私は、今の私が最も嫌いなタイプの人間になっていたでしょう
私は高校を卒業してすぐアメリカの神学校に留学しました。1年生の2学期、世にも不思議な体験をしました。私は、全国でも有数の進学校を出たせいか、非常に高慢な人間でした。ところが、ある日突然人が変わったようになり、自分のプライドに気が付いたのです。私は全く社交的な人間ではありませんが、急に愛に満たされ、人に話しかけたり、助けてあげたりすることがやりたくてたまらなくなったのです。
私のことを高校時代から知っている友人が同じ神学校に通っていました。部屋は違いますが二人とも寮に住んでいましたので、彼は真っ先に私の変化に気付きました。後で聞いた話ですが、気味が悪かったそうです。あいつ、どうにかなったんじゃないか、と思っていたようです。
気味悪がっていたのは彼だけではありません。私自身、自分の変化が不思議でなりませんでした。別に努力してそうなったわけではありません。ある日突然変わってしまったのです。しかし、この変化はだんだんと薄らいで行き、一か月くらいで元に戻ってしまいました。あのまま続いていたら、今頃は聖人になっていたでしょう。
元に戻ったとは言え、自分の高慢さに気付かされました。高慢というのは、改めなければならないと気付くだけで、問題の半分以上が解決されます。ほとんどの高慢な人は、気付いていないか、気付いていてもそれでいいと思っている人たちです。私はまだまだプライドの高い人間で、自分のことを自慢したがります。しかし、謙虚でなければいけないと心がけるでも、大きな違いです。
あの経験をしていなければ、私は、今の私が一番嫌いなタイプの人間になっていたでしょう。なぜあんな経験をしたのかは分かりません。神学校で、愛に溢れた謙虚な方々に囲まれていたことも理由の一つでしょう。神は、こいつ放っておいたら成長しないだろうと思って、特別に奇蹟を起こしてくれたのかもしれません。またあんなふうになればいいなと思いますが、ここから先は自分で努力しろということでしょうか。
ごみ屋敷で寝た
先月、福岡に用事があり、ついでに、以前ハワイの我が家にホームステイしたことがある北九州のS君を訪ねることにしました。彼が、汚いアパートですけど良かったら泊って行ってくださいというので、お言葉に甘えることにしました。彼は、私の返事を誤解したようで、そのための準備はしていませんでした。
彼のアパートは、今までテレビでしか見たことがないようなごみ屋敷でした。私が泊まる準備をしていたとしても、ごみ屋敷であることに変わりはなかったでしょう。足の踏み場もないほどです。
どこに寝るのかと聞いたところ、彼のベッドに寝てくださいとのこと。じゃあ、S君はどこに寝るのと聞いたら、トイレの前のスペースを片付けて寝るというのです。夜中にトイレに行くときは、起こしてくださいとのこと。私はどこにでも寝られる方で、特に気にはしませんが、こんな部屋に寝たのは初めてでした。
夕方、どこか食事に行こうかと誘ったところ、この辺に食べるところはないと言います。私は、彼が車を持っていると思ったのですが、持っていたのは自転車とキックボードだけ。彼は、キックボードで北九州から福岡まで行くという怪物です。
じゃあ、どうしようかと聞いたところ、彼が働いているコンビニから持って帰った賞味期限切れのものがたくさんあるから、良かったら食べてくださいとのこと。確かに、ベッドの横に小山のように食べ物が置いてありました。彼は、朝食があたったらしく、お腹を壊しているとのこと。でも、パンなら大丈夫ですと言われ、腐るようなものが入っていないパンを選んで食べました。
彼は、とてもフレンドリーです。家族環境に恵まれず、留学時代にガールフレンドを亡くし、40代後半でいまだに独身の彼は、愛に飢えているのかもしれません。顔はいかついですが、優しい人で、その晩、間違えて大量の仕入れをしてしまった同僚のために、夜中の3時ころ店まで行って、無報酬で荷物運びを助けてあげたそうです。
