【総括・2023年】

今年ほどインパクトの強い1年はありませんでした。

声帯ポリープの摘出手術、
東京文化会館での新制作「ピノッキオ」、
そして「曾根崎心中」の開幕。

アトリエのお引越し…
自宅のお引越し…

「オズの魔法使い」の新演出の開幕、
3年振りの「毛皮のマリ―」の上演、
4年振りの「お花のハナックの物語」の上演、
「ピーターパン」の全国ツアー、
各地でのワークショップ…etc.

ヨーデル歌唱の修行開始!

インスタライブ
「とにかく10時の生配信」のチャレンジ開始!
そして連続200日突破!

これらが全て今年1年の出来事だったなんて…
自分でも信じられません。

長文なので、トピックごとに★で区切りました。
寛大な方、お付き合いいただければ幸いです。


★★★★★★★★★★★★


声帯の手術後、しばらくの沈黙生活。

筆談での生活はとてつもないインパクトでした。
見事な施術によって、私に新たな声を授けてくださった先生、親切な看護師の皆様、そして、困難な状況をご理解くださったお仕事関係者の皆様、支えてくださった家族・友人、応援してくださったお客様に感謝です。


★★★★★★★★★★★★




「ピノッキオ」や「曾根崎心中」のような、私にとって大規模とされる新作が1年の間に2本上演されることは初めてのことでした。この規模の作品はリサーチから含めると2年の歳月を要します。「ピノッキオ」はイタリア語からの翻訳作業…、「曾根崎心中」は古典文学からの現代語訳という繊細な作業…。ピノッキオを終えてから曾根崎…ではとても間に合わず、なにもかもが同時進行で進められました。素晴らしいスタッフの皆々様、ミュージシャン、黒衣(くろこ)さんに支えられ、両作品とも、無事に開幕となりました。全国・世界各地での上演へと繋がることを切に願います。


★★★★★★★★★★★★


14年間過ごしたアトリエのお引越しは実に壮大な作業でした。物件探しに2年の月日を要しました。創作意欲の湧く空間…という私のこだわりは実にわがままな条件ばかり…。しかし、遂に、それらの条件を兼ね備えた素晴らしい空間と出会うことができました。旧アトリエでの最後の美術制作は「お花のハナックの物語」のライオンのタテガミ新調作業でした。私の原点とも言える作品の美術作業をひとりで行う…、静かな締めくくり…、感慨深いものとなりました。そしてこの地での最後の仕事は「オズの魔法使い」の黒衣(くろこ)さんとのお稽古。思い起こせば、このアトリエを使い始めた2009年は「オズの魔法使い」の上演に向けて準備をしている頃でした。オズで始まりオズで終わるアトリエとなりました。


西新宿から代々木へ…



新たなアトリエは都内を一望でき、広大な空を眺めることのできる最高の空間です。新天地へのお引越し後の最初の上演作品は「オズの魔法使い」。やはり、私はこのオズという作品に何か導かれているのでしょうか。節目を共に迎えるオズがまた愛おしくなりました。そしてこの地での最初の美術制作は「曾根崎心中」となりました。美術チームの面々も居心地の良さを絶賛してくれて、瞬く間に、皆がこの環境に馴染み、ずっと昔からここで創っていたかのようだ…という声が。そんな環境に出逢えたことは奇跡です。物件捜索・契約の諸々にご尽力いただいた方々に感謝です。




そして、ご縁の皆々様が、新しいアトリエの窓にロールスクリーンを寄贈してくださいました。仲間の愛情を日々感じながら創作に励んでおります。


★★★★★★★★★★★★


長らく上演が途絶えていた作品も続々と再開いたしました。
特に、「オズの魔法使い」や「お花のハナックの物語」は、客席での演出が必須となる作品です。これらの上演の再開は実に嬉しいものでした。




「オズの魔法使い」は脚本やナンバーを再構築し、3時間近くあった当初のバージョンから2時間バージョンに凝縮!ダイナミックなスケールはそのままに、より幅広い世代にお楽しみいただける作品となりました。




2020年にパンデミック渦で初演を迎えた「ピーターパン」(初演は無観客ライブ配信)も、遂に客席演出が解禁!ティンカー・ベルやピーターが、念願叶って客席内を自由に飛び回れるようになりました。子ども達はもちろん、大人達も大興奮する姿に…、コレコレ、やっぱりコレだよね…と、こちらも大興奮。ワークショップでのマスクも遂に外され、子ども達の豊かな表情と向き合えたことも幸せでした。



「毛皮のマリ―」の再演も大変に嬉しい出来事でした。今の年齢を迎えたからこそ見えてくること、表現できること…があり、多くの新発見と共に、新たな気持ちで上演を迎えました。この作品は来年、更に新たな展開を迎えます。お知らせをお楽しみに!


