CBS AUDIMAX III S その1 | junker-life

CBS AUDIMAX III S その1

そろそろまとめておかないとどんどん元の形がわからなくなるので・・・

 

CBS AUDIMAX III S

 

 

CBSはアメリカの放送局。Fender社を所有し、ソニーと提携していたそのCBSの技術・製造部門による製品。

AUDIMAXは、前機種のIとIIは真空管、IIIはトランジスタのコンプレッサー/リミッター/エキスパンダ。当時の製品説明の口上によるとシリーズで数千台納入されていたらしい。

 

本機はIII Sでトランジスタのステレオ型。モノラルとは基本的な筐体と構造を共用し、単体モノラルのModel444をステレオ用の配線を施し、上側にステレオリンク基板を追加、2台重ねてステーで固定、前面パネルを一枚に張替え、Model445という名前に変えたもの。

モノ2chでも使用できるが上側でモノ/ステレオのコントロールを切り替える都合上、リンクケーブルを外すと下側は音は出るが機能しなくなる。

 

IIIの発売は1965年ころ。当時の納品伝票がネット上のマニュアルと一緒にpdf化されているが、モノラル一台で$665とある。1967年のUA1176が$500弱なのでステレオとなると当時としては結構高価な機材。

 

 

接続はターミナル端子。Phoneジャックは前オーナーにより増設されたもの。ケーブルも購入時に附属してきたまま。ステレオリンクはD-sub9ピンで接続。

 

 

D-subはコンピュータ機器のイメージだけど1950年代からあるらしい。プラグはITT製でハウジングは曲げ加工した金属板で囲っただけのもの。これが純正付属品。

 

 

前パネルは手でラッチをひねると手前に倒れる。INPUT、OUTPUTのアッテネータはパネルの中で普段触るような作りにはなっていない。

写真では取り外しているが、上段のモード切り替えスイッチにはチキンヘッドのノブが付く。

 

 

上段の中身。

基板はパネルをコの字型に切って内側に2枚折り曲げて挟んでいるだけで固定はされていない。ケーブルが付いて回るが上に取り出してのメンテは容易。

基板は左から電源、GGS、ロジック、OUTPUT、ステレオリンク、INPUT。

 

 

下側の中身。

ステレオリンクとステレオ・モノ切り替えスイッチが無いのでスッキリしている。

 

GGSとはゲート・ゲイン・スタビライザーの略で、基本的にはエキスパンダの作業を行なっている。

ロジックはゲインコントロールの信号を発生させている。

 

コンプの方式は「vario-losser」という独自の方式を用いており、一応はダイオード方式に分類されるらしい。

 

この個体は下側一部NGということで具体的な症状をあらかじめ理解して入手。

そのままの状態で完動の上側の機能と音は確認している。

メーターはゲインリダクションの状況を表し、無音時にはセンター、コンプ時に左へ、エキスパンド時に右へ振れる。

1176のようなレベルメーターの機能は無い。

 

音声のゲインコントロールを自動で行える当時としては画期的な機械で主な用途は放送用だがメーカーは録音やPAにもどうぞ、という売り方をしていた。とはいえ放送に比べて録音はともかく、PAなんてあって無いような時代なのに・・・

 

AUDIMAXで検索すると放送局で廃棄になると本当に捨てられてしまう日本での事情も絡んで中古の流通はほとんど無く、国内での知名度はあまり無いみたい。

海外では意外と現存しており、レコーディングスタジオのラックに収まっている写真も結構見かけるし、気に入ってか複数台所有しているスタジオも何件かあるよう。

中古相場としては真空管のI、IIはそれなりの値段だが、IIIは状態によっては数十万~百万付けている人もいる。しかし稼働品でも運が良ければ数万程度で入手できる可能性も。その程度の値段で見た目はどうでもちゃんと動くなら中身のパーツからしては破格だと思う。