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★ 元H専務の葬儀(SF)
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★ 星 あゆむ
2002/12
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H専務の葬儀会場に向かうタクシーのなかで、
右近>
「長い南米赴任ご苦労さん。もう六年になるか。君が南米に行く時の部
長だったからな。」
左近>
「そうなんです、三年前に一度帰国した時にお会いしているのですが、、。なにせ私の仕事は洞窟の生物を探すことですから。生物と言っても土や石についているバクテリアや仮死状態の生命を探すことばかりだから、衛星通信もなかなかしにくい環境でしたから、本当に浦島太郎でした。」
右近>
「君の見つけてくれたバクテリアやカビであたらしいクスリをつくることが出来たので俺は部長になれたものな。君のは本来はやめてもらうための左遷だったそうだ」
左近>
「まあ、私のミスで会社のコンピュータを二時間止めてしまった。しょうがないす。H部長が「非常事態がおこり本社機能を移転させるというシ ミュレーション」をしている時にしている時に、コーヒーをひっくり返し、シミュレーションではなく本当に実行してしまった。あわててコマンドを止めようと おもっても、パニックになってしまった。いつも使っているパスワードを打ち間違うは、大変でした。私の一生分の50倍の収入よりも大きな穴を開けてしまっ たから、しょうがないすよ。」
右近>
「そうだったな、君が洞窟探検のエキスパートでテクニカル・ダイビングのエキスパートでなかったら首になっていたよ。何しろ、地底の湖をさら に百メートルも潜って先にある洞窟の中のバクテリア、つまり、今の大気にふれていない生物を見つけるなんて、君にしか出来なかったから。まあ、君の見つけ てくれたバクテリアのお陰で、会社は君の損失の千九百倍をもうけた。お陰でH部長が専務になり、私が部長になれたのは君のお陰だよ。だから君が南米で仕事 を年に2月しかしなくても、かまわないのさ。もし二十二世紀の発見賞でももらってくれれば会社は有名になるかもしれないので、そのままにしているのさ。」
左近>
「いや、あの、一度地下にはいると、体力や知力がしばらくはボロボロになるので」
右近>
「それは判っているさ。水深百メートルに三時間潜ると、三十メートルのところで八時間、十メートルのところで八時間、五メートルのところで十 二時間はじっとしていないと行けないから。そんなこと君しかできないさ。そのあとも、時々いいバクテリアを見つけてくれているので、遊んでいてくれても、 会社に貢献してくれている。十分さ。それがどうしたんだ、急に帰りたいなんて。」
左近>
「いやね、最近、私の故郷がどうなっているか、まったく考えてなかったことに気が付いた。思い出すと、一つのことしかしてこなかった。三年前 に帰った事以外は、なにも記憶には残っていない。ところで、もうすぐ、葬儀の会場だね。あそこに立っているひとが『ロボットにも生きる権利を』というプラ カードを持っているけどあれはなんだい?」
右近>
「まあ、そのうち解るさ。それからH専務は、子供がいなかったよ。だから火葬場までも、私と君が付いて行くことになっているよ。」
左近>
「奥さんがいたでしょ」
右近>「まあ、それも解るさ。お棺をのぞいて見ろ。」
左近>
「おい、なんか変だぞ。H部長のお棺が異状に大きいじゃないか。二人並んで入れるぐらいだ。ああ、奥さんが入っている。ひょっとして心中したのか。」
右近>
「おい、今は部長じゃない。俺が部長でH氏は専務だ。あそこのお棺には、H専務の遺体と奥さんのロボットが入っているのさ。」
左近>
「奥さんていつ亡くなったのだ?」
右近>
「五年前に亡くなった。その後再婚せずにパートナー・ロボットを手に入れたそうだ。最新の人工関節や人工皮膚などを備え付けたロボットさ、顔 はもちろん声も奥さんの声だし、昔の記憶など全部インプットされているから、『マイアミビーチに行った時は楽しかった』といえばその時の話をしてくれる し、写真も持ってきてくれる。本当の人間だったら年を取っていくと、ぼけて忘れていくよ。。GPSや医療プログラムも入っているから、専務は、すぐに病院 に連絡はついたのだが、脳がボロボロでどうしようもなかったみたい。みてごらん、それから面白いことに、パートナーロボットは本当の奥さんよりも、細くて かわいいだろ。実物の人間よりも、スマートなサイズさ。リカちゃん人形のプロポーションさ」
左近>
「そんな、三年前に一時帰った時に、Hさんに車で家まで送ってもらったことがある。その時、Hさんが、奥さんに『今どこを走っているか。次 どっちに曲がればいい?』と聞いていた。そうしたら『次の次の信号を左折』と答えていたよ。そうか、あれはGPS内蔵の奥さんのパートナーロボットだったのか。」
右近>
「おまえ、潜水で耳をやられて人口耳をしているから解らなかったのさ。最近はパートナー・ロボットを買う人が増えている。ちゃんと話ができる どころではなくカウンセリングのプログラムが入っていて、話を聞いてくれるし、励ましてくれるし、H もふくめ色々してくれる。医療プログラムや援助もしてくれる。人間より役に立つ」
左近>
「おれも、南米で独身用のロボットをつかった事があるけども、今はアニータという人間の奥さんがいる。実は、後悔しているのさ。おれはスペイン語がなかなか通じないし、アニータは融通が利かないし、寝てばかり、文句ばかり。おまけに、どんどん老けてきている。」
右近>
「おまえも老けてきているよ。人間はそういう運命だ。だからロボットが売れるのさ。死ぬ事もないから、悲しむこともない。嫌みもいわない。人間の良いとこ取りしたものがパートナーロボットさ。最近は、奥さんがいるのにパートナーロボットを手に入れる人もいる。」
左近>
「良いんじゃないの、奥さんも男のパートナーロボットを手に入れれば楽しいよ。」
右近>
「おれもそう思うけども。ただ人間が死んでしまった時に、残されたパートナーロボットをどうするかが社会問題になってきた。一緒に火葬して欲 しいという人が多いので二人用の棺桶ができたのさ。さっき、『ロボットにも生存権を、第二の人生を』というプラカードを見ただろう。買い主のエゴで、まだ まだ使えるロボットを燃やしてしまうなんて、資源の無駄だ、リサイクルしましょうと言う合理主義者が「ロボットの生存権運動」をしているのさ。」
左近>
「いや、個人のロボットではなくて、ロボット全体の為にと思っているのかも。南米に持っていったペットロボットはお父さんの代からだから、五 十年は生きているよ。あいつは、俺のこと全部見ていたからな。処分なんて出来ないよ。おれがパートナーロボットを手に入れたら、遺産もすべてロボットに残すさ」
右近>
「アニータには?」
左近>
「日本に残して隠しているお金以外、すべて、全部とられているさ。それで、最近は若い男が出来たみたいで、追い出された格好で日本に帰ってきたよ。」
<<火葬がすんで>>
右近>
「おい、左近。燃え残ったモノを見て見ろよ。」
左近>
「こちらは奥さんのロボットぶんで、おっ、H部長は人工の足をしていたのか。人工腎臓、人工心臓、人工鼓膜、どうやら、専務は半分はロボットだったのか」
右近>
「これを見ているとどこからが人間でどこからがロボットか解らなくなってきた。」
▼ http://石垣.okinawa.jp/
http://www.psychosynthesis-japan.net
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