【400文字作文】下半身は地球を救う。 -5ページ目

【400文字作文】小刻みに揺れる瞳とその指先

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-091103


 老女は、ふふふ。と、笑っていた。声は聞
こえない。けど私には笑い声が、見えた。
 老女は公園の、ゴミ箱に近いベンチに座っ
ていた。コーヒーカップを捨てようとそこへ
近づいた時私はその笑い声に、気付いた。
 こんにちは。挨拶をすると老女はゆっくり
首を傾げ、挨拶を返した。そして平らな膝の
上を指差し、泣き顔ばっかり。と言った。そ
こには子供の写真が貼られた、小さなアルバ
ムが置いてあった。
 ほんとう。と言うと彼女は、乾いた指でペ
ージを捲ってくれた。子供の写真は全て、泣
いていた。お孫さんですか?と聞くと彼女は
それには答えず、よく泣くね。可愛いねぇ。
と独り言のように、呟いた。
 象の瞼のような老女の目を覗き見ると瞳は
潤み、微かに揺れていた。その瞳はとても可
愛らしかった。けど、上手くページを捲れな
い彼女の、乾いた指先は悲しかった。その指
先をぎゅっと、握ってあげたかった。

【400文字作文】市松

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-091017

【400文字作文】のぞきのぞかれ 食い喰われ

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-091008



 旅館に泊まるのは、久しぶりだった。
 畳の柔らかさに、私の脚は緊張したけど、
裸足の足は畳の感触を懐かしみ、私はわざと
畳の上をこするように、歩いた。
 座椅子に座り、グラスに残っているビール
の泡を眺めていると、彼が二度目のお風呂か
ら戻ってきた。そして、顎のあたりに汗をふ
くらませ、四角い手を冷蔵庫に突っ込んでビ
ールを掴み、窓辺の四角いソファに座った。
 私は、部屋の灯りを消し彼の後ろへゆっく
り近寄り、藍色の浴衣の帯で、彼に目隠しを
した。
 夜の色よ。と、私が言うと彼は私の腕を、
ビール瓶に付いていた水滴で冷たくなったそ
の手で掴み、私の皮膚を指で、撫でた。
 目隠しを解くと、月って大きいんだな。と
彼が言った。私は、そうね。と言いそうになっ
たけど、夜空って青いのね。と言った。
 藍色の上品な紙に指で穴を開けたような。
そんな月が私達を、のぞいていた。

【400文字作文】花・ミズキ

$【400文字作文】下半身は地球を救う。-090922

 久しぶりに帰った「家」の庭で、黒くなっ
てしまった空を眺めていると前歯で、ほんの
少し齧ったような月が、出ていた。
 欠けた月と私の間では、ハナミズキが細い
枝を、まだ可愛い北風に「ふう」と吹かれ、
大袈裟に震わせていた。北風は嫌いじゃない
けど、大袈裟な少女のように揺れるハナミズ
キを私は、好きになれなかった。
 どうして植え代えたの?と、私が聞いても
父は、うん。としか言わず、母は微笑むだけ
だった。
 庭に置かれたイスに座り、植え代えられる
前は何が植わっていたんだっけ……。と、思
い出そうとした。月に、目隠しをするように
細くて長い雲が架かると、庭は暗くなった。
 その、雲が流れまた、庭が明るさを取り戻
すと私は思い出した。ハナミズキの前は、老
婆のような梅の木が、植わっていたことを。
月光が創る梅の木の影を、少女だった私が、
怖がっていたことも。

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