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ダイナミックマイク Shure 565SDと565D

最近のPA仕事でのメインマイクというか、SM58はあまり使わずもっぱら565を使用。

 

 

58は古くなると汚く塗装が剥げるし、年代によっての元からの音質の違い、劣化での違いで複数並べるのが面倒くさい。何より声には低域が太過ぎるので歌でもMCでも声に使うときにはバッサリとHPFを入れることになる。

だったら最初からローが細めでヌケの良い565のほうが手っ取り早い。古くなっても見た目の劣化は少ないかほぼわからないし年代ごとの音質のばらつきも少ない。

 

映画の影響でフレディマイクだとかウッドストックマイクとか呼ばれているが、58より古い機種なので今更なのか、使用感について書かれている記事は少ない。基本的には「Shureの音の基準」といったところ。

とりあえず手持ちの565を並べてみた。

 

一番左は唯一あるUSA製の565SD。

 

黒ずんでしまってよく読めないが、「MADE IN USA PATENTED」とある。

古いのに劣化は感じられず、上から下までF特も解像度もわりと良く、ビンテージ的な音がする。

 

左から2番めがレアなスイッチ無し「565D」

現行はSDのみ。いつラインナップから消えたのかは不明。人に見せると「スイッチ無しあったんだ~」という反応を必ずされる。

フレディですらSD使ってたしね。

代理店がバルコム時代のメキシコ製。音質はUSA製に近い。

 

バルコムはヒビノの前の代理店。いつから始まったのか、扱いが複数社あったのかはわからないが、87~88年頃に神田商会が扱いをやめるとかで在庫放出があったのでその頃にバルコム一社扱いになったのだと思う。ヒビノに代わったのは2000年から。

 

左から3~6番目の4本はバルコム時代のメキシコ製565SD。

7番目はラベルが剥がれていて代理店シールもないが、外観からしてメキシコ製と思われる。

 

 

左がUSA、右がメキシコ。写真ではわかりずらいがテープの地がUSAは銀色のアルミ感、メキシコはベージュとグレーの中間色?という感じ。「Unishere」の太さも異なる。音質はUSA、565Dと比べるとスイッチがある分なのか少々劣る印象。

 

右の2本は現行に近いか、もしくは現行のバージョン。訳あって2本とも58のグリルが取り付けられてる。ネジ径は共通。

 

 

文字はシールではなく直接のシルク印刷。スイッチロックのプレートの留めネジがすり割り(マイナス)からプラスになる、下部の穴も異なるが、決定的な違いはグリルボールを外すと、

 

ネジの部分がメキシコ製まではプラスチックの黒、現行は金属の銀色。

現行には生産国表示は無いが、中国製なのかな?

音質はメキシコ製までとは少々異なる。

 

音質の序列は、やはり

USA≧565D>メキシコ>現行

といったところ。

根本的な特性傾向は同じ。よく聴くと解像度に差があるかな?程度の違いなので、普通に使う分には気にはならない。

自分も適当に出して使っているので。

 

 

 

 

 

 

昭和40年代 放送送出マスター用?音声基板4種

未着手だけど自分の資料用として。

放送用音声基板4種。

 

 

回路図は一部拾い始めてる。

4枚とも18ピンカードエッジでアサインも共通。抵抗はラジアル型のカーボンコンポジット。

上の2枚はマイナス電源で基本的な部品構成はほぼ同じかよく似ている。

ゲルマニウムトランジスタ2SB77を中心に構成。回路的には至って普通。最後に2SB414 x2個でプッシュプッシュ?している。

 

3枚目は2SB414が無い。

 

一番下はプラス電源。

古いものから順番に・・・

 

27RU-71形 池上通信機製 1966年=昭和41年8月

コンデンサは松下電器(パナソニック)、2SB414はTEN

 

27PU-71形 19967年=昭和42年1月 芝電気(シバデン)製(東芝ではない)

コンデンサはニッケミ、2SB414は東芝

配線が切られているところがあるが、何があったかは不明。

 

AU50P18-2 1970年=昭和45年9月 芝電気製

コンデンサはELNA。

これだけトランスの規格が異なる。

 

A30-2 1971年=昭和46年3月 花岡無線製

花岡のHPを見るとパネルのデザインが同じ「A30-1」が現行でラインされている。

詳細までは出ていないが今でも現役で納入されているのか、補修部品で販売を続けているのか?