★★★★★★★★★★★★


兼ねてよりレッスンを受けている「フランス語」に加え、今年から「ヨーデル」のレッスンを始めました。フランス語もヨーデルも、全ては声と演技の質的向上のため…です。フランス語の中に存在する独特な響きの数々、なんとしても習得したい…、そして、長らく解明できずにいたヨーデル。歌を聞くだけでは真似ることすら出来ず、どうなっているのだろう…とずっと興味がありました。

この度の声帯手術を受け、新たな健康的な声を手に入れ、今こそ挑戦のときだ!と思い、レッスン受講を決意しました。目からウロコの連続…。そういう仕組みだったのか…と感動。

まだまだ入口に立った程度ですが、新たな歌唱法の習得に、これまた大興奮の日々です。素晴らしい技を、根気よく丁寧にご指導くださる先生に感謝です。インスタライブでは時折ヨーデル披露をさせていただいておりますが、舞台に取り入れる日はそう遠くないかも…?本番前の発声練習では既に必須項目となっております。これほど声帯が柔軟に目覚めてくれる発声法は、今のところ、ほかには知りません。学び始めて本当に良かった!!


★★★★★★★★★★★★





今年、私に絶大なインパクトを与えたのは、なんといっても…
インスタライブ「とにかく10時の生配信」です。

声帯手術を受け、沈黙生活、リハビリを経て、遂に「舞台発声解禁!」と先生からお許しをいただいたタイミングで、この声が皆さんに届く新たな挑戦をしたくなりました。これといった計画性もなく衝動的に生配信を始めたのは今年の6月1日。今日から毎晩10時に生配信をします!!と始まったこのチャレンジ企画。お引越しや新制作のてんやわんや…、体調を崩した時も、遠征先のホテルからも、移動中の新幹線のデッキからも、飲み会へべれけの最中からも、稽古後、本番後、どんなときでも夜の10時に配信を続けてきました。

最初は2週間くらい続けば良いかな…と思っていたこの生配信。視聴者さんの応援に励まされ、気が付けば…、その連続チャレンジは200日を超えました!

もちろん、今晩の大晦日も実施予定!実現すればチャレンジ連続214日目となります。

この配信は、言わば「リアルドキュメンタリーショー」。どんな状況でも、とにかくその日の夜10時にそのときの心境を語るという淡々とした企画ですが、思いがけない大爆笑や涙…、ほっこりしたり、ためになったり、視聴者さんとのライブでの相互作用によりたくさんの感動が生まれています。どこまで続くか分かりませんが、この挑戦をもう少し続けてみようと思っています。


★★★★★★★★★★★★


そんなこんなで、長くなりましたが、私の2023年を振り返らせていただきました。

今年を無事に乗り越えることができたのは、家族・友人・仕事仲間、関係者の皆様の支え、お客様からのご声援があってこそです。本当にありがとうございます。

活動に際して何よりの糧となる舞台公演の場を企画してくださる各地の主催者の皆様に、心より御礼申し上げます。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

また、活動を持続させていくための多大なご支援も頂戴いたしました。何度も倒れそうになっては手を差し伸べていただき、多くの励ましてと応援、お導きをくださる方々に、心より感謝申し上げます。

この年末年始も、次なる企画の準備に励んでおります。情報公開は少し先になりますが、お知らせを楽しみにしていただけると幸いです。ここまで続けてきたからこそ実現する企画の数々が、皆様と対面するのを心待ちにしています。実現するその日まで、健康管理に努め、更に芸を磨きつつ、鍛錬を重ね、備えて参ります。劇場や配信で、皆様にお会いできるのを楽しみにしています!

