【400文字作文】TOKYOタワーに雪が降る。
ホテルの窓を開け手を翳してみると、私の
手の甲には平べったい雪が舞い、降りた。
その雪はすぐに溶け、だらしのない水滴に
なった。私はその水滴を舐めてみたが、肌の
味しかしなかった。
窓を閉め、雪だよ。と、近くにいる女に言
うと、本当に?と女はノスタルジックな微笑
みを私ではなく、窓に映る自分へと向けた。
去年も一昨年も、その前の冬も雪は降って
いた。だけど私はその雪のことを思い出せな
い……。女はそう言って私の方を向き、微笑
んだ。
それは私も同じだった。雪を見て思い出す
のは子供の頃、毛糸の手袋の先にくっついた
一粒の雪のことだ。雪の結晶が、その時はっ
きり見えたんだ、と私が言うと女は軽く頷き
また、窓に映る自分の方へ顔を向けた。
窓からは白い雪と、火鉢の中で紅く燃える
炭のような東京タワーが見える。窓に映って
いる女の顔に私は、綺麗だな。と言った。
手の甲には平べったい雪が舞い、降りた。
その雪はすぐに溶け、だらしのない水滴に
なった。私はその水滴を舐めてみたが、肌の
味しかしなかった。
窓を閉め、雪だよ。と、近くにいる女に言
うと、本当に?と女はノスタルジックな微笑
みを私ではなく、窓に映る自分へと向けた。
去年も一昨年も、その前の冬も雪は降って
いた。だけど私はその雪のことを思い出せな
い……。女はそう言って私の方を向き、微笑
んだ。
それは私も同じだった。雪を見て思い出す
のは子供の頃、毛糸の手袋の先にくっついた
一粒の雪のことだ。雪の結晶が、その時はっ
きり見えたんだ、と私が言うと女は軽く頷き
また、窓に映る自分の方へ顔を向けた。
窓からは白い雪と、火鉢の中で紅く燃える
炭のような東京タワーが見える。窓に映って
いる女の顔に私は、綺麗だな。と言った。
【400文字作文】インフルエン・ザ
前の車が思い出したように左側のターンシ
グナルを点滅させ、車体を左側にねじり自転
車や歩行者が横断歩道を渡り終わるのを待つ
ために停車した。まったく前に進めない俺は、
両手でハンドルを叩いた。
数ヶ月前から満員電車に乗れなくなった俺
は車で通勤するようになった。駅と国道を結
ぶこの道はいつも混雑しているが、朝は人の
気配がまるで紙人形のようにペラッペラだ。
この人達は駅へ向かっているんじゃなく誰
かに雇われ、ぐるぐるとこの道をみんなで回っ
ているのかもしれない、と真剣に思った。
前の車がいなくなると、信号は赤になって
いた。人の群れよりブ厚い赤信号に敬意を表
して俺は停車したが、信号が青になったら俺
も左折し、人 の群れに突っ込もうと決めた。
どんな感情でもいい。人間の本当の顔を見
て、俺は安心したかった。
信号が青に変わると、赤いランドセルの子
供がこっちへ走ってくるのが見えた。
グナルを点滅させ、車体を左側にねじり自転
車や歩行者が横断歩道を渡り終わるのを待つ
ために停車した。まったく前に進めない俺は、
両手でハンドルを叩いた。
数ヶ月前から満員電車に乗れなくなった俺
は車で通勤するようになった。駅と国道を結
ぶこの道はいつも混雑しているが、朝は人の
気配がまるで紙人形のようにペラッペラだ。
この人達は駅へ向かっているんじゃなく誰
かに雇われ、ぐるぐるとこの道をみんなで回っ
ているのかもしれない、と真剣に思った。
前の車がいなくなると、信号は赤になって
いた。人の群れよりブ厚い赤信号に敬意を表
して俺は停車したが、信号が青になったら俺
も左折し、人 の群れに突っ込もうと決めた。
どんな感情でもいい。人間の本当の顔を見
て、俺は安心したかった。
信号が青に変わると、赤いランドセルの子
供がこっちへ走ってくるのが見えた。
【400文字作文】1023号室
コンビニで買ったお年玉袋を、十一人の男
と寝て買ったバッグの奥へ押し込みながらホ
テルのロビーを横切る。一週間前まで横文字
だらけだったこのホテルも、今は大げさな金
色の漢字で飾られている。
エレベーターに乗ると、男女が後から乗り
込んできた。二人は私に全く気付いていない
かのようにカウントアップされる数字を見つ
めている。私は二人より先にエレベーターを
降り、指定された部屋のドアをノックした。
女を買うのはこれが初めてで、これが最後
になるだろう。私はベッドに腰掛けテレビを
観ながらさっそく、後悔しているからだ。
テレビの中ではスーツ姿の若い男が二人で
漫才をしている。このまま少し眠って家に戻
ろうかと考えていると、ドアがノックされた。
女を部屋に入れるか迷っているとドアの向
こうで女が声を掛けてきた。
「あけましておめでとうございます。」
と寝て買ったバッグの奥へ押し込みながらホ
テルのロビーを横切る。一週間前まで横文字
だらけだったこのホテルも、今は大げさな金
色の漢字で飾られている。
エレベーターに乗ると、男女が後から乗り
込んできた。二人は私に全く気付いていない
かのようにカウントアップされる数字を見つ
めている。私は二人より先にエレベーターを
降り、指定された部屋のドアをノックした。
女を買うのはこれが初めてで、これが最後
になるだろう。私はベッドに腰掛けテレビを
観ながらさっそく、後悔しているからだ。
テレビの中ではスーツ姿の若い男が二人で
漫才をしている。このまま少し眠って家に戻
ろうかと考えていると、ドアがノックされた。
女を部屋に入れるか迷っているとドアの向
こうで女が声を掛けてきた。
「あけましておめでとうございます。」