【400文字作文】のぞきのぞかれ 食い喰われ

旅館に泊まるのは、久しぶりだった。
畳の柔らかさに、私の脚は緊張したけど、
裸足の足は畳の感触を懐かしみ、私はわざと
畳の上をこするように、歩いた。
座椅子に座り、グラスに残っているビール
の泡を眺めていると、彼が二度目のお風呂か
ら戻ってきた。そして、顎のあたりに汗をふ
くらませ、四角い手を冷蔵庫に突っ込んでビ
ールを掴み、窓辺の四角いソファに座った。
私は、部屋の灯りを消し彼の後ろへゆっく
り近寄り、藍色の浴衣の帯で、彼に目隠しを
した。
夜の色よ。と、私が言うと彼は私の腕を、
ビール瓶に付いていた水滴で冷たくなったそ
の手で掴み、私の皮膚を指で、撫でた。
目隠しを解くと、月って大きいんだな。と
彼が言った。私は、そうね。と言いそうになっ
たけど、夜空って青いのね。と言った。
藍色の上品な紙に指で穴を開けたような。
そんな月が私達を、のぞいていた。