この文章を最後まで読んでくださる奇特な方がどれほど居てくださるか謎ですが、大切な記録のひとつとして残させていただきます。

全て読んでくださったあなたに…
「よく読んでくれたで賞」を授与させていただきます。
授与された方はコメント欄で教えてください。

今年も、本当にお世話になりました。

2024年も、皆様が健やかに幸せ暮らせることを願って、ご挨拶とさせていただきます。

来る年も、どうぞよろしくお願いします。

2023年12月31日 大晦日
平常/Jo Taira
ブログがすっかり放置状態となっておりますが、ここでボリューミーに近況報告…

先週、メールマガジンの配信がございました。
そちらに掲載した「近況コラム」をこちらに併載させていただきます!

メールマガジンでは写真はございませんが、ブログは写真付きのスペシャルバージョンです。かなりの長文ですが、お付き合いいただければ幸いです。



★★★★★★★★★★★★

メールマガジン  Vol.7
2023年9月8日号

*近況コラムより…

お久しぶりです。お元気でお過ごしですか?
ほんとうにお久しぶりのメルマガ配信となってしまいました。前回の配信は昨年の11月。まるで年報ですね…汗。各種SNSでの発信はこまめに行ってはきましたが、肝心なメルマガ配信がこうしてご沙汰になってしまい心苦しい限りです。怒涛の1年間でした…。


[ピノッキオ公演の様子]


東京文化会館では初となる子ども向け作品「ピノッキオ」は、今年の2月に無事開幕しました。シンプルな舞台作品ではありますが、ひとつひとつの美術道具の制作には極めて時間を要しました。関連イベントとして、都内小学校を巡回するアウトリーチも開催されました。全公演が早々に完売となり、公演は熱気に包まれました。チェロの宮田大さん、ギターの大萩康司さんの素晴らしい演奏、黒衣さんのお見事なサポート、スタッフ陣の素晴らしいチームワーク、そして何よりお客様からの温かい眼差しによって初演を大成功におさめることができました。感謝申し上げます。


[リハビリ中の気持ちを俳句にて]


その後、私は声帯ポリープ切除という試練のときを迎えました。これは実にありがたい経験となりました。詳しくはブログでも綴りましたが、声の異変は2年ほど前から感じるものがありました。加齢かな…これも成長だ…と楽観的に見過ごしておりましたが、いよいよ声が思うように出なくなり、調べたところ、一般的な声帯ポリープの5~6倍の大きさの特大ポリープができておりました。素晴らしい先生や看護師さんに支えられ、今年の3月の手術は無事成功。しばらくは筆談生活が続き、長いリハビリを経て、新たな声を手に入れました!驚くほどに軽やかに声が出るのです。まだまだ、この声を使ってお仕事をするべきだと確信いたしました。支えてくださった全ての皆様に感謝です。


[奈良県大和高田市・さざんかホールの舞台にて]


手術前の最後の公演は今年の2月末、奈良県での「ピーターパン」でした。ギリギリの状態でしたが、本番というのは不思議なものですね。一時的に…奇跡的に声が出るのです。



[奈良での公演直前、ステージにて]

とても印象的な公演となりました。

その後、手術とリハビリを経て、復活公演は6月に西新井で開催されて「お花のハナックの物語」でした。この作品は復活と再生もテーマとなっています。また、客席での演出が必須なこの作品はパンデミックの影響により3年間にわたり上演不可となっておりました。ほうとうに…色々な、色々な意味での…復活公演!となりました。


[西新井公演、終演後の様子]



西新井での公演後はそのまま移動で仙台へ…「ピーターパン」の東北初上演となりました。


[仙台公演の舞台袖より]


7月には「オズの魔法使い」が5年ぶりに上演されました。今回のオズより演出が一新され、壮大なスケールはそのままに、魅力を凝縮させた2時間バージョンが遂に初お披露目となりました。


[オズの魔法使い・リハーサルにて]


会場となった新潟りゅーとぴあはおかげさまで満席となり、オズ史上、極めて大きな盛り上がりを見せた公演となりました。

[オズの魔法使い・新潟公演・カーテンコール]


そんな復帰公演の日々の中、私はアトリエを移転。14年間お世話になった西新宿のアトリエを離れ、代々木の新アトリエへと移りました。実は長らく、新たな活動の場を探しておりました。あらゆる奇跡に導かれ、この度、素晴らしい空間と出会うことがきました。


[新アトリエ・引越し当日の朝]


この移転を機に、新たな気持ちで、より一層、創作活動に励む次第です。


[窓辺にて]