2千年前のクリスマスにキリストが産まれて寝かされたのは飼い葉桶でした。飼い葉桶というのは、家畜の飼料を入れる箱です。マリアは、旅の途中でイエスを産みましたが、宿に部屋がなかったので、家畜小屋でイエスを産んだのです。救世主は、汚れた私たちの間に宿られました。
キリストと私を比べるつもりは毛頭ありませんが、S君の家賃2万円のアパートは、家畜小屋よりはましでした。まあよくもこんなところに招いてくれたものだと考えることもできましたが、こんなところでも私に泊まってもらいたいと思った彼の気持ちを嬉しく思いました。私たちも、メシアの降誕を喜びたいものです。
裁判所出頭命令が山済みの居候
もう10年くらい前でしょうか。ある女性から、息子が軍隊に入るのだが、それまで住むところがないので、私の家に住まわせてくれないかという依頼がありました。当時、私たち家族は6LDKの大きな古い家に住んでいて、空いている部屋でホームステイをしたり、住むところのない人を泊めてあげたりしていました。お母さんは、2LDKの分譲マンションに住んでいましたが、ローンの支払いの助けにするために、空いている部屋を貸していて、息子を泊める場所がなかったのです。
彼は問題児で、それまでにも何回か相談を受けたことがありました。お姉さんとも仲が悪く、1-2ヵ月とは言え、弟を泊めてあげることを拒否したのです。私は、家族と相談して、彼を受け入れることにしました。
彼は、私たちの迷惑になるようなことはしませんでしたが、軍隊に入る準備をしている様子は見受けられませんでした。聞いても、はっきりとした答えがありません。軍隊に入ると言うのは本当だろうかと疑っていた矢先、幾つかの問題が発覚しました。
家内が、彼の部屋に山積みになった裁判所の出頭命令を発見したのです。そのほとんどは交通違反で、彼は罰金を支払っていなかったので、出頭命令が送られてきたのです。ハワイは米軍基地が多いので、知り合いの軍人に聞いたところ、そんな人が軍隊に入れるわけがないと言われました。
家の隣はカトリック・チャリティーズというキリスト教系の非営利団体が運営している低所得者向けのアパートでした。そこの住民が近所迷惑になるような行動を取ることはほとんどなかったのですが、夜遅くまでパーティーをして騒ぐことがありました。そんなに大声で騒いでいるわけではないので、気にしていませんでした。
ところがある日、この青年がパーティーに加わってお酒を飲みながら話しているのを、私の息子が聞いたのです。彼は、ここの住民から麻薬を買っていたことが分かりました。私は、この男性がこんな生活を続けるのを助けているだけだと思い、彼に出て行ってもらうことにしたのです。
私の教会に不動産管理士がいたのですが、彼にこの男性のことを話したところ、家賃を取っていなくても、ある一定期間が経つと、入居者としての権利が発生するというのです。権利の一つは、退居してもらう際、45日以上前に通知をしなければならないというもので、彼にその権利が発生するまで、あと数日しかありませんでした。
彼は、自分がそのような権利を持つことになるなどということは知らなかったと思いますが、私はその日までに出るように伝えました。もちろん、なぜその日を選んだかは告げませんでしたが、彼は了解してくれました。しかし、一向に次に住む場所を探す気配はありません。期日が近づいたある日、彼がお姉さんに電話して、お姉さんなのに弟を受け入れてくれないのかと怒鳴っているのが聞こえました。
ちゃんと出ていくかなと案じていたのですが、案の定、前日になって、もう少し延長してくれと頼まれました。私は、頑として受け入れず、出て行ってもらったのです。
先月、長男から、ある教会の集会に出席して、彼に会ったと言われました。彼はクリスチャンになり、すっかり人生が変わって、まともな生活を送っているそうです。あの箸にも棒にも掛かりそうになかった人を、私と違って、神様は見捨てなかったようです。