トランスは上2枚目までと同じ規格。

トランジスタが2SC型になり電源はプラス。コンデンサはニッケミ、最終段に東芝の2SC603が2個入る。

 

物に関して検索すると、沖電気の製品紹介で27RU-71と27PU-71の記事が社内報にあったというヘッダは出てくる。文書はどこかに保存されているようだがネット上には無い。冒頭と思われる文書だけが掲載されていて、それによると「周波数特性30Hz-20KHz、増幅度50,60,70dB、出力レベル27dBm」とかなり派手目なスペックである様子。

1968年3月13日発行の日立の論説文には、27PU-71が含まれたテレビ送出・受信システムのブロック図が掲載されている。遠目でよくわからないがラックの全体姿写真も。

文章は変調についてが主で音声には触れられていないが、ブロック図上に送出時の音声モニタと、中継受信時の音声ラインアンプとして使用されているのがわかる。それによると入力-30dBm、出力+10dBmとある。

 

以前修理して記事にした

 

 

と上3枚の回路構成はよく似ているが、こちらは「その2」にあるようにフェーダーにくっついた基板なのでカードエッジでの接続ではない。

 

 

この一連の記事で入力感度を測定したら+4dBm出力のとき-40dBmくらいだったのでレベルは一致する。枝番も「71」と同じなので規格は同じなのかも知れない。音質もかなり音楽的なHiFiでびっくりしたので、これらも期待はできるかな?

 

 

 

1970年代宮城県限定「もんす」「ろくもんす」という遊び

先日、仕事先の話の中で思い出した遊び。

子供の頃数年宮城県北部に住んでいたのだが、当時やたらと「もんす」という遊びが流行って子供が集まると毎日のようにやっていた。

小4で関東に転校したが、転校した先では誰も知らなかったのでローカルな遊びなんだな、とうっすら気づいて少々ショック。

 

大人になってからネットで調べたら正式?には「ろくもんす」「六もんす」と言ったらしい。しかも1970年代に宮城県限定で爆発的に流行し、あっという間に忘れ去られたのだと。今では宮城県民では知る人も少なくなってしまったらしい。

しかし思い出すと子供がやっていたにしてはルールが複雑でよくできていた。

 

 

基本的には三角ベースの野球。使うのはテニスボール大のゴム毬のみ。

人数制限は無い。集まった人数をジャンケンなどで半分にする。最低3人いればとりあえずできる。

得点や勝敗は特に無く、守備はボール取り行ったり大変なので、ひたすら攻撃権を得るために戦う。

事前に決めた周数を誰か一人でも回ればリセットされ、アウトになった子も再度参加して攻撃できる。n周回ることを「nもん」と言い、多くの地域では「6もん」が基本だったらしい。うちの地域では最大の「10もん」が基本で、少人数だったり年齢が低いと「5もん」程度で遊ぶ。

一周ごとに「いちも~ん」「にも~ん」と叫ぶルールも地域によってはあったらしい。

 

プレイフィールドは、地面に足で適当にベースとファールラインを引く。

線が引けないところは石を置いたり、そのへんにあるものを目標にする。

ベースが小さい石ころの場合ある。

 

 

打撃の要件

・バッターはホームベースの円の中で打つ

・ピッチャーは基本下投げで、打ちやすい球を投げる。

・キャッチャーは守備には関係ないので、攻撃側が行う。

・場合によってはバッターがキャッチャーを兼ね、打たない・打てないボールは直接受け取る

・投球が速くて打てないときにはクレームを入れられる

・ストライク・ボールのカウントは無い。一度打った上でのアウト・セーフしか無い

・バッターは手で打つ。基本グーで打つが、手のひらで「バント」もあり。

・得点が無いので打順は適当だか、一人一度のみ。アウトになったら見ているしか無い。

 

・守備側は適当に散らばる。ランナーに投げたボールが逸れることもあるので

 ファールゾーンにいてもかまわない

 

アウトになる要件

・ファールボールはアウト

・打球が地面に付く前に守備側が触れたらアウト

・フライを捕球したらチェンジ

・ランナー、打者ランナーが塁を離れている間にボールを体にぶつけるとアウト

・塁にいる守備が受け取ってのフォースアウトは無い

 

チェンジにならずに打者が一巡したら打撃での攻撃は終了。

 