[窓辺にて2・黄昏てみた…の巻]



新たな声、新たなアトリエに導かれ、これは何か新しい挑戦を始めねば…と、インスタグラムのライブ配信機能を使って、「とにかく10時の生配信」というチャレンジを毎晩22時に実施をしております。


[某日の配信にて]


今年の6月1日に配信を開始し、本日、遂に100日目を迎えます。インスタグラムは使っていない…という方も、これを機にぜひアカウント登録をしていただきご覧いただければ幸いです。スマートフォンがあれば、誰でも簡単に登録・閲覧が可能です。内容はまだまだ手探りですが、視聴者さんからの嬉しい反響にも支えられ、楽しく続けられております。さて、チャレンジは何日続くか…。



明日は3年ぶりとなる「毛皮のマリ―」が宇都宮市文化会館で上演されます。


今年は原作者の寺山修司さんの没後40年の年、そして、この人形劇版の初演からはちょうど20年。そんな節目の年の記念すべき公演です。毎公演ごとに恐ろしいほどに多くの発見と感動が巻き起こるこの作品。寺山さんのコトバの世界で宝探しをするような感覚です。宇都宮ではどんな宝物が発掘されるのでしょうか…。

そして、年末には東京文化会館にて近松門左衛門原作「曾根崎心中」が初演を迎えます。





既に脚本を書き終え、大阪弁指導や美術制作がはじまっております。今回は、チェリストの宮田大さんが、演奏者としてではなく、選曲・音楽構成としてのみ参加するという新たな試み。生演奏はヴィオラの田原綾子さん、アコーディオンの大田智美さん。全世界に日本の美しさを紹介したいというい思いから、この度、私の舞台としては初となる英語字幕付きの公演となります(希望者にタブレット端末配布)。アドリブが封印されます…笑。私個人としてはこのアドリブ封印がかなりセンセーショナルです。選曲を終え、現在は「編曲」の段階に突入しておりますが…、音楽の選曲がべらぼうに素晴らしいのです。これらの楽曲がヴィオラとアコーディオンで奏でられたとき、得も言われぬ哀愁や情緒が劇場内を包むことと思います。あまりにも尊い「曾根崎心中」の世界、恐れ多く遠い存在と思っておりましたが、東京文化会館さんとの長い絆という土台が、上演を決断させてくれました。年末のお忙しい最中とは思いますが、ぜひ劇場でご一緒いたしましょう。お待ちしております。

以上、近況でございます。長文お許しください。
約1年分の近況…これより短くは無理でした…。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
配信で、劇場で…、お会いできるのを楽しみにしております。

平常 / JO TAIRA


★★★★★★★★★★★★

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!!

インスタライブは今夜で連続106日目を迎えます!
何日続くかな…
ラジオ感覚で…ながら聴きで構いません。ぜひご視聴くださいませ!

お久しぶりです!
ブログが久しぶり過ぎて…投稿の仕方が一瞬分からなくなってしまった!

各種SNSでは色々報告させていただいておりますが、ブログでしかお目にかからない皆様、お久しぶりです!お元気ですか?

無事、声帯ポリープ切除手術を終え、新たな声をいただき…舞台も復帰しております!

見事な処置をしてくださった主治医の先生…
看護師さん、そして祈り…日々案じてくださった皆様、本当に感謝です。ありがとうございます!

6月より…

西新井での「お花のハナックの物語」
仙台での「ピーターパン」
新潟での「オズの魔法使い」

…と、どれも物凄い盛り上がり…
ご来場いただいたお客様、全ての関係者の皆様、本当にありがとうございました!

そしてそんな公演をしつつ…
14年間お世話になったアトリエを引越し!
心機一転!

何年も探し続けた新アトリエ…
この上ないほどに素晴らしい空間!創作意欲が湧いて湧いて仕方ない…。この導きに感謝です。

新たな声をいただき、新たな環境も決まり、これはなに新たな挑戦をせねば…と、前から気になっていた映像配信!意を決して…

Instagramの配信機能
インスタライブにて
「とにかく10時の生配信」
という企画を6月1日より毎晩お届けしております!昨日は…

チャレンジ57日目!でした!
自分でも…ここまで続いてビックリ!

インスタはやってない…という方も、これを機にぜひ、登録してみてください!

