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CBS AUDIMAX III S その3

今回は調整。

 

メーターの挙動が一致しないので最初から調整し直し。

最初の調整は制御ラインを接地させて+10dBの位置に合わせるのだが、ここでいきなりつまづき。上段は良いけど下段が調整範囲に入ってこない。半固定抵抗を外して測ったり、メーターを部品取りと交換しても変わらず。トランジスタは測定して揃えてあるのでダイオードか抵抗かな?と思ったが、一点気付く。

AudimaxIIIはトランジスタ方式だが、一つだけ真空管を使っている。

 

 

「ニュービスタ」という小型の金属製の真空管で、トランジスタのサイズに対抗して作られたものらしい。CANのopampくらいの直径で真空管とは思えないほど小さい。

AudimaxIIIでは音声ラインではなく、制御とメータードライブに使われている。パーツリスト通りのRCAが付いていたので未交換かもしれない。真空管だから劣化するんだろうな、と数ヶ月前に買い置いていたPhilipsのものとなんとなく交換したら当たり。

 

裏面の短いD-subを繋いだまま基板上の半固定をいじるので変な配置。

 

続いて音声レベルに対しての調整。IN/OUTのATTをフルにして5KHzサイン波を-6dBで入力し、ゼロに合わせる。この時出力は+15dBを確認。

 

 

写真はズレてるけどちゃんと調整はできてる。

これでメーターのキャリブレーションはOK。だけどさすがにもうすぐ還暦なのでスケールまでは一致しない。マニュアル上でも「メーターあくまで目安」と書いてあるので新品当時から一致した動きは保証していないらしい。

 

次にIN/OUTにそれぞれある歪率調整を一番低いところに合わせる。

これで調整は一通り終了。

しばらくは音出しして挙動を確認。

 

 

 

SONY C-37A 真空管コンデンサマイク その2

今回は電源部。

 

 

左がCP-3で内部は立体配線。

 

 

トランスは富士電機。方形が電源、大きい円柱が音声。小さい円柱はSONYコンデンサマイクではおなじみのM、Vなどのフィルタ用インダクタ。

ニッケミのコンデンサは背の高いほうが2,000uF x3本でヒーター用、低い方は20uFx2の複数入りでプレート電源用。2個は20uFx4で使い、1個は40uFとして使用。

右端の方形は音声用。

緑色は巻線抵抗。

 

部品の構成はネットにある回路図通りだが整流のダイオードだけはSONY製で型番が異なる。

 

右はCP-3B。

 

CP-3よりも新しいバージョンでパーツは基板に乗る。部品構成は基本同じだが整流ダイオードはネット上の回路図通りでNEC製。いずれのダイオードとも型番を検索しても出てこない。

 

音声トランスは小さくなりSONYブランドだが、隣の富士電機のインダクタと同じパッケージ。

 

前回書いた通り、施した作業は切られた電源ケーブルの交換、XLRの中身交換に加え、ランプ配線の修正、スイッチの接点清掃程度。

いずれも製造から60年以上経過していると思うが、回路的な修理が行われた跡は見られない。マイクと出力コネクタが専用?からITTに交換された程度。

今回も何もしない。コンデンサは外すのも大変なので測定もしていない。聴感上の違いも劣化した感じも無い。

 

電圧は2台とも

ヒーター AC28.5V → DC16.3V → マイク接続時 DC6.3V

プレート AC280V → DC282V → マイク接続時 DC226V

 

電源とマイクのシリアルは一致しないが、元からそうなのか、先のユーザーのところで入れ替わったのか?