ランナーの要件

・出塁したら追い越し、塁上の重なりなどは自由。

・累上はランナーにとって安全地帯

・打者が打ったら走れる。打者走者がどのような条件でアウトになっても帰塁の義務は無い。

・一度離塁したら戻れない。

・反時計回りの逆走禁止。

・基本盗塁は禁止

・打ってフェアの場合、ピッチャーにボールが戻るまで走れる。

 

ランナーの位置は自由なので、ホームベース上にランナーがいる状態で打撃を行うという、野球では考えられないようなこともある。なのでホームベースは大きめに取ることになる。塁が小さい石ころやブロックの欠片などの場合はランナーがギュウギュウになってそれはそれで楽しい。

 

盗塁は禁止だがたぶんうちの地域の独特なルールとして、

「打者への投球中、ピッチャーがボールを持ったままランナーを見たら次の塁を踏んでも良い」というのがあった。

つまりはピッチャーが打者に向いている間に隙を見て次の塁の直前までに行き、ピッチャーに声をかけるなどしてランナーを見れば次の塁を踏んでOK。ピッチャーが振り返る瞬間ボールを落とし、引っかかって塁を踏んでアウト、というフェイントをする駆け引きもあった。

 

 

「もむ」って何?

打者が一巡し、攻撃が終わってランナーが残るともんす最大の謎、「もむ」という行為が行われる。

塁上は安全地帯なので、そのままではアウトにできないし、狭い公園や神社の境内、その辺の路地でもどこでも「もんす」はやっていたのでランナーもうっかり塁から離れられない。

ということで、ランナーを塁上から追い出すために、追い出したい塁以外の2つの塁で守備側がキャッチボールを行う。

 

この回数もその都度決めて、10回なら10回ボールが行き来するうちに離塁しないとアウトになる。ホームベースから追い出したいときには1・2塁間で、1塁から追い出したいなら2塁とホームベースでキャッチボールを行う。

少人数や低年齢の場合は、追い出したい塁の一つ前の塁でひとりで頭よりも高くボールを上げて取る、ということを行う。

小学生のやることなのでまともにキャッチボールができるわけもなく、明後日の方にボールが飛んだ隙に一気に走り出す。走っているてランナーにボールをぶつけて全員アウトにすればチェンジ。ボールが戻ればまた塁上にランナーが溜まり、再び「もむ」ことを繰り返す。

誰かが「nもん」回ることに成功すれば再度攻撃、ということになる。

 

ということを日々やっていたわけだが、誰に教わったのか覚えていないくらい普通に遊んでた。ルールブックもないのに町内ではルールは統一されてたのは謎。

文章に書くと面倒くさいけど、野球との違いも知らなければランナーが追い越すなんて別にどうでもいいことなんだよね。

上級生になると自然と軟式野球をやるようになるんだけど、やっぱそういうことで忘れられていったのかな?やってみればルールは理屈にかなっていて確実に面白いんだけどね。

 

他には「じゅっけ」「S会社」という遊びもあったけど、これらは「十字架」「S合戦」という名前で関東にもあった。S会社は少々バイオレンスで鼻血出す子もいて大人しめの自分は苦手だったな・・・

 

#ろくもんす #宮城県 #もんす

 

1176の中で何が起こっているのか その1(改)

ちょっと横にそれて、自分の記憶整理のためにも1176の解説。

作りがいい加減だのすぐ壊れる、日々の調整が面倒だの散々な言われような1176。

こんな面倒なもの所有するならプラグインのほうが安くてたくさん使えて便利。

全て事実ではあるが、発売後55年経ても実機の人気は高い。

中で何が起こって何が行われているのか、調べてもあまり出てこないのでここで少々整理してみる。プラグイン派の方も中身知ってたほうが良いでしょう。

というわりには優しくはない。でも素人解説だから眉に唾つけるの忘れないように。

 

 

これはRevisionDの回路図。基本的な回路はBから変わらず、C以降「LN=ローノイズ」機能が追加されたもの。LNといってもB以前より6dB改善したのに過ぎない。他にはC以降は抵抗が昔風の茶色くて角ばったカーボンコンポジットではなくなり、今風な物に変更。

 

 

機能的な区分け。GRは機能しなくても入出力が生きていれば音は出る。

 

修理改造前のうちのRevB。メーター以外は正真正銘のオリジナルなのでRevB購入の際はご参考に・・・

 

レイアウト。文字は書いても読めなさそうなので回路図の色で判断してね。

回路図のDよりは入力段のパーツは少ない。

 