さて、久しぶりのブログ投稿、これだけはお伝えせねば!と、一般発売直前!ギリギリの投稿です!



東京文化会館・新制作
/舞台芸術創造事業

現代人形劇×クラシック音楽
「曾根崎心中」
原作:近松門左衛門

明日7/29(土)10:00
チケットが一般発売開始となります。

先週の会員先行販売では異例の反響だったとのこと。早くから楽しみにしていただけること…、作品の質を高めるエネルギーとなります!感謝です。

昨年より、「ピノッキオ」と同時進行でリサーチを進め、今年の声帯ポリープ切除手術直前に取材旅…。リハビリ中に台本を仕上げました。

大阪弁指導、古典指導など…、各界の専門家の方にお世話になりながらブラッシュアップを進めてきました。

春からはチェリストの宮田大さんとの選曲作業…。
今回、彼は演奏はしません。クリエイティブスタッフのひとりとして「選曲・音楽構成」を務めてくださいます。いやはや…この選曲が…、これまた…とんでもなく素晴らしいのです。西洋の偉大な作曲家達が残した既存楽曲が、日本の古典文学の最高峰…近松門左衛門とマッチングします。

世界の歴史の融合を感じる舞台となりそうです。





生演奏は…
田原綾子さんによるヴィオラ、
大田智美さんによるアコーディオンです。

私が脚本と演出をさせていただいた歌劇
「400歳のカストラート」の初演時(2020年)、田原さんのヴィオラ演奏に私が魅了されまして…、いつかこの音が主役になる演劇が創れないものかと思っておりました。遂に実現です!

大田さんは宮田さんもイチオシのアコーディオン奏者さん!この度の共演を本当に楽しみにしてくださっています。

編曲は山本清香さん。
「サロメ」、「ピノッキオ」で見事な編曲を施してくださいましたが、今回もご協力いただけるとのことで、本当に心強い…。

本作の哀愁が音によって際立ち、心に迫る感動を味わっていただけることと思います。

今回は、舞台美術に松生紘子さんをお招きするというこれまでの私の舞台には無かった新たな嬉しい試みも!

黒衣(くろこ)の牛頭ちゃん&新井ちゃんはもはや大ベテラン!今回も美しく舞台を支えてくださいます!

演出助手の伊奈山さんは本作が得意分野のため、演出助手の域を超え、創作過程に於いて全面的にご協力いただいております。

舞台・照明・音響も最高のチームでのクリエイションとなります。

近松門左衛門
「曾根崎心中」…
触れたいけれど、触れてはいけないような…
あまりに尊く、恐れ多い存在でした。

東京文化会館さんでお仕事をさせていただくようになってちょうど10年が経ちます。

劇場の制作スタッフの皆々様のサポート体制が本当に素晴らしく、この環境があれば、そしてこの10年の歴史の土台があれば…、今なら、今ならこの作品に挑戦できるのでは!?と、たいらじょう42歳の挑戦です。

役者は「役」がつくから「厄祓い」はしない…という考え方ございます。昨年、私は本役でした、今年は後厄…

厄年の締め、私は舞台で死にます…役として。そして新たにまた生まれるのです。

心中という思いテーマではございますが、今を生きる人々への賛歌となるような舞台を心がけております。原作には存在しないキャラクターも幾つか登場します。

極めてシンプルな舞台ではございますが、エネルギーは会場いっぱいに溢れることと思います。

どんな舞台になるか…
どうぞお楽しみに!!

さて、後編です。


前編は、ひとつ前の投稿をご覧ください。





全身麻酔による手術


全身麻酔は人生で初めてのこと


心拍数が上がるほど緊張している私を、親切な看護師さんや、素晴らしい先生方が優しく導いてくださり、徐々に緊張も解けてきました。


点滴後、全身麻酔の世界へ~


なんということでしょう

新感覚、新体験!

別世界へと誘われる感じでした。


この部分だけでも本書けそうですが、話が逸れてしまうので次のパートに移りましょう。




目覚めてから


気が付くと、私は別の部屋に居ました。


看護師さんの優しい声掛けで徐々に状況を把握してゆきます。


喉のあたりにゴロゴロするものが

しかし!発声はもちろん、咳払いもNG!

