【400文字作文】雨音レイン
白い靴下を膝まで伸ばした赤いスカートの
女の子がトライアングルを一定のリズムで鳴
らしている。
少女の隣で、紳士がコーヒーゼリーのよう
な半透明のピアノを弾いている。紳士は少女
を見つめ、トライアングルが鳴るタイミング
に合わせて鍵盤に指を食いこませているが、
音は全く合っていない。
少女と紳士の前には指揮者が立っていた。
右手に硝子のタクトを、左手には黄色いニワ
トリの足を握っている。左の目玉が今にもポ
ロリと落ちそうなその指揮者は、針金のよう
な髪を振り乱しタクトと足を振っているが、
少女も紳士もそれを全く見ていない。
指揮者の真後ろでは上半身裸の太った少年
が大量の汗を垂れ流しながらトランペットを
吹いている。が、音は全く出ていない。
鳴らないトランペットに自分の顔が歪んで
映っているのをいるのに気が付き目が覚めた。
寝室は、雨音に包まれていた。
女の子がトライアングルを一定のリズムで鳴
らしている。
少女の隣で、紳士がコーヒーゼリーのよう
な半透明のピアノを弾いている。紳士は少女
を見つめ、トライアングルが鳴るタイミング
に合わせて鍵盤に指を食いこませているが、
音は全く合っていない。
少女と紳士の前には指揮者が立っていた。
右手に硝子のタクトを、左手には黄色いニワ
トリの足を握っている。左の目玉が今にもポ
ロリと落ちそうなその指揮者は、針金のよう
な髪を振り乱しタクトと足を振っているが、
少女も紳士もそれを全く見ていない。
指揮者の真後ろでは上半身裸の太った少年
が大量の汗を垂れ流しながらトランペットを
吹いている。が、音は全く出ていない。
鳴らないトランペットに自分の顔が歪んで
映っているのをいるのに気が付き目が覚めた。
寝室は、雨音に包まれていた。
【400文字作文】冷たいおでん
新宿の暗い路地にある小さなおでん屋の壁
には、サイン色紙がびっしりと張られている。
色紙が増えたな、とおでんを小皿にとる主
人に話しかけると、壁が汚れなくて助かると、
真顔で答えられた。
笑いを堪え、箸で大根を慎重に割りながら、
焼きちくわを注文した。
カラシが一番旨かった。と言い席を立つと
店の主人は頬に四、五本シワを作り、奥さん
によろしくな、と言い見送ってくれた。
冷たい車に乗りこみ、山手通りを品川方面
へ向かう。道は当然のように混んでいた。
悪い歯並びのように立ち並ぶビルの二階で
四、五人の男女が窓の方を向き、ベルトの上
を淡々と走っている姿が見えた。
この通りの外灯はあの人達が動かすベルトの
動力で灯されているんだよと、私は誰もいな
い助手席に向かって、言う。
怒りに満ちたクラクションの音で我に返り
前を向くと、前の車もいなくなっていった。
には、サイン色紙がびっしりと張られている。
色紙が増えたな、とおでんを小皿にとる主
人に話しかけると、壁が汚れなくて助かると、
真顔で答えられた。
笑いを堪え、箸で大根を慎重に割りながら、
焼きちくわを注文した。
カラシが一番旨かった。と言い席を立つと
店の主人は頬に四、五本シワを作り、奥さん
によろしくな、と言い見送ってくれた。
冷たい車に乗りこみ、山手通りを品川方面
へ向かう。道は当然のように混んでいた。
悪い歯並びのように立ち並ぶビルの二階で
四、五人の男女が窓の方を向き、ベルトの上
を淡々と走っている姿が見えた。
この通りの外灯はあの人達が動かすベルトの
動力で灯されているんだよと、私は誰もいな
い助手席に向かって、言う。
怒りに満ちたクラクションの音で我に返り
前を向くと、前の車もいなくなっていった。
【400文字作文】待ちあわせ 〜品川駅にて〜
私はあまり笑わない子供だった。目や髪型
や服装や、身長が伸びたことを褒められても
他の子と同じようにニッコリと笑えなかった。
早く大人になりたかった私は姉ちゃんの雑
誌に、秘密を持つことは大人になるための条
件だと書いてあるのを見て、たくさんヒミツ
を作りそれを守るために、ニッコリと笑える
ように……ウソをつける子供になれた。
品川駅を出て港南口へと歩く。私はこの宇
宙船内のような冷たい通路を歩くのが好きだ。
どこかへ、旅立つような気分になれるから。
通路を出て、品川インターシティへとつな
がる広い歩道橋の上で、彼を待つ。
メタリックなビルの窓は眩しく、冷たい冬
の青空はガラスのように澄んでいる。この空
に石を投げたら、パリンと割れてしまうかも
しれない。彼への、感情のように。
ビルの方から、寒い寒いと彼は背中を丸め
てやって来た。大丈夫?待ってたよ……と私
はニッコリ笑って、ウソをついた。
や服装や、身長が伸びたことを褒められても
他の子と同じようにニッコリと笑えなかった。
早く大人になりたかった私は姉ちゃんの雑
誌に、秘密を持つことは大人になるための条
件だと書いてあるのを見て、たくさんヒミツ
を作りそれを守るために、ニッコリと笑える
ように……ウソをつける子供になれた。
品川駅を出て港南口へと歩く。私はこの宇
宙船内のような冷たい通路を歩くのが好きだ。
どこかへ、旅立つような気分になれるから。
通路を出て、品川インターシティへとつな
がる広い歩道橋の上で、彼を待つ。
メタリックなビルの窓は眩しく、冷たい冬
の青空はガラスのように澄んでいる。この空
に石を投げたら、パリンと割れてしまうかも
しれない。彼への、感情のように。
ビルの方から、寒い寒いと彼は背中を丸め
てやって来た。大丈夫?待ってたよ……と私
はニッコリ笑って、ウソをついた。