 

音の流れは、回路図、本体ともに左上から入力していきなりアッテネータに入る。アッテネータと言っても構造は2連のカーボンボリュームポット。頻繁にいじるのですぐガリる。交換してもすぐに。構造上仕方ない。

オリジナルの公称数値は600Ωでポット本体にもそう記載されているが、620オーム抵抗2本と組み合わせての600Ωなのでポット部分の抵抗値は異なる。うちのものの実測値は35kΩと300KΩ程度なので抵抗値的には微調整程度で音量をコントロールする。こんな数値はポット単体での入手は不可。

 

入力トランスはUTCのO-12。汎用品で1176発売よりもずっと前から存在しているので、運が良ければ単体での入手は可能。UTCは世代によって同じ名前でも規格を変更していたものもあるので、あまり古いと1176の物とは数値が異なる可能性がある。

接続は本来のプライマリ・セカンダリとは逆。アッテネータは600Ωだがトランスは本来はセカンダリだった1-5ピンの500Ωで受ける。セカンダリに転じた6-8ピン側は200Ωで回路へとつながる。

トランスの前にPOT型アッテネータがあるとガリが出やすい、というか目立ちやすくなてしまうのになぜ?と思ったが、トランスが最大8dBの入力なので過大入力から守るためと思われる。

入力にO-12が入るのはRev.Fまでで、RevG、Hはopamp入力になりトランスは取り外されアッテネータも単連POTになる。

 

トランスを通過し、すぐにFETがつながる。このFETはゲインリダクションをするもので直接音は通過せず、音質そのものにはあまり関与していないが、FETコンプの特徴的な歪みを生む効果がある。ブラックフェイスのRev.CのLN以降はローノイズ化と同時に歪率も改善したので「ブルーストライプはより歪む」と言わる所以はここにある。オリジナルのFETはテレダイン製U2244で一部の1176にも使われていたという情報もあるが真偽は不明。調べても仕様などは出てこない。実装されているものの型番は「DF60214Q」で金属製円筒形。いずれも現在はまず絶対に入手不可能。だがRevBの回路図には同時に「2N5457」とも記載されている。「DF60214Q」はうちの測定器にかけてもエラーが出るし、データシートも無く詳細不明だが、DF60214QはU2244か2N5457のカスタム品かセレクト品なのかも知れない。ちなみにRevAでは入力2段目、出力初段にもDF60214Qが使われている。

マニュアルには「こことメータードライブのFETは特性を揃えるように」と記載があるが、メーター側はリダクション値を実測しているのではなく、GRからのDCを利用して「リダクション動作を真似して表示」しているという事情があるので揃えとけ、ということ。

修理、改造、新規の製作には2N5457を使うことになるが、それは今でも入手は容易。セントラルは秋月で、オンセミ(旧フェアチャ)は工夫すれば国内でも入手可。

ちなみにギター用のリミッター、ダンアームストロングの「オレンジスクイーザー」も2N5457を使用していた。

 

コンプレッションされた後、OUTPUT GAINの回路から後は一見普通に見えるが、最初のトランジスタをFETに代えると1176より古いマイクプリアンプUA1108の回路そのもの。出力トランスもRevEまでのUA5002と同じで、フィードバック付きの特殊なもの。UA5002は先に仕様が決まり、製造メーカーは後から決まったそうでUAのオリジナルらしく単品純正は補修用か、1108か1176をバラさない限り入手は困難。

Rev.Fからは回路が変更になり構造が異なるB11148、12614へ変更される。B11148はLA3など、12614は各種EQなどと共用。

 

電源は音声本線はDC+30V。GRはトランジスタ段ではDC+30V、整流後はDC-10Vを用いる。どちらもレギュレータではなくツェナーダイオードで電圧を作っている。

30V/10Wのツェナーは国内で売っているのは一箇所しか知らない上に、極性が逆。

ツェナーは飛ぶと元の電圧がもろにかかり、半導体のほとんどが飛ぶので新たに電源を組む必要がある場合はレギュレーターを使用することをお勧めする。

 

OUTPUTボリュームは入力と出力の間にあるが、そのボリュームの「プリ」からGR(ゲインリダクション)回路へ分岐されている。

ボリュームから送られた後Ratio(比率)スイッチで分圧されて音量調整が行われ、入り口であるATTACKツマミのスイッチへ。

しがってリダクションの深さはINPUTの音量とRatio比で決まる。

 