声帯に傷がある状態なので、術後はくしゃみや咳などが厳禁でした。


ゴロゴロとした痰のようなものを吐き出したく、咳払いをしそうになるもそれもすかさず止めてくださいました。ゆっくりと水を飲むことで落ち着かせてゆきます。


手術は無事に終わったとのことで、ゆっくりと補足説明を受けました。





因みに、手術用のパジャマは持参…というシステムでした。必ず前開きのパジャマをご持参ください…とのこと。


寝るときはスウェット派の私…

そもそも前開きのパジャマとか着たことすらないかも…


子どもの頃はなぜかボタンのある服が苦手で、今でこそ克服しましたが昔は軽い恐怖症でした。


近所のスーパーの雑貨コーナーにてパジャマを物色…。なぜか紳士用パジャマが豊富に取り揃えられている。しかしことごとく、どれも地味…。気分が上がる色とか柄とかないのかしら?…と物色を続けると…奥の奥にこの柄が!!笑


大好きなトリコロールカラー!

私の手術の相棒となりました。



もう着ることないから、今後の作品の生地としてどこかに使おうかしら??



さ、お話を戻しましょう…




花粉、花粉、花粉


術後、くしゃみや咳は最も危険とのこと。

花粉症の私にとってはここも辛いところでした。よく効く薬を処方していただいてはいるものの、いつくしゃみが出そうになってしまうのかと気が気ではない


とは言え

なんとうことでしょう….

今年の春は雨の日が多いこと。手術当日も雨でしたし。その後も雨の日が多く、おかげで花粉達はお休みモード。まるで天も応援してくれているかのような気持ちになりました。



手術当日は消化に良い物を食べ、翌日から通常の食事ができるようになりました。


カフェインは1週間NG

アルコールはしばらくNG




手術翌日/経過観察


たった1日にして、一目瞭然で良くなっている!とのこと。切除の傷も、ものの見事に平坦になっているとのこと。


いやはや

先生の切除技術が凄かったのです。


ポリープ切除は一般的にメスで一度に切除する方法や、ポリープの内部を取り出し表面を残す方法などがとられているようなのですが、それだと声帯のカタチが変わってしまうこともあるようです。発声の回復という点に於いてはリスクを伴うわけです。


一方で、今回お世話になっている先生は、声帯の曲面を残すために、ピーラーで削るように多方向から少しずつ段階的に切っていくというシステムで行っているとのこと。しかもこれ、先生オリジナルの方法とのこと。この術式のために、世界で最も繊細な刃先のメスを用いているのだとか


これは声帯ポリープ切除に於ける医学革命だと思います。この尊さに、ただただ感嘆するばかり




どんなポリープだったか?


それにしても

とにかく大きいポリープだったとのこと。


一般的な声帯ポリープは

0.3ミリ程度とのこと。


私のポリープちゃん

1.6ミリのビックサイズ!!


因みに、フニャフニャタイプのポリープもあるそうですが、私のポリープはかなり硬めだったそうです。相当な酷使による出血が腫れてできたものと思われるとのこと。なんだかポリープちゃんに、ありがとうという愛おしい気持ちが湧いてきました。


ポリープちゃん

長い間、お疲れ様でした。ありがとう。




沈黙治療/筆談生活


さて、まず3日間は完全サイレント!


人生初の筆談生活。

これがとても良い体験となりました。


自分が何か発言しようと思っても、筆談だといったん気持ちが立ち止まるのです。この経験は実に豊かなものでした。


思ったことをすぐ口にしてきた人生。


酷いときは、考えるよりも先に言葉が出てくるほど


そんな人生を歩んできた私にとって、発言の前に一度思考するという、人によってはあたりまえであろう時間が良い経験となりました。


また、筆談での言葉を最小限にするため、頭の中でいちど言葉を整理する感覚も新鮮でした。てか、それ普段やってないんか~い?と言われそうですが。汗


自分の人生の発言態度を顧みる機会となりました。




リハビリスタート


完全サイレントを無事に終え、少しずつ、発声のリハビリが始まります。筆談生活は続行。


数日置きに経過観察も行われ、その度にリハビリの難易度も上がっていきます。


最初は静かな低音によるハミング発声から。

1週間ほど経つと、少しずつ言葉の練習。


更に声帯を閉じる練習のため、水を入れたペットボトルにストローでぶくぶくさせながら発声する「ストローハミング」。声帯に負担をかけずに自然に声帯を閉じることができる方法とのこと。


やがて徐々に音域も広げていきました。


経過観察はおかげさまで毎回「最上級に良好!」との結果。

先生涙。本当にありがとうございます涙。


やがて、(疲れない程度に)日常会話解禁! 今、この辺!


