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さて、後編です。
前編は、ひとつ前の投稿をご覧ください。
●全身麻酔による手術
全身麻酔は人生で初めてのこと…。
心拍数が上がるほど緊張している私を、親切な看護師さんや、素晴らしい先生方が優しく導いてくださり、徐々に緊張も解けてきました。
点滴後、全身麻酔の世界へ~
なんということでしょう…
新感覚、新体験!
別世界へと誘われる感じでした。
この部分だけでも本書けそうですが、話が逸れてしまうので次のパートに移りましょう。
●目覚めてから…
気が付くと、私は別の部屋に居ました。
看護師さんの優しい声掛けで徐々に状況を把握してゆきます。
喉のあたりにゴロゴロするものが…
しかし!発声はもちろん、咳払いもNG!
声帯に傷がある状態なので、術後はくしゃみや咳などが厳禁でした。
ゴロゴロとした痰のようなものを吐き出したく、咳払いをしそうになるもそれもすかさず止めてくださいました。ゆっくりと水を飲むことで落ち着かせてゆきます。
手術は無事に終わったとのことで、ゆっくりと補足説明を受けました。
因みに、手術用のパジャマは持参…というシステムでした。必ず前開きのパジャマをご持参ください…とのこと。
寝るときはスウェット派の私…
そもそも前開きのパジャマとか着たことすらないかも…
子どもの頃はなぜかボタンのある服が苦手で、今でこそ克服しましたが昔は軽い恐怖症でした。
近所のスーパーの雑貨コーナーにてパジャマを物色…。なぜか紳士用パジャマが豊富に取り揃えられている。しかしことごとく、どれも地味…。気分が上がる色とか柄とかないのかしら?…と物色を続けると…奥の奥にこの柄が!!笑
大好きなトリコロールカラー!
私の手術の相棒となりました。
もう着ることないから、今後の作品の生地としてどこかに使おうかしら??
さ、お話を戻しましょう…
●花粉、花粉、花粉…
術後、くしゃみや咳は最も危険とのこと。
花粉症の私にとってはここも辛いところでした。よく効く薬を処方していただいてはいるものの、いつくしゃみが出そうになってしまうのか…と気が気ではない…。
とは言え…、
なんとうことでしょう….
今年の春は雨の日が多いこと…。手術当日も雨でしたし。その後も雨の日が多く、おかげで花粉達はお休みモード。まるで天も応援してくれているかのような気持ちになりました。
手術当日は消化に良い物を食べ、翌日から通常の食事ができるようになりました。
カフェインは1週間NG
アルコールはしばらくNG
●手術翌日/経過観察
たった1日にして、一目瞭然で良くなっている!とのこと。切除の傷も、ものの見事に平坦になっているとのこと。
いやはや…
先生の切除技術が凄かったのです。
ポリープ切除は一般的に…メスで一度に切除する方法や、ポリープの内部を取り出し表面を残す方法などがとられているようなのですが、それだと声帯のカタチが変わってしまうこともあるようです。発声の回復という点に於いてはリスクを伴うわけです。
一方で、今回お世話になっている先生は、声帯の曲面を残すために、ピーラーで削るように多方向から少しずつ段階的に切っていくというシステムで行っているとのこと。しかもこれ、先生オリジナルの方法とのこと。この術式のために、世界で最も繊細な刃先のメスを用いているのだとか…。
これは声帯ポリープ切除に於ける医学革命だと思います。この尊さに、ただただ感嘆するばかり…。
●どんなポリープだったか?
それにしても…
とにかく大きいポリープだったとのこと。
一般的な声帯ポリープは
0.3ミリ程度とのこと。
私のポリープちゃん
1.6ミリのビックサイズ!!
因みに、フニャフニャタイプのポリープもあるそうですが、私のポリープはかなり硬めだったそうです。相当な酷使による出血が腫れてできたものと思われる…とのこと。なんだか…ポリープちゃんに、ありがとう…という愛おしい気持ちが湧いてきました。
ポリープちゃん
長い間、お疲れ様でした。ありがとう。
●沈黙治療/筆談生活
さて、まず3日間は完全サイレント!