GRではトランジスタ、コンデンサ、ダイオードで音声からDC信号を取り出す。交流の上下ともに整流するので「全波整流」となる。DCといっても音に連動して動くので厳密には交流かもしれない。

ここは箇所によってはかなりハイインピーダンスになるので、普通のテスタを当てても実際の数値を得るのは難しい。

 

GR整流から抵抗・コンデンサを抱えたATTACKのPOTへ。

GRのDCにバイアスを掛ける必要があり、半固定抵抗で「Q-Bias」を設定。ここはFETを交換しない限りユーザーは触るべきではない。この調整をしないとコンプレッションしなかったり、掛かりすぎて歪みだらけになったりする。Q-BiasからReleasePotへ入り、Attackとミックスされる。

 

Ratioのスイッチは2回路で、一方は上記の通りGRへの音量調整、もう一方の回路はこのあたりに複雑に絡む。

全抵抗を通ったものは整流のバイアスへ。スイッチで選択されたものはReleasePotへつながる。ReleasePotは5MegΩで生産しているメーカーは少ない。国内外メーカーのラインナップでは1MΩが最大値ということがほとんどで、基本的には特注するかデッドストックを探すしかない。Potは5Megだが、270Kオームを抵抗を並列に走らせているので実際の抵抗値はそんなには高くはないが、調整する値はとても繊細で微妙、ということになる。

 

AttackとReleaseがミックスされ、入力とメーターのFETへ送られる。

入力のFETは単純に言えばボリュームそのものの動作をする。入ってきた音を元に自分で自分の頭を叩くような動作。コントロール回路そのものに音が入り込むVCAよりは音質面では有利かもしれない。

 

Releaseの充放電をするのは入力段近辺のコンデンサ。GR回路と入力段FET近辺のいくつかのパーツは漏れ電流に厳しい。同等品だと思って数値だけ合わせて交換してもうまく動作しないことも。コンデンサの種類やダイオードの性能・仕様には注意が必要。交換の場合は可能であれば同じものか、同一スペックの後継品を使うのがいい。

なお、GR信号として送られるのはマイナスの電圧になる。

 

メータードライバ回路はGR表示にのみ動作。パネル面からマイナスドライバで調整するのはGRの表示だけで、直接の「かかり」には関係しない。

基板上にも「Null」調整があって、R74の両端電圧を0Vに調整した上で、GRで0dB表示させる必要がある。お互いに押し引きしながらうまく出会う位置を探る。

ここは結構ずれるので、定期的な調整は必要。調整方法はRevisionによって異なる。のちのRevisionのメータは安定したオペアンプドライブになるのでこのような調整は不要になる。

 

VU表示は、dBm規格では基準内のVUメータと600Ωトランスならば3.6Kオームの抵抗を介すればOKという決まりがあって、とくにドライバ回路は必要無いので抵抗一本でのドライブ。そうは言ってもズレはあるので、うちのものは抵抗値を少し下げて半固定抵抗を入れて調整している。8dB表示は8.2KΩ。

 

出力トランスはUA-5002。1176が初出ではなく、その前から存在したマイクプリアンプ「1108」がオリジナルで、1176の

 

プラグインとの比較は自分ではやったことはないが、海外のエンジニアがRevBと確かFと現行品実機、UAのプラグインBluestripeと比較した映像は観たことがあって、プラグインの掛かり自体はいい線いってるけど音そのものは似てないな、という印象だった。

どっちがどう、というのは主観的な批評は避けるけど、RevB実機に関して言えば通しただけで音質はうっとりするような方向に変わる、とだけ。

 

全押し・ブリティッシュモードはどうなってるのか?まで書こうと思ったけど、長くなったのでまた今度。

 

 

 

1176rev.B 大修理中(未完)

今年の夏は暑くてキツかった。

7月から連日発注元へ赴いて音響更新のラック組配、製作物など。さらにはコロナ感染。

9月下旬あたりからやっと手が空き始めてちょいちょい修理改造を再開。ここに書くほどの気力が無く、軽くツイートには流しておいた。

 

で、再開ネタは1176revBの修理。

入手した当時ぼろぼろながら一応動いていた2台。修理後400番代は好調で現在も収録現場に持ち出してまで掛け録り稼働中。500番代は最初から調子は各所の接触も含めてイマイチな感じだった。

 

