先日バンドネオン のことを書いたりした折りも折り、
図書館でタンゴのCDを見かけたものですから、こりゃあ聴いてみるに如くはなしというわけでして。
「情熱のアルゼンチン・タンゴ 50」という2枚組みでありますよ。
先に想像をめぐらしたところでは、
ヨーロッパからの大量移民の波に乗っかってバンドネオンという楽器もドイツから持ち込まれ、
タンゴに使われるようになってのかも…と推測したですが、
どうやら「タンゴ」そのものが移民との関わりで成立したきたようなのですね。
ライナーノーツにある解説がわりと詳しく、タンゴの歴史をざっくり知るにはうってつけで、
ちょいとそこから引用してみますとこんな具合です。
タンゴはイタリアのカンツォーネやアルゼンチンの土着の民謡などに加えて、キューバのハバネラ、アフリカのカンドムベ、ヨーロッパのポルカやワルツなど、さまざまな国の音楽が渾然一体となって、その中から生まれたと言われています。
どうやらベースには数で優ったイタリア系移民があるようですけれど、
かなりまぜこぜ感のある出来上がりだったことが窺われるのでありますよ。
そうしたタンゴですけれど、個人的なタンゴのイメージはかっちり激しき刻むリズムでしょうか。
ダッタッタッタタ、ダッタッタッタタというような(分かりにくいと思いますが…笑)。
CDを聴き始めて思ったのは、これがあながち間違いでもないのかなということですかね。
何しろ一曲目があの「ラ・クンパルシータ」で、まさに!のリズム。
日本人にとってはこれこそタンゴ!と思う1曲ではないでしょうか。
これを耳にすると男女がぴったりと寄り添って踊るダンスの姿まで浮かんできますなあ。
と、入口でのツカミは大変に良かったのですけれど、聴き進んで全50曲。
もはや曲の区別が全くつかなくなってしまいました。
ですがそんな中にあって、アストル・ピアソラの曲は「違うなあ」という印象でありました。
ことさらピアソラをありがたがるつもりは全くありませんですが、
古典的なタンゴが押しなべて踊れる音楽であるのに対して、ピアソラの曲は用途が違うような。
有名な4部作である「ブエノスアイレスの四季」からは「夏」と「冬」が収録されて、
初めて聴くものですから新鮮でもありましたけれど、これはもっぱら鑑賞するための音楽なのかなと。
解説によれば「夏」はもともと舞台劇のために書かれたとあって、
もしかすると舞台でのダンスシーンで使われたのかもしれませんけれど、
もっぱら劇音楽として作られたのではと思ったり。
一方で、「冬」は終わりの方でバロック音楽のような気配を見せて、
諸音楽の融合がタンゴの元であるにしてももはやダンスミュージックというところから離れているなとも。
ですからひと口にタンゴとはいっても、いわゆるタンゴとピアソラの音楽は同一ルーツながら
枝分かれした先どうしということなのかもしれませんですね。
と、ピアソラだけ持ち上げたふうで、他の曲は区別がつかないとして終わってしまっては
タンゴのスタンダード・ナンバーに失礼でしょうから、「いいね」と思った曲名を少し備忘録ということで。
「インデペンデンシア」、「南風」、「パリのカナロ」といったあたりを記憶にとどめておくことにいたしましょう。