人生初の筆談生活。
これがとても良い体験となりました。
自分が何か発言しようと思っても、筆談だといったん気持ちが立ち止まるのです。この経験は実に豊かなものでした。
思ったことをすぐ口にしてきた人生。
酷いときは、考えるよりも先に言葉が出てくるほど…、
そんな人生を歩んできた私にとって、発言の前に一度思考する…という、人によってはあたりまえであろう時間が良い経験となりました。
また、筆談での言葉を最小限にするため、頭の中でいちど言葉を整理する感覚も新鮮でした。てか、それ普段やってないんか~い?…と言われそうですが。汗
自分の人生の発言態度を顧みる機会となりました。
●リハビリスタート
完全サイレントを無事に終え、少しずつ、発声のリハビリが始まります。筆談生活は続行。
数日置きに経過観察も行われ、その度にリハビリの難易度も上がっていきます。
最初は静かな低音によるハミング発声から。
1週間ほど経つと、少しずつ言葉の練習。
更に声帯を閉じる練習のため、水を入れたペットボトルにストローでぶくぶくさせながら発声する「ストローハミング」。←声帯に負担をかけずに自然に声帯を閉じることができる方法とのこと。
やがて徐々に音域も広げていきました。
経過観察はおかげさまで毎回「最上級に良好!」との結果。
先生…涙。本当にありがとうございます…涙。
やがて、(疲れない程度に)日常会話解禁! ←今、この辺!
お酒と歌唱はもうしばらくの辛抱…。
●現状
まだまだ完全復帰とはいきませんがおかげさま良好です。
現在は音域によってはまだ息が漏れてしまう状態。私は特に低い声が苦手なようです。
この息が漏れてしまうことにも原因が…
ポリープが巨大な状態で長期間過ごしていたため、声帯が「ポリープあり」の状態(カタチ)を記憶して癖になってしまっているそうです。そのため声帯が閉じにくい…というのが現状です。
「反射フィードバック」という声帯の反射神経?のような仕組みを本来の状態にすべく、現在もリハビリ中です。
とは言え、声帯そのものは傷もほぼ消え、とても良い状態とのこと。
「反射フィードバック」については時間の問題…。ポリープのビックサイズだったことを思えば今の声でもかなり良いそうです。
声の完全復帰まで…早ければ数週間、長くて2ヵ月…という感じだそうです。リハビリがんばりますよー!!
来たる6月17日(土)
ギャラクシティ 西新井文化ホールでの公演
「お花のハナックの物語」で完全復帰の予定です!かつては全国各地で度々上演されていた本作は客席での演出が必須の作品。コロナ禍での上演は不可となっておりました。この度、遂にハナック復活!!
色々な意味で復活を遂げる公演となります!
新たな美声!?お楽しみに!!
現在は「曾根崎心中」の台本執筆の真っ只中です。間もなく、方言指導や選曲も始まります。これまた長期戦…。こちらもがんばらせていただきます!!
今年はあの作品や!あの作品も!!
色々な作品の地方公演が予定されています!!
劇場で、皆様とお会いできますように!!
●まとめ
さ~て、まだまだリハビリ中とは言え、ここでいったん、我がポリープちゃんとの歴史を振り返らせていただきました。
ポリープちゃん、ありがとグッパイ!
多くの気付きと学び、貴重な体験をありがとう!
そしてまだまだお世話になっている真っ最中ですが…
先生、看護師さん、医療スタッフの皆々様、いつも親切丁寧にありがとうございます。
また、この私の状況にご理解ご協力をいただいている関係者の皆様、日々案じてくれている友人・知人・家族に…心から感謝申し上げます!
そしてそして、
いつも応援してくださっている皆様!
本当に本当に、ありがとうございます!!
次なる公演もお楽しみに~!!
この長い長いレポート、全て読んでくださったとしたら…かなり尊い…感謝です。
もれなく「よく読んでくれたで賞」を差し上げます。
静かな春を迎えました。
それもそのはず。
一切声を出せない期間を過ごしておりました。
そんなこと…生まれて初めてのことです。笑
実は、声帯に大きなポリープができておりました。先日、切除手術を行い、術後は沈黙状態…。現在、徐々に声を出し始めております。
おかげさまで、経過は良好です。
時折、北海道の母と、葉書での俳句のやりとりをしております。
メールもLINEもしない母との文字でのコミュニケーションは今も手紙です。
母のようにうまく詠むことはできませんが、私も拙いなりに、季節ごとに句を詠んでいます。
今年の春は…今年 “ ならでは! ” の句を詠むことができました。
沈黙の
花見もおつな
術後かな
見事な桜の花を眺め、わ~きれ~!と声に出したい気持ちを抑えました。
胸の中に、心の中に新しい音が聞こえてくるようでした。それはそれで、おつな体験だったのです。
おつ…
お疲れ様の「おつ」じゃありませんよ…笑
おつ…
風情があって味わい深い様子を表す言葉。若い方にもぜひ多用していただきたい大好きな日本語です。
さて、ポリープ切除までの流れ、かなりの長文になりますが、この機会にまとめておくことにします。
今日までこの事実を公開できずにいたのは、術後の「経過良好」を待ってのことでした。
全身麻酔初体験の私にとって、今回の手術はそれはそれは緊張するものでした。そして、体内にメスを入れ、果たして声は復活するものなのか…。未知の世界でした。
まだまだリハビリ中ではございますが、発覚から今日までの諸々をお伝えさえていただきます。
かなりの長文とはなりますが、寛大な方がいらっしゃいましたらぜひお付き合い願います。同じ症状で悩んでいる方や、声を使ったお仕事をされている方の参考になれば幸いです。
●兆候
兆候は2年程前から感じておりました。
明瞭に声が出ない感じ…
特に高い声に不安定さを感じはじめました。
初めの頃は…
加齢によるもの?