お酒と歌唱はもうしばらくの辛抱




現状


まだまだ完全復帰とはいきませんがおかげさま良好です。


現在は音域によってはまだ息が漏れてしまう状態。私は特に低い声が苦手なようです。


この息が漏れてしまうことにも原因が


ポリープが巨大な状態で長期間過ごしていたため、声帯が「ポリープあり」の状態(カタチ)を記憶して癖になってしまっているそうです。そのため声帯が閉じにくいというのが現状です。


「反射フィードバック」という声帯の反射神経?のような仕組みを本来の状態にすべく、現在もリハビリ中です。


とは言え、声帯そのものは傷もほぼ消え、とても良い状態とのこと。


「反射フィードバック」については時間の問題。ポリープのビックサイズだったことを思えば今の声でもかなり良いそうです。


声の完全復帰まで早ければ数週間、長くて2ヵ月という感じだそうです。リハビリがんばりますよー!!




来たる617日(土)

ギャラクシティ 西新井文化ホールでの公演

「お花のハナックの物語」で完全復帰の予定です!かつては全国各地で度々上演されていた本作は客席での演出が必須の作品。コロナ禍での上演は不可となっておりました。この度、遂にハナック復活!!



色々な意味で復活を遂げる公演となります!



新たな美声!?お楽しみに!!





現在は「曾根崎心中」の台本執筆の真っ只中です。間もなく、方言指導や選曲も始まります。これまた長期戦。こちらもがんばらせていただきます!!



今年はあの作品や!あの作品も!!

色々な作品の地方公演が予定されています!!


劇場で、皆様とお会いできますように!!





まとめ


さ~て、まだまだリハビリ中とは言え、ここでいったん、我がポリープちゃんとの歴史を振り返らせていただきました。


ポリープちゃん、ありがとグッパイ!

多くの気付きと学び、貴重な体験をありがとう!


そしてまだまだお世話になっている真っ最中ですが

先生、看護師さん、医療スタッフの皆々様、いつも親切丁寧にありがとうございます。


また、この私の状況にご理解ご協力をいただいている関係者の皆様、日々案じてくれている友人・知人・家族に心から感謝申し上げます!


そしてそして、

いつも応援してくださっている皆様!

本当に本当に、ありがとうございます!!



次なる公演もお楽しみに~!!





この長い長いレポート、全て読んでくださったとしたらかなり尊い感謝です。


もれなく「よく読んでくれたで賞」を差し上げます。


静かな春を迎えました。


それもそのはず。

一切声を出せない期間を過ごしておりました。


そんなこと生まれて初めてのことです。笑


実は、声帯に大きなポリープができておりました。先日、切除手術を行い、術後は沈黙状態。現在、徐々に声を出し始めております。


おかげさまで、経過は良好です。





時折、北海道の母と、葉書での俳句のやりとりをしております。


メールもLINEもしない母との文字でのコミュニケーションは今も手紙です。


母のようにうまく詠むことはできませんが、私も拙いなりに、季節ごとに句を詠んでいます。


今年の春は今年 “  ならでは! ” の句を詠むことができました。



沈黙の

花見もおつな

術後かな



見事な桜の花を眺め、わ~きれ~!と声に出したい気持ちを抑えました。


胸の中に、心の中に新しい音が聞こえてくるようでした。それはそれで、おつな体験だったのです。


おつ

お疲れ様の「おつ」じゃありませんよ


おつ

風情があって味わい深い様子を表す言葉。若い方にもぜひ多用していただきたい大好きな日本語です。




さて、ポリープ切除までの流れ、かなりの長文になりますが、この機会にまとめておくことにします。


今日までこの事実を公開できずにいたのは、術後の「経過良好」を待ってのことでした。


全身麻酔初体験の私にとって、今回の手術はそれはそれは緊張するものでした。そして、体内にメスを入れ、果たして声は復活するものなのか。未知の世界でした。


まだまだリハビリ中ではございますが、発覚から今日までの諸々をお伝えさえていただきます。


かなりの長文とはなりますが、寛大な方がいらっしゃいましたらぜひお付き合い願います。同じ症状で悩んでいる方や、声を使ったお仕事をされている方の参考になれば幸いです。




兆候


兆候は2年程前から感じておりました。


明瞭に声が出ない感じ

特に高い声に不安定さを感じはじめました。


初めの頃は

加齢によるもの?