C-37Aのシリアルは1000番以上違うが作りはまったく同じなので入れ替わっても問題は無い。音声トランスは異なるが同じ音。

 

 

異なるレイアウト。

改良でコネクタとスイッチをまとめた配置はいい判断。

ネジが数個欠品があってそれを入れれば作業終了。

あとは真空管探しかぁ。他所では何入れてんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

SONY C-37A 真空管コンデンサマイク その1

今さら何も言うまいSONY C-37A

 

 

電源は左がCP-3、右がCP-3B。パーツの構成は同じだがCP-3は立体配線、Bは基板。

 

 

マイクの中身は真空管と、

 

 

抵抗が3つ。もう一つはここからは見えない。

 

 

ダイヤフラム、指向性側

 

裏側。このネジでカーディオイドとオムニを切り替える。

C-47など他の何機種かと同じだったりほぼ同じで、C-800(800Gではない)に至るまで互換があるらしい。

 

 

電源部はいずれも電源ケーブルを切られているという、廃棄して台帳から抹消するには正しい方法が取られている。3ピンにしてアースを付けようかとか考えたが、オリジナル性を損ないたくないので2ピンのままにしたい。店でプラグ付きのケーブルを探したが白と黒ばかりでつまらないな、と思って見てたらホームセンターなどで袋に入って売ってるELPAのグレーのケーブルと古臭いプラグ(笑)があったので使用。

 

 

刃も真鍮丸出しでなかなかいい感じ。また使おう。

 

 

XLRは腐っているので要交換。この時代はまだ音響のコネクタはXLRという決まりはなかったので、元は多治見のような大きなコネクタが付いていた。ネジ穴は一致しているわけではなく、結構ガバガバだが丸型のXLR-*-13・14がたまたま運良くハマっている状態。

しかしITTの丸形はどこにも売っていない。もう生産完了したのか???アキバで同形の格安のものが売っているが、見た目からしてビンテージなものには使う気にはなれない。なので中身を入れ替えることにした。

とはいえ、付いているものは中まで腐っているので部品取りのHYFAXミキサーから3ピンをむしり取ってきた。

 

 

XLRの座は基本中身の入れ替えが可能。F77のメス5ピン買ってきて入れ替え。プラグでもOK。OUTPUTはメスでは使いにくいのでオスに交換。

パネルはセスキソーダで掃除。上の「SONY POWER SUPPLY」の文字はエッチングで浮いていて、色が変わっているところは面よりも沈んでいる。

写真はCP-3だがパイロットランプのカバーは欠品。

 

マイクの真空管は6AU6。違うものが付いていたのでオーディション。

 

 

左からテレフンケン、NEC、TEN金足NHK仕様、東芝。

感想は、フラットだけど普通、400Hzうるさい、なにこれ?、2KHzちょっとあるけど全体元気、という結果。

物が物なので慎重に選びたいけど、とりあえず元気なの入れとく。

基本的にフラットな音質。そのフラットがつまらないのか、素材の魅力を魅せてくれるのか、実際にいろんなものに当ててみないとわからないな。

しかし60年以上前のものなのに、2本とも同じ真空管入れたらまったく同じ音なのには驚いた。

 

 

CBS AUDIMAX III S その2

修理にあたっては取り敢えず手持ちのパーツで動作させて、徐々にパーツを集めようと作業を開始したところで、思いがけずシリアルが1000番くらい新しい部品取りになる個体が手に入った。一旦記事をUPしたけど書き直して仕切直し。

 

まずはもうすぐ60歳に近いだろうということで電解コンデンサとタンタルコンデンサを交換。タンタルはVisgay/BCの電解へ、ロジックの電解は元からELNAだったので同じELNAのSILMIC IIへ、電源の電解は凝らなくてもいいのでルビコンに交換。

 

上段にも配線手直しとコンデンサ交換を施したところ、配線は問題なかったがコンデンサ交換をしたらトランジスタがいくつか飛んだ。

古い機器のコンデンサを交換することで電源インピーダンスが変わり、弱っている半導体が飛ぶということがあって、今回はそれを食らったらしい。

残念だが今飛ばなくても近々壊れただろうと思って諦めるしか無い。

 

購入時からの下段不具合の原因は、まずINPUTのアッテネータにあった。

 

 

INPUT基板。

アッテネータ→トランス→トランジスタのアンプ回路へ。

トランスはメーカーも型番も不明。使ってない端子があるから汎用品なのかな?