鍛錬不足…
コロナ渦で舞台の本数が減ったことにより衰えた?毎日もっと声を出していないとダメなのか!?
もっと鍛えなきゃ!と、自己流のケアと鍛錬に努めるも改善されず…
●症状の深刻化
やがて、裏声が全く出なくなってゆきました…。
そして、昨年末からは日常会話もかすれてしまう程に…。
あまりのハードスケジュールで睡眠もまともにとれない日々でした。それも原因か…と思い、睡眠時間の確保にも努め、加湿ケア諸々をするも日に日に症状は良くない方向へ…
日常的に利用していた耳鼻咽喉科にて一般的な薬は処方していただいていたものの、これまでの不調とは何かが違う…と焦りはじめました。
●専門病院へ/声帯ポリープ発覚
会う人、会う人に…、声どうしたの?と言われる日々…。
専門病院での本格的な検査が必要!ということになり、声専門のお医者様にお世話になりました。
すると、なんということでしょう…
大きな大きなポリープちゃんが…
「相当な期間、温存しましたね…。コレでよく声が出せていましたね…。かなりのビックサイズです。」と先生。
声が出ない原因はこのポリープちゃんでした。
声帯は2つのヒダが触れ合い振動することで声(音)が生まれます。
ポリープがあることにより、声帯が閉じられない…うまく振動できない…息が漏れる…という状況だったわけです。
●手術計画/直近の本番をどう乗り越えるか…
すぐに手術が必要なレベルとのこと。
しかし、切除手術を行うとしばらくの沈黙期間が必要となります。
間近に控えていたのは…
東京文化会館での新制作
「ピノッキオ」の長期稽古、
そして本番2ステージ。
奈良県大和高田市さざんかホールでの
「ピーターパン」の本番とワークショップ2本
これらの公演を中止にはしたくありません…
全く声が出ないというわけでもありません…
ということで…
手術は奈良県での公演以降に…という計画になりました。
2月末までの公演は全て…ポリープを携えたまま挑む運びとなったわけです。
●ポリープと共に、いざ本番…
ここからが日々、極限状態に気をつかう日々でした…。
稽古場での発声や打ち合わせ等での会話を最小限にさせていただいたため、関係者の皆々様には大変お手数をおかけしました。皆さんの温かさに支えられました。
このポリープがある状態でもなんとか声が出るように…、と、先生もあらゆる手を尽くしてくださいました。
迎えた本番、コレが不思議なことに声が出るのです。アドレナリンは声帯を一時的に引き締めるようですね。
声帯に垂らす「アドレナリン液」を処方していただきましたが、その液体の有効時間は約40分。公演途中で処置の追加をするとなると舞台が途切れてしまいます。
「ピノッキオ」は休憩なしの出ずっぱり70分。
「ピーターパン」も休憩なしの80分という作品。「ピーターパン」に至っては完全なるひとり舞台のため、台詞と歌がノンストップで続きます。
しかしながら…
本番というものには魔法が存在するわけで…、カラダから自力アドレナリンが放出されます。おかげさまで…本番は最初から最後まで…これまで通りの声を出すことができました。
ですが、実はギリッギリ!でした。
ポリープがあるなりに、なんとか声帯が振動し鳴る部分を見つけていました。そのわずかな部分に意識を集中させ、うまく声を響かせるように心がけました。
お客様の眼差し、期待、熱気は、新たな集中力も引き出してくださいます。
病院の先生、関係者の皆様のご協力、そしてお客様の眼差しに支えていただき、2月の公演は全て無事に終えることがでしました。
●手術準備
奈良県での「ピーターパン」公演後、「曾根崎心中」の取材旅で大阪と兵庫を巡り、帰京後、手術に向けての準備が始まりました。
声帯を手術に最適な状態にすべく…お酒を控え、強い発声を控え備えます。
プレゼントや差し入れでいただいた美味しそうなお酒も見るだけで我慢!
手術前日は深夜から食事NG。翌朝は指定の時間から水も飲めなくなります。汗をかいて脱水症状を起こす…などとならないように細心の注意を払いました。
前編はここまで
【後編】は手術当日からリハビリ…現在に至るまでの近況をお届けいたします。