだいぶ楽そうになり、ご飯も自分で食べてくれるようになりました。
傷病野生鳥獣の治療では処置の内容だけではなく、食事の内容やケージの割り振りといった細かい選択が、その子の命に直結してしまいます。その為、常日頃から最善の方法を、と考えて行動していますが、今回に関してはもう少し早く隔離室の確保ができていれば、屋外の隔離室をもう少し充実させられていれば、という反省もありました。
タヌキの疥癬症の治療はとても難しく、様々な論文の中でも保護された場合の致死率が非常に高い病気とされています。
今後、容態が急変することは十分に考えられ、予断を許さない状況がしばらく続くと思われますが、回復してくれることを信じ、引き続き経過を見守っていきたいと思います。
※監視カメラの映像(スクリーンショット)
疥癬症が発症・悪化する要因のひとつとして、私達の団体では保護していただいた方からのヒアリングを元に、『野良猫の餌を食べてしまったこと』が関係しているのではないかと考えています。
タヌキの疥癬症は、解明されていることが実は少なく、ここまで重篤化する原因も未だ不明とされています。疥癬症に罹ってしまう子を少しでも減らすことができるよう、私達も引き続き、ヒゼンダニと疥癬症の研究も続けて参りたいと思います。
疥癬症とペットフードの関係については、下記のブログで詳しく書かせていただいておりますので、宜しければご参考までにご一読いただけますと幸いです。
またブログで経過をご報告させていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
《JWCからのお願い》
現在、複数の疥癬症のタヌキの治療を行っており、隔離室が満床となってしまった為、一定期間、疥癬症のタヌキの保護受け入れを停止とさせていただきます。
誠に申し訳ございませんが、ご理解のほど宜しくお願い致します。
※JWCは皆様のご寄付・ご支援により活動を行なっております。
一羽でも、一頭でも多くの命を救えるよう、ご協力のほど宜しくお願い致します。
↓ご寄付はこちらから