この機器はすべてのトランジスタはソケットに刺さっている。この基板のトランジスタは2N1374 GE製ゲルマニウムPNP。

水色のコンデンサはVishay/BCの電解へうちで交換済みのもの。元はタンタルが付いていて、何個かは以前にもメンテされて電解に代わっていた。

 

アッテネータは3連のPOTの形状だが、中身は巻線の可変T型アッテネータ、Clarostat製。両端が600オームで中央が数キロオームだったかな?OUTPUTにも同じものが付いている。

 

 

国産のものも同様な構造で、コイルが壁に張り付くように配置され、上部をブラシがなぞって値を変える。

軸側の巻線が途中で断線していた。開けて見て切れた場所は特定できたが、「巻線にはハンダが乗らない」ということがわかって修理は断念。国産で500オームの単連があるので購入してバラしてみたが、径が大きすぎて入らなかった。

一旦東京光音T型アッテネータ600オーム50dBに交換して動作させて、しばらくして部品取りを入手。ガリがあったので開けて軽く掃除。

 

 

 

上側のGGS基板。

やってる内容が複雑でこの基板の説明は困難だけど、エキスパンダー機能に関連する作業を行っているらしい。

トランジスタは型番はINPUTと同じだが上段はCBSとTIのダブルネーム。

ソケットに刺さっていてハンダを剥がした跡があるわけではないので判断が難しいが、下段はGE製で、より新しい部品取りもTIなので上側はメンテされてGEからITに交換されたのかも?

 

INPUTからこの基板に音をもらう左上のトランジスタが飛んでいた。最初はとりあえず耐圧とhfeが範囲内のゲルマニウム日立2SB77で代替して動作点検。

部品取りがあっても黒GE、銀GE、TIと三つ巴になる。ここは制御電圧を作るところで音質云々よりも数値と挙動が揃うことを優先したいので、数の揃うGEのを黒銀混合で採用し、TIはIIISからは退場。

ほとんどのトランジスタが2個ペセットで差動やプッシュプルで動作しているので、黒同士銀同士hfeが揃うものをペアにし、上下では色は気にせず数値が近いものを同じ箇所に配置するようにした。

 

 

基板間の配線はソケットは用いず、直接ハンダ付けされているので、60年近く経った今では金属疲労でちょっと動かすと配線がブチブチ切れる。そのせいで症状がどんどんひどくなって行ったのでそこも手直し。配線ごと交換しようと思ったがこれに見合う配線は適当なものを使うわけにはいかない上に行ったり来たりで結構な長さが必要になるので高価になるし、被膜はまだしっかりしているのと長さもなんとか間に合うのでとりあえず根っこを切って被膜を剥いて留め直し。今のところこれで問題無い。

 

 

 

電源基板。これもコンデンサ交換後にトランジスタが飛んだ。飛んだのは電源基板のシリコン2N676。wikiによるとオリジナルはフェアチャイルド製でシリコントランジスタの一号機。B70爆撃機に使うということで最初のロット100個の一個単価は当時150ドル、これを書いている現在の価値とレートでなんと24万円くらいしたらしい。

とはいえこれはそこから7~8年後のセカンドソース品なのでそこまで価値は無いし、2N676は1965年当時すでに汎用型扱い。海外通販で新品でも購入可能だがなぜか一個数千円と意外と高いので、当初は秋月で一個10円で売っている同じピン配のオンセミ(旧フェアチャ)BC337に差し替えたが問題なく動作した。

 

 

OUTPUTの樹脂モールドも飛んだ。元はGEの2N3396シリコンNPNだが、シルクハット型の他のものに置き換えられていて型番は判読不能。

1176補修用に買っておいたTIの2N3707にしたらそちらのほうがかなり良い音がしていたが、在庫が乏しいのでとりあえずはオリジナルに戻しておく。

 

とりま、これで壊れていた・壊れた機能は回復。何も調整していないのでメーターの針はずれているが、同じような動きをしている。

 

次は調整と、マニュアルに記載されている改造を検討・検証する予定。

調整はめんどくさそうなのでマニュアルを精読しなくては。

 

 

部品取りの電源基板。今は幻のCALLINS(キャリンズ)の電解が、タンタルだったところにも乗っている。小型・低ESRの最初期らしいが???

