先にペルー料理店を訪ねた折り、当然のように?店内にはラテンっぽい音楽が流れておりました。
そこで、ブラジルにはサンバがあり、アルゼンチンにはタンゴがあり…と、
何かそういう国民的な音楽ジャンルがペルーにもあったかいね?と思い立ち、検索を。
すると、ペルーの場合にはどうやらフォルクローレに行きついてしまうような。
予備知識的にフォルクローレは南米、アンデス地方と言いましょうか、
現在の国の区分けとは別の地域を思い浮かべてしまっていたですが、
古く栄えたアンデス文明あたりとも結びつくことを思えば、
インカ帝国の首都であったクスコはペルーにあるわけで、まあ、納得といいますか。
とまあ、そんなようなわけで図書館から「花祭り~フォルクローレ・ベスト」なるCDを借りて来たのでありますよ。
ジャンル別のベスト盤ともなると、各曲、さまざまな演奏団体によるものかと思えば、すべてロス・インカスで。
ちなみにこのロス・インカスというグループは、サイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んでいく」で
歌唱の裏に流れるメロディーを演奏しているのですなあ…と思えば、CDの最初の曲がまさに
この「コンドルは飛んでいく」、途中から歌が聴こえてこないのがなんとも違和感を抱いてしまうほどに
すっかりS&Gになってしまっているようでもありますが。
ですが、解説に曰くこの曲はサルスエラ(スペイン版のオペラですな)のために作られたものだそうで、
本来はS&Gがカバーした前半のゆったりしたヤラビ(抒情歌)という部分に続いて、
後半にテンポアップするワイノ(舞踊曲)があってひとつの曲なのだということで。
前半部分だけがやけに知られているのはS&Gの功罪といえるかもですが、
前半しか知られなくなってしまったことは、あたかもパッヘルベルのカノンのごとしかも。
パッヘルベルの曲は本当なら「カノンとジーグ ニ長調」という曲名だということで、
前半がゆったり、後半に舞曲が来る構成も似ておりますなあ。
と、それはともかく20曲も収録されておりますと、
いわゆるフォルクローレらしい伝統に根差した曲ばかりではなかったりもしますけれど、
それでもおしなべて素朴な印象を受けるのはどうしたことかと考えてみれば、
おそらくはケーナの音色の故ではなかろうかと。
息を吹き込んで音をならす、いわゆる笛のたぐいの楽器で、
リードを使わずとにかく息を吹き込むというシンプルな形の発展形はフルートに見られますけれど、
フルートは改良が進んで、かつ演奏者の技能が高まったからであるのか、
およそ息ではなく楽器の音色として聴こえるようになったいますですね。
(あえて息を聴かせる奏法もありましょうけれど)
一方で、日本の尺八や篠笛などのように、明らかに息まじりというか、息も含めて音色を作り出すものと
ケーナの音色は近く、その息まじりの音が洗練とは異なる、素朴な音楽世界を現出させているようも思えるわけで。
それが何とも懐かしい感じを抱かせもすることになりますが、端から知っている曲は
それこそ「コンドルは飛んでいく」と「ラ・バンバ」(こちらの出自はメキシコのようですが)くらいか…思うや、
このCDのタイトルになっている「花祭り」という曲、なんでしょう、この聞き覚えある感は。
ひと頃、あちらこちらの駅頭でアンデスからの出稼ぎ楽団?のような人たちが演奏して、
自分たちのCDを販売もしていたのをよく見かけたですが、その時に耳にして残っているのでもありましょうかね。
1枚、買っとけばよかったかもと今さらながら。
図書館からCDを返しても、しばらくするとまた素朴さに触れたくなるやもですし。