鍛錬不足

コロナ渦で舞台の本数が減ったことにより衰えた?毎日もっと声を出していないとダメなのか!?

もっと鍛えなきゃ!と、自己流のケアと鍛錬に努めるも改善されず




症状の深刻化


やがて、裏声が全く出なくなってゆきました


そして、昨年末からは日常会話もかすれてしまう程に


あまりのハードスケジュールで睡眠もまともにとれない日々でした。それも原因かと思い、睡眠時間の確保にも努め、加湿ケア諸々をするも日に日に症状は良くない方向へ


日常的に利用していた耳鼻咽喉科にて一般的な薬は処方していただいていたものの、これまでの不調とは何かが違うと焦りはじめました。




専門病院へ/声帯ポリープ発覚


会う人、会う人に、声どうしたの?と言われる日々


専門病院での本格的な検査が必要!ということになり、声専門のお医者様にお世話になりました。


すると、なんということでしょう

大きな大きなポリープちゃんが


「相当な期間、温存しましたね。コレでよく声が出せていましたね。かなりのビックサイズです。」と先生。


声が出ない原因はこのポリープちゃんでした。


声帯は2つのヒダが触れ合い振動することで声(音)が生まれます。


ポリープがあることにより、声帯が閉じられないうまく振動できない息が漏れるという状況だったわけです。




手術計画/直近の本番をどう乗り越えるか


すぐに手術が必要なレベルとのこと。


しかし、切除手術を行うとしばらくの沈黙期間が必要となります。


間近に控えていたのは


東京文化会館での新制作

「ピノッキオ」の長期稽古、

そして本番2ステージ。


奈良県大和高田市さざんかホールでの

「ピーターパン」の本番とワークショップ2


これらの公演を中止にはしたくありません

全く声が出ないというわけでもありません

ということで


手術は奈良県での公演以降にという計画になりました。


2月末までの公演は全てポリープを携えたまま挑む運びとなったわけです。




ポリープと共に、いざ本番


ここからが日々、極限状態に気をつかう日々でした


稽古場での発声や打ち合わせ等での会話を最小限にさせていただいたため、関係者の皆々様には大変お手数をおかけしました。皆さんの温かさに支えられました。


このポリープがある状態でもなんとか声が出るように、と、先生もあらゆる手を尽くしてくださいました。


迎えた本番、コレが不思議なことに声が出るのです。アドレナリンは声帯を一時的に引き締めるようですね。


声帯に垂らす「アドレナリン液」を処方していただきましたが、その液体の有効時間は約40分。公演途中で処置の追加をするとなると舞台が途切れてしまいます。


「ピノッキオ」は休憩なしの出ずっぱり70分。


「ピーターパン」も休憩なしの80分という作品。「ピーターパン」に至っては完全なるひとり舞台のため、台詞と歌がノンストップで続きます。


しかしながら

本番というものには魔法が存在するわけで、カラダから自力アドレナリンが放出されます。おかげさまで本番は最初から最後までこれまで通りの声を出すことができました。


ですが、実はギリッギリ!でした。


ポリープがあるなりに、なんとか声帯が振動し鳴る部分を見つけていました。そのわずかな部分に意識を集中させ、うまく声を響かせるように心がけました。


お客様の眼差し、期待、熱気は、新たな集中力も引き出してくださいます。


病院の先生、関係者の皆様のご協力、そしてお客様の眼差しに支えていただき、2月の公演は全て無事に終えることがでしました。




手術準備


奈良県での「ピーターパン」公演後、「曾根崎心中」の取材旅で大阪と兵庫を巡り、帰京後、手術に向けての準備が始まりました。


声帯を手術に最適な状態にすべくお酒を控え、強い発声を控え備えます。

プレゼントや差し入れでいただいた美味しそうなお酒も見るだけで我慢!


手術前日は深夜から食事NG。翌朝は指定の時間から水も飲めなくなります。汗をかいて脱水症状を起こすなどとならないように細心の注意を払いました。




前編はここまで


【後編】は手術当日からリハビリ…現在に至るまでの近況をお届けいたします。