部品取りになってしまったほうは壊れてはいないので、手持ち部品で復活させる予定。こちらはモノなので好きなように組める。

CBS AUDIMAX III S その1

そろそろまとめておかないとどんどん元の形がわからなくなるので・・・

 

CBS AUDIMAX III S

 

 

CBSはアメリカの放送局。Fender社を所有し、ソニーと提携していたそのCBSの技術・製造部門による製品。

AUDIMAXは、前機種のIとIIは真空管、IIIはトランジスタのコンプレッサー/リミッター/エキスパンダ。当時の製品説明の口上によるとシリーズで数千台納入されていたらしい。

 

本機はIII Sでトランジスタのステレオ型。モノラルとは基本的な筐体と構造を共用し、単体モノラルのModel444をステレオ用の配線を施し、上側にステレオリンク基板を追加、2台重ねてステーで固定、前面パネルを一枚に張替え、Model445という名前に変えたもの。

モノ2chでも使用できるが上側でモノ/ステレオのコントロールを切り替える都合上、リンクケーブルを外すと下側は音は出るが機能しなくなる。

 

IIIの発売は1965年ころ。当時の納品伝票がネット上のマニュアルと一緒にpdf化されているが、モノラル一台で$665とある。1967年のUA1176が$500弱なのでステレオとなると当時としては結構高価な機材。

 

 

接続はターミナル端子。Phoneジャックは前オーナーにより増設されたもの。ケーブルも購入時に附属してきたまま。ステレオリンクはD-sub9ピンで接続。

 

 

D-subはコンピュータ機器のイメージだけど1950年代からあるらしい。プラグはITT製でハウジングは曲げ加工した金属板で囲っただけのもの。これが純正付属品。

 

 

前パネルは手でラッチをひねると手前に倒れる。INPUT、OUTPUTのアッテネータはパネルの中で普段触るような作りにはなっていない。

写真では取り外しているが、上段のモード切り替えスイッチにはチキンヘッドのノブが付く。

 

 

上段の中身。

基板はパネルをコの字型に切って内側に2枚折り曲げて挟んでいるだけで固定はされていない。ケーブルが付いて回るが上に取り出してのメンテは容易。

基板は左から電源、GGS、ロジック、OUTPUT、ステレオリンク、INPUT。

 

 

下側の中身。

ステレオリンクとステレオ・モノ切り替えスイッチが無いのでスッキリしている。

 

GGSとはゲート・ゲイン・スタビライザーの略で、基本的にはエキスパンダの作業を行なっている。

ロジックはゲインコントロールの信号を発生させている。

 

コンプの方式は「vario-losser」という独自の方式を用いており、一応はダイオード方式に分類されるらしい。

 

この個体は下側一部NGということで具体的な症状をあらかじめ理解して入手。

そのままの状態で完動の上側の機能と音は確認している。

メーターはゲインリダクションの状況を表し、無音時にはセンター、コンプ時に左へ、エキスパンド時に右へ振れる。

1176のようなレベルメーターの機能は無い。

 

音声のゲインコントロールを自動で行える当時としては画期的な機械で主な用途は放送用だがメーカーは録音やPAにもどうぞ、という売り方をしていた。とはいえ放送に比べて録音はともかく、PAなんてあって無いような時代なのに・・・

 

AUDIMAXで検索すると放送局で廃棄になると本当に捨てられてしまう日本での事情も絡んで中古の流通はほとんど無く、国内での知名度はあまり無いみたい。

海外では意外と現存しており、レコーディングスタジオのラックに収まっている写真も結構見かけるし、気に入ってか複数台所有しているスタジオも何件かあるよう。

中古相場としては真空管のI、IIはそれなりの値段だが、IIIは状態によっては数十万~百万付けている人もいる。しかし稼働品でも運が良ければ数万程度で入手できる可能性も。その程度の値段で見た目はどうでもちゃんと動くなら中身のパーツからしては破格だと思う。

 

 

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