はっきりとした機能的な症状が出たのは1年以上前だったかな。1176にはわりとありがちな故障らしい「リリースノブを触ると音が出ていないのにGRメーターが動く」という症状。右へ回しのきりの最速なら問題無いが、ちょっとでも左へ回すとそれに連れてメーターが動き、リリースを開放しなくなる。

当初はパーツを何点か交換したらなんとなく少しは改善したかな?という感じで使っていたけど、そのうち完全に壊れて動かなくなってしまった。

 

最大の故障は30Vツェナーダイオード。ツェナーで電圧を作っている場合、飛ぶと元の電圧がもろに流れる。そのためかGR(ゲインリダクション)部のトランジスタが全滅。幸いなことに音声部分のトランジスタと直接音量調整に関わるFETは無事だった。

これがReleaseの故障とどう絡んでいるのかはわからないが、壊れたものは仕方ない。部品の調達に入る。

 

海外通販を用いれば揃うには揃うが、当初は今ほどの円安ではないにしても何せ送料などコストがかかる。とりあえず国内で探したところ、30V10Wツェナーは秋葉原でただ一件在庫があった。

 

FETは壊すと入手は不可能なので、修理が終わるまでは代替品を刺しておこうと回路図にも併記されている2N5457を購入。これはペダルエフェクターの自作に需要があるので秋月電子でセントラルセミコン製が普通に売っている。

 

GRで使われている2N3707は国内では入手不可なのでここは海外通販を頼る。他の音声系トランジスタも念のため購入。

2N3707もセントラルセミコン製。オリジナルはTIだがディスコン。ペアで特性を揃える必要があって多めに揃えなければいけないので現行になってしまうのは仕方ない。ここが音質に絡むかどうかは不明だが、その後探してTI製も一応入手して待機中。

 

まずはツェナーの交換。念のため取り付ける前に調べたら外観はほぼ同じでも極性が逆。危ういところだった。この形状は一方はボディが端子になっているが、ラグ端子を介して取り出していたので逆でも問題なかった。

 

 

トランジスタと、念のため周辺のコンデンサも交換。

 

GR整流のコンデンサは回路図上とオリジナルは6.4u、一旦は6.8uに交換したが、心もとないヨボヨボなものだったのでSprague30Dの今はもう無い8uが入手できたので交換。現行1176LNは10uだからまあこれくらいの誤差は大丈夫でしょ。ヨボヨボといっても同じものが400番台では元気にしているが。

Q-Biasのトリマは微調整したいので多回転を基板に載せて取り付け。

ダイオードは1N4148に交換。

 

ここで動作チェック。だがReleaseの件は解決せず。がっくし

 

この後しばらく停滞・放置。しつつ色々と調査。

海外フォーラムに同様な症状に悩まされている人が複数いて、自作・コピー品でも症状があるとのこと。

GR回路はテスタを当てると数値がグッと落ちるのでハイインピーダンスなのはわかっていたが、周辺のパーツはハイインピ故に漏れ電流に厳しい、パーツの種類には気を使うべきということが新たにわかった。

GR整流のダイオードはわりと需要で、オリジナルのFD333はディスコンなので後継品を使うべきと複数の意見があったがこれも国内未流通。反面、トランジスタの足2本で代用したり、他の整流ダイオードでもなんとか動くようなのでとりあえずこれで様子見。

 

またReleaseそのものの充放電は回路図上のFET近辺にあるコンデンサが行っていることも分かった。

入力近辺のコンデンサはなんとなく交換していたが、数値が会えばいいか、とマイカコンのところにフィルムコンをつけるなどしていたので、コンプが掛かったとしても動作が何か釈然としない感じだった。

オリジナルと同じトロピカルフィッシュは手持ちがあり、Cornell Dubilier製のマイカコンは秋葉原で入手できたので交換。GRを直接受ける抵抗も2.2Megのカーボンが手に入ったのでついでに交換。

ReleasePOTについている筒状のメタライズドポリエステルフィルムコンはCornell Dubilier製で同じ型番は現在も現行。だかやはり国内では入手できず、円安が厳しく取り寄せするなら原因が確定してから、と、国内で見た目もよく似た同種同値のSprague製を調達。

 

 

ここまでやってどうだ~と動作チェックしてもやっぱりダメ

も~~~~入手が超困難なアレを探して交換を試みるしか無いと、ここからまた時間がかかるのであった。